第四話 『俺さんなんて嫌いです』~ローマで嫉妬の休日~


~1950年 とある前線基地 芳佳自室~

しかし、恋というものは本当にままならない物だと思う

特に相手が普段何を考えているかもわからない朴念仁ならなおさらだ

もうかれこれ5年以上ず――――っと一緒にいるのに・・・

意識的に無防備な姿だって晒してるのに・・・(昨晩だって毛布をかけてくれただけだったし)

私、そんなに魅力無いかな・・・?

芳佳「やっぱり胸なのかな?」

あまり成長していない胸を触る・・・むなしくなった

もし5年前に戻れるなら、自分に忠告してやりたい

芳佳「俺さんを好きになるなら覚悟しておけよって」

そう、彼氏無し=年齢で20歳を迎える覚悟がお前にあるのか?と

ちゃんと恋心を自覚したのって確か・・・あぁローマで一緒に遊んだ日か



芳佳「あ!あとイソフラボン摂っとけも忘れちゃダメだ!」



無駄な努力では無いと信じたい




~1945年 第501統合戦闘航空団基地~

みなさんこんにちは、どうも俺です、これでも忍者やってます

今日は悩みがあって、相談室まで出向いてきました

エイラ「ふむふむ、なるほどネ」

エイラ「最近宮藤が冷たいと、お前の御飯だけ無くて、出撃する時もキスしてくれないと」

ちなみにエイラとは、大切な人に対して想っている事が似ているようで妙な連帯感があり、結構仲がいい

俺「キ、キスじゃない!魔力供給だ!!」

エイラ「周りから見れば、単なるキスにしか見えないゾ」

エイラ(大方、宮藤が大尉と俺がキスしたので嫉妬してるだけダロ、チッ見せつけやがって)

エイラ「占いで解決方法出たゾ、うん、明日お前ら非番ダロ?二人でローマ行って私の頼んだ物買ってきてくれヨ」

俺「え、それなんか意味あんのか?」

エイラ「いいから宮藤と行ってコイ!!あと、このメモに書いてあるとこ行って、その通りに行動すれば、宮藤も機嫌直すカラ」

俺「これ大丈夫か?大体、お前自体がサーニャとそう上手くいってないのに・・・」

エイラ「うるさいヨ!いいからお前はお姫様のご機嫌取ってコイ!!!」

本当に効果あるんだろうか?占いも適当だったし、この相談室も効果無いって評判だし・・・




~食堂 調理場~

コツコツ グツグツ

おはようございます、宮藤芳佳です、今日も私はリーネちゃんと一緒にみなさんの朝食を作っています、朝御飯は一日の力の源、手は抜けません

え?俺さんの分?ミーナさんかハルトマンさんに作ってもらえばいいと思います

リーネ「芳佳ちゃん、実はね、お願いがあるんだ」

芳佳「なに?リーネちゃん」

リーネ「実はね、お紅茶の葉っぱが切れちゃって、明日芳佳ちゃん非番だから買ってきてもらえたらなーって」

芳佳「え、外出許可が出るならいいけど・・・非番なのって私と・・・」

リーネ「俺さんだね」 ニッコリ

リーネちゃんは、きっと私達が仲直りできるようなきっかけを作ってくれているんだとなんとなく解かる

芳佳「でも・・・」

今まで散々意地悪してきたのに、今更「一緒にローマでお買いものしよう」なんて口が裂けても言えない

リーネ「俺さんとケンカしちゃってからの芳佳ちゃん、なんか寂しそうだったから」

芳佳「でも私、俺さんに嫌な所たくさん見せちゃったよ」

リーネ「それでも芳佳ちゃんは、本当は仲直りしたいんでしょ?」

そう、本当は解かっているバルクホルンさんから魔力供給を受けたのも、私を助けてくれるためだったって事は、でもこの胸のモヤモヤが自分でも理解できない

どうして俺さんとバルクホルンさんがキスして私が嫌な気分になるのかも理解できない

それでも・・・私は俺さんと仲直りしたい

芳佳「・・・うん」

リーネ「だったら、ちゃん『姫――――ッ!!』

芳佳「うわっ!」

リーネ「ひっ!!」

いきなり天井から俺さんが現れて、私もリーネちゃんも驚いてひっくり返ってしまう

俺「姫!明日!俺とローマ行きましょう!!」

芳佳「う、うん」

私の悩みがアホらしくなる程、あっさり決まってしまった




~翌日 ローマへ向かう道中~

俺さんの運転するベスパで、私達はローマへと続く道を走っています

芳佳「なんでいつもこんなに簡単に許可降りるんだろう?」

本当に不思議に思う

ちなみに何故ベスパかと言うと

ルッキーニ『カップルでローマ行くならやっぱりベスパだよね~』

という意見があったからです

カ、カップルじゃありませんから!!////

でも、こうしてバイクを運転する俺さんにしがみついてる私っていう光景は、周りから見たらカップルに見えたりするのだろうか?

少し、気になります

そんな私の揺れる?想いを乗せて、俺さんはただひたすらに安全運転

その表情は無表情、自分で誘ったくせに楽しくなさそう

やっぱり私とじゃ楽しくないのかな?




~ローマ市街地~

芳佳「うっわー!すっごい綺麗な街だね~!!!」

さっきまでの不安やイライラという物が全てふき飛んでしまうくらいローマの街は美しかった、こんな綺麗な街見たらさすがの俺さんも・・・

俺「そうですね、正直驚きました・・・さて、ではエイラから頼まれた用事を行いましょう」

あんまり感動していませんでした

芳佳「え!?もうちょっとこう、雰囲気というか・・・」

俺「時間がありません、急ぎましょう」

まさか俺さんが私を誘ったのはただ単に今日私が非番だったから?

俺「えーと、まずはスペイン広場に行って『じぇらーど』なる物を一緒に食べるそうです」


―――――――――――――――――――


~スペイン広場~

沢山の仲睦まじいカップルに混ざって私と俺さんは隣合ってジェラードを食べています

俺「おいしい・・・」 

ふふっ、私の作った卵焼き食べてる時とおんなじ顔してる

卵焼きといい、意外と甘党なんだよね

あれ?私普通に笑えてる・・・最近、全然素直に笑えてなかったのに・・・

俺「姫のやつは何味ですか?」

芳佳「レモンだよ」

俺「す、少しいただいても・・・」

芳佳「いいけど・・・あ、そうだ!」

いい事を思いついた、今日がとても楽しい1日になりそうな、そんな素敵なアイディア

芳佳「今日だけ、私を主君じゃなくて普通の女の子として扱ってくれるならいいよ」

芳佳「敬語もダメ!私の事も・・・よ、よ、芳佳・・・って呼んで」//// 

自分で言ってなぜか恥ずかしくなってしまう

悩んでいます!俺さんはとても悩んでいます!

芳佳「うーん!レモン味はとっても美味しいよ!」

わざと俺さんに見せつけるようにして食べてみる、これでダメ押しになるはずです!!

俺「わ、わかった・・・よ、よ、よし、芳佳!」////

決意を固めた俺さんが初めて私の名前を呼んでくれました

俺さんの顔が真っ赤です、ちゃんと呼んでくれたご褒美に残っていたジェラードを全部俺さんにあげて、私達はようやく今日という休日を楽しみ始めました

俺「じゃあ、次いこうか芳佳」

芳佳「うん♪」

俺さんが目を合わしてくれません、でも全然嫌な感じじゃなくて・・・

なんか可愛くて、微笑ましくなってしまう感じで・・・

それから私と俺さんは色々な場所を巡りました




~トレビの泉~

トレビの泉では、その意味も理解せずにエイラさんの指示通りにコインを2枚二人で投げ込みました

そうしたら

ローマ市民「ヒュー!嬢ちゃん達は若いのにもう理想の相手見つかったんだね!」

と、要領を得ない声をかけられ、その行為の意味を聞かされました

芳佳「////」

俺「////」

お互いに恥ずかしすぎて・・・

俺「な、なに・・・別に恥ずかしい事じゃない!俺は姫の影“一緒にいる事”に違いは無い!!」

芳佳「で、でも!今日の私は俺さんの主君じゃないよ!!」

なんで私はこんなに必死なんだろうか?

俺「そ、それは・・・」

芳佳「忍者じゃない俺さんは私とは一緒にいてくれないの!?」

俺「な、内緒だ!!今日のお前が俺の主君じゃないなら答える義理も無い!!!」////

うまく誤魔化されました




~真実の口~

これは私でも知っています!この石でできた、顔をかたどった彫刻に手を入れた時に、偽りの心がある者は手首を切り落とされるそうです・・・

芳佳「じゃあ俺さんからどうぞ!!」

俺「よし・・・」

どうせこんな物は迷信・・・・

俺「うわぁぁぁぁあああああーーー!!!!」

はいはい、服に手を突っ込んで『手が無くなったー』ですよね、ベタなんだから

ブシャ――――!!!

芳佳「・・・・」

俺さんの手からもの凄い勢いで血が噴き出しています・・・

芳佳「治癒魔法―――――!!!」

――――――――――――

汚いです・・・忍者は汚いです・・・幻術とか・・・

エイラさんのメモに『本気で騙せ』って書いてあったからっていくらなんでも酷いです

本気で心配したのに・・・




~ローマの街が一望できる建造物~

俺「まだ怒ってんのかよ?」

芳佳「怒ってない」

俺「怒ってんじゃん」

芳佳「俺さんがしつこいからだよ」

ローマの綺麗な街並みを見ながら、私達はこんなどうしようもない話をしています

でも、なんだか幸せです・・・

そうだ・・・ずっと聞きたかった事、聞いてみよう・・・

これを聞かないと、私はきっと前に進めないから

芳佳「ねぇ、俺さん」

俺「ん?」

芳佳「もし、私が他の男の人とキスしたら俺さんはどう思う?」

俺「嫌だ!!!・・・・あ・・・いや・・・その」////

芳佳「えへへ」

これだけで、私は満足してしまいました




~帰り道~

頼まれていたお買いものも全て終え、私達は今帰路についています

行きと一緒、俺さんとベスパに二人乗り、違うのは私の気持ち

俺「ひ、姫!強くしがみつきすぎです!!」

芳佳「そんな事ないよー普通だよー」(棒)

嘘です、思いっきり抱きついています、勿論私の心臓はバクバクです

で、なぜこんな事しているかと言うと、私気付いちゃいました

俺さんの事が好きで好きで、もうどうしようも無い事に

でも、私から告白なんてしません、してあげません

だって私は扶桑の撫子、いつか戦争が終わって『姫と忍者』じゃなくて

『宮藤芳佳と俺さん』になる時までに、俺さんの事をメロメロにしてやろうと思います

芳佳「俺さん、覚悟してね!」

俺「は?どういった覚悟でしょうか?」

芳佳「さーねー、なんだろうね♪」

俺「?」




~その日の夜 エイラ・サーニャ自室~

エイラ「うん、俺と宮藤は上手く仲直りできたっぽいナ!」

何度占っても悪い結果は見えてこない

エイラ「よかったよかった」

俺「エイラ!!」 ブラン

エイラ「ウワァァァアア!!」

俺がいきなり天井からぶらさがってきた・・・し、心臓が止まるかと思った

俺「頼まれていた枕だ、注文多くて探すの大変だったぞ」

エイラ「ん、サンキュ」

俺「あと、ありがとな・・・お前のおかげで姫と仲直りできた」

エイラ「私はなんにもしてないヨ、お前と・・・宮藤が頑張ったんダロ?」

俺「それでも、俺はお前に感謝する、もし・・・お前が困った時は、必ず俺がお前を助けるよ」

エイラ「そっか、んじゃ期待せずに待ってるヨ」




~1950年 とある前線基地 宮藤少佐自室~

そうだった、あの頃の私はとっくに覚悟を決めていたじゃないか、戦争が終わるその時まで待つと





メロメロにできていない気がする・・・

ま、まだ慌てるような時間じゃない・・・大丈夫・・・大丈夫・・・

それでも、やっぱりここまで効果無いと落ち込むなぁー

コンコン部屋をノックする音でふと我に返る

「宮藤少佐!お手紙です!!」

芳佳「誰からだろう?」

芳佳「エイラさんと、サーニャちゃんからだ!!」

芳佳「懐かしいなぁ~」




《次回予告》

~1950年 とある前線基地 宮藤少佐 自室~

手紙の内容によると今、二人は一緒に暮らしているそうです

同封された写真には二人で寄り添いあって微笑んでいるエイラさんとサーニャちゃんが写っています

芳佳「幸せそうだなぁ~いいなぁ~」

そういえば、エイラさんからの手紙に懐かしい事が書いてありました

【今更だけど、あの時俺が後押しして、宮藤が手を差し伸べてくれなかったら、私は一生ウジウジ悩んだままだったと思う、ありがとう】

芳佳「・・・」

あの日、エイラさんが大切な人のために己の限界を飛び越えた日

『人が人を思う』という事の美しさを、改めて知った日

うん!何を弱気になっているんだ!私も俺さんの事諦めないぞー!!
最終更新:2013年01月31日 15:06