医務室を出て、作戦室へと向かう途中、私はある確信を口にした。

「美緒、あなた最初から彼の正体が分かっていたでしょう」

「ああ」

まるで何事もないかのように、堂々と彼女は頷いた。

それが、ひどく、勘に障った。

「坂本少佐、あなたは軍紀に背いた、それが分かっているんですね」

自分の声色が固くなっていることがよく分かる。

「私がいつ軍紀違反を犯したんだ?」

「彼を助けたとき、バルクホルン大尉にネウロイかどうか聴かれていたはずです」

「そうだな、しかし私はこう答えたはずだぞ、『待てバルクホルン』とな、
 ネウロイであることを否定などしていない」

「詭弁よ!」

つい声を荒げてしまう、美緒はいつもこうだ。

数々の正論に隠して一つだけ詭弁を混ぜる、それがいかに危険なことかなんて
分かっていない。

「ミーナすまない」

なぜあなたが謝っているの……彼から話を聞いた限り、美緒の判断は正しかったのに。

そして美緒がそれを信じた背景には、半年前の人型ネウロイ事件があったからだ。

あのとき美緒をはじめ私達は宮藤さんを信じることが出来なかった。

今でも信じられない、攻撃する意志を持たないネウロイなんて…………、

私がこんなに情けないから、美緒は彼の正体を口にしなかったのだ。

部隊内に無用の混乱を招けば、その部隊の末路などしれたもの。

それは分かる、しかし、それでも真っ先に私にだけは知らせて欲しかった。

でなければ、私はなんのための隊長なのか?

「あなたはずるいわ」

「すまない」

美緒は私を信頼しているのだろう。

しかしそれ以上に、心配されているのだ。

悔しかった。

でもそれは一個人の感情だ。

今は唇をかみしめ、基地司令として接することが、美緒の信頼を勝ち取るための最善だ。

「美緒、あなたはいつ彼がネウロイだと気付いたの?」

「奴を魔眼で確認した瞬間からだ」

「ということは、彼にはコアがあると言うことで良いわね、
 もしかしてあのとき大声を上げたのは……」

「ああ、奴がネウロイにもかかわらず、人間とそっくりだったからだ。
 だからこそ、私はあそこで奴を助けた」

ここでやっと彼の話した内容と繋がった。

先ほどの彼の話を総合すると、

彼はネウロイが私たちと接触するために作られた人類に酷似させたネウロイ。

種族としての外見を同じにすればコミュニケートをとりやすいと思ったのだろう。

実際、人間と会話が可能で外見も人間に酷似しているネウロイを
私たちがためらいなく撃てるだろうか?

それどころか、彼の言ったことが正しければ
自分にとって絶対に忘れられない人間の印象を持っているように錯覚させているわけだ。

だからこそ、助けたときのあの現象が起きたわけである。

そして、なぜ美緒にはその能力が発揮されなかったのか。

答えは簡単だ、魔眼を騙すことは出来ない。

彼が目覚めたとき、美緒は眼帯をしていた。

おそらくはそれが原因だ。



………情報の整理が出来たんだから、考え込んでる場合じゃないわね。

みんなにどう説明するか、それが問題ね。

「頭痛がしてきたわ……」

まったく、美緒はいつかの宮藤さんを怒れないわね。

扶桑の人たちってみんなこうなのかしら?

そして彼には申し訳ないが、こちらとしてはなにもしてくれないのが一番だ。

今のこちらの状況は、ネウロイ一機に構っていられるほど悠長な状況ではないのだから。
最終更新:2013年01月31日 15:00