伯爵√最終話「I'm always close to you」の後日談。エピローグってやつですかね!
本スレでは主につなぎ、オナニー目的で投下されます。
えっちいのは今のところありません。捏造設定のはびこる世界です。夢が詰まってます。

それでもいいかなって方、どうぞ





 朝、鳥の鳴く声で眠りに緩んだ意識が戻る。
 でもまだ目は開かない。
 しばらくすると、隣で寝ていた彼がごそりと動く。
 私を起こさないようにそっとベッドから降り、そして小声で


『今日もきれいですよ』


 そう囁くと、私に毛布を掛け直して寝室から出る。
 階段を下る音を聞きながら、私は一人毛布に潜る。


『君って人は……』


 一緒にいるようになって何年か経つけれど、まったく慣れない。
 初めは一緒に起きた時だけだと思っていたから、
 寝たふりをして聞いた時なんかはあまりの事に真っ赤になって跳ね起きた位だ。
 どうにか慣れないものかと、クルピンスキーはうなった。

                                    ◇◇◇

 自身のウィッチとしての役目を終え、現在クルピンスキーはロスマンらと共に
 新人ウィッチの訓練、広報活動など、多方面に働いている。
 現住居は基地近くのアパルトマンだが、今はロスマンと掛け合って長い休みをもらい、実家のブラウンスベルグに帰って来た所だった。

 俺が朝食を用意して、その後は自分を起こしに来た俺と共に娘を起こし、
 父母――もう祖父母になってしまった――との五人で朝食を囲む。
 今日は両親ともに仕事だから、庭の手入れをして、その後に買い物に行って、
 そうだ、久々の休みだから心おきなく娘と遊べるんだ。海にでも行こうか、それとも――
 そうやって考えるだけでよく分からない良い香り――きっと幸せで胸が一杯になる。
 春の陽気ですらここまで温かくはないだろう。

 一人うきうき考えていると、寝室の扉が開く。
 焼き立てのパンやらスープやらのおいしそうな匂いと一緒に入って来る彼。
 人一倍気配に敏感だった彼は、あの日からは随分と感覚が鈍ったらしい。


『あまり寝ていると身体に障りますよ?』

『…ん、俺君がキスしてくれたら起きるよ』

『またそんなこと言って』


 俺君は呆れたように笑ってベッドに座る。


『せっかく先生が休みを譲ってくれたのに』

『いいじゃない。この間ハネムーンの為に休みあげたんだから』

『…それもそうですね』


 突然の休暇願に怒りながらもしっかり有給でくれたロスマン先生を思い起こす。
 軍の食堂(俺君の仕事場。俺君が来てから味が格段と良くなった)で先生と二人、昼食を取っていたらいきなり

「エディータ!ハネムーンに行こうじゃないか!」

 と、やたらテンションの高い旦那さんが飛びこんで来たのが今から約三ヶ月前。
 纏まった休みを予定して無かった先生の為に休みを変わり、ほとんど休み無しで働き続けたのが二ヶ月くらい前。
 なので今回の休みは妥当なのだ。バカンスまでは遠いけれど仕方ないのだ。


『でも早くしないと冷めちゃいますよ?』

『…昨日俺君が激しくしたから……』

『えっ』

『えっ?』


 あまりに素っ頓狂な声を出すものだから毛布から顔を出すと、すぐそこに俺君の顔。
 そっと触れるだけのキスをすると、ぽいと毛布を払ってしまう。


『おはようございます、ベラ。今日もきれいですね』

『…ん、おはよう』

『今日は義父さんの好きなブレーツェルです。上手く焼けました』

『ふふ、だろうね』

『なんです、分かってるって顔をして』

『だって嬉しいって顔してるよ』


 そう言って真っ白の髪を梳くと、俺君は目を見開いて真っ赤になる。
 ずっと前はこんな変化すらなかったから、嬉しくなって頬が緩むのを感じた。


『…姫様を起こしてきます』

『あれ俺君、もしかして置いてくつもり?』


 からかう様に背を向けた彼に言うと、もう収まったのか、仕方ないですね、と手を差し伸べられる。


 そしてその手を掴もうとしたところで、目が覚めた。

                               ◇◇◇


クルピンスキー「なんで、こんな…っ」


 膝を抱えて、一人嗚咽を噛み殺す。
 俺君はよく夢を見ると言っていた。うつったのかもしれない―――何故、
 それは、俺君が死んで―――――


クルピンスキー「嫌だよ、嫌だ、こんなの…」


 私は独りで泣く。自分の傍の、何の温もりもないシーツを握りしめて。
 悪夢に違いない。俺君はいなくなってしまったのに、あんな幸せな夢を見せるなんて。
 あの時彼を止めていたら、でもそもそも俺君は限界だったんだ、仕方の無いことだったんだ。
 解っているのに、どうしてどうしてと堂々巡りの問だけが頭を埋める。


クルピンスキー「傍にいてって、言ったじゃないか」


 独り、呟いた。
 私の傍には誰もいない。





もしもBADENDだったらのお話
九品目を落とした時には出来てた話だったけど書き起こすと辛いね…
ちなみに部屋の外には偶然ナオちゃんがいて、大人って奴はと歯を食いしばってる
伯爵に娘が一人は忠実だけど、ロスマン先生の旦那さんはどちら様?え、俺だって?やだなぁ知ってるって




 春の陽気でぽかぽかとあたたかいラウンジには紅茶の良い香りでいっぱいだった。
 大きな窓の外、基地の城壁はからりと乾き、その向こうには春に霞む平原が見える。




 たまには二人でと、アフタヌーンティと洒落込んでいると、彼は唐突に口を開いた。
 大事な話があると言われて待っていたらこれだ。
 クルピンスキーはむっと形の良い眉をひそまめた。


クルピンスキー「君さぁ、生き返ってそこそこに何を言い出すのさ」

俺「ちょっと仮死状態だっただけですって」


 ご冗談を、とでも言う風にはははと笑う。
 なんだか腹が立つ。足を組んで皮肉たっぷりに言い返してやる。


クルピンスキー「死んだり生き返ったり、大変だね君は」


 紅茶で唇を湿らせる。
 香りだけでも一級品だと分かるが、楽しめる余裕なんか無い。


俺「だって揉みたいんですもん、ニパのおっぱい」

クルピンスキー「ねえ、俺君」

俺「何です」

クルピンスキー「私のじゃダメなの?」


 鼻歌でも歌うんじゃないかと思うほどのうきうき具合。
 でもこの人私の恋人だからなぁ……―――しかし、そんなもの幻想だった。


俺「はい!」




菅野・下原「はあぁぁぁぁッ!?」

ジョゼ「ひぅっ!?」

ラル「こら菅野、下原、ジョゼが驚くだろう」


 お口チャック、とやって見せるラル。
 二人とも形式には従うがインカムからの音を逃すまいと眼をとがらせる。


下原「しかしですねラル隊長、あんなにハッキリ答える男の子がどこにいますか!」

ロスマン「それがウチの雑用番じゃない」

下原「そんなあっさり……あー、あー…そっか」


 えっそこで納得しちゃうの?サーシャは思ったが口には出さない。
 なんだかんだで俺のぶっ飛んだ言動にも慣れたし、あの伯爵がどう切り返すかが楽しみなのである。
 いつだって心労を増やしてくれる二人だ。この位の癒しと年相応のドキドキの提供は義務化したっていい位なのだ。


ロスマン「しかしまあ、こんな事になるとは思わなかったわ」


 もちろん良い方の意味で、と付け加え、ロスマンがクッキーに手を付ける。
 ロスマンは目を閉じた。こんな事。俺が生きていると言う事。
 俺が消えてしまって、胸にがらんぼうの穴が空いたような感覚が無性に恐ろしかった。
 こんなクッキーを食べることで俺が生きていると感じられる事に涙がにじむのは予想外だ。


ニパ「それにしても俺って手慣れてますよね」

ジョゼ「何にですか?」

ニパ「…いや、ほらさ」

菅野「女の扱いに、だろ」


 口いっぱいにクッキーを頬張る菅野が言った。
 途端、何とも言えない空気が広がった。
 でもなんとなしに分かる。


ジョゼ「…あ、分かります、それ」


 気まずそうにジョゼが口を開く。
 思い当たるフシならより取り見取り。


サーシャ「そりゃあ、嫌だなぁと思う事はないですけれど…」


 だって洗濯物を任せても顔色一つ変えないし、
 部屋の掃除を任せてもたんすを開けるとかも換気以外しないし、
 食器を洗わせても舐めるとかしないし……


下原「そうですよねぇ。迫水の方がよっぽどひどいかもしれません」

菅野「おいやめろ」

ニパ「え、誰その人」

菅野「やめろ」

ニパ「え?だかr」

菅野「やめろ」

ニパ「あ、うん。……ごめんカンノ…その、そんなに怖かったなんて知らなかったんだよ!」


 いつの間にか膝を抱える菅野、頭を抱える下原。
 ―ああ、これはふれちゃいけない問題だったんだ。
 ―がんばれ、扶桑がんばれ、超がんばれ。
 戦闘時は常に独断行動が目立つ502。
 しかし今日この時ばかりは、全員俯き、お通夜ばりの空気を発生させていた。


ラル「少なくとも品はいいぞ、あれは」

サーシャ「そういえばテーブルマナーも良かった気がします」

下原「あ、俺さんはしも使えましたよ」


 たしか彼は粗相をしたことは無かった気がする。
 顔も別に悪くない。むしろ最近は表情が増えたお陰で好青年だ。
 あれ、俺って実はすごいんじゃないか。
 しかしそんな思いも次の瞬間には台無しになるのだった。


ニパ「これで私の胸に興味がなかったらなぁ…」


 どんよりと吐き出されたニパの溜息。
 若干遠い目をしながら下原は挙動不審で頷いた。



―――――――――――――――― ―― ―


「また逢いましたね、ベラ」


 その言葉を聞いて、どれほど心が震えただろう。
 自分に必要なのが彼だと気が付いて、その途端にいなくなってしまって。

 でも彼は死んだんだ。
 白魔の口に飛び込んで命を擦り潰して死んでしまった。
 もう二度と会えるはずなんかないんだ。


クルピンスキー「…喜ばせるつもりならいらないよ」

「何がです?」

クルピンスキー「君だよ。これは夢だ」


 頭を振る。世界は霞みのヴェールを被る。


「…そうですか」

クルピンスキー「そうだよ。これは―――――」


 夢なんだよ。
 私がつくった、虚しいだけの空っぽの夢。
 そう言おうとした時だった。


「ッ俺は、ここにいる!!」


 頭を思い切り殴り付けるような声だった。
 ひどく悲しげで、怒りに満ちていて、びくりと体が震えた。


「だったら貴女は、夢が、こんな事をするとでも?」


 足音が近づく。
 やっぱり私は振り向けなかった。


「貴女へのこの思いをも、嘘だというのですか」


 真後ろで止まった。
 軍服の裾が控えめに引かれた。


「俺がいたということも、俺という存在も、無かったというのですか」


 真後ろの声は震えていた。
 記憶の中の彼は感情なんて出さなかったから、きっと夢だろうと思った。
 振り向かないと決めていた。
 だけど、止められなかった。
 気付いた時には振り向いて、彼の事をかき抱いていたのだから。


俺「っわ、あ、ベラ?どうしたんです、急に――――」

クルピンスキー「俺君!」

俺「え、あ、はいっ」

クルピンスキー「…君は本当に、俺君でいいの?」

俺「……え、?」


 びっくりした。
 だって震えていたから。けっして俺の顔を見ようとしないから。


俺「…ベラ、俺はここにいるじゃないですか……ほら、ここに」


 俺の方が彼女より背が小さい。
 だから肩口あたりでもごもご話すことになる。
 甘く香る彼女の香りに頭がくらくらした。


クルピンスキー「……顔、見てもいい?」

俺「はい、どうぞお好きに」

クルピンスキー「手を離してもいなくならない?」

俺「傍にいてくれるって言ったのは貴女じゃあないですか」

クルピンスキー「ねえ俺君」

俺「なんですか?」

クルピンスキー「これは、夢?」


 ぎゅう、と
 抱きしめる力が強くなった。


俺「…ヴァルト、ルート?」


 彼女は震えていた。かたかたと、頼りなく。
 俺は自分の心臓の音が聞こえてしまうんじゃないかとどぎまぎしていた。
 腹の底からはなんだかよく分からないずくずくしたものが込み上げるのを感じる。
 まだ慣れない身体の腕を伸ばして、彼女のふわふわの金髪を撫でた。


俺「ねえベラ、不思議ですね」


 俺がぎゅうと抱きしめ返すと、彼女もどきどきしているのが分かった。
 俺のどきどきと、彼女のどきどき。
 ああ、俺は生きているんだとふと思った。


俺「なんだか貴女が、とっても近くなった気がするんです」





 さらっと即答されて少しへこむ。
 いや、分かってるけど、分かってるけどもさ。
 ここは貴女が一番ですよ、だとかああ、まだ揉んでなかったですねとか、
 何か進展がある場面じゃないのかここは。

 俺君がふらっと私の後ろに現れて少し。
 あれだけ建設的な発言をして出て行ったわりに態度はいつもと変わらなくて、
 むしろ前よりも積極的だ。わくわくして楽しみで仕方ないような。
 だから更にへこむ。
 告白だってされてない。やっぱり、勢いみたいなものだったのだろうか。


クルピンスキー「仮にも恋人だよ?私は」


 ちょっと声が上ずった気がした。がんばれ私。相手は俺君だ。


俺「だって揉みたいんですよ」

クルピンスキー「やっぱり私のじゃダメなの?」


 ニパ君ほど大きくはないものの、そこそこある方だと思う。
 しかし俺君がこだわるのだから、ニパ君の胸には底知れない魅力があるのだろう。
 私は念を押すように確認をとる。だがしかし、彼は即答に近い速度で回答をよこした。


俺「はい」

クルピンスキー「…いや、ニパ君の胸は確かに揉みたいけどさ」


 俺君の屈託のない笑顔に色んなものががらがらと崩れた気がした。
 けっこう悲しくなって額に手をやる。俺君が「どうしました?」と声をかけてくる。
 チェリーボーイめ。少し意地悪をしたくなるのは仕方の無いことなのだ。


クルピンスキー「俺君はおっぱいの為に帰って来たんだね」


 両手で持った紅茶のカップに目を落としながら言った。
 自分の考え過ぎで振り回されてる感は否めないが、俺君は鈍感過ぎる気がする。
 情けないなぁと思って溜息をつくと、「ああ、そのことですか」と言ってふっと笑う俺君。
 あまりにもさっくりとした物言いに、意地悪しようと思って顔を上げると俺君がまっすぐに私を見ていた。心臓が止まるかと思った。


俺「愛する人が泣いていたんです。たとえ地獄の底からでも帰って来ますよ」


 あっけらかんと言って、俺君はふにゃりと笑った。
 なんだか胸に凝っていたものがふうわりと溶けていった気がした。
 女って浅はかだ、本当に。


クルピンスキー「…そんなの、おとぎ話でもないよ」

俺「だってこれは現実ですから」

俺「俺は貴女の前にいて、貴女は俺の前にいる…違いますか?」


 全部確信犯だったんじゃないかと疑ってしまう。
 私の心はみんな俺君に見透かされていて、だから反撃もできないのだ。
 そう思うとなんだかさっぱりした気分になって、私も俺君に笑い返した。


クルピンスキー「…じゃ、がんばってみようか」

俺「そうですね。まずはサーシャをどうにかしましょう」

クルピンスキー「そうだねサー……え?」

俺「あ、熊さんのことです」

クルピンスキー「…ごめん、何で俺君の事が好きなのか分からなくなった」


 急に親密な呼び方をした俺君にちょっとくらっときた。
 治りかけてきた所にも彼は容赦なく鈍感という塩をすりこむ。
 本当に遊ばれてるんじゃないだろうかと思って俺君をすこし睨むと、彼は幸せそうに笑って言った。


俺「何でって、俺が貴女を愛しているからですよ」

クルピンスキー「あー……」


 俺君は絶対にロマーニャ人だと、心から思った。



HAPPY ENDだったらこうなるんだろうなぁ……乙女伯爵ハァハァ
誰得裏設定だと俺はブリタニアの高名な伯爵家の坊っちゃん。
連合軍研究機関の資本元でもある家のノブレスオブリージュを守る為に研究団の実験に協力。
民の為にと送られた俺は、蛇達の巣で悪魔と契約を交わし、テスタメントへとその身を堕とすこととなる…
雑談スレでの予測通り、俺は人間にもどります。ちなみに記憶も戻ってます。
きっと楽しくて楽しくてしかたないんだろうなぁ…幸せになれよ





菅野「…まず」

ニッカ「大人の味だなぁ…」

ジョゼ「ゼリーはおいしいですよ?ほら、ニパさんあーん」


 夕飯の後のデザートはコーヒーゼリーであった。
 たくさん食べるジョゼにはバケツサイズで。
 さすがに引くかと思ったら大いに喜んでくれた。


ニッカ「あー…ん、ん~ちょっと苦いかな」


 だがニパは引いている。
 そしてどうやら本当に合わないらしく、必死にブレーツェルを食べていた。
 わりと本気で落ち込む俺にベラが話しかけてくる。


クルピンスキー「まあ俺君、気にしない方がいいよ?ニパ君はまだお子様だからね」

菅野「俺、コーヒーは駄目だけど匂いは好きだぞ」

下原「え…菅野さん今なんて?」

菅野「……うるさいな」


 プイとそっぽを向いてゼリーを食べるナオちゃん。
 ちらちら見える赤い耳は舐めたい位にくぁわいいのに俺は行動に移せない。
 なぜなら下原さんが俺の手を痛いほど握りしめているから。
 そんな彼女に抗議の視線を送ると、


下原「私だって我慢してるんですよ?」


 と小声で言われた。
 耳元で囁かれ、俺は早速我慢できない。
 そして、ナオちゃんに視線を移した瞬間である。


クルピンスキー「ナーオちゃん」

菅野「ひゃあっ!?」


 ベラがナオちゃんに抱きついた。
 もっと正確に言うと抱き、更には真っ赤になった耳を舐めた。
 え、え、何これ。彼女は俺の恋人で愛する人でどうすればいいんだろうどうしよう。


菅野「な、なにすんだよ伯爵!!」

クルピンスキー「え、だって少しだけ見えてたのは舐めて欲しいからだよね?」


 さも当然といった顔で首をかしげ、ナオちゃんの耳に息を吹きかける。
 必死に声を抑えるナオちゃん。
 下原さんはそんなナオちゃんを見せつけられ、今にも飛びだしそうであった。
 だが俺は許さない。さっきの一瞬こちらを見たベラは笑っていた。
 これは高度なやきもち焼いてね作戦……否、俺の反応を弄んでいるだけ。
 ――つまり、ただのお遊びに過ぎないのだ。


下原「離してください俺さん」

俺「駄目です」


 俺はそう言って平静を装うのに必死だった。
 ちょっと負けたくなかった。そしてベラに知ってほしかった。
 俺だって我慢くらいできるということを。
 つまらない意地と言われようが、俺は必死なのだ。


下原「ちょっと菅野さんを助けるだけですから」

俺「だったらこの手を離して下さいよ」

下原「承諾しかねます」


 にっこり笑って下原さんは使い魔を発現させる。
 彼女は本気だ。本気でナオちゃんを狙っている。
 そんな事も露知らず、ナオちゃんはまだベラに捉えられたままだった。


クルピンスキー「ふふ、ナオちゃんは甘いんだね」

菅野「…はな、せ」

クルピンスキー「逃がさないよ」


 こんな日に限ってロスマン先生、熊さん、ラル隊長は執務中である。
 ジョゼはあわあわしながら顔を真っ赤にしていて、
 ニパに至っては被害にあいたくないので完全無視である。
 そんな中一人襲われるナオちゃん。歯を食いしばる様に危うく鼻血が出そうになる。
 それは下原さんも、俺も、愛するベラすらも同じ気持ちであり、
 俺はナオちゃんを助けるために下原さんと戦わなければいけないのだ。
 そしてベラを止めなければ――このまま行けばナオちゃんの貞操が危ない。


俺「下原さん提案があります」


 俺は下原さんの手を離さない。放した瞬間、ナオちゃんは連れ去られてしまうから。


下原「内容によりますね」


 ふっと笑った彼女が可愛いと思ったが俺はその手を離さない。


俺「せーので放して、先にナオちゃんに触れた方がナオちゃんを助けられるって――――」

下原「せーの!」


 下原さんが飛びだす。
 驚異的な脚力に驚いたが俺は負けない。
 ベラは「おっと」と言ってひょいと避ける。
 俺は勝った、と笑いだしそうになるのを抑えて手を伸ばす。
 が、その時であった。


ロスマン「俺ー、今日のおやつは何かしら?」

サーシャ「ラル隊長もう少し書類を整理しておいてください」

ラル「まあ終わったことだ。気にしていては気が滅入ってしまうぞ?」

ロスマン「この隊長…」


 食堂の扉が開き、入って来たのはこの三人である。
 ナオちゃんに飛びかかる所を見られてしまった。
 同じく飛びかかろうとしていた下原さんは素早く俺の手を掴み


下原「さすがに犯罪はいけないと思いますよ」


 と、憐れむような目で俺を諭す。


クルピンスキー「うん、俺君は男の子だもんね。ボクもナオちゃんは可愛いと思うよ」


 そう言って笑いをこらえながら「よい夜を」と手を振って出て行くベラ。
 嵌められた。そう思った時にはすでに遅く、


ロスマン「ちょっと来なさい。早く」

ラル「さて、お話はここがいいかな?それとも外か?」

サーシャ「ハンガーにしましょうか。俺さんはハンガーがお好きなようですから」

俺「いやこれは違うんですよ俺はナオちゃんをですね」

サーシャ「続きはハンガーで聞きます」


 無感動な物言いにゾクゾクする。
 傍観していた二人とナオちゃんに助けを求めようとするがもういない。
 ニパの危機感知能力はとんでもない域にまで達しているようだった。


ラル「何をぼうっとしている。-12°がお前を待ってるぞ」


 ラル隊長が急かしている。
 久方ぶりにいたぶれることが嬉しいのか、ラル隊長はノリノリで俺を引きずる。
 途中ナオちゃんにわりと本気の目で睨まれて危うく泣きだしそうになった。
 でもこんなことには慣れてるから、俺は大丈夫。


隊員(年長組)で生き生きと俺をいたぶるの図。
みんなと一緒にわちゃわちゃしてる日常も楽しいです
それよりも二人きりじゃないと全然いちゃいちゃしませんねこの二人…
そして被害者はナオちゃん。
この後やっぱりナオちゃんは可愛いねって言った伯爵を問答無用で殴る。しかしひらりとかわされてしまった!

最終更新:2013年03月30日 02:36