『絆』 その1 



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




440 :試作な俺-24話:2011/07/01(金) 17:41:35.65 ID:oiKTsnt40



<深夜・基地内司令室>

タッタッタッタッ……!

ガチャン!

坂本「ミーナ!」

ミーナ「美緒……」

坂本「大変だ! 今見えたんだが、港からラオホウが居なくなってるぞ!」

ミーナ「……ええ、知っているわ。ついさっき出港したわよ」

坂本「何・・・!? どういう事だ?」

ミーナ「上から命令があったそうよ。『D特殊戦闘実験部隊及び、強化ウィッチ試作体壱号・プロト01は、現地での実験を終了して本国へ帰還せよ』……と」

坂本「では、あの船には俺も……!」

ミーナ「ええ。当然乗っている筈よ」

坂本「何故だ、何故止めなかった!」

ミーナ「…………」

坂本「向こうに戻られてしまっら、こちらの手出しの仕様がなくなる。何も出来なくなるんだ。なのにどうして行かせ───」

ミーナ「止めたわよ!」 バンッ!

坂本「っ……!」

ミーナ「何度も止めた、やめさせようとした。ガランド少将だって・・・!」

ミーナ「でも! 気づいた時には遅すぎたのよ、何もかも!」

坂本「…………」

ミーナ「相手も悪かった。管轄も違った・・・。実験だって、もう最終段階……」

ミーナ「この状況で強行策に出たら、咎めを受けるのは私たち。軍法会議では済まない。もう…、どうする事も……」 ポロポロ

坂本「ミーナ……」


ストライクウィッチーズの隊長と言う立場であるミーナには、団員を守るという義務がある。


決断しなくてはならない。彼女個人の感情とは別に、非情とも言える選択を


ギュッ……


坂本「ミーナが悪いわけではない。ミーナが悪いわけではないんだ。それは……みんなわかってくれるさ」

ミーナ「美緒ぉ…………」 ポロポロ

坂本(どうする事も……)

坂本(もう、どうする事も出来ないと言うのか? 何の手段も無いのか……?)


――――――――――――――――――――


442 :試作な俺-24話:2011/07/01(金) 17:52:46.18 ID:oiKTsnt40

<ロマーニャ基地から出港直後・実験部隊専用船『ラオホウ』・船内>

俺「…………」

助手「……では、私はこれで失礼します」

ガチャン!

助手「もう、おしまいなのね……」

助手(……既にあの子は”感覚消失”により、色覚や味覚を始めとする様々な感覚を失っている)

助手(視覚と聴覚はまだ生きているけど、それもいずれ失われる。そして最後には……『自我』さえも失う)

助手(自我を失ったら、あとは死を待つだけの身。けれどその前に”最終実験 ”が行われ、量産に必要な全ての生体データが揃う)

助手(そして、あの子は───)

助手「…………」

助手(あの子の人生を……命までもを犠牲にして、私は復讐を成し遂げようとしている)

助手(Aさんの言った通りだったなぁ。優しくするだけ優しくして……救わない。結局『アレ』だって作っただけで、実際に使わなかったし……)

助手「全部私の自己満足、かぁ……」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



『名前……考えたんですよ』


『名前? 誰のだよ』


『あなたのです。いつまでも『プロト01』じゃ味気ないじゃないですか』


『名前……名前ねぇ』


『……迷惑でしたか?』


『別に。好きにしろよ』


『じゃ、じゃあ発表しますね。今日からあなたの名前は、《俺》です』


『《俺》? それって、何か意味があったりすんのか?』


『はい。古い国の言葉で、『笑顔の魔法』っていう意味なんです』


『笑顔の魔法…………』


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


助手(……そっか。初めてあの子に会ってから、もう一年近く経つんだ)

助手(あっという間だったなぁ……。ネウロイに家族を殺されて、開発部の研究所に入って、実験部隊に誘われて、あの子に出会って……)

助手(私、もう戻れない所まで来ちゃったんだ)


444 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/01(金) 17:59:00.19 ID:Ha1v8E+Q0
試作さん来ましたわー!!
届け!!この熱い支援を!!

445 :試作な俺-24話 支援感謝です:2011/07/01(金) 18:03:24.18 ID:oiKTsnt40

助手(もうすぐ、全てが終わる。……そして始まる。ネウロイの滅びが……)

助手「……そうだ。大佐に報告書出すの忘れてた。出さなきゃ……」


<艦内・ダルシム私室>

コンコンッ

助手「失礼します」

シーン……

助手「……あれ? 大佐、いらっしゃいますか?」 コンコンッ

シーン……

何度ノックしても返事はない。
少しドアを開けて覗いてみると、ダルシムは部屋に居なかった

助手(……居ない?)


<船内・実験室>

助手(……ここにも居ない)


<船内・調整室>

助手(ここにも居ない。どこに……?)

446 :試作な俺-24話:2011/07/01(金) 18:09:26.97 ID:oiKTsnt40


<ラオホウ・甲板>

タッタッタッタッ……

助手(居た……!)

助手(大佐に……あれ? Bさん達も───)

研究者達「………………」

助手「…………」 ススッ

助手を除いた3人の研究者とダルシムが、深夜の暗い甲板に集まっていた。

何やら不穏な空気を感じとった助手は、声を掛けるのを止めて近くの物影から4人の様子を伺う

助手(何で甲板なんかに集まってるんだろう……?)


ダルシム「……皆さん、今までよくやってくれました。実験は最終段階に入り、後は”最終実験 ”を残すのみです」

ダルシムがゆっくりと話し出す。助手は身を隠したまま、耳を澄ませて会話を盗み聞く

ダルシム「問題だらけで右も左も見えなかった初期と比べ、ここまで順調に実験が進んだのは、全員の努力があったからこそです」

助手(こういう集まりの時はいつも全員集合の筈なのに、何で今回は私だけ……)

研究者A「いえ、大佐が我々を導いてくださったからですよ」

研究者B「ありがとうございます」 (珍しいな。大佐が我々を労うとは……)

研究者C「…………」


ダルシム「我々がこの地で為すべき事は、ほとんど終わったと言えるでしょう。・・・さて、後は───」




ダルシム「後は連中の始末だけだ」


助手(えっ……?)



 ガ シ ャ ン ッ ! !



ウィーーーーン…………ガシャン!



助手(!!?)


ダルシムの声と合わせるように中央エレベーターが作動し、艦内部からゆっくりと”何か ”が顔を出す


448 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/01(金) 18:16:44.35 ID:5a4fCWN00
支援

449 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/01(金) 18:20:20.52 ID:WKKZ+ryQ0
支援ザム!

450 :試作な俺-24話 支援ありがとう:2011/07/01(金) 18:20:39.92 ID:oiKTsnt40

現れたのは、鉄の巨人。大きさは大体6~7mほどか

それは確かに人型であり手足のような物が確認出来るのだが、”人”と呼ぶにはあまりにも固定概念からかけ離れた形状をしていた

胴体と思われる部分がやや小さく、ストライカーのような噴射口と一体化した脚部が機体の全高の半分以上に及んでいる変わった形だ


助手(あの機体、以前資料で見た『ウォーロック』っていう兵器にそっくり……)


エレベーターに乗って艦内部より現れた鉄の巨人は、あのウォーロックによく似た別の機体だった

見た感じでは全体的な造りなどがウォーロックに近似しているが、頭部ユニットや肩部の羽の追加など、相違点も確認出来る

そして毒々しい紫の基調と赤のカラーリングが、その兵器の”禍々しさ ”のようなものを表していた

ダルシム「最終調整に取りかかれ。0030には出撃させる」

研究者達「はっ!」

助手「……っ!」 ダッ

研究者達が兵器の最終調整を始めた。助手は身を隠すのを止めて物影から飛び出し駆け寄る

助手「待って下さい!」

ダルシム「! ……助手軍曹か」

助手「大佐、何をしているんですか。この機体は……!」

ダルシム「君こそ何故ここに居る? 01についているようにと命令を出しておいた筈だが……」


451 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/01(金) 18:20:47.00 ID:Ha1v8E+Q0
支援だZ

452 :試作な俺-24話 支援多謝:2011/07/01(金) 18:25:41.46 ID:oiKTsnt40

助手「教えて下さい。”連中の始末 ”って、どういう事なんですか……!」

ダルシム「……君が知る必要は無い事だ。部屋に戻りなさい」

助手「”連中 ”って、ストライクウィッチーズの事ですよね。消すつもりなんですか? 彼女たちを……」

ダルシム「…………」

助手「教えて下さい。大佐!」

ダルシム「…………」

ダルシムが口を閉ざす。研究者達は作業を続けながらも、2人の様子を窺っている。助手は曇り無い眼で彼に問い続ける

程なくして、ダルシムがゆっくりと口を開いた


ダルシム「……オペレーション・エピオン終了のその夜遅く……つまりは今晩、ロマーニャ基地は予報にも無いはぐれネウロイの襲撃を受ける」

助手「!」

ダルシム「ネウロイがステルス能力を持っていた事により接近にも気づけず、奇襲を許した上に作戦終了後で本来の力を発揮出来ない彼女達は、一方的に敗北する」

ダルシム「そして、ネウロイが高度なジャミング能力も持っていた為に助けを呼ぶ事すら出来ず、基地ごと魔女達は消滅。そのネウロイを見て生き残った者は1人も居ない……」

ダルシム「こうして第501統合戦闘航空団はネウロイに敗北し、壊滅と言う形で解散する。これが今夜のシナリオだ」

助手「それって……!」

ダルシム「そう。そしてこの機体こそ、はぐれネウロイとして奴らに引導を渡す今宵の主役。”インペラトール ”だ」


453 :試作な俺-24話 :2011/07/01(金) 18:30:55.63 ID:oiKTsnt40

そう言ってダルシムは鋼鉄の巨人を指し示す。 恐らくウォーロックと同等……あるいはそれ以上の戦闘能力を有しているだろう”インペラトール ”。
作戦終了後で疲労している上にこんな兵器に虚を衝かれたりなどしたら、いくら彼女達であっても一溜まりも無いだろう

助手「何故こんな事を……」

ダルシム「アルタネィティブ大将からの直令だ。不確定要素は排除する必要がある」 (※22話)

助手「命令されたから……!? だからってそんな……」

ダンッ!

研究者A「いい加減にして下さいよ、助手さん・・・!」

助手「Aさん……」

研究者A「またいい人気取りですか、またヒューマニズムですか。いい加減に割り切って下さいよ……!」

研究者A「あんたも! 俺達も! もう引き返せない所まで来ているんだ! いい加減に甘さは捨てて下さいよ!」

助手「Aさんはそれでいいんですか!? 命令だからと言って、何の罪も無いあの人達を殺すだなんて……!」

研究者A「その甘さを捨てろと言っているんだ! 奴らはこの先も我々の障害となる可能性が大いにある、だから消す! そう上が決めたんだ! ならば我々は従う!」

研究者B「…………」

研究者A「それに……我々が過去に何をしてきたか、一番入隊の遅かったあなたでも知っている筈だ」

助手「……!!」

研究者A「資料で読んだ筈でしょう。 『選別』の事も、『特殊任務』の事も……!」

454 :試作な俺-24話 :2011/07/01(金) 18:37:22.49 ID:oiKTsnt40

助手「じゃあ、ロマーニャの事はどうするんですか! あの人達が居なくなったら、ロマーニャの守りが……!」

研究者A「アルタネィティブ大将にとって、ロマーニャの命運などどうでもいいと言う事でしょう」

助手「そんな・・・! もうリーブラみたいな強いネウロイが現れないとは限らないのに・・・!」

研究者A「助手さん。我々の目的は計画の遂行でしょう。本懐を成し遂げる為にも、今はこれを為さねばならない筈です」

助手「その為にあの人達や、関係ないロマーニャの街と人々を犠牲にしても構わないんですか!? 間接的とはいえ、民間人が巻き込まれるんですよ!?」

研究者A「この計画に犠牲は付き物だった筈だ。何を今更・・・!」

助手「無関係な人達が沢山死ぬ事になるんです! しかも民間人が!」

研究者A「民間人だからって、それで我々が手を止める理由になりはしない!」

助手「そんなこと・・・っ!」

研究者A「仕方ない事なんですよ! あの女達は深入りし過ぎた、だから消さなければならない。間接的に民間人が犠牲になろうとも関係ない。ここはそういう部隊の筈だ!」

研究者A「今更手を止める理由がどこにある。躊躇う必要がどこにある! そうですよね大佐!」

助手「犠牲は少ない方が絶対にいいです! 私達は選ぶ事が出来る筈です。
    彼女達が計画の障害になる恐れがあったとしても、殺したりする事なく彼女達の介入を防ぐ方法はきっとあります! そうですよね大佐!」

ダルシム「・・・・・・・」

研究者A「大佐!」

助手「大佐!」

455 :試作な俺-24話:2011/07/01(金) 18:44:09.03 ID:oiKTsnt40

互いに睨み合いながらも、ダルシムを見遣る助手と研究者A。
Bは作業を続けながらもこちらの様子を窺い、Cは全く気にする事無く作業に集中していた


ダルシム「・・・助手軍曹の言う通りだ」

研究者A「!!?」

ダルシム「我々の最終目標は、量産化した強化ウィッチによってネウロイを滅ぼす事だ。手段を選ばぬ事が多いとはいえ、不必要な犠牲を出すのは得策ではないだろう」

ダルシム「私個人としては、ウィッチなど信用出来ん。好きになることなど出来ない。……しかし、何も殺したいなどと思っている訳ではないのだ。
      彼女達の死により他にも犠牲が出るのならば、このようなやり方は決して善いとは言えないだろう。やるべきではない」

助手「じゃあ・・・」

ダルシム「───しかし、それは飽くまで彼女達に否が無ければの事だ」

助手「!」

研究者A「大佐・・・」

ダルシム「事実、彼女達は独自の情報網を用いて幾度となく我々の計画を探り、介入して阻止しようとしている」

ダルシム「それだけではない。近頃アルタネィティブ大将の周りを嗅ぎ回る鼠が居ると聞く。恐らくはヴィルケ中佐がガランド少将に頼み、探らせているのだろう」

研究者C「・・・・・」


ダルシム「これは十二分に、彼女達が障害になりえると言う事だ。そしてアルタネィティブ大将の言う通り……障害は取り除く必要がある」


ダルシム「だから、我々は為さねばならない。それがどれほどの行為か分かっていようとも……悪行を・・・・・!!」


456 :試作な俺-24話:2011/07/01(金) 18:49:21.04 ID:oiKTsnt40

助手「そんな・・・! 考え直して下さい大佐!」

ダルシム「決定事項だ、変更はない。作業に戻れ」

研究者A「は、はっ!」

素早く敬礼し、Aはインペラトールの最終調整に戻る

助手「大佐!」

ダルシム「……助手軍曹。何故私が君のような若輩者を、この部隊に置いているか……分かるか?」

助手「えっ……」

ダルシム「理由は二つある。一つは君が二十歳を過ぎたばかりの若者であるにもかかわらず、天才的な頭脳を持っているからだ」

ダルシム「私の見込み通り、この部隊において君はあの3人よりも優秀だった。バスターライフルの魔導変換基礎理論を築き上げたのも君だ。
      君は私の期待以上の働きを見せた。十二分にな……」

助手「…………」

ダルシム「二つ目は、君がネウロイに復讐心を持っていたからだ。故郷、家族、友人などをネウロイに皆殺しにされた君は、ネウロイを強く憎んでいた」

ダルシム「当時の君は、この部隊の一員になれるだけの物を持っていると思った。…………だが、こちらは私の見当違いだったようだ」

ダルシム「君の中での復讐心と情……。その戦いで情が勝ってしまった。君は情に流され、本来の能力が発揮出来なくなっていった」

ダルシム「そして今、こうして君は我々を止めようとしている。どうやら君の中の憎しみは、皮肉にも復讐の道具である筈の01と触れ合う内に、風化してしまったようだな」

助手「…………」


457 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/01(金) 18:51:53.93 ID:1t2YEomgO
支援

458 :試作な俺-24話 支援ありがとう:2011/07/01(金) 18:54:29.46 ID:oiKTsnt40

ダルシム「残念だよ、助手軍曹。君は優秀な研究者になりえる筈だったが……その甘さがいけなかった」

ダルシム「B。彼女を営倉へ連れて行け。私が指示するまで絶対に外へ出すな」

研究者B「……了解しました」

最終調整作業を中断し、Bはダルシムの命に従う

助手「…………」

研究者B「行くぞ。ついてこい」

助手「…………」

研究者B「……ついて来ないのなら、力ずくで来て貰う事になるが」

助手「Bさんは……」

研究者B「ん?」

助手「Bさんは確か、ネウロイに友達を殺されたから……この部隊に入ったんですよね」

研究者B「……ああ」

助手「私も……同じです」

研究者B「同じ?」

助手「先ほど大佐が仰ってたように、私もネウロイに大切な人達を殺されました。
   父を、母を、弟を、友人を、恩師を、故郷の人々を・・・・・」


459 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/01(金) 18:55:50.44 ID:/dcAg83J0
支援する

460 :試作な俺-24話 支援感謝です:2011/07/01(金) 19:00:03.32 ID:oiKTsnt40

研究者B「おまえ……」

助手「本当に……本当に凄いネウロイを憎みました。『絶対に許さない』って……。ネウロイに復讐する事を決めた。でも……私にはウィッチのような魔法力はありません」

助手「だから私は、軍の開発部に入りました。そしてそこで私の研究が認められて、私はダルシム大佐に声を掛けられ、この実験部隊に誘われたんです」

研究者B「……確かそれが一年程前か」

助手「はい。……でも正直に言って、入った当初はとても後悔しました。この部隊の正体や、『選別』や、『特殊任務』の事を知って……」

助手「だけど今、私はこうしてここに居る。この部隊の闇を知っているにもかかわらず、それを受け入れたんです。全ては……ネウロイへ復讐する為に」

研究者B「…………」

助手「だからその時点で、私は皆さんと同じです。口ではどんな綺麗事を言った所で、所詮は同じ穴の狢。Aさんに言われた通りだったんですよ」

研究者A「…………」

助手「でも……───」




〔『・・・けど、それで諦めちまったら俺はもう、ただ壊れていくだけだ。偶には抗うのも悪くないだろう?』〕

〔『俺は人として───いや、『ストライクウィッチーズ』の一員として、守る為に戦いたいんだよ』〕


〔『いいんだよ。アイツら俺の言葉なんか聞かないだろ? あんたが聞いてくれなかったら、開発される事すら無かったんだ』〕

〔『だからさ、ありがとう』 ギュッ、ニコッ〕


461 :試作な俺-24話:2011/07/01(金) 19:05:50.06 ID:oiKTsnt40


〔『人形だった俺が、この戦いの中に意味を見つけられたんだ。ただ残り少ない時間を消費するだけだった、この戦いの中に……』〕

〔『だからさ、俺はもう……十分なんだよ』〕



助手「……ごめんなさい」

研究者B「何……?」

助手「やっぱり…………出来ません!」 ダッ!

研究者B「!」


助手はBの手を振り払うと、素早くインペラトールに駆け寄る。

走りつつ懐から拳銃を取り出し、研究者達が異変に気づくよりも先に構えると───


助手「えいっ!」  パァンッ! パァンッ! パァンッ!


ダルシム&研究者達『!!?』


まだ起動していないインペラトールの制御装置目掛けて発砲した。
連続で銃弾を受けた制御装置は破壊され、ブスブスと黒煙をあげてショートする

ダルシム「き、貴様ァ!!」


462 :試作な俺-24話:2011/07/01(金) 19:08:55.52 ID:oiKTsnt40

助手「・・・・・!」 ハァ……! ハァ……!

薄暗い甲板の上で、助手と4人が対峙する。
助手は甲板の端に立ち、息を荒げ、銃口をダルシムに向けていた


ダルシム「何の真似だ、助手軍曹・・・!」


助手「ごめんなさい・・・っ。どうしても…見過ごせなかったんです・・・!」


ダルシム「何……」


助手「おかしいですよね? 変ですよね? 今更こんな事するの……」


助手「でも……───」




〔『どうせならさ、いずれ創られる俺達の『量産型』なんかじゃなくて───』〕


〔『自分の手で……、みんなを守りたかったな』〕




助手「あの子の過去を奪って、自由を奪って、未来を奪って─────」



助手「あの子があんなになっても守りたかった物まで奪うだなんて・・・私には出来ないっ!!!」



震える両手で銃を構えたまま、助手は心の底から強く叫んだ


463 :試作な俺-24話:2011/07/01(金) 19:14:02.05 ID:oiKTsnt40


彼女は受け入れていた。この部隊の闇を、非道な行いを、その残虐性を。知っていながら利用していた。
全ては自分の家族や大切な人々を奪った、ネウロイに復讐する為に


しかし今、彼女は反逆した。初めて正面から部隊に逆らった。自称自己満足の優しさや、己が救われたいだけなどではない


彼女が心を通わせた被検体の少年。彼が守りたかった物を守る為、ただそれだけの為に


ダルシム「そうか……。それが貴様の答えか、助手軍曹」


ダルシム「残念だ」


助手「!」


    パ ァ ン ッ ! !  



助手「あっ・・・」 グラッ・・・


───ザパンッ


放たれた一発の凶弾。それは寸分の狂いも無く、彼女の胸に突き刺さる

心臓部を撃ち抜かれた彼女は短い断末魔をあげると後ろへ倒れ、そのまま暗い海へと落ちて消えた


464 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/01(金) 19:15:22.41 ID:Ha1v8E+Q0
ダルシム貴様ー!!

465 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/01(金) 19:18:30.52 ID:1t2YEomgO
さて、助手の服にポケットはあったかね?
支援

466 :試作な俺-24話 支援感謝です:2011/07/01(金) 19:21:55.99 ID:oiKTsnt40

研究者A・B「・・・っ!」

ダルシム「・・・何故撃った? C」

ダルシムが振り返り、銃口から硝煙をあげている拳銃を下ろした研究者Cに問う。
そう、撃ったのはダルシムでもAでもBでも無い。他ならぬ彼であった


研究者C「……彼女は既に錯乱していました。このままでは御身に危険が及ぶと考えた為、処分したまでです」

研究者C「それに、『裏切り者には死を。』 これがこの部隊の掟であるはずです」

ダルシム「…………」

研究者C「出過ぎた真似でしたか?」

ダルシム「……いや、いいだろう。君の判断は正しかったと言える」

研究者C「恐縮です」

ダルシム「・・・すぐに制御装置の修理にかかれ。この状態で起動させれば暴走は免れん。万が一にも連中が感づく前に、始末せねばならん。急げ!」

研究者達『はっ!』


研究者A「…………」

研究者Aは、助手が消えた暗い海を眺める


研究者A(結局あんたは……最後の最後まで甘さを捨てられなかったんだな。あんなに言ったのによ)


研究者A「……あーばよ。甘ったれの大バカ女」


262 :試作な俺-24話:2011/07/09(土) 14:50:45.98 ID:SCLOJE0o0


<ラオホウ内部・俺の部屋>

俺「…………」

俺は特にする事も無く、ベッドの上に仰向けになって寝ていた。
後は本国への到着を待つだけの身。基地の自室から持ってきた荷物もほったらかしにし、本を読むような気力も無い

別に眠いわけではない。第一眠いかどうかなんてわからない。疲れているのかどうかもわからない。もう何も感じない

それでも眠ろうとするなら睡眠薬を飲めば楽に眠れるが、そんな気分でもない

何もする事も無く枕に頭を預け、ボーっと暗い天井を見ていた

俺「…………」

悲しいわけではない。嬉しいわけではない

ひたすら虚しい

心に穴が空いたかのように、何もする気が起きない。瞳の光も消え、虚ろな色に染まっている

それは端から見れば、まるで人形。瞬きや呼吸で胸が上下していなければ、生きているのか死んでいるのかもわからないだろう。(本人ももうわからないらしいし)

現在、甲板上で何が起きているのかも知らず、ただただ動かないだけであった

俺「…………」

《ったく。何っつーザマだよ、オマエは》

突如、頭の中にいつもの”声 ”が響いた


263 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/09(土) 14:51:17.01 ID:xgdb1h/10
<●> <●>

264 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/09(土) 14:51:34.08 ID:tEOew2o90
なんだこの投下ラッシュは……支援


265 :試作な俺-24話 支援ありがとう:2011/07/09(土) 14:54:19.83 ID:SCLOJE0o0

俺「……おまえか。そういえば、おまえとも長い付き合いだな」

《うわっ、気持ち悪っ。センチ入ってんじゃねぇぞコラ》

俺「……ははっ」

《情けねぇ面しやがって……、今更後悔してんのかぁ?》

俺「っ…………」


《これが定めだ。知りながらも、突き進んだ道だろ》


俺「……知ってるよ。望む所だっての」


俺「俺は進むだけだ。だってもう、ゴールテープはすぐそこなんだからな」


《…………》


俺「最後まで……走り抜ければいいさ」


《……そうかよ》


不思議とその時の”声 ”は、少し寂しそうに聴こえたような気がした


――――――――――――――――――――


???


(あ、れ・・・? わたしは・・・)

ふと気がつくとバルクホルンは、どこかの空に居た。
眼下には市街が広がっている。しかしそこら中で建物が燃えて炎が上がり、街全体が紅い色を放ち、彼女が浮かんでいる空も紅く染め上げられていた


(!!! ここは・・・っ!)


そこは彼女にとっては見慣れた懐かしい街……。もう何年も前にネウロイの手により失われた、彼女の故郷であった


ネウロイ「――――――――――!」


「!」


そしてあの時と同じように、そこにはこの街を焼き払った大型のネウロイが居た



「きっ、貴様ぁぁぁぁぁっ!!!」


すぐにネウロイを攻撃しようとするが───


(っ!! 動かない・・・!?)


彼女の体は、まるで石化したかのように動かせなかった

そしてその間にもネウロイはビームを市街へ雨のように降り注がせ、徹底的に破壊していく

まだ形を残していた建物も破壊されて行き、沢山の逃げ惑う人々が次々に撃ち抜かれて命を落として行く


「や、やめろ・・・・・!」


ネウロイ「――――――――――!」


ビシュゥン! ビシュゥン! ビシュゥンッ!


「やめろ!! やめろおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!!!」


ビームが降り注ぐ。命が消える。多くの人が死んで行く。しかしバルクホルンは全く動けず、どうする事も出来ない


「・・・!!! あれは───」


「うぅ…、ひぅっ……」 グスッ


「クリス!!!」


バルクホルンは燃える街中に、泣きじゃくるクリスティアーネを発見した。すぐさま助けに向かおうとしたが、やはり体が動かない。



「くそっ、何故だ!? 何故動かな───《 お い 》


「!」


ドゴッ・・・!


268 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/09(土) 15:10:05.60 ID:+nJ18J/B0
しえん

269 :試作な俺-24話 支援感謝です:2011/07/09(土) 15:14:31.62 ID:SCLOJE0o0

「がっ、ハッ・・・!?」

突如眼の前に影が現れたかと思いきや、腹部に重く鈍い痛みが走る。どうやら強く殴られたようだ

息をつく間も無く影は殴り飛ばされたバルクホルンに接近すると、彼女の胴を掴んで拘束した

「ぐぅっ・・・! おまえは───」

人に近い形をしているが、決して人ではない鉄の黒い体。男性的な角張った体付きに、現在バルクホルンを拘束している大型クローの左腕。その正体は───


人型ネウロイ《・・・フン》


「あの時のネウロイ!? 何故貴様が・・・!」


その正体は、以前バルクホルンをローマへと拉致し、彼女を大いに苦しめた人型のネウロイであった。(※20話)
しかしこのネウロイは俺が倒した筈だ。なのに今こうして、再び彼女の前に現れている


人型ネウロイ《惨めなものだな。結局キサマはこの程度なんだ》


「な、に・・・!」


人型ネウロイ《キサマでは我々に勝てない。救えない。誰かを守る事など出来やしない》 ギリギリ……!


「負けるものか・・・! 決めたんだ、今度こそ……守ってみせると!」


人型ネウロイ《そうかそうか。それなら───》 スッ


「!」


人型はビームの右腕を構える。その狙いは逃げる事が出来ず、未だに地上で泣き続けているバルクホルンの最愛の妹・クリスだった


「ま、待てっ! 待ってくr───」


ビシュゥンッ!


「!」


人型の掌からビームが放たれ、クリスは炎の中に姿を消した



「そん、な・・・。クリ……ス……?」


「クリスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!」


人型ネウロイ《目の前で守るべき物が壊されるってのは、どういう気分なんだ? 教えてくれよ、人間≫


ギリギリ・・・!


彼女の胴を掴む力が増す。人型の左腕クローによる拘束は凄まじく、苦しくて全く抵抗出来ない


「ぐぅあああぁぁっ!」 ミシミシ


(い、いやだ・・・。いやだこんなの・・・!)


(何なんだこれは・・・、夢なら早く覚めてくれ・・・・・!) ポロポロ


人型ネウロイ《なんだ、また泣くのか》


「うぅ・・グスッ・・・、ひぐっ……」


人型ネウロイ《いくら泣いた所で無駄な事だ。助けは来ない。あの男はもう死んだからな》


「お、俺は死んでなんか───」


人型ネウロイ《ご臨終だ。残念だったな》


「違う! 俺は死んでなんかいない・・・!」


人型ネウロイ《死んだ。何故そう言える? あの男は、二度とキサマの前に姿を現さないだろう》



(俺が死んだ・・・? あの、俺が・・・?)


(……違う。死んでなんかいない。まだ……間に合う)


(・・・そうだ、間に合う。間に合うんだ・・・!)


(このネウロイは、確かに俺が倒した。それに今の状況といい、こんな超常現象のような現実は有り得ない・・・)


(夢・・・? 幻・・・? 思い出せ、私は何をしていた)


(確か、ヴェネツィア上空の巣から出現した母艦要塞型ネウロイを倒して、それから基地に帰還して、部屋に俺が来て、そして───)



〔『さようなら』〕



(・・・思い出した、私は俺に睡眠薬で眠らされたんだ。そしてアイツは・・・去って行った)


(ならば、これは夢・・・。私の夢か!)


人型ネウロイ《どうした。もう抵抗しないのか》


(・・・私の夢ならば───)


人型ネウロイ《!?》 ピシッ…


突如人型の体に白い罅が入り、徐々に崩れ始める


人型ネウロイ《なん、だと・・・!?》


(これが私の弱さが創り出した、幻だと言うのならば……)


「消えろおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」


バキィン!



彼女を拘束していた人型ネウロイが、音をたてて砕け消滅した



「今度こそ・・・守ってみせる」



――――――――――――――――――――――――――――


<ロマーニャ基地内部・俺の部屋>


 ガ バ ッ !


バルクホルン「!」

???「Σ わあぁっ!!?」 ビクッ!

バルクホルン「っ……! ハルトマン、おまえか」

エーリカ「び、びっくりしたぁー……。急に起きないでよトゥルーデ。心臓が止まりそうになったよ」

エーリカ「もうー。揺すっても叩いても耳元で叫んでも全ッ然起きなかったのに、急に跳ね起きるから驚いちゃった」

バルクホルン「何故、おまえがここに居る」

エーリカ「うん、何だか基地の中がうるさいから目が覚めちゃってさ。そうしたらトゥルーデが居なくなってたからミーナの所に探しに行ったら、
      大変な事がわかったから慌てて探し回って、ようやく俺の部屋で寝ているトゥルーデを見つけた所……だったんだよ」


バルクホルン「大変な事……」


バルクホルン(……そうだった。今の時刻は───(チラッ) 午前2時過ぎ……。私が俺に眠らされたのが大体0時前だから、二時間程度しか経っていない)


バルクホルン(まだ・・・間に合う!) グッ……


エーリカ「そうだよトゥルーデ、大変なの。実験部隊の人達が、私達に何も言わずに本国に帰っちゃったの。それで、俺も一緒に……」


274 :試作な俺-24話:2011/07/09(土) 15:40:39.55 ID:SCLOJE0o0

エーリカ「それだけじゃないの。ついさっきの事なんだけど、医務s───」

バンッ!

バルクホルンが、自らが突っ伏して眠っていた円卓を両手で叩き、勢いよく立ち上がる

エーリカ「トゥ、トゥルーデ・・・?」


バルクホルン「俺を助けに行く」


エーリカ「えっ……」


バルクホルン「アイツは…………死ぬつもりだ」


エーリカ「!? どういう事……?」

バルクホルン「アイツの体は実験時の度重なる薬物投与により、もうボロボロなんだ。既に、殆どの感覚を失っている」

エーリカ「何……それ…………」

バルクホルン「実験が最終段階に入ったから、俺と実験部隊は本国に帰還した」


バルクホルン「そして、そこで行われる最終実験で俺は恐らく……命を落とす」


バルクホルン「強化ウィッチの量産成功……、その引き換えに」

275 :試作な俺-24話:2011/07/09(土) 15:47:28.68 ID:SCLOJE0o0

エーリカ「そんな・・・、そんなのって・・・!」

バルクホルン「だから助けに行く。まだ、間に合う筈だ・・・!」 ダッ!

エーリカ「あっ、待って! トゥルーデッ!!」


タッタッタッタッ……


バルクホルン(認めない・・・。認めてなるものか・・・・・!)


バルクホルン(アイツだって、本当は分かっている筈だ。知っている筈だ。こんな事はおかしいって……)


バルクホルン(もしそれも分からないと言うのなら、殴ってでも目を醒まさせてやる)


バルクホルン(私が、この手で・・・・・!)


バルクホルン(必ず連れ戻す。もう、諦めたりしない・・・!)


エーリカの制止の声を振り切り、バルクホルンは勢いよく部屋から飛び出して行った
最終更新:2013年01月29日 15:33