第1話 『怪盗紳士と没落貴族』

ガリア パ・ド・カレー

ペリーヌ『ふぅ・・・』

ネウロイからの母国の奪回、自らの本懐をなしえた彼女は、復興に向けて活気づく人々を見て、己の汗を拭った

リーネ『御苦労さま、ペリーヌさん』

そう言って飲み物を差し出してきたのは、友人であり、戦友でもあるリーネだった、ストライクウィッチーズが解散した後も彼女はガリアの復興に協力してくれている

ペリーヌ『ありがとう、リーネさん』 ニコッ

水を受け取りながら、彼女は二つの意味を込めた感謝の言葉を述べた

リーネには本当に感謝している、ウィッチーズにいた頃はガリア奪回のために己に余裕が持てず、芳佳共々彼女には強く当たってしまうことも多々あった、しかし

ペリーヌ(そんな私に、ここまで協力してくださって・・・全く、頭が上がりませんわ)

ペリーヌ(そんなリーネさんのためにも、一刻も早くガリアを復興させなくてはなりません!!) 

ペリーヌ『さぁ休んでいる暇なぞありませんわ!!行きますわよ!ペリーヌ!クロステルマン家の誇りにかけて!!!』

そう決意をあらわにする彼女に、リーネや街の人々は本当の貴族のあり方

真の『ノブレス・オブ・リージュ』を見た



夕刻 パ・ド・カレー郊外

リーネ『復興作業、順調に進んでますね、ペリーヌさん』

ペリーヌ『ええ、本当に』

本日の復興作業を終え、家路を辿る二人

ペリーヌ『これも皆さんの努力の結果ですわ』

リーネ『ふふっ』(1番頑張ってるのはペリーヌさんなのに)

リーネ(そんな事、口にも出さないんだから)

そんな二人のすぐ目の前、大量の物資を運ぶ少年が目に入る、ガリア復興財団の人間だろう

ペリーヌ『また補給物資ですの?ありがたいですが最近あまりにも多すぎますわ、一体誰が?』

財団員『あぁ最近の補給物資は全て、同じ方から匿名でいただいております総額は1億を超えるとか・・・』

ペリーヌ『一体、どこの誰が?』

財団員『あくまで噂に過ぎませんが、怪盗紳士をご存じですか?』

ペリーヌ『ええ、パリを中心に活動する怪盗なんでも不可思議な術を使うと・・・つい先日もマリー・アントワネットの首飾りが盗まれたとか・・・』

リーネ『かっこいいですよね~!!予告状を出して、どんな厳重な警備もくぐり抜けてしまうんですから!!』

ペリーヌ『リーネさん、やっている事はコソ泥ですわよ』

リーネ『あ、ごめんなさい』

ペリーヌ『で、その怪盗紳士と補給物資に関係がおありなんですの?』

財団員『ええ、実はその匿名の方の寄付が行われるのは決まって怪盗紳士が出没した後なんです、それも盗まれた美術品とほぼ同価格の物資が送られます』

リーネ『やっぱり義賊って噂は本当だったんですね~!!』

ペリーヌ『補給物資はありがたい話ですが、そのような汚れた金でガリアの復興を行っていると考えると、おぞましいものですわね』

財団員『しかし、それが事実であれ、我々にとっては正直ありがたい話です、貴族の方々の多くは復興支援とは形だけで自分の財産を守ろうとする人々が多いですから』

リーネ『そんな人ばっかりじゃありません!!現にぺリー・・・』

ペリーヌがリーネの口を遮る

ペリーヌ『確かに、悲しい事ですがそれが現状です』

ペリーヌ『しかし、我々は誇りを失ってはならないと、私は思っております』

そう気丈に振る舞うペリーヌの姿が、リーネにはどこか疲れた様に見えていた




夕刻 ペリーヌ自宅

リーネ『た、大変!!』

リーネが慌てているのには理由があった

ペリーヌ『まさか私宛に届くとわ、思いもよりませんでしたわ』

ペリーヌ宛てに届いた手紙

そんなリーネとは裏腹に落ち着き払っているペリーヌ

差出人は有名人

リーネ『なんでそんなに冷静なんですか~!!』 アタフタ

その内容は

ペリーヌ『だって慌てても、明日にはいらっしゃいますもの』

【予告状
 明日の宵、クロステルマン家に伝わる家宝『白銀のレイピア』を頂きに参上する

 全てはガリア国民のために

 怪盗紳士                                】

ペリーヌ『怪盗紳士様が』

リーネ『とりあえず警察~!!』




翌日 ペリーヌ自宅

警察『全く、怪盗紳士の奴救国の英雄のクロステルマン嬢の家宝まで狙うとは!』

ペリーヌ『正直、そこまで価値のあるものでは無いのですが』

警察『奴も所詮コソ泥という事なのでしょう、我々が必ず守り抜きますのでどうかご安心を!!』

ペリーヌ『いえ、彼方がたは自宅の周辺の警備をお願いします』

ペリーヌ『あのレイピアは私の誇りですわ、私の手で守り抜いてみせます』

警察『し、しかし』

ペリーヌ『私はペリーヌ・クロステルマン、誇り高き青の1番ですわ!!』

ペリーヌ『コソ泥ごときに遅れを取る私ではございません』

警察『は、はい』




同日 夜 ペリーヌ自室

家宝のレイピアを手に持ち、ペリーヌは物思う

ペリーヌ『このレイピアは、他の家宝を全て手放し、ガリア復興支援に当てた私がどうしても手放せなかった物』

ペリーヌ『私が、クロステルマン家としての、貴族としての最後の証』

ペリーヌ『これが、盗まれれば、私は・・・』

ペリーヌ『もうこんなに・・・頑張らなくても・・・いいのかな?』

そう呟いた瞬間、開け放たれる窓

部屋に吹き込む風

怪盗『こんばんは、青の1番、あんたの誇りを頂きにきた』

顔には仮面

服は黒衣

足にストライカーユニットは履いた怪盗は、呆然とする彼女に、手を差し伸べた

それは救いか?

甘い誘惑か?

答えは、彼女にしか解からない



同時刻 ペリーヌ自宅周辺

警察『現れたぞ、怪盗紳士だ!!』

警察『あの野郎、またストライカーユニットで飛んできやがった!!』

警察『なんでもありか!?』

警察『いいから、早くクロステルマン嬢の部屋へ!!』

リーネ『ストライカーで飛んでる・・・・』

ブンブン

リーネ『いけない!ちゃんと作戦通りに動かなきゃ』




ペリーヌ 自室

ペリーヌ『紳士と言う割には、ずいぶん品の無い登場の仕方をなさいますのね』

怪盗『驚いた、ずいぶん落ち着いているんだな流石は救国の英雄ってところだ』

ペリーヌ『そんなことより、少し彼方とお話がしたいのですが、エスコートしてくださる?』

怪盗『またまた驚きだ、今度はデートのお誘いかよ』

バタバタ バタバタ

ペリーヌ『警察の方がいらっしゃいますわ』

怪盗『では喜んで、エスコートさせて頂くといたします』

ペリーヌは怪盗の手を取り、体を預ける

初めて抱きかかえられた男性は、少しいい匂いのするパリの大怪盗だった




ペリーヌ 自宅 上空

どこまで飛んだだろうか?もう警察は見当たらない

ペリーヌ『この辺りで結構ですわ』

小高い丘の、木の上に座るペリーヌ、怪盗は彼女の目線に高度を合わせている

怪盗『で、目的は?まさか本当にデート目的じゃあないだろう?』

ペリーヌ『当然ですわ、彼方、さっき私の誇りを頂くとおっしゃいましたわよね』

怪盗『ああ、白銀のレイピア、そいつは偉大なる救国の英雄を縛る鎖だ』

怪盗『あなたは、そのレイピアがあるせいでガリア復興の重圧を負わされているんだ』

怪盗『その、小さな体に、一体どれだけの苦しみを背負う気だ!?』

怪盗『だから、今日ここで、俺があなたの誇りという名の苦しみを盗む!!』

怪盗『だから、レイピアを渡しな』

再び手を差し出す怪盗

ペリーヌ『・・・』 わなわな

正直に言えば、嬉しかった自分の苦しみを理解してくれている人がいる事が

しかし、それよりも腹が立った、自分の生き方を否定されたようで

ペリーヌ『・・・』 ピコン

そう、この茨の道を歩む事は自分で決断した事

悩む事はあれど、後悔した事など一度も無い

この、誇りこそが、ペリーヌ・クロステルマンを作るものなのだから

ペリーヌ『馬鹿に・・・するなぁぁぁぁぁ――――――!!』

空気が震える

ペリーヌ『トネェ―――――ルッ!!!!』

雷鳴が走る

怪盗『やべっ!!』

怪盗とは思えない程の回避機動をとり、雷撃をかわす、しかし完璧には避けきれなかったようで、仮面が弾かれる

ペリーヌ『!?あなたは!!!!』

俺『・・・ちっ、会うのは2回目ですね、ペリーヌさん』

ペリーヌ『昨日のガリア復興財団の!!』

俺『今回の行動は余計なお世話だったって事か・・・』

俺『あーあ残念、あんた苦しんでるように見えたんだけどな』

俺『警察の方も集まってきたようだし、そろそろ失礼するかな』

ペリーヌの放った雷撃で居場所が知れたのか、回りを警察が取り囲んでいる

ペリーヌ『この数ですわよ、逃げ切れるんですの?』

俺『なぁーに、あんたの魔法を、少し借りるさ』

俺『こうかな?トネール!!』

ペリーヌは信じられなかった、なんせ己の固有魔法である雷撃を、只のコソ泥である彼が使用した事が、冷静に考えれば、ストライカーで空を懸駆ける事自体おかしいのではあるが

ペリーヌ『そんな!!』

俺『お、これ結構便利だな』

ペリーヌ『なぜ、あなたが・・・』

俺『安心しな、ちょっとあんたの魔法を盗んだだけだから』

俺『ちゃんと返してあるからさ』

俺『そんじゃ、また会えたらいいな』

そう言って飛び去ろうとする怪盗に、ペリーヌは答える

ペリーヌ『そうですわね、次に会う時は、パリかしら?』

ペリーヌ『だってあなた、明日にはバスティーユの塀の中ですもの』

俺『は?』

バンッ!!

銃声が響く

怪盗のストライカーが吹き飛ぶ

俺『狙撃された!?』

ペリーヌ『お見事ですわ、リーネさん』

そう言いながら、青の1番は美しいブロンドの髪を払った




翌日 ペリーヌ自宅

リーネ『す、すごい報道陣ですよ~ペリーヌさん』

ペリーヌ『全く、騒々しいったら無いですわね』

当然である、あの怪盗紳士を、あの青の1番が捕まえたのだから、どこもかしこも大騒ぎである

ペリーヌ『行動はともかく、優しい方でしたわね』

ペリーヌは男性に初めて抱きかかえられた感触を思い出しながら、報道陣にこう語ったという




パリ バスティーユ監獄

俺『懲役150年とかwwwもう死ぬじゃんwww』

看守『おい、お前に自由ガリア空軍大将が面会だ、出ろ!!』

俺『はぁ?軍のお偉い様がなんの用だよ』

看守『無駄口を叩くな!!早くしろ!!』

俺『はいはい』


獄長室

大将『君がパリの大悪党、怪盗紳士かね?ずいぶんと若いな』

俺『はぁ、何の用でしょう?』

大将『率直に言おう、君に取引を持ちかけにきた』

大将『勝手に調べさてもらったが、君には尋常じゃない量の魔力がある、その力を世界のために借りたいんだ』

俺『ウィッチになれって?』

大将『ネウロイ一機撃墜の度に、懲役を5年減らそう』

大将『君が義賊としてガリアの国を助けてくれていた事は周知の事実だ』

大将『今度は世界を助けてみないかね?』

大将『悪い話では無いと思うが』

俺『まぁ、自由になれるなら・・・ね』

大将『では行き先は・・・』



俺『もちろん、最前線だよな?』





次回予告

再結成されたウィッチーズに新しく組み込まれたのは懲役150年の犯罪者

そんな彼を不審に思う物も多く

文句をつけるのはもはや定番のあの大尉

怪盗はウィチーズの信頼を手にする事ができるのか?

俺『まずは、あんたらの信用を頂くよ』
最終更新:2013年01月31日 14:56