俺「今日こそ揉ませてください」
気持ちの良い朝日に包まれる食堂で、俺はニパの前で土下座をしていた。
ニッカ「え、今日は何?」
ニパは怯えた様子で言うが俺は無視した。
そして心の中でほくそ笑み、今にも飛びだしそうな全身を抑えるのに労力を捧げていた。
無理矢理揉もうとするから拒まれるのだ。
扶桑最上級の礼を持って接すれば、俺は合法的にニパの胸を揉めて、誰からも非難を受けない。
我ながら完璧な作戦だった。
この間雪山サバイバルを教えてくれたロスマン先生に見せてやりたいくらいだった。
菅野「またやってるよ」
下原「今日は三つ指ですか…気持ちは分かりますけど」
クルピン「ワオ、定ちゃん大胆だねぇ」
ロスマン「冗談は頭だけで結構よ伯爵」
クルピン「やだな先生。箸で叩くのは作法がなってないよ?」
ニッカ「カンノ助けて…」
そう言ってニパは潤んだ目でナオちゃんを見る。
ちらちらとこちらをうかがう目にあらぬほどの興奮を覚え、
俺「俺は君の胸を揉むためだったら命を掛けてもいい!!」
思わず土下座を解いてニパの手を握り締めた。
あきらめたような感じの雰囲気にまたもや興奮し、早速我慢の限界に達して俺は一気に胸の内をブチ撒けてしまった。
俺「君が胸を揉ませてくれるなら、俺はツンドラの大地に素っ裸で落とされてもいい!
揉むためだったら一日を過ごす事も、君への愛を叫び続ける事だって出来る!!」
ニッカ「ッ―――大尉ーー!!!」
ニパは半分本気で叫んでいた。
すると偶然寝坊をしてきた熊さんに俺は一瞬にして首をつかまれ
そのまま引きずられてしまった。
そんなに叫ぶほど嬉しかったなんて。照れるなよ。
◇
サーシャ「磨き残しがあったら正座で一晩明かして貰いますからね」
俺「そんな、ご褒美ですよ」
照れながら言うといきなりスパナが飛んできた。
そしてそのまま俺の後頭部に当たった。まるで雷に打たれた様な痛みに俺は鼻血を出してしまった。
俺「いっぁふッ痛い!熊さんすごく痛い!!」
サーシャ「知りません!」
なんと無茶苦茶な人なんだと逆に感動を覚えるくらいだった。
格納庫には俺と熊さんとブレイクウィッチーズのストライカーユニット。
かなりの頻度で届くらしく、補給班の軍人は諦めたように笑っていた。
サーシャ「この子も不備はありませんね」
俺「点検とかは整備班の仕事じゃないですか」
サーシャ「…これはおまじないです」
俺「じゃあ、ひょっとして今まで全部やってきたんですか?」
疑問のままに聞いてみると、熊さんは頷いた。
しばらく二人無言でストライカーを磨いていると熊さんが振り向き、
サーシャ「それに、好きでやっている事ですから」
そう言って頬を染めて笑った。
無性に抱きしめてやりたくなり手を伸ばしかけた所で丁度良くお昼のラッパが響いた。
サーシャ「あ、俺さんお昼を作らないと!」
俺「今日は下原さんがやってくれますから。それより熊さん」
サーシャ「なんでしょう?」
俺「お昼にしましょう」
手早くござを敷いて熊さんを座らせ、紅茶を淹れてやる。
おまじないは完了していないが、朝食を食べ損ねた熊さんにはちょうどいいだろう。
もうとか、お仕置きとか言いながら熊さんも心なしか嬉しそうな顔をしている。
サーシャ「サンドウィッチですか」
俺「ええ。昨日のローストビーフが余ってましたから」
納得したように頷くと、熊さんはそのままサンドウィッチを食べる。
厚切りの軽く焼いたパンにローストビーフと戻し野菜。砕いた胡椒がアクセント。
サーシャ「おいしい…やっぱり料理はお上手ですね」
と言うので調子に乗って
俺「でしょう?」
腕を組むと、さすがに怒られた。
少しは言い返せと言われても、熊さんの言葉に嬉しくない事なんてないです。
と返したらまたスパナで殴られた。痛い。
俺「っつぅ………」
サーシャ「まったく…でもどうして戻し野菜なんですか?」
俺「パイロットの友人から教えてもらったんです。それに戻し野菜の方が味付けが楽なので」
サーシャ「…確かにそうですけど」
俺「たまには軍隊らしいのもいいじゃないですか」
もし彼女たちがもっと先にあるほったて小屋で戦うようになっても、俺はそこには行けないのだ。
行く資格も無ければ権利も無いのだから。
そうなれば彼女たちが食べるのは缶詰や乾パンとかの、味気のないものになるだろう。
いやいや食べるよりは、前もこんなの食べたなと思った方がましに決まってる。
俺「俺が作った料理じゃなくても好き嫌いしないでくださいね」
考えていると、あまりの屈辱に悔しくて泣きそうになった。
戦闘が激しくなったら彼女たちは馬車馬のように働くのだ。そしてご飯は軍人たちと同じ男らしい泥味の食物。
栄養とか衛生、見た目…きっと噛んだらじゃりじゃりするのだ。
鼻がツンとして涙が出てきた。
しかし何とか体裁を保ち「何でもないです忘れてください」と繕うが涙は隠せず、
どうしようもなくなって立ち上がると、グッとエプロンの裾を曳かれてシートに落ちた。
尾てい骨のあまりの痛みに叫びそうになっていると
熊さんが俺の手を握った。
ハッとして彼女の顔を見ると、微笑みながら俺の頬に手を添えた。
サーシャ「変なことを考えてないで、おいしいものを作ってください」
俺は泣いた。
どうしていいかよく分からなかったが、それしか残されていなかったように思う。
どさくさに紛れて熊さんを抱きしめてしまったが、その日は何もされなかった。
嬉しいはずなのに涙は止まらなかった。
最終更新:2013年03月30日 02:30