第壱話 『宮藤芳佳が命じます』~魔女の姫と天駆忍者~


~1950年 とある戦場~

大きな戦場の真っ只中に、その女性はたたずんでいる

扶桑海軍左官の制服を身に纏い、背中には、師の鍛えた妖刀を携え

足には父の遺志を宿したワンオフのストライカーユニット

長く、美しい黒髪を揺らし

整った顔に浮かべている笑みは不敵

《少佐!!お下がりください!無数のネウロイに囲まれています!!》

《一人では危険です!!》

部下が身を案じ、後退を進めてくる

芳佳「そう言えばこの部下は新兵だったか」

芳佳「いついかなる状況、どんな戦場でも私が一人でいた事なんて、もう5年も無いのにね」 クスッ

どうやら彼女は過去を懐かしんでいるようだ

一瞬だけ、その顔に少女の面影を表し、すぐに先程の不敵な笑みを戻す

間もなく、部下の心配通りの結果に陥る

彼女の周囲を、おびただしい程の量のネウロイが取り囲んでいた

芳佳「総数30・・・といった所か」

しかし、そのような状況でも、彼女の笑みは変わらない

《少佐!!》

慌てる部下と対象的に、芳佳は静かな、それでいて凛とした声で言葉を紡ぐ

芳佳「露払いは任せるよ」

目に見えない誰かに語りかけるように

芳佳「貴様の主君、宮藤芳佳が命じる・・・」

その声色は、相手を深く信頼し、厳しくも、優しい色

芳佳「敵小型ネウロイを速やかに殲滅せよ!!」

俺「はっ!!姫の仰せのままに!!」

芳佳の影から突如現れた男は、足にはストライカーユニットを履き、その姿は時代錯誤のフソーニンジャ

俺『天駆忍法秘伝、影分身』

その言葉と同時に、恐ろしい速度で己の体を増殖させていく

芳佳「雑魚は任せた、私は・・・」

背中の妖刀『烈風丸』を抜き、芳佳は遥か先にいる大型ネウロイを指す

芳佳「あれを破壊する!!!」

芳佳「早く終わらせて帰ろうね、たまには思い出話でもしようよ」

俺「お付き合いさせていただきます」

芳佳「二人の時くらい、普通に喋ればいいのに」 ボソッ

俺「は!?何か仰いましたか?」

芳佳「何も言っていない!さぁ、攻撃開始だ!!」

無数に分身した俺が、小型ネウロイを次々と破壊しながら、大型ネウロイへの道を切り開く、危なげの無いその道を芳佳は一直線に飛ぶ

その道中、彼女の頭の中にあったのは

現在も続く戦いの日々の中で、今なお輝きを放っている

第501統合戦闘航空団での日々

何物にも代えがたい思い出の日々

芳佳(えーと5年前の、春頃だったかな?)





~1945年 扶桑皇国 横須賀第四中学校~

キーンコーンカーンコーン

こんにちは、宮藤芳佳です

15歳の中学3年生

同級生「芳佳ちゃん、また明日」

そんな私は普通の女の子と違う所が2つあります

芳佳「うん、また明日」

一つは私には魔力があって、空を駆け、誰かを守るために戦える力があること

もう一つは・・・

シュタッ

俺「姫、学校お疲れ様でした!お荷物、お持ちいたします!!」

父が生前に、私がいずれ戦場に出るであろう事を予見して、彼に私の護衛を依頼したそうで

忍者の主君をやっていることです

芳佳「これくらい大丈夫だよ・・・」




~帰り道~

桜吹雪が舞う中、私と俺さんは肩を並べて家路をたどる

芳佳「いつも迎えに来てくれてるけど、別に大丈夫だよ」

俺「いえ、姫の身に何かあってからでは遅いじゃないですか!」

芳佳「あと、いい加減に敬語もやめてよ、私達同い年なんだし」

本当は『姫』って言うのを1番やめて欲しいんだけど、ここは譲れない部分らしいからあきらめたんです、忍者のルールがよく解かりません、私はお姫様なんかじゃないのに・・・

俺「いえいえ、主君にタメ口の忍者とかあり得ないですよ」

うーん、忍者ってみんなこんなに頑固なのかな?

芳佳「俺さんがとっても優秀な忍者だってのはガリア解放戦の時に解かったし、私なんかが主君じゃもったいないよ」

芳佳「お父さんとの契約なら、破棄しても大丈夫だから・・・」

俺「いえ、それでも俺の主君は姫以外にはありえません」

芳佳「どうして?」

俺「ブリタニアで姫と共に、ストライクウィッチーズの一員として戦った時に俺は確信しました」

そう、私はついこの間まで戦場にいました

ウィッチとして、熾烈な戦いの果てにガリア解放を成し遂げたんです

芳佳「うん、あの時は俺さんに沢山助けてもらったね」

陰に日向に支えてくれていたのを思い出す

特に最終決戦直前、ネウロイと友達になった事を信じてくれたのは俺さんだけだった

あの時は嬉しかったなぁ

俺「真の優しさと強さを兼ね備えている、この方こそ我が主君に相応しいと」

俺(そして、俺が命を懸けてでも守らなきゃいけない存在だと・・・)

俺「俺は絶対に姫の側から離れません」

凄い恥ずかしい事言われてる気がする・・・

芳佳『////』

こんなに褒められると、誰だって照れちゃいますよね

わ、私だけじゃ、ないですよね・・・?




~翌日 横須賀港~

今日は、坂本さんから招待状を頂いたので、大和の完成式典に来ています

芳佳「わー、すっごい人だねー」

俺「姫、俺の手を離さないように、しっかりついて来てくださいね」

なぜ私が子供のように扱われているかは不明だったけど、俺さんの手がおっきくて、お父さんみたいで・・・どこか安心したから、言われるままになってしまう

芳佳(あれ?手を繋いで歩く男女って・・・)

俺「あ、たこ焼きの屋台もありますねー」

そう思った瞬間に、急に恥ずかしくなってきて

少し、顔が熱くなってきた

俺「姫?どうかしました?顔真っ赤ですよ?」

そう言いながら顔を覗きこんでくる俺さんにびっくりして

芳佳「だ、大丈夫、あ!坂本さんだ!急ごう!!」

照れ隠しに手を振り解いてしまった

芳佳(うーん、最近私おかしいな)

坂本さんの元へと走りながら、私は手に残る温もりを、名残惜しんでいる

芳佳(これ、なんなんだろう)


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久しぶりに会った坂本さんは、あまり変わっていませんでした

坂本「久しぶりだな、宮藤、俺・・・ガリア解放以来かな?」

芳佳「お久しぶりです坂本さん」

俺「お久しぶりです」

坂本「どうだ、俺?軍に入る決心はついたか?天駆忍者であるお前の力を野放しにしておくのはもったいない」

俺「俺の主君は姫だけ、それ以外のために戦うつもりは無いです」

坂本「あっはっはっは!そうかそうか、そいつは残念だ!」

坂本「宮藤、誇っていいぞ、これ程の忍者に主君だと認められたのだからな」

芳佳「えへへ」////

私が褒められたのが嬉しかったのか、俺さんが褒められて嬉しかったのかは解からないけど、少し照れてしまう

その後も私達は談笑を楽しみましたが・・・

楽しい時間は長くは続かないものみたいで

突然、爆音が響いて

走る衝撃、上がる黒煙、海上の大和の護衛艦の一つから爆発が起こり、火災が発生

楽しかったはずの式典会場は、阿鼻叫喚と化してしまいました


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坂本さんが、魔眼を輝かせながら、状況を教えてくれる

坂本「どうやら、事故による火災のようだな・・・中にはまだ乗組員が50名程いる、救助に手間取っているようだ」

芳佳「この基地に今使えるストライカーは?」

坂本「私の紫電改なら使えるはずだが」

坂本「お前が一人で行った所で状況は変わらないぞ」

芳佳「はい、私だけなら・・・でも私達なら!!」

そう言い放ち、私は俺さんに目を向ける

坂本「ふむ、確かに宮藤と俺なら・・・」

俺「姫、ご命令を」

芳佳「ストライカーは一機・・・“あれ”やります!!」

俺「はっ!!」

坂本「では久々に天駆忍者の力量、見せてもらおうか、宮藤!俺!ついて来い!!」




~横須賀基地 滑走路~

坂本さんが見守る中、紫電改を履いた俺さんに、私は近づいて行く

芳佳「じ、じゃあ・・・いきます」

うー、いつまでたっても慣れない

俺さんはなんでもないような顔で私を見つめてくる

もう少しドキドキと言うか、緊張してくれないと割に合わないといつも思う

芳佳「あ、あの目つむって」

そう言って私は使い魔の耳と尻尾を出現させ

チュッ

口づけをする

坂本「何度見ても面妖なものだな」

これは、天駆忍者の俺さんに自分の魔力を与えるための行為

俺さんは特殊な体質の一族の生まれだそうで、一族がみんな忍者をしているそうです、その血筋は由緒正しく、元を辿れば扶桑建国の英雄・織田信長に寵愛を受けた『天駆武者、森蘭丸』の名前もあるとか・・・

話がそれました、俺さんは粘膜接触?(よく解かりません)によって魔力を他人から譲り受ける事ができます

つまり、口づけによりウィッチから魔力を与えられる事で、驚異的な戦闘力を発揮する忍者・・・だそうです

だから魔力の量が多い私とはとっても相性がいいんだって

俺さんに、初めて魔力供給した時「初めてがこんな形ですまない」と謝ってくれたっけ?

もう、変な所で優しいんだから

唇を離す

芳佳「目、開けていいよ」

そして後は命令を下す、私の忍者に

芳佳「宮藤芳佳が命じます!お願いみんなを・・・救って!!!」

私の声と共に、俺さんの体から魔力が溢れだす

俺「姫の、仰せのままに!!」

俺さんの足元に出現する魔法陣

坂本「この魔法陣の大きさ・・・宮藤、また魔力が増したか!」

芳佳「俺さん、お願いします!!」

とてつもない速度で飛び去っていく俺さんの事を、私は坂本さんと共に見送りました


――――――――――――――――――


俺は天駆忍者、魔力ある少女の口づけにより翼を与えられる者

やっと見つけた命を懸けるべき主君の魔力は、俺が今まで授けられてきたどの魔力より優しく、力強い

まるであの少女自身を象徴するかのように

力が湧いてくる、彼女のためであれば、どんな事だってできそうな気がする

こんな気持ちになったのは初めてだ

今の命令は、炎上した艦の船員全員を救う事

俺一人では間に合わないだろう、しかし俺は忍者、一人でダメなら

手で印を結び、魔力を練る

忍『天駆忍法秘伝、影分身』

増えればいい

姫により与えられた膨大な魔力で俺の分身を大量に作る

俺は天駆忍者、姫のためなら不可能を可能にしよう


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芳佳「俺さん、お疲れ様」

姫の願い通り、全ての乗組員の救助を果たしたものの

全ての魔力を使い果たし、満足に立って歩く事もできなくなった俺に対し、主君である宮藤芳佳が微笑み、ねぎらってくれた

芳佳「みんな無事だったのも俺さんのおかげだよ」

彼女も傷ついた乗組員達に治癒魔法を使い、疲労しているはずなのに

芳佳「いつも、ありがとう」ニコッ

俺「・・・」

彼女の力になりたいと思うのは俺のわがままだ

誰かを守るため、救うためには自分が傷つく事もいとわない彼女

そんな彼女を守るために傷つく人間が一人くらいいてもいいはずだ

この何よりも大切だと思う、笑顔のために

だから・・・俺は・・・





《次回予告》

~1950年 最前線の基地 芳佳自室~

大型のネウロイを殲滅した後、約束通り、杯を交わしながら、想いで話に花を咲かせる二人

芳佳「あの魔力供給の時、なんで無表情だったの!!?少し傷付いたよ!!」

俺「す、すいません!久しぶりだったから緊張していたんです」

芳佳「もう、それは後でゆっくり聞くから、・・・」

芳佳「そう言えば、さっきの戦闘中、ロマーニャでストライクウィッチーズが再結成した時を思い出したよ」

芳佳「あの時だったよね?俺さんが私に恥ずかしい誓いをしたのは」 ニヤッ

俺「そ、それは言わない約束だろ!!」

芳佳「あっはっはっ、言葉が乱れてるよ~」

俺「くっそ!」
最終更新:2013年01月31日 15:05