・・・夢・・・?・・・そういえば・・・確かに、こんなこと、あったかな・・・
 ・・・今になって、あの出来事が夢に出るなんて・・・

サーニャ「・・・」

寝ぼけ眼で、夢の中に出てきたあの機械を探します。
 ・・・携帯電話。・・・私の部屋の、テーブルの上に置いてあります。
もう、随分前の約束だったから、俺さんは忘れているのかもしれません。

「帰るときが来たら、返してくれ」

 ・・・でも。俺さんが忘れても、私は覚えています。
そうです。私は、・・・あの約束のことを、覚えている上で、返さないのです。
だって、・・・返してしまったら・・・そして、俺さんが帰ってしまったら・・・
俺さんがこの世界に関わったという証が、私達の記憶の中にしかなくなってしまいます。
それが嫌だからです。

サーニャ「・・・電話・・・」

今なら、自分が何故携帯電話を欲しがったかの理由がわかります。
私は、・・・俺さんのことが、好きだからです。あの時から・・・
初めて会ったときから・・・あの笑顔を見たときから、好きだったからです。
好きだから、俺さんの持っている何かが欲しかった。・・・きっと、他に理由なんてないと思います。

サーニャ「・・・」スッ

私はテーブルの上の携帯電話を手にとりました。
 ・・・俺さんは、この携帯電話を使って、誰に繋ごうとしていたのでしょうか?
 ・・・元の世界の誰か・・・?
やはり、ご両親でしょうか?

 ・・・両親・・・

サーニャ「・・・お父様・・・お母様・・・」

思えば、私も俺さんも、同じく両親と離れ離れになっています。・・・でも。
私は、・・・私がこの世界にいる限り、両親と再会する可能性はあります。
両親がどんな状況だろうと・・・無事に生きていようと、ネウロイにやられてしまっていようと・・・
どんな形になるかはわかりませんし、いつになるかもわかりませんが、会う可能性はゼロではありません。
でも。俺さんは。・・・ご両親と、世界を隔ててしまっています。

サーニャ「・・・向こうの世界・・・」

二つの世界。・・・この世界と俺さんの世界は、果たしてどれほど離れているのでしょうか。
きっと、私には決してたどり着けないほどの距離があるのでしょう。・・・この地球を一周するよりも遠い距離が。
俺さんがこの世界にいる限り、俺さんは決してご両親に会うことはできないのです。

サーニャ「・・・俺さんの力・・・」

それが今、俺さんの選択次第では、繋がるかもしれないのです。
ネウロイの言っていた、俺さんの力で。・・・俺さんの持つ、二つの世界を繋ぐ魔力で。

サーニャ「・・・」

 ・・・両親に会いたいという気持ちは、私も理解しているつもりです。
だから、私は俺さんを引き止めることはできませんでした。

 ・・・でも。せめて。元の世界に戻っても、私を忘れないでいてほしい。
私は、そう俺さんに伝えました。・・・それに対しての俺さんの返答は、

「心配するな」

でした。・・・俺さんは・・・どういうつもりでああ言ったのでしょうか・・・

 ・・・その意味は・・・今日、きっとわかる。だから・・・今は、眠ろう。
そう思って、・・・私は、俺さんの携帯電話を胸の中に抱いたまま、再び目を閉じました。

 ・・・俺さん・・・

 ・・・

 ・・

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最終更新:2013年01月28日 16:01