第参話 『姫のために』~激突!卵焼きを懸けて~
~1950年 とある戦場 前線基地 宮藤少佐自室~
芳佳「それにしても、俺さんは本当に卵焼き好きだよねー」
朝食の片付けをしながら、どこからか私の事を見守ってくれているであろう人へ語りかける
これが私達のコミュニケーションだ、まぁ姿が見えないっていうのは少し寂しいけどもう慣れた
芳佳「普段は黙って御飯食べるのに、卵焼きがある時だけは目キラキラさせてさ」 クスッ
芳佳「バルクホルンさんと、卵焼き取り合って大喧嘩もしてたね」
芳佳「ふふふ」
思い出した、私が初めて他人に嫉妬したのも卵焼きが原因だったっけ
全く乙女心を理解できていないこの男にはさんざん苦労させられてきたけど
この時が始まりだった気がする
芳佳「はぁ・・・」
~1945年 第501統合戦闘航空団基地~
起床時間を知らせるファンファーレが鳴り響く
おはようございます、宮藤芳佳です今日も気持ちがいい朝ですね
芳佳「俺さん、おはよう」
きっとどこかで私を見守ってくれているであろう人へ挨拶をする
姿が見えないというのが寂しいけれど・・・
ふと、昨晩の俺さんの誓いを思い出す
全てを懸けて守ってくれると、私のために生きると・・・
芳佳「うん」
芳佳「私も、俺さんの主君に相応しいように努力しないと」
芳佳「よーし!今日も一日頑張るぞー!!」
~基地 食堂~
坂本「どうした宮藤、今日はやけに豪華だな」
シャーリー「ほんとだ、朝から凄い量だな」
ペリーヌ「こ、このおぞましい量の卵焼きはなんですの?」
エイラ「お前はほんとに文句しか言わないナ」
エーリカ「きっと昨晩いい事でもあったんだよ~」 ニヤニヤ
芳佳「な、ないですよ!!」////
エーリカ「ほんとかな~私の予感じゃ滑走路で~、俺と二人で~・・・」
芳佳「なんでそんなに詳しいんですかー!!」////
ゲルト「なんだか知らんが、冷める前に食べよう、せっかくの豪華な食事だ」
俺「・・・」
ルッキーニ「うじゅ!俺が一緒に御飯食べるとか珍しい!!」
芳佳「あ、私が今日だけみなさんと一緒に食べるように言ったんです、せっかくの量なんで」
エーリカ「せっかくの卵焼きだもんね~」
芳佳「もう!!」////
――――――――――――――――――――――
「ごちそうさまー」
「ごちそうさまでした」
みんなが次々に食事を終え、食堂を出て行く中
ふと俺さんのほうへ目を向ければ、最後に1個だけ残った卵焼きの上で、箸と箸をまるで刀のようにぶつけ合う俺さんとバルクホルンさんの姿が目に入った
芳佳「あ・・・あの・・・二人とも何してるんですか?」
恐る恐る聞いてみる
ゲルト「この男が私の卵焼きを勝手に食おうとするんだ!」
俺「いつからお前の物になった!」
ゲルト「貴様は一人で半分以上食べただろ!割合的に私の物だ!!」
俺「ワケのわからん理論を展開するな!!」
口論をかわしている間にも、互いの箸の動きは一向に止まる気配が無い
芳佳「あ、あの新しいの作りますんで・・・」
ゲルト「えーい!埒があかん!ちょうどいい!貴様とはいつかどちらが上か決着をつけねばならんと思っていた所だ!!」
俺「姫、ご命令を、この石頭を砕けと!!」
ゲルト・俺「「決闘だ!!!」」
~基地付近 上空~
芳佳「まさか本当に模擬戦の許可が下りるなんて・・・」
バルクホルンさんと俺さんの模擬戦の許可は呆れるほどあっさりと降り
俺さんの要望もあってなぜか私が立会人に任命されてしまいました
ちなみに俺さんへの魔力補給量はいつもより多めです
ゲルト「ルールは・・・」
俺「そんなもの必要無いだろう?」
ゲルト「ふっ、上等だ!どちらかが『参った』と言うまで・・・」
俺「徹底的にやろうじゃないか!」
な、なんかとてつもなくバイオレンスな雰囲気です・・・装備はペイント弾入りの銃ですが
ゲルト「こい!フソーニンジャ!!」
俺『天駆忍法秘伝、影分身』
い、いきなりですか!?本気です、俺さんは大量の魔力を消費して自分の分身を10体程作ってしまいました
ゲルト「いきなり奥の手を使うとはな」
俺「世界トップクラスのエース相手に出し惜しみできる程、慢心してはいない」
ゲルト「そうこなくては張り合いが無い!!さぁ行くぞ!!」
分身を自由自在に操ってバルクホルンさんに四方八方から襲いかかる俺さん、それをバルクホルンさんは何事も無いかのようにかわしながら反撃を行い、分身の数を減らしていきます
正直、バルクホルンさんの機動はすさまじいです
ゲルト「数が増えた所で、地力は私が上!すべて粉砕してやる!」
まぁ粉砕と言ってもペイント弾なんですが・・・
ゲルト「5、4、どうした!このままでは自慢の分身が全て消えるぞ!!」
ゲルト「3!2!お前で!ラスト!!」
最後に残った本物の俺さんにペイント弾が着弾したと私も、バルクホルンさんも思った瞬間、なんとその俺さんも消滅
ゲルト「な!!こいつも分身!!??」
直後にバルクホルンさんを照らす太陽が陰ります
ゲルト「上か!!」
しかし、俺さんからのペイント弾による銃撃はバルクホルンさんの真下から行われました
俺「なんで今のが避けられるんだよ、空蝉で完全に意識はずしたろ!勘じゃ納得いかねぇぞ!」
そう、バルクホルンさんは意識外から行われた銃撃を見事にかわしています
ちなみに太陽に陰を作ってバルクホルンさんの意識を上に向けた物の正体は、俺さんが脱いだ上着を投げていたんです!いつのまに実行されたかは私にはわかりません! キリッ
ゲルト「ふぅ、今のは流石に肝を冷やした、これがニンジュツか!面白いじゃないか!!」
俺「『実と思えば虚、虚と思えば実』変幻自在こそが忍術の極意だ、お望みならまだまだ楽しませてやるよ」
なんだか、二人共楽しそうです
その後も二人の攻防は続き、実にもう1時間以上戦っています
激しく移動しながら戦っているので基地からも遠く離れてしまいました
ゲルト「ん?」
バルクホルンさんの動きが止まり、それを見た俺さんの動きも同時に止まります
芳佳「あ!あれは!」
俺「ネウロイ!!」
――――――――――――――――――――――
芳佳「応援は最低でも30分はかかるそうです」
ゲルト「しかし、この進行方向には確か小さな集落があったはずだ」
俺「迎撃するにしてもこの装備ではな、それに無茶しすぎたせいで魔法力の消費も激しい」
ゲルト「右に同じだ、しかしこのまま見捨てるわけには・・・」
芳佳「私が行きます!応援が駆けつけるまで、私がネウロイを引きつけます!」
ゲルト「ダメだ宮藤!一人では危険だ!」
俺「そうです姫!危険すぎます!」
芳佳「でも、このままじゃ集落のみんなや、バルクホルンさん、俺さんも傷つきます」
芳佳「それに私のシールドなら一人でも30分くらいへっちゃらです!」
ゲルト「待て!宮藤!!クソッ行ってしまった!残った魔力では追いかけるのも厳しいのに!!」
――――――――――――――――――
バルクホルン「俺!頼みがある!!」
俺「なんだ!?こんな時に!!」
バルクホルン「私の魔力供給を受けろ!!残りの二人分の魔力を足せば・・・」
俺「ふざけろ!粘膜接触が必要なんだぞ!年頃の女が軽い気持ちで発言するな!」
バルクホルン「ふん、心配無用だ、こう見えても・・・経験豊富なんでね」
バルクホルン「今更一人増えた所で、なにも変わらんさ」
嘘だ、そんな事も解からない程ニブくもない
それでも彼女は姫を救いたいと言う、俺に救ってくれと言う
自分の心を犠牲にする事によって・・・
だが、この状況を打開するにはこの方法しかない
魔力供給を受け、バルクホルンを傷つける
魔力供給を断り、姫が傷つくのを指を咥えて見守る
俺は・・・俺は・・・全てを懸けてでも姫を守ると誓ったんだ・・・・
例え、仲間を傷つけてでも・・・
俺「すまない、バルクホルン・・・」
年頃の少女にとって好いてもいない男との口づけがどれほど苦痛な物かは理解できているつもりだ
ゲルト「謝るな馬鹿者、宮藤を救いたいのは私も貴様も同じだ」
緊張からか、バルクホルンの体は震えている
バルクホルン「い、いくぞ!!」
声も震えている
チュッ
重なる唇、魔力が体を巡る
ゲルト「ここまでやったんだ・・・必ず、宮藤を救ってこい」
俺「承知した!」
やはり俺は弱い、姫を守るために、仲間を傷つける程に・・・
ロマーニャ北部 小さな集落上空
芳佳「はぁ・・・はぁ・・・」
ちゃんとしなきゃ・・・ネウロイの意識を私に向けさせて・・・
守らないと・・・俺さんも、バルクホルンさんも、今は戦えないんだ
私にできることしなきゃ!
しかし、気持ちに体が追いつかない、次第に追いつめられる私
ネウロイのビームが私に迫る
芳佳「あ、シールド張らなきゃ・・・」
芳佳(俺さん・・・・)
私に向けて放たれたビームは直前で弾かれる、あれ?私シールド張ってないのに
俺「姫、遅れて申し訳ありません、只今参上いたしました」
そこに立っていたのは私の昨日の誓い通り、脅威から守る盾となってくれた私の忍者でした
―――――――――――――――――――――
俺「姫!ご無事でしたか!?」
芳佳「俺さん、なんで?魔力・・・無いはずじゃ?」
俺「バルクホルン大尉に魔力供給を受けました」
芳佳「え、バルクホルンさんと・・・」
姫の表情が複雑な色を浮かべる、何か問題があっただろうか?
俺「姫、ご命令を、ネウロイを殲滅せよと!」
芳佳「は、はい・・・宮藤芳佳が命じます・・・ネウロイをやっつけてください」
俺「はっ!」
やはり声にいつもの張りが無い、心配だ・・・
―――――――――――――――――――――――
力が体中から溢れ出てくる、ゲルトルート・バルクホルン大尉の魔力は一言で言うなれば質実剛健、この言葉につきていた
真っ直ぐで、誠実なそんな彼女を象徴するかのように
魔力を纏わせた手裏剣を投げつけるだけで、ネウロイの装甲が弾け飛ぶ
まさに怪力乱神とはこの事だろう
バルクホルン大尉の魔力ならあの技が使えるかもしれない
腰の忍者刀を抜き、刀身に魔力を走らせる
あとは錐揉み回転し突き抜けるだけ、術でもなんでもない力技、単純ゆえに強力なこの技を
俺『天駆忍法、飯綱破り!!』
力強きバルクホルン大尉の魔力は強固なネウロイの装甲すら切り裂いてコアを破壊する
よく考えれば当然だ、彼女の石頭の固さはネウロイの装甲なんて相手にならないのだから
~501基地 バルクホルン・ハルトマン自室~
ガチャ
ゲルト「はぁ」
宮藤を助けるためとはいえ、俺とキスをしてしまった・・・
ゲルト「いや、これはノーカンだ」 ブンブン
エーリカ「トゥルーデ~、俺がこれトゥルーデに渡してって言って持って来たよ~」
部屋の奥に配置してある机に目をやれば、皿の上に不格好な卵焼きと、書置きが置いてある
書置きは『すまなかった、感謝する』の二言
ゲルト「ふっ」
不格好で、所々焦げている卵焼きを口に放り込んでみる
ゲルト「存外、甘いじゃないか」 クスッ
エーリカ「え?何が?」
ゲルト「なに、卵焼きがさ」
~芳佳・リーネ・ペリーヌ自室~
芳佳「おやすみなさい、リーネちゃん、ペリーヌさん」
リーネ・ペリーヌ「!?」
リーネちゃんとペリーヌさんが顔を見合わせて驚いている
芳佳「どうしたの?」
リーネ「えっと、いつも俺さんにも『おやすみ』を言うから・・・」
ペリーヌ「今日はどうしたのかと思いまして」
芳佳「ふん!あんな人知らないよ」
芳佳「バルクホルンさんの忍者になっちゃえばいいんだ」
私のために生きてくれるって昨日言ったばっかりなのに・・・
芳佳「俺さんのバーカ」
《次回予告》
~1950年 とある前線基地 宮藤少佐自室~
芳佳(あーなんか思い出したら、だんだん腹立ってきた)
そう、あの頃の私は自分が嫉妬している事すら理解できていなかったんだよなー
なんともまぁ無邪気な事で
それにしても、恋心に気付いたきっかけってなんだったっけ?
あぁそうだった、二人でローマに行ったんだった
芳佳「ふふっ、15歳の子供にローマの休日は早すぎたよね」
平和な世界を取り戻したら、今度は私から彼を誘ってみよう
芳佳「私の大切な思い出」
最終更新:2013年01月31日 15:06