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78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 22:53:34.64 ID:OJdZ8UXN0
>>76
サンクス
初だから色々とアレな部分もあるけど頑張るお




 1943年秋 オラーシャ上空

 オストマルク、カールスラント、そしてガリア。
 欧州大陸の多くがネウロイに蹂躙され、このオラーシャもまたネウロイの侵攻を受けていた。

 だが、この頃は後の大侵攻に比べてまだ平和だった。
 だからこそ、訓練に従事する事が出来た。

 そして夕方のオラーシャ上空を、3機のウィッチが飛んでいた。

 先頭を進む隊長機がゆっくりと背後の2機を振り向く。
 ガリアの国章をつけた彼女は一切の武装を持っていない。ストライカーユニットを装備しているにも関わらず、訓練ではあるが武器一つ無い。
 その金髪の美しい少女は既に20―――ウィッチとしてはピークを過ぎ、魔力減退が始まっていた。シールドを張り、飛行する事は出来るが戦闘には耐えられない。だが、飛行技術を受け継ぐ事は出来る。
 そう、故に後ろの2人を訓練に誘った。

 だが、この2人は――――珍しい、男性ウィッチだった。
 一人は扶桑海軍の制服を纏い、もう一人はカールスラント空軍の制服を着ていた。
 どちらもまだ若く、扶桑海軍の方は16か、7。カールスラントの方はそれより更に年下だ。
「俺君とハットリ君は、どうして空を飛ぶことを決めたの?」
「扶桑軍人として、自分が出来る事をする為です」
 ハットリと呼ばれた扶桑軍人はさも当たり前のように返す。
「…それが好きですから」
 だが、カールスラントの彼の方はそう返した。

80 :427な俺:2012/09/30(日) 22:59:08.17 ID:OJdZ8UXN0
「そう。私も、空を飛ぶことが好きなの。でも、空を飛びはじめた理由は、ネウロイが侵攻してきたから」
「皮肉なものですね。自分もそうであります、大佐」
 2人は沈痛な面持ちで喋る。
「そしてそれ以来、戦い続けた。でも、本当は怖いのよ。父や母のように亡くしてしまうのが。或いは妹のように、会えなくなってしまうのが」
「会いに行けばよいではありませんか? 確か、大佐の妹さんって――――」
「行けないのよ」
 俺の言葉に、大佐は首を左右に振る。
「今の私を、妹は望まないわ。それに、私も妹の姿を、望まないでしょう。たとえ、英雄であっても。ガリア解放の為に戦い続けていても」

「あなたは戦うべきでないって、多分お互いに言っちゃうわ」

「やはり、死なせたくないから、ですか」
「もちろんよ…怖いもの。失うのは」
「当然です。でも、だからこそ大佐は、俺達に飛び方を教えてくれました」
「そうです。そして大佐がいてくれたからこそ―――俺は、真の友を、いいえ、魂の兄弟を得ることが出来ました」
「俺もです。ハットリ中尉は、たとえ血がつながってなくとも、俺の義兄です」
 俺はそう答えた後、次の言葉はハットリと目を見合わせてから同時に口を開く。
「「そして俺達の義姉こそが、大佐です」」
「…もう、照れるわよ」
 彼女はそう言って少しだけ速度を上げた。そして、再び言葉をつむぐ。

「私にも、あなた達にも…叶えるべき夢がある。帰りたい故郷がある。……夢を紡ぎ、帰るべき地に帰るその日の為に、私達は、決して戦いを止めてはならない。戦いから逃げてはいけない。それが私達…427夜間戦闘航空団の”ノーブレス・オブリージュ”よ」

「もしも誰かが倒れるのなら―――誰かが必ず、その夢を引き継いで。最後の一人になっても、追い続けて」

「私達の空を、取り戻すために!」


83 :427な俺:2012/09/30(日) 23:06:42.44 ID:OJdZ8UXN0
 連合軍第427夜間戦闘航空団。通称スカルウィザーズ。
 司令官と専属のナイトウィッチ(夜間戦闘なのに1名しかいないが)以外の全員が珍しい男性ウィッチのみで構成された部隊。
 欧州、アフリカ、オラーシャ戦線と各地を転戦した遊撃部隊であり、部隊全員の総撃墜数は1300機にも上る。
 極めて優秀な部隊であったが、1943年冬。オラーシャ戦線にて現在でも未確認の新型ネウロイ数機と交戦。
 部隊員一名を残して壊滅した。

 たった一人、部隊員が生き残った理由は、交戦中に逃走した為と言われている。
 彼は大幅な降格、多額の罰則金、全勲章剥奪、カールスラント皇帝直筆による折檻状等などの様々な罰則の果てに、それから1年半もの間、今も空を飛び続けている。

 カールスラント空軍は彼の事をこう呼ぶ。臆病者の俺、と。

 1945年 ロマーニャ 第501統合戦闘航空団基地

「新たに部隊がこの基地に?」
「ええ」
 基地司令のミーナの言葉に、坂本は思わず怪訝な顔をする。
「近々、ヴェネツィア奪還作戦を実行するようだし…。ただ、指揮権は私に任せてくれるとは言っているけど」
「どうしたのだ?」
 歯切れの悪いミーナの言葉に坂本が更に怪訝な顔をすると、ミーナは書類を突き出す。
 そこに書かれていたパーソナルデータには。
「男?」
 珍しい男性ウィッチが配属される、だけではなかった。
「敵前逃亡の罪状あり、だと…?」
 本来ならば銃殺刑になるところを、それまでの戦果に免じて大幅な降格、多額の罰則金、勲章剥奪、皇帝直筆による折檻状などで済んだのだという。
「これは、どのようなものが送り込まれるか解らんぞ…!」
 坂本は歯噛みする。軍上層部は501を目の上のたんこぶとでも思っているのだろうか。
「これはトゥルーデに相談するべきかしら…」
 ミーナは同じカールスラント空軍出身の大尉の事を思い浮かべる。
 真面目な彼女の事だ、敵前逃亡したものが来ようものなら大変な事になるだろう。
「どうしたものかしら…」


86 :427な俺:2012/09/30(日) 23:13:35.08 ID:OJdZ8UXN0
 新人が来る、と聞いて501はにわかに騒ぎになった。
「サーニャに手を出サナイように注意だナ」
「仮にもカールスラント軍人だ。そのような心配は…いや、無いわけではないな」
 エイラの言葉にバルクホルンは少し頭を抱え、芳佳はそんなバルクホルンの姿を心配したのか「きっといい人ですよ」と声をかける。
「そーそー。案外トゥルーデみたいに硬い人かも知れないよ?」
 ハルトマンの言葉にバルクホルンは「そうだな。貴様の根性を叩きなおせる人物であればいいが…」と言葉を続けてハルトマンがブーイングを出す。
 ミーナと坂本はそんな501の面々を不安げに見ていた。
「…やはりトゥルーデには言うべきではないわ」
「何がですか?」
 ちょうど食堂に入ろうとしていたリーネが2人に気付き、そう声をかける。
「え、ええ。新しい人の事で、ちょっと、ね…」

 直後だった。

 ネウロイの襲撃を告げる、警報が鳴り響いた。

 迎撃に出たのは、ハルトマンとバルクホルンのエースコンビと、ペリーヌ・芳佳・リーネという5機。
 ネウロイの数自体は小型が20ほど、と大した数ではないがまだ距離が離れており、目視できるほどではない。
「あら…?」
 ふとペリーヌが上を見上げた時、輸送機から小さな陰が出る姿だった。
『あーあー。当空域にネウロイが確認されたので迎撃に出た。501か?』
『ああ。こちらは連合軍第501統合戦闘航空団。ゲルトルート・バルクホルン大尉だ。そちらの所属と階級を…』
『了解した。本機はただいまよりそちらの援護に入る。…自分は本日付でそちらの基地に配属になった、連合軍第427夜間戦闘航空団の俺少尉です! よろしく、バルクホルン大尉!』
 インカムから響く呑気な声に対して、バルクホルンは思わず「なっ!?」と声をあげる。
「俺って…あの、427の?」
 ハルトマンが珍しく驚いたように口を開く。
「ああ。427の生き残り、”臆病者の俺”だ」

87 :427な俺:2012/09/30(日) 23:20:57.52 ID:OJdZ8UXN0
 バルクホルンが苦々しげに呟いた直後、前方にネウロイの姿が確認できた。
『一番槍、もらった!』
 再びインカムから声が漏れた後、上空より出てきた俺が猛スピードでネウロイへ向かう。
「おいこら! 援護を…」
 直後、バルクホルンの視界に何か光るものが見えた。
「え?」

 バルクホルンは目を疑った。
 それは非常に珍妙なスタイルをしていた。
 手にしているのはMG42。だが、背中には一振りの扶桑刀。
 そして腰のホルスターについていたのは、8本ものショートソード。その全てが、一斉に、彼の腰からまるで意志を持つように離れて、空中をストライカーと同じ速度で航行する。

 そしてショートソードが、一気に加速してネウロイを取り囲むように動く。
 斬撃。刺突。
 8本のショートソードが幾度と無く小型ネウロイ達を襲い、落としていく。
 そう、たった8本のショートソードが意志を持つように動き回り、逃げるネウロイの道を塞ぐように貫き、或いは斬撃で、その装甲を切り裂いていく。
 そしてコアを一突きに。

 バルクホルン達が追いついた時―――既に戦闘は終わっていた。
『ネウロイの消滅を確認したぞ』
「はい。坂本さん、あの…」
『ん? なんだ宮藤?』
「その…新しい人が…」
「少佐。そのー、今度来る新人が全部落としたようだ」
『そうか。まぁ。帰投してくれ』
「だそうだ。皆、戻るぞ。ああ、誰か俺を先導してくれ」
「………」
「はい、じゃあ俺さん、ついてきてください」
「了解!」



92 :427な俺:2012/09/30(日) 23:27:31.09 ID:OJdZ8UXN0
>>89・>>90
ちょwマジかwww
まぁ、GNファング的なものって使われるネタだとは思ってたがやっぱ別作者さんに人いたか…

「あの…今、剣がすごく動き回ってましたよね?」
「ん? ああ、それね。俺の固有魔法さ。1キロぐらいの範囲内にあるものを、自由に動かせるんだ」
「便利ですねぇ」
「さっきみたいに複数のネウロイを同時攻撃も出来るし、大型を一人で取り囲むことも出来る。まぁ、その分魔力を食っちゃうけど」
 俺はそう答えると、ふと悪戯心がわいてきた。
「まぁ、剣を動かす以外にも、こんなことも出来る」
「わわっ!?」
 501隊員のコントロールをひょいと奪うと、ちょっと動かしてみる。
「あ、あれ!? 動かない!? あの!?」
 やっぱりあの隊員は少しパニくってるけど、その様子もなんか面白い。ふむ。
「宮藤に何をする気だっ!」
 直後、後ろから謎の衝撃、同時にコントロールが解除される。
「がふぅっ!?」

 501の滑走路へ向かうと、俺が乗っていた輸送機が既に着陸しており、中から荷物が運ばれているようだった。
「無事に着陸できたかー。よきかな、よきかな」
「笑ってないでさっさと着陸しろ」
 バルクホルン大尉に急かされ、俺は慌てて着陸態勢に入る。
「よっと!」
「あ、おい! そんな速度で着陸したら危な―――――」
「ええっ!? なんていう速度ですの!?」
 バルクホルン大尉と…もう一つ、素敵な声をバックに空中で一回転しつつ急減速。
 少ない距離で、あっという間に着陸。うむ、バッチリ決まった。
 俺が滑走路へ降り立ち、いざハンガーへと向かおうとした時。
「何を考えているんだ貴様ーッ!!!」



95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/30(日) 23:31:23.96 ID:swxUXb2T0
きにするな、能力かぶりなどどーにでもなる
しえん


98 :427な俺:2012/09/30(日) 23:33:46.69 ID:OJdZ8UXN0
支援サンクスだお


 そんな絶叫と共にバルクホルン大尉が下りてくるなり、猛烈な拳骨。
「ぐはっ!? いったぁ…」
「まったく! あんな危険な機動で着陸するとは何を考えている! あんな回転すれば下手すれば失速墜落して大怪我間違いなしだぞ!?」
 そんな事を怒鳴りつつバルクホルン大尉の2発目。うえぇ。
「まったく、これはミーナに報告せねば…」
「見てたわよ。はぁ…それにしても…えーと。第427夜間戦闘航空団所属、俺少尉ね? 第501統合戦闘航空団司令のミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐よ。基地へようこそ。それと」
 バルクホルン大尉と同じくカールスラント空軍の徽章をつけた赤毛の美少女が近づきつつ、挨拶。
「はい、本日付で着任しました、第427夜間戦闘航空団所属、俺少尉です! え?」
 な、なんだろうか。
 ミーナ中佐。いつかブロマイドで見た時より、大層美しくいらっしゃる…。
「あんな機動で着陸しては新米たちの教育によろしくないわよね?」
 あ、あれ? なんだろうか、すごい音がするような音がするような!?

「みぎゃああああああああああああ!!!!!!!」

 教訓、そのいち。危険機動は教育に良くないのでやめましょう。

 ミーナ中佐のお仕置きを喰らったものの、食堂に移動して部隊の皆さんに挨拶することになった。
 一応、格納庫で会った人やネウロイ迎撃時に共闘した人の顔は見ているのだが…。
 諸事情により、427夜間戦闘航空団は現在俺一人のワンマンアーミーである。
 しかし、今までもそうだが自分以外の部隊もいる基地に着任した場合、427だけに下された命令以外はそこの指揮官の指揮下に入る。
 おまけにウィッチといえば普通は女の子。それも年頃の女の子である。
 仲良くしといて損は無い…のだけれど今までは過去の経歴故に×××されたりズキュゥゥゥゥンされたり散々だった。
「本日付で着任しました、第427夜間戦闘航空団の俺少尉です! 使い魔はオオカミ、出身はカールスラント。趣味は昼寝! 皆さん、よろしく!」
 さて、約一名既に明らかにすごい目で俺を見てます。解ります、バルクホルン大尉です。
 よし、見なかったことにしよう!



105 :427な俺:2012/09/30(日) 23:39:42.82 ID:OJdZ8UXN0
「扶桑海軍所属。501統合戦闘航空団、戦闘隊長、坂本美緒少佐だ。よろしく頼む」
 それにしても扶桑人は男も女も髪を後ろで一本にまとめる人が多いが、流行ってるのだろうか?
「リベリオン合衆国空軍の、シャーロット・E・イェーガー大尉だよ。よろしく」
 リベリオン人は体格が良い奴が多い。427のリベリオン人もそんな奴らだった。
 だけどイェーガー大尉、別格だぜ! このナイスバディに一度でいいから顔を埋めたい!
「あげないよ、うじゅー」
「こら、ルッキーニ」
 随分小さい子だ。だけど、元気で可愛い…なんだろうな、皆の妹分を思い出す子だ。
「フランチェスカ・ルッキーニだよ! 階級は少尉!」
 なるほど、ロマーニャの子かぁ…ああ、駄目だ。カルロも同じロマーニャだったんだ。
 いかんいかん、感傷に浸りすぎてはいけない。
「リネット・ビショップ曹長です。よろしくお願いします」
「よろしく」
 うーむ、この子もすんばらしいお胸をお持ちだ。しかしここはじっと我慢の子。カールスラント軍人はうろたえない。
「宮藤芳佳です、よろしくお願いします」
 この子も扶桑人か…でも髪は短いんだな。ついでに胸も慎ましい。エーリカ…よりもむなしいな、うん。
 だが人は見かけによらない。外見だけで判断するなというのはウチの司令官の弁だ。何せこの子の瞳は俺を歓迎する、どんな人か楽しみというオーラしか伝わってこない。
 こ、この子は聖人君子か!?
 続けてそこから少しスライドして…427がまだ仲間達といた頃、一時期話題の人となったスオムスのトップエースと、彼女の横で寝ぼけ眼の子に移る。
「ワタシハ…」
「エイラ・イルマタル・ユーティライネン少尉ですね? スオムスのトップエースにお会いできて光栄です」
「中尉ダ! オマエよりも上官だゾ!」
「うえぇっ!? 失礼しました!?」
「大声ダスナ、サーニャが起キルだろ」
 いや、まぁ俺一年半前までは大尉だったんですけどね。
 続いてエイラ中尉の横にいるのはサーニャ・V・リトヴャク中尉。ナイトウィッチなので眠そう。挨拶はまた今度にしてあげよう。寝顔可愛い。
「サーニャをソンナ目でミンナ~!」



108 :427な俺:2012/09/30(日) 23:47:03.87 ID:OJdZ8UXN0
 そして、俺の意識から離れない、二人の紹介へと移る。
「ペリーヌ・クロステルマン中尉ですわ! ま、まぁよろしくお願いしますわね」
「…よろしくお願いします、中尉」
 やはり。
 俺の記憶の中のあの人の面影を感じる。
「私の顔に何か付いてまして?」
「い、いいえ」
 あまり意識しすぎては失礼かも知れない。でも、俺が守れなかった、守りきることが出来なかったあの人の事を思うと。
 その事を知れば、きっとクロステルマン中尉は俺の事を責めるだろう。
 俺は貴女が焦がれているであろう人の事を知っていました。そして、守りきれませんでしただなんて。
 とりあえず、クロステルマン中尉から視線を逸らす。最後の一人だ。
「……」
「どうしたの、フラウ?」
 ミーナ中佐がそう声をかけた時、ようやくハルトマンは口を開いた。
「俺、だよね?」
 その問いかけは、昔…遊んでたときと変わらない。
 ああ、やっぱり昔のままのエーリカだ。
「…もちろんだ。エーリカの父さんの、お姉さんの子供だ。
 エーリカとウルスラと同い年で、調子ぶっこいて木から飛び降りた時に足をくじいたエーリカをおんぶしたこともある。
 ウルスラがいじめっ子にいじめられた時に家から斧を持ち出して俺と二人のお母さんの雷を落とされた俺だ」
 そう、紛れも無く。エーリカ・ウルスラの双子の姉妹と同い年の、従兄にあたる俺だ。
「…へ?」
「フラウと、俺が…それって…従兄?」
 バルクホルン大尉とミーナ中佐は俺とエーリカを交互に指差しながら呟く。
 すると、ふと坂本少佐が声をあげた。
「あ。確かに。金髪の色もそうだが…顔立ちもわりと似てるな。確かに、俺はハルトマンの親戚か」
「ま、待て待て待て待て待て! ハルトマン、私はこんな奴がいるなんて聞いてないぞ!?」
「そりゃ言わなかったし…」


111 :427な俺:2012/09/30(日) 23:53:33.22 ID:OJdZ8UXN0
 エーリカは目を離しつつ口を噤む。あれ、もしかして気を使ってもらってる?
「敵前逃亡するような臆病者など!」
 大尉の言葉に、その場にいた、ミーナ中佐と坂本少佐、そしてエーリカ以外の全員がこちらに注目する。
 エーリカだけは、俺を見ていない。
 あちゃー…。
 とりあえず軽く頭を抑えてから、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「……えー、自分一人で427というワンマンアーミーなのは、他の仲間達を置いて敵前逃亡したという罪状にあるからであります」
「…否定はしないのか?」
「はい。自分以外の全員が―――整備員や基地職員という非戦闘員も含む全員ですが、戦死したのは自分の責任にあります」
 坂本少佐の問いに、俺は答える。
「それまでの戦果の抹消、全ての勲章の剥奪、多額の罰則金、大尉から軍曹までの降格、それと皇帝陛下直筆の折檻状…とまぁ、これだけの罰則を受けて以来、427として活動しています」
 ここまで言った時、エーリカが既に食堂から姿を消している事に気付いた。
 やっぱり、聞きたくなかったんだろうな。俺が敵前逃亡しただなんて。
 気まずい沈黙が流れた。
「…今、軍曹まで降格と言ったが、今少尉といわなかったか?」
 沈黙を破るように、イェーガー大尉が口を開いた。
「それ以降、一人で戦って撃墜数をそれなりに出したからその功績で」
「へぇ、どのぐらい?」
「250機。戦果剥奪前も含めると…400ぐらいかな?」
「よ、400機だと!? ハルトマン、お前より…ハルトマン?」
 バルクホルン大尉が椅子を蹴飛ばして立ち上がった時、そこに既にハルトマンがいない事に彼女は気付いたらしい。
 ただ、敵前逃亡罪という言葉は、ここの皆にあまり良い感情を示してないようだ。
 …エイラ中尉と、クロステルマン中尉の二人は特に。イェーガー大尉は気にしてなさそうなのは幸いだ。
 でもなぁ…エーリカも、気にしてるよな。

 やっぱり、気まずい。とても。
 慣れてる。慣れてるはずだ。何度と無く、こんな目で見られた。こんな空気もあった。
 なのに…なんでだろか。エーリカの前だと、そういうのは嫌だと思う俺がいた。
最終更新:2013年04月02日 18:54