~輸送機・機内~
地中海上空、すでに日が落ちてから結構な時間が経ってしまった。
もうしばらく飛べば基地に着くだろう。
大変な一日だったと、思いを巡らす。
朝からの戦闘と新任者の合流。
報告書と抗議文書の提出。
上官でもある知人たちとの会話。
そして、書類の受け取り・・・・・・
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
~扶桑代表執務室~
ミーナ「失礼いたします。」
扶桑代表「待たせてすまない、命令書、指示書ともに仕上げてある、確認してくれ給え。
あと、副責任者の者への封書がある、到着したら渡してくれ。
君、頼む。」
秘書官「はい。
・・・・・・ミーナ中佐、此方が書類になります。」
秘書官から書類用の封筒を受け取り内容を確認する。
確かに此方の要求に沿った内容だ。
ミーナ「・・・・・・確かに。
不躾な要求をお聴き下さり、真に感謝します。」
扶桑代表「なに、あそこまで問題点を突きつけられれば聴かざるを得んよ。
今回の試験自体は運用態勢を作るためのものだ。
ウィッチの命令系統自体は然程重要ではないのでな。
現地での訓練と実戦さえこなせれば問題は無いのだよ。
妙な勘違いをしている輩はいるようだがね。
まぁ、野郎大尉の件に関しては本国に報告の後、処分が下るだろう。
もし試験班員の誰かが問題行動を起こした場合は、基地の規則に則った処分で
構わない。
流石に生きてはいて貰わなければならんがね。」
もしかして野郎大尉は扶桑の軍部でも相当な鼻摘み物ではないのだろうか。
扶桑の軍部も奇麗事では済まされない部分が多々有るのかもしれない。
ミーナ「左様でございますか。
お気使い、真に痛み入ります。
これで僕少尉も飛びやすくなるでしょう。」
扶桑代表が少し表情を曇らせた。
ほんの一瞬の事ではあったが。
扶桑代表「僕少尉か・・・・・・。
彼は少々扱いにくいかもしれんが、魔力の量と戦闘能力に関しては折り紙付だ。
上手く扱えれば心強い戦力になってくれるだろう。
君たちの活躍に期待しているよ・・・・・・おっと、そう言えば急いでいるのだったな、
すまない。
歳を喰うと話しが長くなっていかんなぁ。」
やはり、彼にも何かと有るのだろう。
まさか扶桑代表までもが僕少尉を扱いにくいと言うとは思わなかった。
恐らく、美緒の言う「扱いづらい」とは違う意味合いだとは思うけど。
だが、これ以上は恐らく聴く事は適わないだろう。
ならば長居は無用だ。
ミーナ「いえ・・・・・・、御期待に添えるよう、尽力をつくします。」
早々に基地へ帰るべく、一礼し退室した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
~輸送機・機内~
ミーナ「随分と呆気なかったわね。」
今回の要求と交渉はもっと難航すると思っていた。
何しろ試験の中核を成すと言っても過言ではないテスト・ウィッチを完全に此方の管理下
に置くのだ。
ストライカーの使い手であるウィッチが自らの手から離れるのは大きな抵抗が在るだろうと
考えていた。
だが、実際は実にスムーズに事が運んでしまった。
ミーナ「此処まで上手く行くと返って気持ち悪いわ。
まるで誰かの手のひらの上で踊らされてる見たい・・・・・・。」
もしかしたら疲れのせいかとも思い頭を振る。
なにしろ情報が圧倒的に足りていないのだ。
やはり多少でも調べてくるべきだったかと、少し悔やんだ。
ミーナ「だからって、そんなことしてたら帰りが明日になっちゃうし・・・・・・。
こう言う所は上手く行かないわよねぇ、ホントに。」
本当に上手くはいかない物だ、しかしそんな事で嘆いても仕方が無い。
何とか帳尻を合わせて望む形に収めるしかないのだ。
自らの持てる手段を総て使いきってでも。
それがこの数年で私が学んだ事、家族とも言えるストライク・ウィッチーズの皆の為に
私が出来る事なのだから。
そう言えばと、新たに家族に加わった少年を思い浮かべる。
小柄な体格に女の子に見間違えそうな容姿、性格も素直そうだ。
ウチの子達ならまず放ってはおかないだろう、特に約一名。
ただ、極めて悲惨な過去を送ってきた事は診断報告書からも見て取れる。
もしかしたら扶桑代表の言う「扱いにくい」はその辺りの事を指しているのかも知れない。
だとしたらかなり厄介だ、余計な気を回しすぎて大変な事になりかねない。
特に約一名、盛大にやらかしてくれそうな性癖を持っている。
彼女の妹が意識を取り戻してから、さらにソッチのほうへ傾いている様だし。
ミーナ「頼むわよ・・・・・・、先走って妙な事しでかさないでね・・・・・・。」
思わず口に出た、美緒もフラウもいるのだからめったな事は無いとは思うけど。
だが万が一と言う事もある、もしかしたらもう既に・・・・・・。
ミーナ「もっと急いだ方がいいかも知れないわね。」
飛行速度を上げてもらうべく、操縦席に向かった。
程なくして、完全に杞憂だったと理解に至る訳だが。
~基地内・ラウンジ~
今日の結果を伝えるべく皆を集合してもらう。
続々と集まる仲間達からの「お帰りなさい」の一言で、自分達が家族なのだと実感する。
エーリカ「それで、どうだったの?
随分早く帰って来れた見たいだけど。」
フラウが切り出した、書類の入った封筒を見せながら告げる。
ミーナ「僕少尉に関する指揮、監督権の奪取、成功よ。
さらに試験のスタッフが問題行動を起こした場合、この基地の規定に沿って処分
出来るよう確約もとれたわ。」
皆の顔が一様に綻ぶ、どうやら此方の受け入れ体勢は万全の様だ。
出来るだけ早く、あの子もこの中に加わってくれればと思う。
ミーナ「宮藤さん、僕少尉の容態はどう?
治療は上手くいったのかしら。」
宮藤「あ、はい、負傷はほぼ完治してます。
既に抜糸も修了して、検査の結果も良好との事です。
ただ、体力の消耗が激しかったせいか麻酔が切れても未だに眠ったままです。
一応、栄養点滴を入れて様子を視るそうですけど。」
宮藤さんも頑張ってくれたのだろう、少々疲れが見て取れるが彼女も嬉しそうだ。
未だに眠ったまま、と言うことは何かしらの問題も起こってはいなかったのだろう。
先程まで妙な想像に不安を掻き立てられていた自分が一寸恥ずかしかったのだが。
ミーナ「お疲れ様、頑張ってくれたわね。
これでまずは一段落かしら。
あとは明日の到着時にこの書類を叩きつけるだけね。」
坂本「その時は私も同席させてもらうぞ。
あの男、一度徹底的に叩きのめさねばならんからな・・・・・・。」
美緒も怒り心頭なのだろうか、凄まじい殺気を振りまいている。
皆が引いてるわよ?
あら、宮藤さんは平気みたいね。
ミーナ「美緒、とりあえず落ち着いて。
止めはしないけどやりすぎは駄目よ?」
坂本「なに、殺すまではしない。
だが、暫く足腰が立たなくなるぐらいはしておかねばな。
到着早々余計な真似でもされては敵わん。」
宮藤「それに一回死んだぐらいで許される様な代物でも無いですし。
しっかり責任は取ってもらわないといけませんしねぇ・・・・・・。」
二人して「フ・フ・フ・フ・・・・・・」と暗い笑みを浮べている。
やはり祖国の顔に泥を塗るような真似をした輩は許せないのか。
普段は温厚な宮藤さんまでこうなるとはねぇ。
ルッキーニ「よ、よしかがこわい~。」
シャーロット「ふ、二人とも先ずは落ち着こう、な?」
まともに言葉を発したのはこの二人ぐらいで他の皆は最早声も出ないぐらいに脅えている。
宮藤「やだなー、落ち着いてますよ~?
最も、皆もあんな話し聴いたら冷静じゃいられませんって。」
坂本「まったくだな。
私もあんな過去を知らされて冷静でいられるほど人間が出来てはおらん。」
あれ?
僕少尉はまだ眠っているはずではなかっただろうか。
あの子の過去を知っている人物なんてこの基地には居ないはずだ。
ミーナ「二人とも、それは誰から聞いたの?
それに一体何があったのかしら?」
坂本「あぁ、あの子の抜糸が終わった後に使い魔が出てきてな。
色々と聞かせてもらったんだ。
まさかあんな大物が出てくるとは思わなかったがな。」
宮藤「ですよねぇ、色々と凄いお方でした・・・えへへ~。」
一体何が出てきたのだろうか。
宮藤さん、顔が蕩けきってるけどなにかしたの?
バルクホルン「では、聴かせて貰おうじゃないか。
その使い魔の事も、あの子に何があったのかもな。」
坂本「そうだな、皆が揃っているから丁度いいだろう。」
そう言って、美緒は語り始める。
あの子の使い魔、大妖怪、九尾の狐・玉藻の事。
そして出会いと契約、更に他の妖怪と共に色々あの子に教えていた事。
少々言い淀みながらではあったが。
添い寝に注意ってどう言うことかしらね?
わずか七歳の幼さで戦場に送られ、そして戦い抜いて来た事。
ここで思わず話しをさえぎってしまった。
ミーナ「ねぇ美緒、本当にあの子は第511統合戦闘航空団に配属されていたの?」
坂本「ああ、確かにそう言っていた、配属されて間もない頃に飛べるのはあの子だけに
なってしまった様だがな、どうした?」
偶然というのも恐ろしい物だ。
まさか今日、知人達から聞いた話しと繋がってしまうとは思わなかった。
何と言う事だろうか、それではあの子は彼女達の言うナインテイルと呼ばれたウィッチと
同一人物と言う事になってしまう。
サーニャ「511・・・・・・まさかあの子なの・・・・・・?」
エイラ「サーニャ、何かアッタのか?」
サーニャ「いえ・・・・・・、まずは少佐の話しを聞きましょう。」
そう言えばサーニャさんの祖国の戦線の話しだ。
私達より事情には明るいかもしれない。
後で聞いてみよう。
ミーナ「御免なさい、続けてくれる?」
坂本「あぁ、此処から先はそれなりに覚悟が要るから心しておけよ?」
そう前置きして、話しをつづけた。
戦にて消耗しつくし、あの子は魔力を失い、玉藻は休眠してしまった事。
帰国し、偶然魔力を復活させ、あの男の居た島の基地に送られてしまった事。
逆らうことが出来なくなったあの子がひたすら耐え、脅え続けてきた事。
坂本「・・・・・・こんな所か。」
語り終えた美緒と共に皆を見渡した。
皆一様に殺気立っている、そう言う私も拳銃の手入れをしたくて仕方がない。
今なら即座に鉛弾を叩きこむのを躊躇しないだろう。
それは恐らく皆も同じだ。
だが誰かの手を汚すのは得策ではないのだ。
ミーナ「そんな事になっていたのね。
でも怒りに任せて手を出しちゃだめよ?
あんなの、の為にあなた達の経歴に傷を入れる必要性なんで無わ。」
坂本「そうだな・・・・・・。
それにどの道、軍法会議は免れないだろう。
銃殺刑も充分に在り得るしな。」
美緒の言葉で一応の冷静さは取り戻してくれたようね。
よかった、無駄な問題事は避けておくに限るわ。
サーニャ「・・・・・・フリーガンハマーなら一発で行方不明扱いに出来ますが?」
一寸訂正、意外にもおとなしい部類に入る彼女が怒りの矛を納めてはいなかった。
この子にしては珍しい、と言うか
初めてではないだろうか。
エイラ「サ、サーニャァ?!」
ペリーヌ「ど、どうなさいましたの・・・・・・?」
ルッキーニ「こんどはサーニャがこわい~。」
おとなしい子ほど怒りが爆発すると手がつけられないって言うけどホントね。
一応理由ぐらいは聞いておこうかしら。
ミーナ「サーニャさん、気持ちは解るけど落ち着いて。
どうしてそこまでしたいのかしら?」
サーニャ「・・・・・・祖国の一番の恩人の不安ぐらいは取り除いてあげたい。
それだけです。」
なるほど、サーニャさんらしい理由ね。
でも祖国の恩人とまで言うとは、あの子はどれほどの事をしてきたのだろうか。
リネット「サーニャちゃん、僕少尉ってそんなに凄い子なの?」
サーニャ「私も回廊の事は気になってたから前に調べて見た事があったのだけど。
・・・42年四月に回廊でネウロイの大規模な攻撃があったの。
敵の総数は不明、少なくとも百や二百じゃ利かない位の数だったらしいわ。
その時に回廊の防衛に着いていた部隊は会敵時に第511を残して壊滅したそうよ。
もし、回廊を抜けられていたらオラーシャ全土をネウロイに制圧されていたかも
知れないと言われているの、政府は否定してたけど。
その攻撃を防ぎきった後、回廊の後方に新しく防衛線が作られたのだけど、結局
同年十月に回廊の一番近くにあったネウロイの巣を目標にしたブリザード作戦
の発動まで一度も防衛線にネウロイを到達させなかったそうよ。
ただ第511の詳細は一切不明で、人数もどんな手段を用いたかも解らなかった。
だから皆は、回廊を閉ざす亡霊って呼んでいたわ。
坂本少佐の話しから考えると、これをやっていたのはナインテイル一人だった
と言う事になってしまうの、信じられないけど。」
エーリカ「ナインテイルって何?」
サーニャ「ナインテイルはあの子のコールサインです。
一度だけ夜間哨戒中だったナインテイルと交信した事があって、その時はコール
サインと所属しか聞けなかったんです。
直ぐに戦闘に突入したみたいでしたから。」
シャーロット「なるほどな、そう言えば・・・・・・。
回廊のブリザード作戦っていうと謎だらけで成功か失敗か解らないって
言われてた作戦だよな。
撤退した割には損害も少なかったって話しだけど。
作戦に参加してた奴は揃って口を閉ざしてるし。」
ミーナ「その事なんだけど。
今日、本部でガランド少将とルーデル大佐に会ってね。
あの子の事を話したらブリザード作戦の事を聞かせてもらえたのよ・・・・・・。」
そして、爆撃王から伝えられたナインテイルの事を皆に聞かせる。
皆の顔色が驚愕の色に染められていく。
それも仕方ない事だろう。
何せ、カールスラント最高位の勲章受章者から最強とまで言わせたのだから。
バルクホルン「そんなの出鱈目すぎるぞ。
第一、そんな状況で生き残れるやつなんて居るはずが・・・・・・。」
エーリカ「そんなの居たら私ら形無しじゃん、やっぱ別人じゃないの?」
宮藤「私はむしろ、そんな理由で半年も一人で戦わせていた事の方が驚きです。」
坂本「そうだな、あの子ならそう易々と死ぬ事は無いだろうな。」
意外な事に、この二人は別の所で驚いていたようね。
一体、扶桑のウィッチはどこまで無茶が出来るのだろうか。
ペリーヌ「あの、少佐?・・・・・・宮藤さんも何故、その様に思われもますの・・・・・・?」
坂本・宮藤「「使い魔が玉藻(さん)だから」」
エイラ「ソ・・・そんなにスゴイのか?」
宮藤「まぁ、扶桑で『妖弧と言えば?』って聴いたら九尾の狐って答えが九割九分を
占めるぐらいにはすごい方ですし。」
リネット「な、何でそんなに有名なんですか?」
坂本「ああ、今から千年以上前、扶桑海の対岸に唐と言う国があってな。
当時の扶桑の朝廷とも交流があったらしいんだが、玉藻らしき妖弧に手を出して
怒りをかい、陸地ごと海に沈められたそうだ。
そんな古文書がいくつか見つかっていてな。
扶桑海の大陸側が妙にえぐれているのはそのせいだとか。
まぁ、今はかなり弱体化している様だからそんなことも出来んだろうがな。」
今度は此方が驚かされる事となった。
それは扱いにくいなんて言うレベルじゃないでしょう?
って言うかそれは反則だわ。
宮藤「それに、今は僕君の母親代わりみたいな感じで、恐いって言う感じは無いですし。
けっこうお話し好きみたいですから、他にも色々聞けるかもしれませんね。」
ミーナ「そ、そうなの?
それでもやっぱり不安は残るのだけれど。」
坂本「そう警戒することも無いだろう。
一応使い魔と言う立場ははずさんだろうし。
宮藤が飛びついても大丈夫だったからな。」
バルクホルン「み、宮藤、そんなことしたのか?」
宮藤「あ~、はい。
あまりにも凄いものをお持ちの方だったので思わず・・・・・・えへへ~。」
また顔が蕩けてるわね。
解ってても飛びつく辺りが宮藤さんらしいと言うか何と言うか・・・・・・。
トゥルーデ、そんな事で落ち込まないで。
ルッキーニ「ねぇねぇ芳佳ぁ、どれくらいすごかったの?」
宮藤「少なくとも
シャーリーさん以上、張りも形もよかったよ。
でも、僕君専用みたいだからいきなりはやめておいたほうがいいかもね。」
ルッキーニ「そーなの~?
でもいいもんっ、アタシはシャーリーのが一番だもんっ。」
シャーロット「ルッキーニ~!」 ルッキーニ「うみゃぁ~~~。」
相変わらずあの二人は仲がいいわね。
窒息させちゃだめよ?
リネット「芳佳ちゃん・・・・・・」
ペリーヌ「大きさなんて飾りみたいな物ですわ・・・・・・クッ!」
サーニャ「・・・・・・ない。」
エイラ「サ、サーニャはこれからだと思うゾ?
ナンならてつだって・・・・・・」
コッチはこっちで複雑な様ね。
ミーナ「明日の事が瑣末事に思えるぐらい不安だわ・・・・・・。」
エーリカ「まー、なるようになるでしょ。
あんまり考えすぎても仕方ないとおもうよ?」
坂本「そうだぞミーナ、既に此方に受け入れてしまっている以上、成り行きを見守るのも
一つの手ではあるわけだ。
何とか出来るだろう、あの子の味方がいないわけでも無いようだしな。」
~地中海海上・日照丸船内~
時はやや遡って日没後。
およそ広いとは言えない船室に鈍い打撃音と男性のうめき声が響く。
野郎「ぐぅ・・・、貴様・・・・・・大尉である私にこの様な真似をして只で済む―――。」
野郎が言い終えるのを待たず、さらに左のこめかみ、右脇腹、みぞおち、顎に連続で
拳が叩きこまれ、野郎は床に崩れ落ち・・・・・・る事は許されず髪の毛を鷲づかみされ
吊り上げられる。
? 「只で・・・?
済むと思っとるよ?
人の部屋の扉につっかえ棒なんぞかましおって、この非常時に・・・・・・。
ちゅーかワレ、大尉は大尉でも大尉扱いの技術仕官やろ。
戦闘の指揮権も持っとらん輩がナニでしゃばっとんじゃゴルァッ!!
挙句に退避指示出されとんのにウィッチを戻らせんと自分だけ逃げるとか
オノレ何考えとんねんこのボケェッ!!」
怒声と共に右膝を眉間に叩きこまれ、野郎は床に這い蹲った。
だが、意識は手放しておらず、何とかこの作業着に身を包む巨漢から離れようと後ずさる。
? 「挙句の果てにや。
散々あの坊主を痛めつけてくれた上に禄に調整もしとらん量産型の乙型履かした
あげく船にシールド貼ったまんまでネウロイ倒せとかどんだけ出鱈目ぬかし倒す
つもりじゃこの戯けがっ!!」
さらに前蹴りが突き刺さり野郎が壁に張りつけにされる、数瞬の間を置いて脚が引かれ、
今度は完全に床に崩れ落ちた。
野郎「ゴホッ・・・・・・使えん・・・ウィッチ一人が・・・・・・消えた所で・・・何の問題が・・・
向こうに着けば・・・幾等でも居るだろうに、何故あれに拘る・・・・・・。」
今度は股間を蹴り上げられられた、最早声を上げる事も適わずのた打ち回る。
それに構わず、さらに脇腹に蹴りを入れた。
? 「オノレがウィッチをどう捉えとるかは兎も角として。
千年に一人級の逸材つかまえて使えんとか、どんだけ節穴やねんワレェ。
あんなアホな指示しとらんかったら、あの状況でも余裕で瞬殺出来とるわ。
それに向こうの面子、早々借りれる訳あれへんやろドアホゥ。
そんなに俺の愛弟子消したいか。
それとも誰ぞに消せとでもいわれたか?お?」
だが返事が無い。
ひっくり返してみると完全に白目をむいていた。
―――俺~、もう面倒だから止め刺しちゃいな?
その方があの子も安心するって。―――
二人しかいないはずの船室にもう一人の声が響く。
その声色は年端もいかぬ少女の物だ。
俺「童(わらし)か・・・・・・?
まったくの同意やけどな、そうもいかんのよ。
人の世っちゅうモンは何かとややこしいでな。」
俺と呼ばれた男の背中から何かが飛び出し、床に降り立った。
童「よっと。
そう言うモンかねぇ。
まっ、こんだけやっとけば当分大人しくしてるだろ。
そんな事より~。」
ガサゴソと部屋の中の荷物やら棚やらを物色していく童と呼ばれた少女。
いや、少女と言うには語弊があるかもしれない。
見た目は歳の頃十二、三といったところだが、額から髪を掻き分けて二本の角が生えている。
いわゆる鬼と呼ばれる種族の妖怪なのだ。
俺「何しとる?」
童「ん~?
酒でもないかと思ってねぇ。」
答えつつも部屋の中に荷物を散乱させていく。
そうしてる内に俺の足元にまで色々な物が転がり始める。
中には技術者には必要無いだろうと思われる物品も見受けられた。
俺「なんやこれ・・・・・・注射器ケース?
と・・・アンプル・・・・・・ってコレ三号自白剤やないか。
コッチの薬瓶どもは・・・・・・幻覚剤と興奮剤に睡眠薬やと?
ご丁寧に全部粉末か、どー見ても非合法モンやし・・・・・・。」
明らかに技術者の所持品では無い、むしろ特高や諜報部員の持ち物である。
三号自白剤とは興奮剤と睡眠薬を主体とした調合を行い、投与された者に強い眠気と倦怠感
を引き起こすも眠る事が出来ず、尋問に抵抗する意思、気力、判断能力を根こそぎ奪い取る
代物である。
ちなみにアンプル一本で八時間以上、その効果は持続する。
童「な~な~俺、なんだろうな、コレ?」
童に目を向けると、皮のベルトを複雑に組み合わせた拘束具を摘み上げていた。
恐らく足元の鞄から取り出したのであろう、他にも何か入っていそうだ。
俺「拘束具やな・・・・・・しかもなんか使い込まれとるし・・・・・・。
一寸その鞄ひっくり返してみ?」
言われた通りに鞄がひっくり返される。
中から出てきたのは。
縄、目隠し、猿轡、写真集4冊(18禁、マニア向け)、電源コード付きの茸っぽいゴムの棒3本、
電源コード付きの卵型の金属塊5個、蓄電池と電力調整装置、手術用ゴム手袋1箱
注射器型の注入器、グリセリン粉末、極細のゴム管、先の丸い細身の金属棒、クスコ、
ワセリン
以上の品々であった。
少なくとも仕事に必要な物では無いし、真っ当な趣味の持ち物でもない。
俺「・・・使えるの使えんのって要は性的な意味でか。
これ、被害者なんぼおるかも調べさせなあかんな。
コイツ、どんだけ下衆やねん・・・・・・。
童ぃ~、そこの縄、取ったってんか。」
童「はいよ~」
起きる気配が無いのを幸いにと、念入りに緊縛していく。
手慣れているせいか、さほど時間も掛からなかった。
俺「到着前に見つけられてよかったで・・・・・・。
もう、コイツに仕事はさせられへんなぁ。
あの基地に営倉ってあんのやろか?」
怪しげな品々を鞄に戻しつつため息を吐く。
童「ため息つくと幸せが逃げるってよ?
・・・・・・おぉっ!?
お宝はっけーんっ!!
種類も量もいっぱい~。」
目的の物を探し当てたらしい。
酒瓶を数本抱え込んで実に嬉しそうだ。
俺「お前は幸せそうやでえーのぉ。
・・・・・・しっかし、キッツイ事になったな。
下手したら大本営ひっくり返るで・・・・・・。
あぁ、むしろその方がええんか・・・・・・。」
童「何さっきから辛気臭そうにブツブツ独り言ばっかいってるんだ?
そんな事より俺も呑むか?、幸せになれるぞ~?」
ウイスキーの瓶の蓋を捻りつつ、童が酒を勧める。
ここで酒盛りを始めるつもりらしい。
俺「此処では正直勘弁願いたいわ。
勢いあまって止め刺してまいそうやし。
煙草吸いたいし。」
危険物の入った鞄を手に下げ、扉へと足を向ける。
童「刺せばいいのに。
あ、どこいくんだよ。」
俺「甲板や。
こないな所よりそっちのほうがよかろ?」
そして、散乱した荷物と 亀 甲 縛 り にされた野郎を残し、二人は部屋を立ち去った。
缶詰をいくつか確保して甲板の一角に陣取り、童が呑み始めた矢先に一人の男性が
近づいてきた。
船長「こちらでしたか、俺大佐。」
俺「ども。
一応、今は任務上、特務少尉なんで・・・・・・。
船長も一服ですか?」
と、言いつつマルボロを一本差し出す。
そして俺も一本咥えてライターの蓋を弾く。
安物のスチールではなく真鍮の澄んだ音が響いた。
船長「どうも・・・・・・。
しかし、厄介な任務ですな。
政治家や軍の幹部も関っているのでしょう?」
俺「まぁ、他の面子も動いてますんで。
流石に勅命を断る訳にはいきませんわ。
自分、本来は宮仕えの便利屋ですし。
それに子を守るんは親の務めやさかい引く気にはなれませんなぁ。
まだ予定やけど。」
童「後手に回りまくりだけどな~、んぐんぐ・・・プハァッ。
ま、引き取ったらアタシが面倒見てやるから。
敵は多いけどな、帝まで居るし。」
退屈だったのか、童も話しに加わってきた。
そろそろ瓶が一本空になりそうではあるが鬼にとっては普通のペースである。
俺「二重の意味で鬱になるから言わんでくれ。
最終的な決着は僕の意思次第って事で落ちついとる。」
船長「そっちの問題も中々大変なようで。
帝・・・まさか陛下まで出張って御出でになるとは。
いやはや、随分と僕少尉ももてますな。」
俺「ホンマですわ・・・・・・。
アレなのと大物ばっかし引き寄せてますしなぁ、良くも悪くも。
おかげでロマーニャまで避難させなあかんくなったし。
まぁ、一応悩みの種の一つは先ほど片付きましたわ。」
船長「と、言うと・・・・・・野郎大尉ですか?」
童「そーそー、ちょーっと洒落にならない事しすぎたみたいだね~。
今はお部屋に縛り付けてるよ~。」
俺「罪状は違法薬物所持の現行犯ってトコですわ。
あと疑いが有るんは、婦女暴行強姦、及び虐待致死って所です。
叩いたら叩いただけ出てきそうやけど。」
船長に例の鞄を見せ、様子を伺う。
目を見開いたまま固まってしまったようだ。
俺「まぁそう言う訳ですわ。
おかげで、どう足掻いても生きたまま本国に送り返さないかんく成りましたわ。
帰ったら帰ったで鉛弾か尋問でお陀仏でしょうけど。」
船長「出来れば・・・・・・今直ぐ海に叩きこみたい所ですな。」
俺「ホンマですなぁ・・・・・・。」
二人揃ってため息をついた。
船長が機関士に呼ばれ、船内に戻ってから幾許かの時が過ぎた。
童の一人酒盛りはまだ続いている様だが幾分ペースが落ちている。
肴にしていた缶詰を食い尽くしたようで、今は空に浮かぶ満月を愛でつつ酒を味わって
いるらしい。
童「月が綺麗だと酒も美味いねぇ~。
これで僕がいたらもっと美味くなるんだけどなー。」
俺「そう言うモンか?
まぁ、坊主もお前に付き合えるぐらいには笊やけど。
けどあんまし呑ますなよ?
あいつ、まだ10歳やでな。」
童「わかってるよぉ~・・・・・・なぁ。
あの子、大丈夫かな?」
俺「・・・怪我の事やったら、まぁ心配せんでもええやろ。
あそこの基地はそれなり以上に設備は整ってたはずやし。
それに師匠の娘さんもおるから、なんとかなるやろ。
それ以外の事に関しては・・・・・・これから頑張って行くしかないわな。」
それなりに見通しの明るい返答ではあったが、未だに童は心配顔だ。
その原因はどうやら別の所にあるらしい。
童「そっちはね、まぁそうなんだろうけどさ。
これから行く所って、女の子ばっかりな訳だろ?」
俺「せやなぁ。」
童「あの子さぁ・・・・・・妙にモテルだろ?
人、妖問わず、ってゆーかなんにでも。」
俺「・・・・・・せやなぁ。」
童「しかもあのエロ狐までいるじゃないか。
大丈夫なのかな、貞操的な意味で。」
俺「・・・・・・。」
とうとう俺が黙り込んでしまった。
今更になって不安が噴出してしまったらしい。
俺「・・・・・・いや、大丈夫・・・・・・やろ、うん。
坊主は怪我人や・・・・・・なんぼ芳佳ちゃんがおるからってそないな無茶はせんやろし。
・・・・・・いやしかし、完全に回復とかさしとったら・・・・・・あかん。
・・・・・・あかんで、それだけは・・・・・・いや、その前にもっちゃんが止めるか・・・・・・。
けどもっちゃんがイってもうたら・・・・・・いやいやいや・・・・・・。」
どうやら思考のループに囚われてしまったらしい。
僕の親権争奪戦に参戦している身としては、やはり心配は尽きないのだろう。
しかしコレだけは断言できる、10歳の少年にする心配ではない。
童「あー、変なトコ突いちゃったか。
まぁコレでも呑んで落ち着きな。」
俺「・・・・・・すまんな。」
そう言って童から受け取った酒はウィスキー(バーボン)だった。
余談だが、丁度その頃、日照丸の上空を通過した輸送機の中でミーナが似たような心配を
していた。
人の面倒を見る立場になると何かと心配事が増えてしまうらしい。
ご苦労なことである。
~基地内・病室~
激動だった僕少尉の着任日の翌日、そろそろ皆も起床して身支度を整え食堂へと向かい
始める頃。
ミーナは僕の様子を見に病室へと足を運んでいた。
だが、少々異様な光景を目の当たりにしてしまう。
病室の扉を開けると先ず目にはいったのは、ベッドの上に鎮座する狐色の丸い物体。
エーリカ「いーやーだー、この子ぷにぷにのぬくぬくなの~はなれがたいの~いまは
もふもふなの~、あと90分~・・・・・・Zzzz。」
そして、それに縋りつくエーリカ・ハルトマンと。
バルクホルン「ハルトマン!!
お前、僕少尉のベッドにもぐりこむとは、なんてうら・・・いや、けしからん
事をしているんだっ!?
と・に・か・く起きろ――っ!!」
そのエーリカを引き剥がそうと、奮闘するゲルトルート・バルクホルンであった。
ミーナ「なんなのこれ・・・・・・。」
一体何があったと言うのだろうか。
それはまた次の機会に。
- 続きキタァァァァァァァァ(゚∀゚)ーーーーーーーー!!!!! -- 名無しさん (2010-12-05 22:34:51)
- どこかに「スッタフ」があったが、「スタッフ」の間違いだろうか… -- 名無しさん (2010-12-13 16:56:08)
- 報告の誤字修正しました、感謝します。 -- 作者 (2010-12-14 16:03:04)
最終更新:2013年01月28日 14:01