後日談3 『ハッピーメリークリスマス』


12月23日 スオムス とある基地 談話室

ニパ「イッル!どう!?結果!!」

第502統合戦闘航空団から、所要で帰ってきている久々に出会った後輩は挨拶もそこそこに私に占いを頼んできた

エイラ「ちょっと待てよ、そんなすぐに結果なんてでねぇーヨ」

ん?何について占っているかって?そりゃお前、年頃の少女の悩みなんて体重と恋についてくらいなもんさ

エイラ「ふむふむ、女教皇の逆位置・・・」

なんでも地元に気になっていた先輩がいたとかでその人との“これから”を占って欲しいとか・・・健気な物だねぇ

ニパ「い!意味は!!??」

エイラ「女のヒステリー・心を開かない・悪い変化・・・」

いい結果はでなかった、まぁウィッチなんて女の集団で生きている私達はみんな揃いも揃って恋愛下手なのさ・・・もちろん私も含めて

ニパ「・・・」

目に見えて落ち込んでいる・・・うー・・・まったくしゃーねーなぁー

エイラ「あんな、占いなんてもんは所詮占い!」

エイラ「私の大事な人が言ってたよ『気に入らない未来なら変えてしまえばいい』ってサ」

ニパ「そんな簡単にいわないでよ~」

エイラ「じゃあお前諦められんのカ?」

ニパ「うー」

まぁ確かに私も最初は「何言ってんだこいつ?」状態だったけどさ・・・それでも・・・私とあいつの関係は現実に変化したたわけで・・・

それは私の気持ちの変化?望んだ事?あいつが努力した結果?自分でもよくは解からないけれど

とにかく!私は今の占いの結果と違った私達の未来に満足しているわけで!!

なんか恥ずかしいなこれ・・・

ニパ「いいよねーイッルは!その“大事な人”とイチャラブってんでしょ!!死神に夜も撃ち抜かれてるんでしょ!!」

エイラ「してナイ!!ていうかお前なんで俺の事知ってんダヨ!!」

ニパ「私としてはイッルがノーマルだったって事で少し安心したというかなんというか・・・」

エイラ「無視すんナ―――――――!!」





ニパが「少し勇気が出た」と言って駆けだしていった、うんうん青春だねぇ



最近、私はさっきみたいに頼まれでもしない限りあまり占いをしなくなった

特に自分の先“未来”の事については特に

だって“未来”という物は“今”の私が選択する物だから

“過去”も“未来”もその時その時の私が選んだ、またはこれから選ぶ物だから


『人生とは決断の連続である』


誰の言葉かは知らないがよく言った物だ、拍手を送ってやりたい程に

だから私達がこうして今付き合っている事は今までの私達の選択の結果であり

これから死ぬまで一緒にいるか・別れて別の道を歩む事になるのか?これもまたこれからの私達の選択次第なのだろう



女「あの~・・・」

エイラ「ん?」

そろそろサウナにでも入りにいこうかと思った私に見慣れない女が声をかける

えーと・・・こいつは確か・・・



女「ユ、ユーティライネン中尉にお願いがあります!!」

エイラ「あ!お前この間配属された新人カ!どうした?なんでも言ってみろヨ」

女「あの・・・噂で聞きました!ユーティライネン中尉は恋愛の達人だって!」

い、いつのまにそんな事になってんだよ!!??

女「それで相談に乗って欲しくて!」

しかしここは可愛い後輩の手前!しかも私は確かに彼氏持ちだし!!かっこつけてやろーじゃん!!

エイラ「うむうむ、なんでも相談してみろヨ、この私が聞いてやるからサ」




エイラ「サンタはいる!!」

女「ひっ!!」

後輩が怯えている、しまった!つい興奮してしまった

なぜこのような光景になっているかと言えば、後輩の相談が「いい年してサンタクロースを信じている彼氏ってありえなくないですか?」だったから

いやさ、私だって確信がなきゃこんな事言わないよ、いるんだよ!サンタクロース!!

なんてったって毎年私の家にはサンタが来ているんだから!!

しかも毎年2つもプレゼントがあるんだ!これも私がイイ子だからだよなぁー!!

エイラ「ゴホン!ありえなくない!!以上!!!」

女「はぁ・・・そうですか」 





12月24日 スオムス コッラー河付近 雪原

俺「・・・」

息を潜め、獲物に照準を合わせ殺気を出さないように細心の注意を払って引き金を引く

周囲に渇いた銃声が鳴り響き、鳥達が慌てて飛び立つ

俺「最近調子悪いな」

また外した、強大な力を持ち恐怖を感じないネウロイよりも非力だが恐怖に敏感な野生動物のほうが弾が当たりにくいと言うのもまた皮肉な物だ



俺「イッルへのクリスマスプレゼントどうしようか・・・」

いや、“俺”として渡す分は既に買ってあるんだが、毎年やっていた“サンタクロース”として渡す分を今年は買っていないのだ・・・

俺「いっその事ネタばらしするか?あいつももうサンタクロースがいないって解かる年だよな・・・」

しかし、頭によぎったのは真実を知り落ち込み悲しんだ顔をするイッル

俺「あいつ本気でサンタクロース信じてるからなぁ・・・」

はぁ・・・



俺「!?」

上空に気配を感じる

あの高度を飛ぶのはネウロイかウィッチ

しかしサイズはあきらかに人間のそれではない 


俺「今日はみんなが楽しみにしているイヴなんだ、悪いが一発で終わらすぞ」


ありったけの魔力を弾に込め、慎重に照準を合わせ

発射された魔弾は標的を撃ち抜く

しかし標的は砕け散らず落下を開始する

俺「え!?ネウロイじゃない!?」


急いで落下する物体へ駆け寄る

ゆっくりと降下してくるその人物は

赤い服を全身に纏い

白く長い髭を生やし

恰幅の良い体格

大きな袋を持ち

空を飛ぶ不思議なトナカイが牽く、これまた不思議なソリに乗って





眉間に銃創を作っていた

俺「サンタ殺しちまった」

俺「・・・つーかサンタって本当にいたんだな」 






俺自宅

ツリーの準備OK!!

部屋の飾り付けも完璧!!

七面鳥はもうじき焼き上がる!!

完璧じゃないか・・・

まだかなー

はやく帰ってこないかなー

エイラ「ふふふ」

この部屋見たら驚くぞー

ガチャ

お!ドアの音!帰ってきたな!

エイラ「おかえり!!」

待ちわびた恋人を、飛びっきりの笑顔で出迎える





俺「・・・ただいま」

せっかくのイヴに俺のテンションはダダ下がりだ

なんてったって、初めての恋人と過ごすクリスマスに眉間に穴開けたオッサンがいっしょなんだぞ!!

エイラ「遅かったナー!」

エイラ「でも見ろよホラ!部屋の準備もバッチリだゾ!!」

まじかよ・・・こいつオッサンの存在に気づいてないぞ

エイラ「でも心配だナー!私はイイ子だけど、お前はイイ子じゃないから今夜サンタさんがきてくれないかもしれナイ・・・」

俺「あ、その心配は無いぞ」

エイラ「?」



俺が背後を指さし、その存在にようやく気付いたイッルは・・・

エイラ「ほ、本物?」

俺「どうやら・・・」

サンタ「起きてる時は初めましてだね、お嬢さん」

ニッコリとサンタは微笑んでいるが、眉間に穴を開け血をドバドバと流しているその姿は非常にホラーだ

ていうか死なないみたいだよ、サンタクロース・・・よかった






ほ!本物のサンタクロースだ!!ほら見ろ!!やっぱりいたじゃないか!!

エイラ「サンタさん!毎年プレゼントありがとう!!」

サンタ「ほっほっほ、お嬢ちゃんは特別にワシの事信じてくれておったからよく覚えておるよ」

サンタ「ワシは子供達がサンタクロースを信じる心によって生まれる存在・・・今は信じる子供が減ったおかげで傷の修復すら簡単にできんようになってしまった・・・」

チラッとサンタさんが意味あり気に俺を見る、俺が視線から逃げるように目をそらす・・・


あー・・・眉間の銃創はそういう事か・・・


サンタ「こんな顔では万が一子供が起きてしまった時に怖がらせてしまう!!」

俺「・・・」

サンタ「しかしプレゼントを配らなければワシを信じてくれている子供があまりに不憫!!」

そうだそうだ!サンタさんが来なかったら落ち込む子供がいっぱいいるはずだ!! 

サンタ「誰か代わりに配ってくれないかなー・・・」

チラッ、チラッとサンタさんが俺に何度も視線を送る



エイラ「よし!私達に任せロ!!」

俺「お、おいイッル!」

エイラ「もとはと言えばお前がサンタさんを撃ったせいなんだから、お前も手伝えヨ」

俺「く・・・わかったよ」

サンタ「ありがとう!!さぁ!そうと決まれば早速出発だ!!」

エイラ「おー!!」



俺「はぁ・・・」





スオムス上空 空飛ぶソリ内

このソリ凄い!!

ストライカーより断然早くて、風の抵抗も無い

俺の方に目を向ければ、サンタさんから渡されたいわゆる『サンタ服』を着ている・・・

エイラ「しかし、恐ろしく似合わねぇーナ・・・」

俺「うるせーよ、お前こそ・・・」

同じくサンタ服を着ている私を見つめて俺の言葉が止まる

エイラ「ん?なんだって~?♪」

これはあれだろ!予想以上に似合ってたとかだろ!!さぁ言え!似合ってるって言え!!!

俺「に、似合ってるよ・・・」

顔をそらし、とても小さい声で俺が呟く

エイラ「あ、ありがと・・・」

よ、予想していても照れるものは照れるな!うん!!



サンタ「ケッ!いちゃつきやがって」

背後でサンタさんが出してはいけないような声を出した気がするが無視する事にする 





スオムス市街地

サンタ「よし、まずはこの家からだな」

俺「とっとと終わらそう」

ドアに手をかけようとした時、サンタから声がかかる

サンタ「ダメダメ!サンタがドアから入っちゃダメ!!」

エイラ「そうだゾ!お前何考えてんダ!!」

俺「じゃあどこから入んだよ?」

エイラとサンタが揃って上を見る・・・

エイラ・サンタ「「煙突」」

俺「やっぱそうだよな・・・」





イッルと共に煙突から家に忍び込む、なんかこう、あまりいい気分がするものではないな

子供のいる部屋に入れば、そこには健やかに眠る少女の姿

エイラ「子供の顔を見ながら、サンタ袋に手をいれて・・・」

エイラ「お!凄いぞ俺!!なんにも入ってなかった袋に玩具ガ!!」

俺「マジかよ、この技術を兵器とかに転用できないかな?」

エイラ「次に夢無い事言ったらブットバス」

俺「すまん」

目がマジじゃねぇーか

しかしイキイキしてんな、最初はめんどうな事になったとか思ってたけど

エイラ「ふふふ、メリークリスマス!イイ夢見ろヨ」

ああやって楽しそうなイッルが見れたのはサンタのおかげか

まぁ・・・イッルが幸せなら、俺はいいかな





こうして俺達は次々にプレゼントを配り終え、気付けば時刻ももうじき夜が明けるかという頃

俺「で、次はどこだ?こっちは雪原で人なんか住んでないぞ?」

サンタ「あぁ、次は最後だよ」

サンタがそう告げるとソリは降下を始め、雪原に着陸する

エイラ「ん?家なんかないゾ?」

サンタ「君達のおかげで全部のプレゼントを無事に配れたよ、ありがとう」

サンタ「最後に、とってもイイ子な君達に特別なクリスマスプレゼントだ」

そう言ってサンタは袋に手を突っ込み、俺達に笑いかける



瞬間、辺りを光が包み込む



エイラ「う、うわ!なんだコレ!!!???


目を開けば、周りはゴシック調の厳かな教会・・・

目の前にいたサンタはいつの間にか神父の姿に・・・


って事は・・・


隣を向けば、イッルは手にブーケを持ち、頭にはダイヤのティアラを載せ、純白のウェディングドレスに身を包んでいた


俺は・・・まぁタキシードだわな 




エイラ「え?これ・・・私?」

目の前の鏡に写った自分の姿に心底驚く

こ、こんな可愛い服!わ、私が着ていいのか!!??


俺「似合ってるぞ、イッル」

俺がまるで私の心を見透かしたかのような発言をする、悪戯っぽく笑いながら

エイラ「お、俺~」


エイラ「お前はあんま似合ってないナ」

俺「てめぇ」

ふふふ


サンタ「気に入って貰えたかな?二人の今一番欲しい物を形にしたんだけど?」

エイラ「ありがとう、サンタさん」

俺「結構、楽しいよ」

サンタ「では、式を始めよう」

観客のいない式か、結構オシャレじゃん

サンタ「汝、エイラはその健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しい時も、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くす事を誓いますか?」

俺を見る、少し微笑んだ俺は小さく頷く

そう、私達の答えは決まってる



エイラ「無理ダナ」

サンタ「え?」



サンタ「汝、俺は・・・

俺「まぁ、無理だわな」

サンタ「なんで!?望んでるんじゃないの?愛し合ってるでしょ?」

あー、言葉が足りなかったか

エイラ「今は無理って意味ダヨ」

俺「だって俺達付き合ってまだ一週間だし」

また、俺と目が合う

エイラ・俺「「なー」」

サンタ「でも、愛し合ってるなら今結婚しても・・・」

エイラ「それは違うさ、私達の事は私達が決断スル!全部ナ!」

俺「後悔しないように、な」

エイラ・俺「「だから今は誓わない!!」」



サンタ「はぁ・・・」





サンタの溜息と共に、教会が消える

イッルの服も、俺の服も、サンタの服も元通りだ

サンタ「なんて頑固な奴らだ・・・」

エイラ「ニシシ」

サンタがソリに乗り、俺達に語りかけてくる

サンタ「さっきのはお気に召さなかったみたいだから、こっちをあげよう」

袋から光の筋が夜空に昇っていく

その光の筋はやがて七色に輝く美しいオーロラへと姿を変え、その幻想的な輝きで俺とイッルを包み込む

エイラ「うわぁー・・・」

エイラ「サンタさん!ありが・・・あれ?イナイ」

サンタ「二人にメリークリスマス!!」

夜空の彼方から、声が響く

俺「はっ、最後までよく解かんない奴だったな」 





幻想的なオーロラの元、残された俺達は見つめ合う

エイラ「後悔してないカ?」

俺「してないさ」


エイラ「私はちょっぴりしてるかな?」


俺「じゃあさ、後悔にならないようにさ・・・」

ゆっくり近づく二人の距離

いつか、サンタがくれた幻想が現実になるように・・・



繋がる唇、重なる想い



今日も、“愛”ってやつを積み上げてみよう

ゆっくりと名残惜しみながら唇を離す


直後、イッルが満面の笑みを俺に向けながら・・・



エイラ「俺」



俺「ん?」






エイラ「メリークリスマス!!」
最終更新:2013年01月29日 14:39