『もう一度、ここから』 


27話のサブストーリーです。スレには投下せず、こちらに直接載せます
内容はあくまで本編の補完がメインとなっておりますので、ご了承ください




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+ 助手との和解

パトゥーリア級撃破後で、データ処分立ち会い前。
26話と27話の合間の話になります





<基地内・俺の部屋>


俺「これを飲むのか……」

助手「はい。1日三回、食後に服用して下さい」

俺「はぁ……やっとクスリ漬けから解放されたと思ったのに、またクスリかぁ」

助手「強化ウィッチから強引に人間に戻るようにしましたから、やっぱりこういった薬による助けは必要なんです。アフターケアって奴ですね」

俺「ふーん……」 ゴクッ、ゴクッ

俺「あれ、意外とイケるな。クスリなのに」

助手「どうせ飲むのならって思いまして。少し味にも工夫を施してみました♪」

俺「へぇー。じゃあコレ、あんたが作ったんだ」

助手「はい。素材となる物はラオホウに沢山残っていましたからね。あなたの体の状態を確認して、最適な物をお届けできますよ」

俺「今更だけど、あんた何でも出来るんだな。兵器開発にストライカー整備にウィッチ研究に……。凄い優秀じゃん」

助手「そうですか?ありがとうございますっ」 テレテレ

俺(まぁ、優秀じゃなければあのジジイが自分の部隊に招いたりするわけないか……)

俺「……そう言えば、計画は完全に潰れたって聞いたけど、あんたらのこれからの処遇ってどうなるんだ?」

助手「それは……まだ分かりません。Aさんも目を覚まさないままですし。状況が整理され次第、あちらからの正式な指令が下ると思います」

俺「もう会えない、何てこと無い……よな」

助手「大丈夫……きっと、大丈夫ですよ」

俺「そっか……」

助手「あとどのくらいここに居られるかは分かりませんが……ここに居る間は、私がしっかりあなたの体の面倒を見ますからっ」

助手「短い間かもしれませんが、よろしくお願いしますね。俺」 ニコッ

俺「ああ。よろしく、助手」 ギュッ





+ 5年前の真実

投下時にはカットした、27話ページ1の研究者との会話シーンです
25話の回想と比べてみるとわかりやすいかもしれません







<ロマーニャ基地内・一室>


俺「『身から出た錆』の真実……?どういうことだ」

研究者A「俺はよォ、戦前からサリヴァン博士……いや、ダルシム大佐には世話になってな、何度か家に招かれたこともあった」

俺「! じゃあ……」

研究者A「ああ、知っているんだよ。昔のお前やお前の母親……そして、5年前のあの日に何があったか」

俺「…………!」

研究者A「話してやる。Cが言ったような不完全じゃねぇ、完全なる事実をな」




~~~~~~~~~~1940年(五年前)・冬~~~~~~~~~~




<某国・某研究所>


研究者D「またまた失敗。これで第53次実験も失敗か……いつになったら成功するんだろうな」

研究者E「あの様子じゃ今頃少佐は中将に大目玉くらってるだろう。こうもうまく行かないんじゃあ」

研究者F「仕方ないですよ。ネウロイの力を宿したウィッチを作り出すなんて、元々夢みたいな計画なんですから」

研究者G「俺たちが作っているのは人ではない”ナニカ”。一筋縄でいかないのは最初からわかっていただろ」

研究者A「だが実際問題、このままじゃ実験打ち切りの可能性もある。早く成果を出さなくてはな」

研究者D「おいおい打ち切りって……マジかよ」

研究者E「まぁ確かに?アルタネィティブ中将の堪忍袋の緒も、そろそろヤバそうだったからな。あの人も金と人員をこの計画に割いているんだし」

研究者A「ウダウダ言ってても始まらねぇ。結局はやるしかねぇさ」 スタッ

研究者H「どこに行くんだ?」

研究者A「……タバコ吸ってくる」 


ガチャッ、キィッ……ガチャン!


─────


<研究所・エントランス>

研究者A「…………」 フゥーー……

研究者A「……何の用ですか?」

ザッ

警備兵「ご休憩中の所を失礼します。実はあの……」

研究者A「ああ、いいですよ分かっています。また来たんでしょう?」

警備兵「はい」

研究者A「なら、私がでます。それでいいですよね」

警備兵「お願いします」




<入り口>


オレ「こんにちは、Aさん」 ペコリ

研究者A「こんにちは、オレ君。今日もお父さんに会いに来たのかい?」

オレ「はい。それであの、父さんは……」

研究者A「今日は実験があって色々と忙しくてね……。会うのは少し難しいと思う」

オレ「……そうなんですか。じゃあボク、今日のところは帰ります」

研究者A「えっ?」

オレ「父さんの……邪魔にはなりたくありませんから。すいません」

研究者A「あー……オレ君。さっきはあんなこと言ったけどさ、やっぱり会えるかもしれない」

オレ「えっ……いいんですか?」

研究者A「ははっ、何を言ってるんだ、俺とオレ君の仲じゃないか。わざわざお父さんに会うためにこんな所まで来たんだろう?」

オレ「は、はい」

研究者A「なら遠慮すること無いじゃないか。……ああ、ただし会える時間は限定されちゃうかもしれないけど、それでもいいかい?」

オレ「はいっ、ありがとうございます……!」

研究者A(……大佐も随分と慕われているんだな)

研究者A「じゃあ、ひとまずついて来てくれ」

オレ「わかりました」 コクリ


テクテクテクテク……


オレ「あの、Aさん」

研究者A「ん、どうしたんだい?」

オレ「聞いても……いいんですか?」

研究者A「何をだい」

オレ「父さんは、この研究所で……何をしているんですか」

研究者A「」 ピタッ

オレ「す、すいません、急に変なことを聞いて。でも、父さんに直接聞いても、いつもはぐらかされてしまって……」

研究者A「なるほどなー……」

研究者A(そりゃあ少佐も、『ウィッチを超越したウィッチを作り出す研究していて、もうその過程で50人以上が死んでいる』なんて言えないよな……)

研究者A「……いいかい、オレ君。君のお父さんはね、いま物凄ーく難しい実験に挑んでいるんだ」

オレ「…………」

研究者A「だけど、絶対に諦めたりはしない。何故なら私たちは、この研究が何時しか身を結び、やがて世界を救うと信じているから」

オレ「じゃあ、父さんは世界の為に……」

研究者A「そうだよ。少佐は世界中に居る大勢の人々を救うために、人々のために働いているんだ」

オレ「人々の……ために」

オレ「……わかりました。ありがとうございます、Aさん」


テクテクテクテク……


研究者A「じゃあ少しここで待っていてくれ。少佐を呼んでくる」

オレ「はい。お願いします」

研究者A(……うまく誤魔化せられたか?)

オレ「…………」



─────そして、オレとダルシムの面会後



研究者A(もう帰らせたのか……。まだ15分ほどしか経っていないぞ)

研究者A「良かったんですか? あんなに早く帰して……」

ダルシム「……ああ」

研究者A「わざわざ月に何回も、まだ子供で体も弱いというのに遠路遙々少佐に会いに来ているのに……」

ダルシム「……オレにこの件には関わって欲しくない。これは私の復讐……巻き込めん。アイツには復讐なんて考えずに、普通に育ってもらいたいんだ」


ダルシム「カオリを失い、もしもオレまで失ってしまったら、私は…………」

研究者A「……少佐」



─────


研究者A(オレ君には世界のためとか言ったが……少佐は復讐という言葉を俺に名言してしまった)

研究者A(我々の中に世界のためという志は勿論ある。だが、その行動原理となっているのがネウロイへの 復讐……” 憎しみ ” という黒い炎のような感情だ)

研究者A(ネウロイを根絶やしにして我々は復讐を果たす。その結果この世界は救われる。そう、所詮は結果論だ)

研究者A(そしてこの部隊に居る者の殆どが、ネウロイによって大事な者を亡くしている。もしくは、似たような暗く深い事情を抱えている)

研究者A(そう言った根底的な気概が無ければ、気の狂ったような実験計画に協力できる訳がない、か……)

研究者A(だが……もはや流れは止められない。実験は始まっている)

研究者A(賽は投げられた。実際に犠牲者を出した今、もう後には引けない)

研究者A(死んでいった者達を想うならば……やるしかないんだ)




<一週間後(実験継続の最後のチャンスの日)>


研究者A(あれから結局、54、55、56回目の実験も失敗した……。もうあとが無い)

研究者A(今日の57回目の実験が最後のチャンス……少佐は前回そうアルタネィティブ中将に言われてしまっている。失敗は絶対に許されない)

研究者A(少佐が言うには最適な被検体さえいれば成功の可能性は大きく上がるらしいが……結局確実な者は見つからなかった。果たしてうまく行くだろうか)

研究者A(いや……それでもやるしかない。人を50人以上も殺しといて、今更実験打ち切りなんかにしてたまるか……!)


テクテクテクテク……


オレ「あの・・・」

研究者A「君は……オレ君」

オレ「こんにちは。父がいつもお世話になっています」 ペコリ

研究者A「あ、ああ」

オレ「それであの、父さんに会いたいんですけど……今、会えますか?」

研究者A「悪いけど今日は大事な実験があるから、しばらくは無理だと思う」

研究者A「応接室に通すよ。待てるのならそこで待てばいい」

オレ「あっ…大丈夫です。前にも行ったことあるんで、1人でも行けます」

研究者A「そうか……何かわかったら伝えに行くよ」

オレ「お気遣いありがとうございます。失礼します」 ペコリ


テクテクテクテク…………


研究者A(……礼儀正しいいい子だよな。俺の娘も生きていたらあのくらいの年か)

研究者A(もしもこれで実験が終わりになったら……オレ君も少佐の傍に居られるのだろうか?)

研究者A(いや……オレ君には悪いが、ここは譲れない。実験は成功させる)

研究者A「……さてっ、そろそろアルタネィティブ中将が見えるころだ……。急がねーと」




~~~~~~~~現在~~~~~~~~



研究者A「思えば俺はあの時、心の中で燻ぶっている薄黒い感情に気がつきかけていたのかもしれない。だけど向き合おうとしなかった」

研究者A「もしもその感情を自覚し、気持ちの整理が出来ていたら……あんなことにはならなかったかもしれねぇ。まぁ、今更そんな事を言っても遅いけどな」

俺「…………」

研究者A「それじゃ、続きを話すぞ」





~~~~~~~~再び1940年~~~~~~~~




<研究所・エントランス>


研究者A(あれ、来ねーな……)

研究者E「あ、お前こんな所で何やってるんだよ。アルタネィティブ中将ならもうみえたぞ」

研究者A「は?」

研究者E「予定より早く到着されてな。たったいま応接室に通して来たところだ」

研究者A「ちょっ……待てよ。部屋には誰か居なかったのか?」

研究者E「えっ?いや……確認してないけど」

研究者A「……チッ」 ダッ

研究者E「あっ、おい」



<応接室前>


研究者A(あのアホ……部屋にオレ君が居ることも確認せずに中将を通したのかよ。じゃあ今、この中には2人が居るってことか……?)

研究者A(とにかく中に入って確認を───) スッ


室内からの声<……です。 なるほ…………


研究者A「っ…………」 ピタッ


ドア越しに話し声が聞こえ、思わずAはノックしようとした手を止めてしまう


研究者A(……2人が話しているのか?)


カチャッ……


Aはそっとドアノブを握ると、中の人間に気づかれないように少しだけ扉を開けて内部を覗き込んだ




<応接室内>


オレ「い、いきなりすいません。おじさんって……父さんよりも、ずっと偉い軍人さんなんですよね?」

太った男「ん?・・・ああ。私は中将だからな。君の父の上官に当たるな」

オレ「そうなんですかぁ……」

研究者A(……なんだ、何の話しをしているんだ)←ドアの陰


オレ「・・・・・」

オレ「あ、あのっ…………」

太った男「んん?」

オレ「聞いてもらいたい話があるんです…………」


研究者A(……話だと?)


太った男「話……?」


オレ「あの、その…………」


太った男「…………」


オレ「……お願いします!父さんを……父を止めて下さい!」 バッ!


太った男「!」


オレは太った男に対して深々と頭を下げた


研究者A(なっ……!?)

太った男「……どういうことかね」

オレ「ここの研究者の人には……父が世界のため、人々のために働いていると聞きました」

オレ「でも、何となく分かってしまったんです。何度か父さんと会ううちに……。あの人、嘘を吐くのが下手ですから」

研究者A(まさか……)

オレ「父さん……何か良くないことをしているんですよね。そんな気がしてならなくて……」

研究者A(俺も少佐も、誰一人オレ君には実験の内容を教えていない。なのにこの子は、直感だけで父の抱える闇に気がついたというのか……!?)

太った男「…………」

オレ「母さんがネウロイに……殺されてから、父さんは変わってしまいました。急に老けちゃって、以前よりもずっと研究にのめり込むようになって……」

オレ「『母さんの仇は父さんが必ず討つ』。初期にはそう言われたこともあります」

研究者A(少佐……)

太った男「君は、ネウロイに復讐したと思わないのかい。母を奪ったネウロイ共に」

オレ「……ボクだってネウロイが憎いです。だけど……だけど!」

オレ「それ以上に、父さんに変わって欲しくないんです!道を誤って欲しくない。
    母さんの仇を討つためだからって、誰かを悲しませるような真似をして欲しくない!優しい父さんのままでいて欲しいんです……!」

研究者A(オレ君……。君はそこまで少佐のことを)

研究者A(だけど……駄目だよ) チラッ

太った男「…………」

研究者A(君の願いはその男には……アルタネィティブ中将には届かない)

研究者A(何故ならその男は、この実験計画の立案者であり、支援者であり、影の指導者である。相談する相手が悪かった)

研究者A(中将が自らの計画を潰すような真似をするわけがな───)

太った男「いいだろう」

研究者A(!? なっ……)

オレ「い、いいんですか!?」

太った男「ああ。その為に父の上官である私に頼んだのだろう?」

オレ「……はい。ボクが父さんに言っても、はぐらかされるか相手にされないと思って。それならボクよりも父さんの上の御方にお願いした方がいいと……」

太った男「なるほど、そういうことなら任せておけ。……だが、一つばかり条件がある」

オレ「条件……ですか?」

太った男「なに、そう難しいことではないよ。君になら出来ることだ。父上を止めたいのだろう?」

オレ「……はい。ボクに出来ることなら何でもやります。やらせてください!」

太った男「いい返事だ。でも、そんなに気を張る必要はない。君は体を貸してくれるだけでいいんだ」

オレ「体……何をするのですか?」

太った男「心配は要らない。すぐに分かるさ……」 ニヤリ

研究者A(!)

研究者A(体を貸す……?それに、あの隠れ笑い……)

研究者A(まさか中将は、オレ君を被検体に実験を行うつもりなのか……!?)


太った男(ダム・ダ・ダルシム……いや、ロード・サリヴァン。失敗続きの貴様をやる気にさせてやる)

太った男(貴様は男で、しかも齢50間近なのにも関わらずその身に魔法力を宿していたよな?)

太った男(性別の壁も歳の壁も乗り越えて宿している魔法力……。そして貴様の血を引くこの少年にも確か魔法の素質がある。つまり、被検体としての素質は高い筈だ!)

太った男「さぁ……行こうか。私について来たまえ」

オレ「はい」


太った男(自分の子の命が懸かっているのなら……貴様も死に物狂いで実験を成功させようとするだろう)

太った男(さぁ……早く戻って来い。でないと貴様の息子は……)


太った男(死ぬことになるぞ)


テクテク


研究者A(! ヤバい!) ササッ


ガチャッ、キィッ……ガチャン!


研究者A(…………)←物陰


テクテクテクテク……


研究者A(行ってしまった……。あっちには実験室がある)

研究者A(間違いない。あの男はオレ君を強化ウィッチの被検体にするつもりだ。彼には魔法の素質もあるし、間違いない)

研究者A(中将を止めなくては……。少佐が戻るにはもう少し時間がかかる。俺が今止めるしかない……!)

研究者A(早く2人を追いかけねぇと───)


ググッ……


研究者A(!? なん、で……。どうして足が動かねぇんだよ!)


ググッ……


研究者A(くそっ!他の連中じゃ中将に言いくるめられちまう。俺が行かなくちゃならねぇってのに!)


研究者A(動け!動けよ!このままじゃオレ君が死んじまう!このままじゃ……!)



〈……いや、いいだろ。何であのガキを助けなくちゃならねぇんだよ〉



研究者A(!? 俺は今、何を考えた……)


〈あのガキは少佐に実験を止めさせようとしてるんだぜ? だったらここで消えてもらった方が好都合だろうが〉


研究者A(やめろ……考えるな!余計なことを考えるな!強化装置に繋がれちまったらお終いなんだぞ!)


〈それに、ズルいよな。俺は女房も娘も失って、他の研究者連中だって家族を亡くした奴ばかりなのに……少佐だけにはオレ君が居る〉


〈実験じゃあ身寄りの居ない被検体のガキ共を何十人と殺しといて、自分の息子だけは汚さず関わらせず綺麗なままにしておこうってんだ〉


研究者A(……!!)




〈そんなの……許せるか?〉




─────



<三十分後・実験室>


ダルシム「どういうことだ、これは……」

オレ(実験カプセル内)「…………」

ダルシム「何故・・・何故オレが強化装置に繋がれているぅ!!?」

研究者A「少佐……」

ダルシム「何をしているんだ貴様らはァ!!オレに何をしたぁ!」

研究者D「ち、違うんです少佐。これは……」

太った男「私が命じたんだよ、ダルシム少佐」

ダルシム「アルタネィティブ中将……!?」

太った男「部下達を責めないでやってくれ。彼らは私の命令に従ったまでだ。元々オレ君には魔力の素質があった筈だし、ちょうどよいのではないか?」

ダルシム「中将……。いくら中将とは言えども、こんな事を……!!」 ギリッ

太った男「おおっと勘違いするな。この状況は、彼が願ったことなのだから」

ダルシム「何・・・!?」

太った男「……そう。これは彼……オレ君が自ら望んだことだ」

太った男「オレ君は私に……自分を強化ウィッチの被検体にしてくれと懇願したんだよ」


ダルシム「なっ・・・何をバカな!」

太った男「彼は私に相談したよ。 ”母の仇を討ちたい。自分自身の手でネウロイを滅ぼしたい。その為にも力が欲しい ”と」

太った男「そして彼は、我々がしていることにも何となく気がついていた。 父に頼んでも絶対に反対されるだろうから、上官であるこの私に頼んだのだ」

太った男「『ボクを被験体として使って下さい』・・・とな」

ダルシム「あ、有り得ん。そんなことが……!」

太った男「少佐。信じようと信じなかろうと、これは揺るぎない事実なのだ。そして既に……賽は投げられた」

ダルシム「!」

太った男「既にオレ君の強化処理は始まっている。もう引き返せん。ならば……君がすべき事は1つだろう?」

研究者A(強化装置に繋がれてそれが動き出した今、被検体を助けるには強化処理を成功させる以外に手段は無い……)

ダルシム「・・・どけ、私が自分で操作する」

研究者E「は、はい」

ダルシム「…………」 カタカタカタカタ……


研究者A(少佐……申し訳ありません。本当に申し訳ありません)


研究者A(俺は……あなたの息子を見捨てました)



~~~~~~~~~~~~~~~



研究者A「Cの野郎が言っていたことは嘘だ。お前は決して自ら強化ウィッチになるのを望んだわけではない」

研究者A「アルタネィティブの野郎に騙されたんだよ。父親を想う気持ちを利用されてな」

俺「…………」

研究者A「俺は自覚は無かった……いや、自覚しようとしなかったが大佐に嫉妬していたんだ。そしてこの醜い感情が、お前を見捨てさせた」

研究者A「お前に忘れられて虚ろになってた大佐を見て……俺は後悔した。そして、一生この人について行こうと決めた」

研究者A「これが五年前の……あの日の真実だ」

俺「俺は……騙されて強化ウィッチに……」

研究者A「……そうだ。そしてお前は強化代償として記憶を失った。大佐はお前のことを息子として見るのをやめ、ただの実験体として見るようになった」

研究者A「だが……あの人にも少し甘いところがあるしな。完全に割り切ることは出来なかったみたいだ」

俺「えっ……?」

研究者A「あれでも大佐、他の試作体よりはお前を気遣ってたんだぜ? ま、研究者である俺目線からの話だがな」

俺「……それは俺が唯一生き残ってた貴重な試作体だからだろ」

研究者A「それもある。だがな……以前のあの方は本当に家族想いだった。不器用な所もあったが、それは本当だ」

俺「アイツが家族想い……俺のことは捨てたのにか」

研究者A「それはお前という存在が別物に変わっちまったからだよ。……まぁ、それでも納得は出来ねぇか」

俺「…………」

研究者A「……もう少しだけ昔の話をしてやる。さっき、俺は昔何度か大佐の家にも行ったことがあるって言ったよな? つまり、お前の母にも会ったことがある」

俺「……母さんに」

研究者A「お前の母親、カオリさんは綺麗な黒髪をもった扶桑美人でな、まさに大和撫子と呼ぶに相応しい人だった」

研究者A「容姿だけでなく、心までとても美しい人で……当時の大佐は20歳くらいも年下で美人の嫁さんゲットしたって何度も小躍りしてたよ。あの感情をあまり出さない大佐がだぜ?」

研究者A「カオリさんは本当によくできた人で、大佐も尻に敷かれ気味だった。あの人の作る扶桑料理は絶品で、俺も何度か食べさせてもらった」

俺(扶桑料理……宮藤と同じか)

研究者A「そしてお前が生まれた。子宝にも恵まれて、本当に……本当に幸せだったんだと思う。六年前のあの日までは」

俺「ネウロイのオストマルクへの侵攻」

研究者A「そうだ。その日、運悪く大佐達はネウロイの侵攻した区域に居た。そしてカオリさんは……命を落とした」

俺「…………」

研究者A「カオリさんは……お前の母親は、大佐にとって唯一無二の存在だった。そう思える」

研究者A「だから大佐はあの日から狂ってしまったように思える。以前と同じに見えて、どこか違う……」

研究者A「決して大佐はお前を愛していなかったわけではない。ただ、あの人への愛が深くなりすぎたんだ」

研究者A「だからそれを失って……胸にぽっかりと空いた穴を埋めることが出来ないまま、歪んで行ってしまったんだろうな……」

俺(ダルシム……)

研究者A「っと、少し長くなりすぎたな……。これで昔話は終わりだ」

研究者A「生き証人が俺だけだった以上……お前には伝えておこうと思ってな」

俺「……今の話は全部」

研究者A「勿論、全て事実だ。今更お前に嘘を吐く必要なんざない」

研究者A「……何だ。またショックで記憶喪失にでもなんのか」

俺「ならねぇよ。ならねぇ、けど…………」

研究者A(ショックだったのは確かってか)

俺「……もう、自分自身でも何が何だか分からない。頭ん中がグチャグチャだ」

研究者A「俺が言いたかったのは以上だ。確かに伝えたぞ」

研究者A「真実を知ってどうしたいかは、じっくり考えるんだな」


テクテクテクテク……


俺(父親、か・・・。そうだよな)

俺(俺自身がどう思っていても……アイツが父だってのは変えようの無い事実だ)

俺(そしてあのインペラトールはアイツが開発した平気だ。それなら……)

俺(あの兵器に引導を渡すのも俺の役目だ。子として、父の残した兵器を野放しにしてはおけない……!)


最終更新:2013年01月29日 15:42