『甦る翼』 その2




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



<一時間後>

ガチャッ

バルクホルンたち『!』

” 手術 ” の行われていた部屋のドアが開き、助手が姿を現した

助手「・・・終わりました。手術は成功です」 ニコッ


バルクホルン「! そうか、よかった・・・!」

シャーリー「やったな!」 バンバン

ルッキーニ「よ、よかったぁ~」 ホッ

エーリカ「クスリが足りないって言われた時はヒヤっとしたよ」

宮藤「助手さん、Bさん、ありがとうございます……!」


バルクホルン「それで……、いつごろ目を覚ますんだ?」

助手「もう2、3時間もすれば。少し休めば、すぐに皆さんと同じように飛べるようになりますよ」

シャーリー「よし!早速みんなに伝えてこよう。行こうルッキーニ!」

ルッキーニ「うんっ!」

エーリカ「あっ、私も!」

タッタッタッタッ……


バルクホルン「また飛べるように……か」

助手「ええ。でも、あの子がそれを望めばの話ですが」

宮藤「そうですよね。今まで無理矢理戦わされてきたんだから、もう戦いなんてウンザリかもしれませんよね……」

バルクホルン「……ああ。しかも、問題はそれだけではない」

バルクホルン(黒幕であるアルタネィティブ大将が倒れ、実験が打ち切られた今となっても、これで全てが終わりと言うわけではない……)

バルクホルン(俺や研究者たちの処遇。インペラトールだって野放しはしておけない)

バルクホルン(最近ネウロイが静かなのも気になる。まだとても安心は出来ないな……)

───


<二時間後・基地内医務室>

俺「んっ…………」 パチッ

宮藤「あっ、目を覚ましました」

シャーリー「おお、やったな」

エイラ「まったく、心配させヤガッテ……」

俺「…………」 キョロキョロ

バルクホルン「体は大丈夫か?」



俺「あの…………どなたですか?」

バルクホルン「えっ……」


880 :試作な俺-26話:2011/10/27(木) 17:48:29 ID:FLvnWCkQ

俺「ここは何処なのでしょうか? あなた達は一体……」

シャーリー「お、おいおい何言ってるんだよ俺。寝ぼけているのか?」

俺「えっ!? どうして僕の名前を知っているんですか?」

リーネ「ぼ、ぼく?」

ルッキーニ「なんか俺が変だよ……?」

俺「どうなっているのかな……? ええっと……、その…………」

俺「と、とりあえず自己紹介しておきますね。僕の名前は ” 俺 ” 。出身はオストマルクで、父さんと母さんは……」

俺「あ、あれ……?思い出せない。何でだろう……」

バルクホルン「俺。まさかおまえ、また記憶が…………」

俺(どうしよう、何も思い出せない……)

エイラ「オイいい加減にしろよ俺。冗談にしても趣味が悪いゾ……!」

俺「あの、ひょっとしてあなたは……、僕の知り合いか何かなのですか?」

バルクホルン「!」

エイラ「オマエ、まだそんなこと……!」 プルプル

ミーナ「これは一体どういうこと何ですか?まさかコレが自我の消失……」

助手「いえ、違うはずです。自我の消失なら、こうやって話すこともできなくなり、幼児みたいになってしまうはずです……」

ミーナ「では、これは……」

助手「……ごめんなさい、私にも分かりません。検査してみないことには……」


881 :試作な俺-26話:2011/10/27(木) 17:53:23 ID:FLvnWCkQ


ひとまずこれ以上事態の混乱を避ける為に、ミーナは隊員を病室から隔離し、見張り役として宮藤を部屋に残らせる

そして1時間後、ミーナ、坂本、バルクホルンの三人は、別室で助手の説明を聞いていた

助手「一時的な記憶の混濁……、分かりやすく言えば今のあの子は、プチ記憶喪失のような状態です」

バルクホルン「プチ記憶喪失……?」

助手「以前と比べて、覚えていることと忘れていることが複雑なんです。例えば、あの子の名前」

助手「先日バルクホルン大尉から聞いたダルシム大佐の話によれば、あの子の本当の名前は”オレ”。でもあの子は、自分の名前を”俺”と認識していました」

助手「その”俺”と言う名前は、一年くらい前に私がつけたものなんです。でもあの子は私のことも、実験や計画のことも覚えていなかった。つまり……」

ミーナ「ただ単純に、一定期間の記憶を失っているのではなく、何らかの原因がある……」

助手「はい、恐らくは」

坂本「しかし、記憶喪失の原因とは……?」

ガチャッ

研究者B「そんなもの、一つしか無いだろう」

助手「Bさん」

バルクホルン「どういう事だ?」

研究者B「ただ一言の言葉で現すとしたらあれは……”現実逃避”の一種だ」


882 :試作な俺-26話:2011/10/27(木) 17:58:10 ID:FLvnWCkQ

坂本「現実逃避・・・?」

研究者B「誰にだってあるだろう。例えば大切な家族を失うだとか、愛する人を亡くすだとか、そう言った惨い現実、受け入れられない状況に直面したとき……」

研究者B「『こんなの夢だ。現実じゃない。アイツが死ぬわけがない。こんなことが起きる筈が無い』……なんて思う事がな」

ミーナ「確かに……あるわね」

バルクホルン(クリス…………)

研究者B「お話かなんかでは、それを受け入れて前へ進んだり、乗り越えて強くなったりするんだが……実際問題現実ではそんな簡単には行かねえ」

研究者B「中には乗り越えられない奴だっている。誰かに辛く当たったり……逃げ出したりしちまう奴だって沢山いる」

助手「…………」

研究者B「そして今回01にとって……あの真実は惨たらし過ぎた。荷が勝ちすぎちまったんだ」

バルクホルン「大佐が……実の父親だという事実」

研究者B「そう。そして01はそれを受け止めきれなかった。そのショックは余りにもデカすぎて、現実を否定する為に無意識的に自分自身の記憶を封印までしてしまった」

研究者B「だから、言いようによってはただの現実逃避なんだよ。……だが、今回ばかりは仕方ないかもしれない。今までのアイツの境遇を考えれば……」

バルクホルン「それで……俺は元に戻るのだろうか?」

研究者B「……悪いが、そればっかりは本人次第としか言えない」

坂本「何故だ?こちらから話してしまえば済むのではないか?」


883 :試作な俺-26話:2011/10/27(木) 18:04:49 ID:FLvnWCkQ

研究者B「無意識下とはいえ、記憶を封印するほどのデカいショックなんだ。下手にこっちから教えたりしたら、それこそ二年前の弱体化よりも悪い結果になるかもしれない」

研究者B「……たとえば精神崩壊とかな」

バルクホルン「・・・!」

研究者B「アイツが自分自身で思い出し、受け入れ、乗り越えるのを待つのが一番安全だろう。……ただ、きっかけが無ければ一生あのままかもしれないけどな」

ミーナ「とにかく、迂闊な行動は控えた方がいいと言うことね……」

研究者B「まぁ、どれも俺個人の推測に過ぎないがな。……それと、記憶を戻させるのがアイツの為になるのかどうかは俺には分からん」

研究者B「このまま何も知らずに、新しく第二の人生を歩んで行った方がいいかもしれん。あんた方は複雑な気持ちかもしれんがな……」

4人『…………』

─────


<翌日の夜>

ガチャッ

宮藤「俺さん、夕食を持ってきました」

俺「ありがとうございます、宮藤さん」 ニコッ

宮藤「…………」

俺「……? 僕の顔に何かついていますか?」

宮藤「あの、俺さんは本当に私たちの事を……」

俺「……すいません。あなた達は僕の知り合いだったようですけど、僕にはわからないんです。どうしても思い出す事が出来ない……」


884 :試作な俺-26話:2011/10/27(木) 18:09:09 ID:FLvnWCkQ

宮藤「……そうなんですか。ごめんなさい」

ガチャッ、キィッ……ガチャン

俺(行ってしまった、宮藤さん。一度もこっちを見てくれなかった……)

俺「……いただきます」 パクッ

俺(あ、美味しい)


<基地内・談話室>

シャーリー「俺はどうだった?」

宮藤「……やっぱりダメでした」 フルフル

エイラ「アイツ、私たちの事を忘れちゃうなんて……」

サーニャ「……寂しいです」

ペリーヌ「それにしても、随分と人が変わるものですのね。今の俺さんはまるで別人のようでしたわ」

シャーリー「そりゃあ記憶が無くなってるからな……。そっちにも影響が出てくるだろ。さっきなんて ”さん” 付けで名前呼ばれちゃったよ、あたし」

ペリーヌ「私もです。まさかあの人に敬語を使われる日が来るなんて、思ってもいませんでしたわ」

ルッキーニ「あたし、前の俺の方がいいもん。今の俺はちょといやー……」

エーリカ「そうだよね。今の俺はいい人だけど……、あれじゃまるで違う人だよ」


885 :試作な俺-26話:2011/10/27(木) 18:11:35 ID:FLvnWCkQ

リーネ「ミーナ中佐に聞いたんですけど、本当はあれが素の俺さんらしいですよ? 強化ウィッチとしての責務を負わされる前の、有りの儘の……」

エイラ「アレがか? まるで考えられないな・・・」

エーリカ「やっぱり今まで色々あって、性格変わって行っちゃったんだろうね……」

宮藤「…………」

リーネ「大丈夫? 芳佳ちゃん」

宮藤「あ、うん。大丈夫だよリーネちゃん」

リーネ「そう。それならよかったけれど…」

宮藤「…………」

宮藤(俺さん……)


───

俺「……ごちそうさまでした」 カタッ

俺(すごく美味しかった……。宮藤さんは料理が上手なんだな)

俺(ここの人たちはとても優しくしてくれる。だけど僕はあの人たちのことを覚えていない……)

俺(仲間……ってことだけ聞いてるけど、あの人たちは僕とどういう関係だったんだろう……) ウトウト


思い出そうと考えるが、全く思い出せない。肝心な記憶はモヤがかかったようにブロックされている。

そうこう考える内に少しずつ眠気に襲われ、少ししたら俺は布団の中で寝息をたてていた


917 :試作な俺-26話:2011/10/28(金) 19:19:51 ID:92.Xy7RE

────────────────


???

俺(どこだろう、ここ……)

気がついたら俺は異常な空間に居た

俺(真っ白だ……何もない。どこまでもずっと白い空間が続いている……)

そこは何も無く誰も居ない真っ白な空間。地平線の向こうまでもが白く染まっており、俺はその中心に1人ポツンと立っていた


俺(病室に居たはずなのに……。こんな場所に居たら気が狂ってしまいそうだ)


?《とんだ間抜けも居たもんだな。情けねェ》


俺「ッ!! 誰!?」 クルッ

俺「……!!!」

突如背後から声が聞こえ、俺は即座に振り返る。そしてそこに居た存在を見た途端、絶句してしまった


?《ああそうか、こうやって会うのは初めてだったな。普段は絶対に見えねーしよ》


俺「君は…………僕…………!!?」


黒い俺《初めましてだな、クソ野郎》


そこに居たのは、黒い姿をしたもう1人の ” 俺 ” だった


918 :試作な俺-26話:2011/10/28(金) 19:22:20 ID:92.Xy7RE

俺「君は一体誰だ……? 何故、僕と同じ容姿を……!」

黒い俺《声でわからねーか? オマエとは何度も ” お話 ” しているだろ》

俺「わ、わからない……!君のことなんて知らない!」

黒い俺《俺のことまで忘れやがったか……この豆腐メンタル野郎》

俺「一体君は……」

黒い俺《はンッ、冷てェ話じゃねぇか。いくら自分の精神を守る為とはいえ、俺のことや大事な大事なお仲間の記憶まで、まとめて全部消しちまうなんて》

黒い俺《嫌なこと全部綺麗さーっぱり忘れて、テメェ一人だけ楽になろうってんだ。また逃げようとしてるんだよぉ》

俺「逃げ、る・・・?」

黒い俺《まぁ、お優しいウィッチ様たちはそれでオマエを恨んだりはしないだろう。内心はかなり複雑なモンだろうがな》

俺「…………」

黒い俺《今のオマエは0だ。背負わされていた荷を捨て、首輪を外され、辛いことも嬉しいことも全て忘れてしまった真っ白な旗》

黒い俺《このまま何も思い出さずに、新しい人生を歩んで行くのも一つの選択だろう。そういう定めなのかもしれねー。だがな……》


黒い俺《オマエはあの時、俺の言葉に……定めに抗った。結果は死だったかもしれねェが、それでもあの女を生かそうとした》

俺「あの女…………」


ズキッ・・・!


919 :試作な俺-26話:2011/10/28(金) 19:23:41 ID:92.Xy7RE

俺「い"ッ・・・!!」

俺(急に頭痛が……)

黒い俺《俺にはもう余り時間が残されてない。だから・・・それまでに見てみたいんだ》

黒い俺《折れた翼が蘇り……もう一度自由に空を飛び回るさまをな》

俺「翼……蘇る……」

黒い俺《今のオマエじゃ出来ねェが……、連中の選択次第で化けるかもな。期待しないで待っててやるよ》 スウゥ……

俺「!」

黒い俺《それじゃあ精々頑張るんだな、クソ野郎》

俺「ま、待ってくれ!」

フッ・・・!

───────────────


<基地内・病室>

俺「待ってくれ!」 ガバッ!

俺「あれ・・・・・」 シーン

俺(・・・夢?)


920 :試作な俺-26話:2011/10/28(金) 19:25:34 ID:92.Xy7RE

俺(……何だったんだ、今の夢は。妙に現実味があって気味が悪かった……)

俺(だけどあの声……、どこか前にも聞いたことがあるような声だった。あれは一体…………)

「大丈夫か?」

俺「Σわっ!?」

「魘されていたが……悪い夢でも見ていたのか」

俺「えっと貴方は……バルクホルン…さん?」

バルクホルン「ああ」

俺「やっぱり。宮藤さんから聞いています。でも、何故ここに?」

バルクホルン「一応お前は病人だからな。様子を見に来た」

俺「心配してくれたんですか……、ありがとうございます」

バルクホルン「いや、いい。気にするな」

バルクホルン「それよりも、さっきの魘され方を見るに……何か思い出せたのか?」

俺「えっ?いや、それが……さっぱりでして」

バルクホルン「……そうか」

俺(今一瞬だけ、悲しそうな表情を……)


921 :名無しの俺:2011/10/28(金) 19:26:58 ID:.V94g0DQ
あら、始まってらっしゃるわ


922 :試作な俺-26話:2011/10/28(金) 19:27:52 ID:92.Xy7RE

俺「そういえば、僕と皆さんってどういう関係だったのですか? ”仲間だった ”と漠然なことしか教えられていないのですが……」

バルクホルン「……そうだな」

バルクホルンは俺の精神に危険が及ばないように、実験や父親のことをうまく伏せて自分たちのことを話した


───

俺「へぇ……そんなことがあったんですか」 ニコニコ

バルクホルン「ふふっ、信じられないような話だろう? しかもあの時のお前は、私を笑わせる為に海藻を胸に当てて「胸毛ーっ♪」とか言ったんだ。
       あの時はくだらなすぎて逆に笑ってしまったよ」 クスクス

俺「ははっ、聞いてると何か恥ずかしいや……。他にはどんな話があるんですか?」

バルクホルン「そうだな。他にも色々─────(ハッ)」

俺「?」 ニコッ

バルクホルン「色々…………」

今まで楽しげに話していたのだが、突如バルクホルンは口を閉ざし、表情に暗く影を落とす


923 :試作な俺-26話:2011/10/28(金) 19:30:29 ID:92.Xy7RE

俺「バルクホルンさん?」

バルクホルン「…………」

そう、バルクホルンは気がついてしまったのだ。自分のやっていることの虚しさに


本来なら共通している記憶。バルクホルンがしていたのは、俺と出会ってからの温かい思い出話。

しかし俺は記憶を失い、全て忘れてしまった。思い出を共有することはできず、話は一方通行だ

そのことに改めて気づかされてしまったバルクホルンは、やり切れないような、悔しいような、切ないような言葉に出来ない気持ちに飲み込まれ、表情に影を落としてしまったのだった


俺「バルクホルンさん、大丈夫ですか? どこか、具合でも…………」

バルクホルン「……いや、私なら大丈夫だ。どこも問題ない」

俺「でも……」

バルクホルン「私は大丈夫だ。何も心配する必要なんて無い。少しボーっとしてしまっただけだ、気にするな」

俺「…………」

バルクホルン「それよりも、もうこんな時間だな。夜遅くまで邪魔をしてしまって悪かった。また明日来るとしよう」 スタッ

そう言ってバルクホルンはベッド横の椅子から立ち上がり、ドアへ向かって歩き始め───

俺「あ、あのっ!」

ピタッ

バルクホルン「何だ? まだ何か用が───」

俺「泣いているん・・・ですか」

バルクホルン「え・・・・・?」


924 :試作な俺-26話:2011/10/28(金) 19:32:53 ID:92.Xy7RE

バルクホルン「何を言ってるんだ、私は泣いてなんか……」

俺「でも、涙が……」

バルクホルン「…………」 ピトッ

バルクホルン「……本当だ」

俺(自分でも気がつかなかったんだ……)


バルクホルン「…………」

俺「あの、バルクホルンさん……?」


バルクホルン「」 ガバッ!ギュッ・・・!


俺「わっ!?」


突然バルクホルンが俺に近づき、そのまま思いっきり俺を抱きしめた


俺「バ、バルクホルンさん……?」

バルクホルン「……すまない、突然こんな真似をして。でも、ほんの少しの間でいいんだ」

首のすぐ横で、彼女は小さく口を動かしやや震えた声でそう言う。温かい吐息がそっと肌を撫でた


バルクホルン「もう少しだけ……こうさせていて欲しい」


俺「…………」


彼女の温もりが、鼓動が、零距離状態である彼女の体から俺へ伝わった



ギュッ……

バルクホルン「っ…………」

抱きしめられただけの状態だった俺は彼女の背中へ手を回し、そっと華奢な体を抱き返した

俺「……理由はわからないんです」

バルクホルン「えっ……?」

俺「あなたに泣かれると……僕も心が悲しくなる。胸の奥が痛くなり、とても冷静ではいられません……」

バルクホルン「俺…………」

俺「だから、僕でよければ。 これで少しでもあなたの心が休まると言うのなら……こうさせていて下さい」

バルクホルン「……ありがとう」 ギュッ


─────

バルクホルン「……すまない。もう大丈夫だ」

俺「ん…………」

お互いが手を離し、2人の体がゆっくりと離れる

バルクホルン「おかげで落ち着いたよ。ありがとう」

俺「そうですか、よかったです」 ニコッ


926 :試作な俺-26話:2011/10/28(金) 19:37:10 ID:92.Xy7RE

バルクホルン「俺……」

俺「何でしょうか?」

バルクホルン「ゆっくりでいい」

俺「え……?」


バルクホルン「今は何も分からなくてもいい。お前の精神(こころ)に異常が出ないように、ゆっくりと少しずつ思い出していけばいいさ」


バルクホルン「だからそれまで、どんなにお前が道に迷ったとしても、お前は私が───」


バルクホルン「私が守るから」


俺「バルクホルン……さん…………」


バルクホルン「悪夢は終わったんだ。おやすみ、俺……」 スタッ


俺「あっ…………」


ガチャッ、キィッ……ガチャン



俺「行ってしまった……。もう少し話していたかったなぁ」

俺「…………」


俺(バルクホルンさん、か……。綺麗な人だったな。話してると胸の中がポカポカして、まるで初めてあったんじゃないみたいだ……)

俺(って、当然か。仲間みたいだったみたいだったし、向こうはこっちを覚えているんだもんな……)

俺(あの時のバルクホルンさん、とても悲しそうな顔をしていた。自分でも気がつかないくらいだけど、確かに泣いていた)

俺(どう考えても原因は僕……だよな) ハァ


俺「また、トゥルーデを泣かせちまったな……」


927 :試作な俺-26話:2011/10/28(金) 19:41:18 ID:92.Xy7RE

俺「・・・あ、あれ? 何で僕は今、バルクホルンのことをトゥルーデなんて……」


ズ キ ッ ・・・!!!


俺「うあっ・・・」

俺(また、頭が痛く……ぐぅっ!!)

ズキン!

ズキン!

ズキン!


俺「あ……がっ、ア…………」

俺(痛い……。頭が…………痛い!!)

津波のように押し寄せる、圧倒的な頭痛。
痛みに混じって脳裏に映像のような物が過ぎったが、今の俺にはそれが何なのかはわからない


ズキン……!ズキン……!


俺「いだっ……ぁ……」


俺(そうだ、知っている……)


ズキン……!ズキン……!

俺(僕は……あの人を知っている)

ズキン……!ズキン……!


俺(僕は……俺は…………!)


ズキン!ズキン!ズキン!ズキン!


俺(くそっ、もう少しで何か思い出せそうなのに、頭が……)


ズキンッ!ズキンッ!ズキンッ!ズキンッ!ズキンッ!ズキンッ!


俺(頭が・・・割れそうだ・・・・・!!!)


考えれば考えるほど、俺の頭痛は酷くなる一方だ。

もう喉のとこまで出掛かっているのだが、まるで何かに頭を抑えつけられているようにどうしても思い出す事が出来ない。
自分の中の何かが無理やり記憶をせき止めているようだ


俺(チク……ショウ…………)


俺はその後も必死に考え続けた…。しかし、駄目だった。

あと少しで思い出せそうなのに、どうしても頭痛に邪魔されてしまうのだ。


そして本当に頭が割れても困るので
─そのうち俺は考えるのをやめた


929 :試作な俺-26話:2011/10/28(金) 19:46:27 ID:92.Xy7RE

<翌日>


ヴヴゥゥゥゥーーーーーン!!!!!

ペリーヌ「これは……」

シャーリー「最近大人しいと思ったら……くそっ!」

ロマーニャ基地に鳴り響くけたたましい警報。
それはおよそ10日ぶりに、人類にとっての招かざる客が姿を現したことを意味していた

ミーナ「ストライクウィッチーズ、出撃せよ!」

ビュゥーン・・・

手短にブリーフィングを済ませ、ストライカーが使えない宮藤・リーネを除いたストライクウィッチーズ各員は、ミーナ・坂本の指示のもと大空へ飛び立っていった


リーネ「私たちは中へ入ろっか、芳佳ちゃん」

宮藤「…………」

リーネ「芳佳ちゃん?」

宮藤「えっ?あっ……ごめん、何?」

リーネ「だから、私たちは基地の中に戻ろうよ」

宮藤「う、うん。そうだね……。戻ろう」

リーネ「じゃあ、行こっか」

テクテクテクテク……

宮藤(俺さん……。私にできることは……)

リーネ「…………」


930 :試作な俺-26話:2011/10/28(金) 19:49:46 ID:92.Xy7RE

<ロマーニャ近海>


坂本「サーニャ、敵の位置は?」

サーニャ「(キュィーン……)・・・ネウロイは前方雲の中、距離凡そ25000。低速でロマーニャ基地へ向けて侵攻中。情報の乱れがあるため数特定出来ませんが、恐らく1機です」

ミーナ「1機とは言え油断は出来ないわね……。各員は慎重に」


バルクホルン「久しぶりの実戦だ、腕が鳴る……!遅れるなよハルトマン!」

エーリカ「りょーかい。いつになく気合い入ってるねトゥルーデ」

バルクホルン「当然だ。私たちの後ろにある基地には俺や宮藤たちが……、そしてロマーニャがあるんだ!絶対に負けられない!」

エーリカ「うん。そうだね……!」

バルクホルン(絶対に守ってみせる……!)


ルッキーニ「んもぅー!あんなにコテンパンにされたのにまたロマーニャに来るなんてーっ!」

シャーリー「向こうが懲りないんなら何度でも倒せばいいさ。私たちがな!」

ルッキーニ「うんっ!!」


エイラ「サーニャ、疲れたりしてないか?眠くないか?お腹減ってないか?」

サーニャ「ありがとうエイラ。大丈夫」


坂本「ペリーヌは私たちの後ろにつけ。頼んだぞ」

ペリーヌ「お供させて頂きますわ少佐、中佐」


931 :試作な俺-26話:2011/10/28(金) 19:51:51 ID:92.Xy7RE

坂本「サーニャ、敵は?」

サーニャ「(キュィーン……)・・・ネウロイは現在───」

魔導針を使ったサーニャが状況を報告しようとした時、エイラの未来予知に ”何か ”が引っ掛かった



エイラ「ビ、ビームだ!ビームが来るゾ!極太のヤバいヤツが来る!!」

ミーナ「っ! ブレイク!」


推奨BGM的なもの 


即座にミーナが指示を出し、編隊飛行を行っていたウィッチーズは即座に広く散開する


その直後───


ズゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォーーッ!!!!!



つい先ほどまでウィッチーズが飛んでいた空間を、大出力の極太ビームが撃ち抜く。ネウロイによる狙い撃ちの先制攻撃だった


ルッキーニ「わあああああ!?危なかった!あんなの防げないもん!」

バルクホルン「この長距離攻撃……相手は並みではないぞ!注意しろ!」


932 :試作な俺-26話:2011/10/28(金) 19:53:32 ID:92.Xy7RE

坂本「くっ……!」 スッ

坂本は眼帯をずらし、魔眼で敵を確認する

坂本「・・・・!! あれは・・・」

ミーナ「少佐、何が見えたの?」

坂本「気をつけろ。どうやら今回の敵は……我々の因縁の相手のようだ」

ミーナ「え・・・」


ビームで雲が吹き飛び、徐々に敵の姿が露わになる。そしてミーナが見た丁度その時、そのシルエットが正確に浮かび上がった


ミーナ「あれは・・・」

坂本「・・・そう、 ” パトゥーリア ” だ」


パトゥーリア級「━━━━━━━━━━!!!」 ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・・・!!!


現れたネウロイは、以前ストライクウィッチーズに敗北を味あわせて窮地に陥らせた難敵、俺と坂本が連携してようやく倒した超大型ネウロイ、『パトゥーリア』だった


933 :試作な俺-26話:2011/10/28(金) 19:55:35 ID:92.Xy7RE

エーリカ「何で・・・!コイツはあの時、確かに倒した筈なのに!」 (※13話)

バルクホルン「同タイプということか……」

ペリーヌ「あれがパトゥーリア? 確かあのネウロイは半円形の要塞型だった筈では……」

エイラ「そうか、ツンツン眼鏡は初めて見るんだったナ。アイツ移動するときは形を変えるんだヨ」

坂本「ミーナ、気がついているか?」

ミーナ「ええ。このパトゥーリアは前に倒したのよりも、一回りほど大きいみたい……」

ミーナ「さっきの長距離ビームといい、同タイプでも前回より強力な個体のようね」

坂本「厄介な奴が更に厄介になったな……。黄泉帰ってきたということか」

シャーリー「リベンジマッチがお望みなら受けてやるさ。地獄に送り返してやる……!」

ルッキーニ「一度倒した相手だもん!今回だって……!」


パトゥーリア級「━━━━━━━━━━━!!」 ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・・・!


パトゥーリアの表面装甲下部が僅かに開き、内部から多数の小型機が出現する

エイラ「ゲッ、そうだ。コイツ中に小型機隠しているんだった……」

ミーナ「……小型ネウロイ、数150。やはり前よりも多いわね」

坂本「だが、今回も前回と同じだ。今確認出来たがやはり奴の中は空洞……、表面装甲さえ突破すれば倒せる!」

ペリーヌ「なるほど……。流石ですわ坂本少佐」

坂本「よし、あの時と同じ作戦で行く。本体からの攻撃を回避しつつ護衛の小型機たちを突破、一点集中攻撃で表面装甲を破壊し、コアを直接叩く!」

ウィッチーズ『了解!』

坂本「行くぞっ!」


934 :試作な俺-26話:2011/10/28(金) 19:57:33 ID:92.Xy7RE

─────

ズガガガガガガガガガガ!!

小型ネウロイ「」 パシュン

バルクホルン「やっと10機・・・!」

エーリカ「コイツら変にすばしっこいし、明らかに前の子機より強いよぉ~!」

バルクホルン「全部倒していたらキリがない!早く本体を・・・!」


ズガガガガガ!ズドドドドドド!ズガガガガガガガガガガ!!


手強くなった子機を何とか突破し、とうとうウィッチーズはパトゥーリアへ取り付いた


坂本「コアは同じ、中心部上方だ!タイミングを合わせて───」


坂本「撃て!!!」


ズドドドドドド!バラララララ!ズガガガガガガガガガガ!!ドシュドシュドカァァン!! ズバァンッ!!!


全員の銃撃と坂本の烈風斬が、パトゥーリアの表面装甲に炸裂した


935 :試作な俺-26話:2011/10/28(金) 19:58:06 ID:92.Xy7RE

爆煙が晴れ、攻撃された箇所が露わになるが───

サーニャ「そんな・・・」

エイラ「嘘……ダロ……」


パトゥーリアの表面装甲には、傷一つついていなかった


坂本「馬鹿な……今の攻撃は、私たちの最大火力だぞ!?」

シャーリー「防御力まで上昇しているってのか・・・!ただでさえ元が異常に固いってのに!」

坂本「くっ…、もう一度攻撃を───」


パトゥーリア級「━━━━━━━━━━」


ギュイーン・・・……!ギュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!



パトゥーリアの表面装甲が大円形に赤く輝き、そこから無数のビームが放射状に発射されてウィッチーズを襲う


サーニャ「きゃっ!」

エイラ「サーニャ危ない!」

ルッキーニ「拡散ビーム!」

シャーリー「くっそ、またコレか!」


小型ネウロイ「─────!」

小型ネウロイ「───!───!」

小型ネウロイ「──────────」

小型ネウロイ「────────!!」

小型ネウロイ「───!─────────!!!」


バルクホルン「くそっ、これでは・・・!」

──────────


936 :試作な俺-26話:2011/10/28(金) 19:59:35 ID:92.Xy7RE

<同時刻・ロマーニャ基地>

ガチャッ

リーネ「大変だよ芳佳ちゃん!」

宮藤「リーネちゃん?」

リーネ「インカムで戦況を確認していたんだけど、よくない状態みたいなの。このままじゃミーナ中佐たちが危ないよ」

宮藤「! そうなの?」

リーネ「うん。ノイズが大きくて詳しくは分からなかったけど、現れたネウロイが強くて苦戦しているみたいなの」

リーネ「何でもネウロイの装甲が凄く固くて、破るには火力が足りないって……」

宮藤「! 火力が足りない……」

宮藤(私たちの中で一番火力があるのは、俺さんのバスターライフル。だけどあの武器は俺さん以外には扱えない……)

宮藤(……このままじゃ駄目だ)

リーネ「どうしよう芳佳ちゃん。私たちも何とかして───」

宮藤「」 ダッ!

リーネ「芳佳ちゃんどこへ行くの!?」


宮藤(そうだ……駄目だよ。このままだなんて駄目)

宮藤(俺さん……!)

タッタッタッタッ……

─────


937 :試作な俺-26話:2011/10/28(金) 20:01:35 ID:92.Xy7RE

<基地内・病室>


俺(なんだったんだろう、さっきの警報……。何か起きているのかな)

俺(聞いたことがあるような音だった……。でも、やっぱり思い出せない)


俺「バルクホルンさん、どうしてるかなぁ……」

俺「…………」


俺(何でこんなに……あの人のことが気になるんだろう。まだ会って間もないのに)


俺(僕にとって……あの人は一体どういう存在だったんだろうか……)

コンコン、ガチャッ

助手「お薬の時間ですよー」

俺「うっ……、もうそんな時間ですか」

助手「はい。やっぱり嫌ですか?」

俺「嫌と言うか……少し苦手です。そんなに苦いものを飲んだのは、多分初めてだったので」

助手「言うじゃないですか、『良薬は口に苦し』って。これも体の為ですよ」

俺「そうなんでしょうけど……。なんだか『クスリ』って言葉を聞くと、胸の中がざわざわすると言うか、悪寒が走ると言うか……なんだか嫌な感じになるんです」

助手(断片的に記憶が残っているから、その影響が出ているんだろうね……)

助手(今まで散々、薬で苦しんできたから……)

俺「……すいません、せっかく用意して貰ったのに、文句なんか言って。飲ませて頂きます」

ゴクゴク

俺「……やっぱり、苦いものですね」

助手「結構なことじゃないですか。苦味や痛みを感じることが出来るってのは、いいことだと思いますよ」

助手「何も感じなくなってしまうなんてことよりは……ずっといいです」

俺「・・・?」


ガチャッ!


宮藤「俺さん!!」

助手「!」

俺「宮藤……さん?」


154 :試作な俺-26話:2011/11/14(月) 18:01:22 ID:/UXzTjGM

助手(宮藤さん……)

俺「どうしたんですか宮藤さん。そんなに急いで……」

宮藤「俺さん……話があるの」

俺「話……?」

助手「……私は席を外しますね」 スタッ

俺「えっ・・・?あ、はい」


ガチャッ、キィ…………ガチャン


助手「……ふぅ」

助手(宮藤さんのあの目……そういうことだよね、多分)

助手(これはあの子も、また覚悟を決めなくちゃならないってことかな)

助手(それなら私は……私に出来ることをしなくちゃ) クルッ

タッタッタッタッ……


─────


155 :試作な俺-26話:2011/11/14(月) 18:03:34 ID:/UXzTjGM

<病室>

俺「それで宮藤さん、話って……」

宮藤「みんなが危ないの。俺さん、力を貸して……!」

俺「え……」

宮藤「ネウロイが現れたから、みんなが戦っているの。だけどそのネウロイが強くて───」

俺「ちょ、ちょっと待って下さい! ネウロイって、まさかあのネウロイ!? それに戦ってるって……」

宮藤「俺さん、私たちはウィッチなんだよ。坂本さんも、リーネちゃんも、そして私も」

俺「!」

宮藤「第501統合戦闘航空団、通称 ” ストライクウィッチーズ ” 。覚えていない?」

ズキッ・・・

俺「う"っ……」

俺(また、頭痛が……)

宮藤「どうやら……完全に忘れてるってわけじゃないみたいだね」

俺「……待って下さい。僕はあなた達の仲間だってことを聞いていますが、じゃあ、僕は……」

宮藤「うん。聞かされている通り、俺さんは私たちの仲間。少しだけ特別な力を持っていたウィッチだったんだ」
最終更新:2013年01月29日 15:37