チリ車の俺 第二話「F.N.G.」後編
―――宿舎天幕
加東「ここが男性用の区画よ。
そこに空きベッドがあるから適当に使ってちょうだい」
シュミット「君かな、新しいウィッチっていうのは?」
加東「あらシュミット大尉、いらしたのね」
俺「はっ、自分がこの度配属になりました俺中尉であります!」
シュミット「あ、俺は技官だからそんな硬くなんなくていいよ」
俺「はぁ、分かりました。えーと・・・?」
シュミット「ミハイル・シュミット。
カールスラント陸軍技術大尉だ、よろしく」
俺「よろしくお願いします、シュミット大尉」
加東「それじゃシュミット大尉、俺中尉のことよろしくね。
―――と、俺中尉。後で1800時から歓迎会をするわ。
その時に他のウィッチ達にも顔を合わせてもらうけど、いいわね?」
俺「分かりました、加東大尉」
―――食堂天幕
マルセイユ「それじゃぁ、よーやくこの基地に若い男が来たことを祝って―――
カンパーイ!!」
「「「カンパーイ!!!」」」
椅子に登ったマルセイユが音頭を取り、歓迎会という名のパーティが始まった。
みなそれぞれワイワイと騒ぎ始めるウィッチ達。
見ただけでも超有名人であるマルセイユ中尉を筆頭に、扶桑海事変のトップエース加東大尉や元ウィッチで陸戦ストライカー開発者として名高いポルシェ少佐もいる。
だが―――
俺「なんか人数随分少なくないですか、大尉?」
確かに統合戦闘飛行隊にしては少ない。せいぜい10人もいないではないか。
加東「あー・・・うん。
まだあなたの所属することになった陸戦隊は来てないわねぇ。
さっさと来るように言ってあったんだけど」
周囲は先ほど圭子が行っていたとおり随分と砕けた感じで和やかだ。
(ガチガチの扶桑本国の部隊とは随分違うなぁ)
ぼんやりとジョッキ片手に辺りを見回していたら急に後ろから声をかけられた。
???「あのう・・・、俺中尉さん?」
俺「ん、はい?」
俺が振り返ると、一人の魔女が視界に飛び込んできた。
彼女はちょっと色素の抜けたお下げ髪に
メガネを掛け、野暮ったいカーキの扶桑陸軍の制服を身につけていた。
襟元の階級章は横線一本に星二つ、軍曹だ。
その少女は自信なさ気に続けた。
???「あ、私北野古子って言います。
俺さんと同じ扶桑陸軍で、階級は軍曹です。
これから俺中尉さんの指揮下に入ることになります。
宜しくお願いしますね」
そう言って彼女はぺこりと頭を下げた。
俺も軽く会釈して返す。
(なんか普通の女の子なんだなぁ、ウィッチって)
俺「よろしく、北野軍曹」
加東「ルコもここに来て間もないわね。
二人とも早く砂漠に慣れるのが先決―――、ってルコ。
もう訓練は終わったの?」
北野「あ、はい。
もうすぐ他の皆さんも来ると思いますよ」
古子が言うが早いが天幕の外から賑やかな声が聞こえてきた。
「―――でさー、そしたらアビゲイルに聞いたのよ『ファラウェイランドのの首都(Capital)はどこ?』って」
「それで?」
「そしたら自信満々に『Fよ!』だってさ、アハハハハ!」
「ハハハハ、なにそれバカじゃないの!」
「えー、だってー!!」
ワイワイガヤガヤ
天幕の入り口をくぐって数人の少女達が入ってきた。
それぞれにコマンドセーターやら野戦シャツを着ているが、皆揃って解れや破けが目立つ。
加東「来たわね。
俺中尉、あれがこれからあなたが一緒に戦うことになる陸戦隊よ。主にリベリオンとブリタニアが主力ね。
パトリシア!ちょっと来て!」
パトリシア「なーにー、ケイ?」
加東「パトリシア、こちら俺中尉。新しく配属になった『男性の』ウィッチよ」
パトリシア「うそぉ!男のウィッチなんて始めて見たわ」
俺「だろうね。一緒の部隊になるみたいだからよろしく」
パトリシア「よろしくね。私はパトリシア、パットンガールズでは最先任よ」
俺「パットンガールズ?」
パトリシア「ええ、パットン将軍直属の陸戦ウィッチ隊よ」
俺「へぇ、じゃリベリオンなんだ・・・
ってことはストライカーはM4?」
パトリシア「そうよ、わがリベリオンのシャーマン歩行脚!」
俺「形式は?」
パトリシア「へ?」
俺「ほら、A2とかE4とか・・・」
パトリシア「なにそれ?」
俺「・・・気にしないでくれ。
とにかくよろしく頼むよ」
パトリシア「ええ、任せて!」
がっちりとリベリアンに握手する二人。
加東(俺君も結構砕けて来たわね)
加東「パトリシア、少佐はどこかしら?」
パトリシア「んー今くるとおもうよ、ケイ」
加東「来たわね、マイルズ」
丁度その時、一人の魔女が出入口に姿を現した。
ブリタニアの戦車兵用黒ベレー帽と防塵ゴーグルの下に、ショートカットの色素の薄いブロンドヘア。
やや垂れ目の蒼眼、ツンと立ち上がった鼻筋。
ブリタニア王立陸軍第7機甲師団第4戦車旅団第4王立戦車連隊C中隊中隊長、兼第32統合戦闘飛行隊陸戦部隊指揮官、マイルズ少佐その人だ。
マイルズ「ええ、待たせたわね。
今日もしっかりとリベリオンのスクールーガール達にしっかり砂漠のイロハを仕込んできたわ」
加東「そりゃ頼もしいわね。
それでね、今日から陸戦隊に配属になった新人を紹介するわ」
そう言って圭子は俺を手で指し示した。
ふと泳いだマイルズの視線が俺を捉えて止まった。
その両目に驚愕の色が浮かぶ。
マイルズ「―――お、俺?」
その声に振り向いた俺も驚いた。
俺「ええっ―――まさか―――」
加東「あら、二人ともどうかしたの?」
俺もマイルズも互いの顔を見つめ合ったまま驚きのあまり言葉を失っていた。
―――閑話休題、そのころ三将軍たちはというと・・・
ロンメル「タスクフォース、と言ったかね?」
パットン「ああ、そうだ。
連合軍総司令部とアイクのご指示だ。
この統合戦闘飛行隊及び各戦力を統合してタスクフォースとして再編する、っつーことらしい」
モンティ「それは結構なことだな。
作戦指揮がやり易くなる」
パットン「作戦指揮ってお前は15対1になるまでどうせ動かないだろうが・・・」
モンティ「ふん、それ以外では無駄な被害を増やすだけだ」
ロンメル「・・・それで、無論指揮官は我輩なのだろうね?」
モンティ「いいや、私に決まっているだろう」
パットン「残念ながら二人とも不正解だ」
ロンメル「まさか君だというのかね?
納得がいかんな」
モンティ「私も珍しく狐の言う事に賛成だ」
パットン「・・・それも違う。
タスクフォースの指揮官はこの儂でもない」
モンティ「じゃあ一体誰なんだ!」
埒のあかぬ答えにいらついたモントゴメリーが詰め寄る。
それにパットンは無言でマニラ封筒を手渡して返した。
モンティ「なんだね、これは?」
パットン「いいから読んでみろ」
ロンメル「我輩も拝見させてもらおう」
モントゴメリーはもどかしげに封筒を開封して、中の資料を机に広げた。
モンティ「コールサイン、『ゴールドイーグル』。
1935~1939年、在ヨーロッパリベリオン陸軍総司令官。
ダイナモ作戦撤退時に、全兵力三万を率いるも全て喪失。
1940年、特殊戦センター・アンド・スクール創設及び初代司令官に着任」
ロンメル「名前は―――」
パットン「―――シェパード、シェパード将軍だ」
―――話は戻って歓迎会会場
マイルズ「ねぇ、俺・・・よね?」
俺「ああ、俺だよ。
まさかこんなところで再会するとは思わなかった」
加東「あら、もしかして二人とも知り合いだったの?」
俺「ええ、セシリアとは子供の頃近くに住んでて―――」
加東「セシリア?」
マイルズ「ストーップ!!
俺、その名前で呼ばないでって言ったでしょ!」
俺「そういやお前はファーストネームが嫌いだったな」
加東「あらー、マイルズのファーストネームなんて知らなかったわ。
しかも二人ともファーストネームで呼び合ってるってことはそういう仲なのかしら?」
マイルズ「た、タダの幼なじみよ!」
俺「そうですよ、加東大尉。
子供の頃親の都合でインドに住んでたんですけどその時に仲良くなっただけですよ」
加東「珍しい事もあるもんねぇ・・・
ええとマイルズ、これから俺中尉は陸戦ウィッチとしてあなたの指揮下に入ることになるからね」
マイルズ「うそぉ、俺がウィッチ?!」
俺「いやぁ、俺もびっくりしたけど扶桑に帰って陸軍に入ったら目覚めちゃってさぁ」
マイルズ「俺、やっぱり陸軍入ったんだ。どーせ戦車目当てでしょ」
俺「ん、まぁ・・・」
加東「まぁ積もる話もあるでしょうし、私はこれで退散するわ。
明日から訓練だからねそれは忘れないようにね、それじゃ」
そういうと圭子はいたずらっぽい笑みを浮かべて足早に遠ざかっていった。
俺「もう5年ぶりかな・・・?」
マイルズ「そうね、あれから私もブリタニアに帰って今じゃここでウィッチなんかやってるわ」
俺「そうか・・・大変だったんだな、セシリア」
マイルズ「だからファーストネームはやめて、って!
ここじゃ私はマイルズ少佐よ。
俺だって中尉なんだからちゃんと上官には敬意を払いなさいよ」
俺「へいへい、変わんないねぇ」
マイルズ「俺だって変わんないわね」
そう言って二人は笑いあった。
マイルズ「でもこうやってまた会えたのはうれしいわ、俺」
・・・・・・・
俺「俺もだよ、マイルズ少佐殿」
マイルズ「ふふっ、明日からよろしくね。俺中尉」
俺「ああ、よろしくな」
そして二人は手を取りあい握手した。
数年ぶりに再会した旧友として。
新しい部下と上官として。
そしてそれ以上の何かになるかもしれない男女として。
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最終更新:2013年03月31日 01:06