「蒼穹の絆1-1」
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578 名前: ◆aoV/Y6e0aY 投稿日:2010/12/22(水) 00:39:10.44 ID:qm1SCB8j0
―プロローグ―
ブリタニア。
その防衛の要として活躍するのが連合軍第501統合戦闘航空団である。
その501JFWの正門にジープと貨物トラックが到着した。
衛兵に書類を提示する壮年の将校。待たされることもなく、ゲートバーが跳ね上げられ
衛兵の捧げ筒の間を2台の車は基地に入っていった。
バルクホルン大尉が将校二人を案内して、司令官室のドアをノックする。
「ヴィルケ司令!入ります!」
ヴィルケ中佐と坂本少佐が敬礼して来客を迎える。きっちりした答礼を返す少将。
制服は扶桑皇国海軍の第一種。自己紹介をする3人に、良く通る声が応じる。
「扶桑皇国海軍少将 俺です。遣欧派遣軍調査部所属。宜しく願います」
年の頃は40半ばか。白髪が目立つ黒髪は、さっぱりと刈られている。目じりの皺が深いのは、高空で太陽に
晒されてきたパイロットのそれだ。175センチほどの中背だが、胸板と肩は逞しい。海軍士官の象徴でもある
短剣ではなく、拳銃を携帯している。
「扶桑皇国海軍少尉 加藤香代子。遣欧派遣軍調査部。俺少将の副官です。願います!」
20代前半?10代後半?艶やかな黒髪を長く伸ばした女性士官も続いて申告する。
身長は160ほど。こちらも拳銃携帯で第一種軍装。
二人が軍帽を脇に挟み、全員と握手を交わし終わってから、ヴィルケ中佐が発言。
ヴ「ようこそ、少将のおいでを歓迎いたします。連合軍司令部から、少将の御用についての説明は受けて
おります。少将のお仕事が円滑に遂行できますよう、努力いたします。基地の業務に着きましてのご質問は、
私または坂本少佐、バルクホルン大尉、後で紹介するイェーガー大尉に。また、御用があれば遠慮なくお申
し付けください」
俺「お手数おかけして申し訳ない。4週間、皆さんのお邪魔にならないようにしますので」
坂「お部屋は用意されるとのことですが?」と坂本少佐。
俺「ええ。淑女の皆さんと同じ屋根の下では申し訳ない。かといって、基地から離れるのでは、私の仕事
に差し支えてしまうので。私は海岸に設営したいと思う。よろしいですか?
でも、少尉は女性だ、すまないが、まともに屋根のある所を用意してあげてほしい」
ヴ「了解です。では、我々と同じ宿舎の空部屋を用意しましょう」
加「俺少将、よろしいのですか?私は副官ですので、お側におりませんと・・・」
俺「大丈夫だ、心配するな。隊員の皆さんと仲良くなりなさい」
加「有難うございます。では、ヴィルケ司令。よろしくお願いいたします」少尉が頭を司令に下げる。
。
ヴ「では、隊員に紹介しますので。ブリーフィングルームへご一緒しましょう」
ヴィルケ中佐に案内されて出て行く俺少将+副官。模範的敬礼で見送る二人。
ドアが閉まると、バルクホルン大尉が坂本少佐に囁く。
バ「略綬が5列。有名人か?」
坂「うーむ。名前は聞いた覚えがあるような・・・?飛行徽章つけていたな・・・」
バ「顔見知りではないんだな。少将か。お偉いさんが視察ってのもな?」
坂「自分で調べないと気が済まない切れ者か、はたまた窓際のゴマスリ昇進野郎か、だな?
まあ、戦闘業務には関わらないそうだ。その点は気楽だろう?」
バ「うむ。部外者にチームワークを乱されては敵わん!」
坂「そうとも!501には501のやり方がある!」
「隊長入室!気をつけ!」
隊員全員が揃ったブリーフィングルームにヴィルケ中佐が入室する。全員が起立して
顔を真正面に向ける中、5人は前に進んだ。
「敬礼!!」
バルクホルン大尉が号令を掛け、揃った敬礼がなされる。ヴィルケ中佐がきちんと答礼。
「おはようございます、皆さん。全員そのままで。
本日から4週間、お客様を当基地にお迎えします。扶桑皇国海軍 俺少将、どうぞ」
「気をーつけ!敬礼!!」
さきほどより気合の入った号令が掛かる。
高級将校によくある、おざなりな敬礼でないきちんとした答礼をしつつ、頭を巡らして全員の目を見る俺少将。
少将が手を下ろすのに合わせ、隊員も一呼吸おいて手を下ろす。
「扶桑皇国海軍少将 俺です。本日より4週間、皆さんの基地活動を視察します。彼女は私の副官で加藤少尉
です。よろしく。皆さん、姿勢を楽にしてください」
隊員が休めの姿勢となったのを確認してから続ける。
「視察の目的は、この基地において国籍、階級、そして人種も違う皆さんが共に協力して
ネウロイ戦を戦い抜いてきた、その内情を知り、それを参考にして将来の国際社会に
おいて人類が協和して繁栄出来るための手段を模索することにあります。
曖昧とした目標です。世界各国が戦渦に巻き込まれている今、国際社会は初めて共に
手を携えて協力することを学びました。皆さんはその代表者です。ご苦労様です。
しかし、この戦争もいつかは終わります。その時が一刻も早く到来することを望むのは
私も、そして皆さんも同じです。しかし、その後平和が訪れても、各国が互いに争うような
愚考を犯すかも知れません。悲しい『IF』ですが、その可能性に目を瞑ることは出来ません」」
「そのような事態とならぬよう、今から我々は準備をしなくてはなりません。その準備の一つが
私の今回の任務です。
目的の性格上、皆さんの私生活は当然、作戦についても一切口出しすることは致しません。
この基地の活動を監査することが目的ではありません。この点は誤解しないで下さい」
隊員の目にかすかに安堵の色が浮かぶ。煩いのが4週もいられたら息が詰まる。
「私も、この基地にいる間は司令のヴィルケ中佐の指揮下に入ります。では、皆さん、よろしく
お願いいたします」
隊員に頭を下げる少将。あっけに取られるヴィルケ中佐以下隊員。将官の頭の最上部を見る
機会など、普通ありえない。
「では、中佐・・・」と、少将は中佐に顔を向けて促した。
「全員、着席!」
慌てて言う中佐。本日一日についての伝達事項を述べながら、彼女は思う。
「(少将なのに、誰に対しても物腰の柔らかい男なんだろうか?扶桑スマイルで本心を
見せないだけ?様子を見よう。美緒達にも相談して、と。この隊の空気に馴染んでもらおう
かしらね・・・テストでもあるけれど・・・)」
「では、以上です。質問はありますか? では、皆さん、本日もよろしくお願いします。なお、折角です
から俺少将に質問のある人は、この後少将にお尋ねするとよいでしょう。少将?お願いします。
では、解散!」
「起立!敬礼!!」
中佐が退出した後、バルクホルン大尉が順番に指名して隊員の自己紹介を進める。少将は申告を聞くと、
その隊員の出身国を話題として和やかに会話を進めた。隊員が自由闊達にそれに応じるので、バルクホルン
は気が気でない。相手は少将なのだ。
「ユーティライネン少尉はスオスムからですか。森と湖の国ですね!一度、サウナで温まった
後にお国の湖に飛び込んでいたいものです」
「少将、サウナ知っているんダ!気持ちいいんダゾ!真冬には雪の中に飛び込んでダナ・・・」
軍人の基本は規律、規律なくして軍は存続しえぬ!と教えられ、そう考えていた彼女には拷問に等しい。
一方、隊員の受けは非常によいようだ。母国のことを知っている相手には親近感が自然と湧くものだし、
彼女達の話題にも言及する。儀礼ではない雰囲気となる。戦績のことなど一言も口にしないので尚更。
挙句に、自己紹介が一通りすんだ後、少将がバルクホルンの軍人精神を崩壊させる提案をする。
「私からのお願いなのですが。私は階級等の形式に縛られるのが苦手です。扶桑の艦艇では、乗り組み
員は一つ家族、階級にこだわる必要はない、と昔から言われてきました。一少尉が艦長に具申することも
普通にあります。この考え方は、私も依存はありません。なので、階級抜きで皆さんをお呼びしてもよろしい
ですか?私に対しても『俺』と呼んでいただければ結構です。お願いできますか?バルクホルン君?」
「えっ!・・・・えー・・・(何を言い出す!このおっさんは!)」
「俺さ~ん、彼女はトゥルーデって呼んであげてよ~」
「ハルトマン君、有難う。その調子で願います。トゥルーデ君?」
「!!!(親友しかそう呼ばないのに!押しが強い・・・)ハイ・・・(フラウ・・・)」
「なに赤くなってんの?トゥルーデ? あ、私はエーリカって呼んで!」
「私はシャーリーでいいよ?」
「あたしはぁー!ルッキーニでもフランチェスカでもどっちでも!」
「ハイハイハイ!私はエイラかイッルで!!彼女はサーニャ!サーニャには馴れ馴れしくしないでナー!」
「わ・・私は芳佳ってお願い・・します!///」
「芳佳ちゃん・・・ あ。わたしはリネットか、もしよろしかったらリーネで・・・///」
「あ・・・あなたたち!失礼ですわよ!年上の殿方に!「硬いことはいらんぞ!」え、少佐、ええと・・・
では、ペリーヌとお呼びくださいませ」
「私は!加藤香代子です!カヨって呼んでください!皆さん、お願いしまーす!///」
「あっはっはっは!お前達!元気があっていいぞ!そう思いませんか!俺さん!」
「まったくです!若さがあって結構ですね!坂本君、でよろしいですか?」
「ええ!俺さん!扶桑海軍はよい伝統をもっていますね!隊長は、ああ、身内は『隊長』と呼びます。
彼女は『ミーナ』と。私から話しておきますよ!」
坂本は快活に答えながらも警戒する。
「(この少将、年の割りに昇進が早いからゴマすり野郎かと思ったが。人心掌握は本物か?部下も
なぜか照れているのが多い。私もこの雰囲気は嫌いではない。おもしろい。トコトン付き合ってやるか!)」
着席していた隊員が、徐々に前に集まって賑やかに俺と加藤を取り囲んで質問攻めとなるのを
見ながら、本国政府の意向を考える坂本だった。
バルクホルンが案内して、少将の生活の場となる海岸のテント設営所、彼の部下の加藤少尉の部屋、
食堂、風呂、トイレなどを巡回していく。
途中、さりげなくバルクホルンが探りを入れるが、あっけないほど快活に俺は情報を漏らす。
昔は駐在武官として欧州・リベリオンなどで勤務したこともあること、今は机に縛られる立場で面白み
がないこと、加藤少尉はウィッチ特性が残念ながらなくて、それでも役に立てればと努力して任官した
が、語学力と戦技によって異例の戦時任官をした等など。。あけっぴろげに話す俺に対し、最初に感じた
違和感・嫌悪感が徐々に薄れていることを嫌々ながら認めるバルクホルンだった。
テントの設営を監督し終わった俺と香代子は、再びヴィルケ司令に会いに行った。第二種の白服に其々
着替えている。迷うことなく到着。
入室する二人へ
ミ「無事終わりましたか?俺さん?カヨさん?」
と笑いを含んだ司令の声が掛けられる。
俺が坂本の顔を見ると、坂本もニコッと笑う。ちゃんと話しをしてくれた様子だ。目礼を返す俺と香代。
俺「お願いを聞いてくださって有難う、ミーナさん。宿舎の設営も終わりました。これで仕事を始めること
が出来ます」
ミ「隊員への御厚意、感謝いたしますこちらも助かります。では、この基地の基本スケジュールと
地図・配置図面です。隊員のシフト表も含みます。業務の細かな点につきましては、お聞きください」
俺「おお、早速有難う。では、今から基地全体の様子を見て廻りましょう」
ミ「では、このIDカードを胸にお付けください。まだ、多くの職員がお二人を知りません。
トラブルを避けるためにお使いください。なお、弾薬庫については単独での出入りは禁止します」
俺「ええ。了解です」
坂「俺さん、お風呂の時間なんですが?」
俺「指示してください、坂本さん。従います。カヨ君は隊員と一緒で?」
坂「カヨさんは、我々の時間帯に使ってください。俺さんのときは、念のために入り口の中央に表札を
立てることとして、それはこちらで用意します。それが入り口横にあるときは女性隊員が臨時に使用中
とお考え下さい。各自の勤務によって、変則な利用もありますので」
香「あの・・・質問してよろしいですか?」
ミ「はい。どうぞ?カヨさん」
温和な笑顔で促すミーナ。
香「有難うございます。ええ・・その・・・ 個々は昔お城だったとか?」
ミ「そうですよ。歴史ある建築物です」
香「そうですか。や・・やっぱり、出ますか?幽霊?」
香代以外は噴出す。香代だけは真顔、いや真剣である。
坂「はっはっは!見た事はないぞ!噂も聞かないな!そういうのが好きなのか?」
香「いえいえ!安心しました。少し霊感があるものですから、怖いのはちょっと・・・」
ミ「カヨさん、大丈夫と思うわよ。そういえば、リーネさんもそういうのは苦手だったかしら。
あと、エイラさんは占い等が趣味ですよ?二人とお話が合うかもね?」
香「はい!有難うございます!夕食の後お話します!」
坂「古城に幽霊の一つや二つ、いいアクセサリーだと思うんだがなあ。居ないことには仕方がない」
香「坂本さんのお部屋で飼育してください」
絶対お断り、と表情に出ている香代にまた回りが笑う。
俺「設営隊が内線電話の工事もしてくれました。私の番号はこれですので」と俺がメモを二人に渡す。
俺「非常時にはお手伝いもしますので。いつでもどうぞ」
ミ「お願いします。ところで、腰の拳銃は?」
俺「前線と判断して携帯しています。彼女も。習熟は十分しております」
坂「今度、一杯賭けて勝負しますか!」
坂本が興味を示す。飛び道具も得意なのだ。
俺「いつでもどこでもw」
香「私もやります!」
「射撃大会でもやりましょうかw」
ミーナも笑う。
第一夜
―第一夜 報告書の覚書― 俺視点
設営も完了、空いた時間でカヨ君と二人で基地内のオリエンテーションをかねての顔見せも終わった。
これだけ充実した基地も珍しいだろう。サウナまで完備。
業務で一番気になったのは、整備と基地守備隊の構成。てっきり、国籍でのグループ分けを想像していた
が、混成だった。使用する工具・兵器などを各拠点・機体に割り当て、担当者だけを一定のローテーション
としてまわす事で各自が全てを担当できるようにするのだそうだ。最初は混乱と低効率が予想されるが、
一巡すれば効率は最高になろう。柔軟というか、発想が突飛というか。原案者はミーナさんだそうだ。
司令の作戦能力の高さは、事前資料で承知していたが、それ以上に運営能力が突出している。貴重な人材。
将来が嘱望される。
これは個人的な事だが。
彼女を見たとき、幻を見たのかと混乱した。しかし、良く見れば別人なのだが。カールスラント人だから?
サウナは言及したが、扶桑とおなじ大浴場も完備。トゥルーデ君いわく、最初は無用の長物と思ったらしい。
しかし、湯に漬かると全身リラックスできること、仲間と会話しながら楽しく過ごせる事が大変合理的な良い
物だと高評価。サウナの利用率も高く、初めて経験した者にも好評とのこと。
トイレは全て欧州式。食事は各国隊員が腕を振るうという。つまり、お国料理で、皆がそれを
楽しんでいると。仲間意識があれば、異国文化も寛容に楽しむ事ができるということ?<掘り下げよ。
※納豆だけは拒否反応が強いらしい。味噌汁は慣れて好物と。見た目と個性(匂い)か。
香代君は本日より隊員と同じ宿舎で寝泊りする。石造りの建築物が扶桑人に影響を与える可能性(艦内
と少し違う点)に留意。衣食住のうち、食は適応できるのは予想されるが、住はいかがなものか。
香代君の生活態度の変化に留意しよう。彼女は夕食前から隊員に誘われて風呂へ。誘ったのは芳佳君とリーネ君、
そしてエーリカ君。隊員同士の間には、垣根はないように感じられる。創設後、数年経過して先輩―後輩の間
での交流も順調の様子。やはり、戦友愛が国籍の垣根を取り払うのに影響?<よく観察させてもらうこと。
食後、談話室で殆どの隊員談笑。年が近いこと、そして利害関係がないことも大きいのだろうか。
明日からは0700より、視察することとなる。1500時のお茶会参加予定。<二人が分散すること。
万年筆を仕舞い、メモ用ノートを閉じる。テントの中にマトモな事務机とキャビネット。それを
照らすガソリンランタン。変に落ち着ける空間。
キャメルを咥え、バッグからウィスキーを取り出して、グラスに息を吹きかけてから注ぐ。ちびちび舐めながら、
風呂の準備をする。香代君がちゃんと石鹸・タオル・髭剃りと用意してくれてある。気の効く子だ。軍にいる
より、家庭に入るべきではないか? まあ、年寄りが口を出す事ではないな。
彼女のことだ、ツマミも用意してくれてある筈?と探していると表から頼りなげな声がする。俺を呼んでいるのか。
「どうぞー」
入り口の幕から顔を出したのは芳佳君とリーネ君。
芳佳君はお盆、リーネ君はポットと湯のみを持っている。
芳「こんばんはー」
リ「お邪魔しまーす」
俺「やぁ、いらっしゃい。むさくるしい場所だが、どうぞ。どうしたね?」
芳「お風呂から出てきたら、テントに明りがついていたもので。お夜食持ってきましたぁ」
リ「芳佳ちゃんと二人で作ったんですよぉー!」
俺「おおー。おにぎりにお新香!ありがとう!」
芳「えへへー。どうぞ召し上がれ!」
リ「お茶いれますねー」
俺「椅子にどうぞ座ってね。ああ、一人で食べるってのもなあ。ちょっと待って」
俺「かりんとう、食べるかい?」
袋を空け、皿に盛る。
芳「うゎーぁ、いいんですか?」
扶桑のお菓子、手に入りにくいんだろうな。
リ「これ・・・食べ物??」
思い切り怪しい!という顔のリーネ君。ふふ。犬の○○○だと?
俺「お菓子だよ。小麦粉を練って、油で揚げて、そのあと黒糖をまぶしたり、砂糖とピーナツの
砕いたのを塗してあるの。ほら、芳佳君食べてるでしょ?試してご覧?」
おにぎり頬張りながら、コップを探し出す。お茶を入れてあげてと。二人は興味深げにリベリオン製のキャンプ
道具を眺めている。
決心して、リーネ君がかりんとうを口に含んだ。どうかな?
リ「・・・ポリポリ・・・おいしいー!」
俺「よかった。おにぎりも美味しいよ。握り加減がいいね。リーネ君も作れるの?」
リ「芳佳ちゃんに教えてもらったんです!ね?芳佳ちゃん」
リ・芳「「えへへへへ~」」
仲の良い二人だ。
三人で話し込む。そうか、やっぱり二人は親友か。うんうん。
リ「俺さんってお若く見えますね」
俺「白髪だらけのおじさんだよw」
芳「いえいえ。身のこなしとか若いですよ~」
俺「ありがとうね」
芳「ご家族は?」
俺「両親も死んじゃってね、天涯孤独の一人身だよ」
リ「え?奥様いらっしゃらないの?」
俺「うん。独身。気楽なものさ」
指輪していないのに、チェックしてるしw さすが女の子。
芳「・・・・・もしかして そっちの気が?」
ん?そっち?おっと(苦笑)。笑っていないで否定しないとな。
俺「違う違う。美しい女性は憧れだよ!」
リ「ごめんなさい」
芳「すみませ・・ん」
俺「気にしていないよ。大丈夫。ずっと昔は恋もしたけどね・・・」
あ、いかん。口が軽くなった。
リ「もう恋愛はしないんですか?」
恋愛の興味深々の年頃だよな・・・。真面目に応えよう。
俺「あはは。年寄りには辛い試練だよ。枯れてるよ。それに相手がいなきゃどうにも、ね?」
恋愛は・・・試練の連続、か。哲学的だな、我ながら。
芳「俺さん、ダンディー・・・だっけ?リーネちゃん? だよねえー」
リ「うんうん!」
おや、褒めてくれてるし。・・・本音みたいだな。
俺「有難うw」
芳「わたしは、お父さん亡くしてしまって・・・」
ああ・・・宮藤博士。そうだったね・・・・。
リ「芳佳ちゃん・・・・」
優しい子だね、芳佳君を気遣っている・・・。
いかん。折角楽しい会話だったのに・・俺が不注意だった。
流れを変えるにはどうしたら・・・?
?「ちょっと失礼します、俺さん」
おや?救いの神か?
俺「どうぞ!お入りください」
今はネウロイでも歓迎だ。
ミ「こんばんは」
俺「おお、こんばんは、ミーナさん」
芳・リ「「こんばんは!隊長!」」
ミ「はい。こんばんは。あなたたち、楽しいのはわかるけど・・・?」
芳「あ!もうこんな時間でしたね!」
リ「ご馳走様でした!有難うございました!」
いえいえ。こちらこそ有難う。
俺「相手をしてくれて有難う。ご馳走様。いい夢を見てください」
辛いことは・・・忘れてくれ、夢であっても・・・。
芳・リ「「おやすみなさい!」」
俺・ミ「「おやすみなさい」」
俺「あ、ミーナさん、お茶でも如何ですか?扶桑の、油で揚げた甘い御菓子があるんです」
なんだか、落ち着かないな・・・さっきの失敗で動揺しているのか?この人の目が問題なのか?
ミ「ありがとう、いただきます。俺さん?」
ハイどうぞ。質問ですか?
ミ「俺さん、ご家族は?」
俺「両親は死にましてね、私一人です」
ミ「そう・・・」
俺「ええ。孫の顔を見せてやりたかったですね」
あれ?また余計なことを・・・。
ミ「恋人はいらっしゃったのね」
・・・やっぱり突っ込まれたか・・・・。
俺「・・・・・・ずっと昔の話です」
ミ「ごめんなさい・・・。失礼かもしれませんが、単刀直入にお聞きしたい事が」
俺「どうぞ。いいですよ。国家機密でなければ話します」
少し笑ってくれた・・・。
ミ「俺さんは、女の子ばかりの基地に滞在しておられますね?」
俺「ええ、11人の優秀で魅力あふれる若手達ですね」
この確認がどのような質問に?
ミ「・・・有難う。ええと・・・彼女たちにどういうお気持ちで接していかれるおつもり?」
俺「・・・ああ、そういうことですね」
さすが、貴婦人と呼ばれるだけのことはある。そう、私はあなたも賞賛しました。西洋方式ですw
さてと・・・これは別に難しい質問ではない。
俺「安心してください。私はもう年です。あなた方を見ても、恋愛感情ではなく保護者の
感情を覚えるのですよ」
ミ「保護者ですか?」
俺「ええ。こんな素敵な子供たちが私の娘だったら・・・。私に笑いながらお父さん、と呼びかけてくれる
ならば・・・。そういう気持ちです。護るべき、慈しむべき相手として見ているのでしょうね」
さて。本音ですぞ?
ミ「わかるような、気がします」
俺「上手く表現できないのが申し訳ない。かりんとうどうぞ」
ミ「・・・油で揚げたお菓子、でしたっけ?」
また、リーネ君と同じような事をww
ミ「・・・ポリ・・・ あ、美味しい」
決断力はさすがですな。
俺「こっちはピーナツを塗してます。砂糖は白砂糖ですね」
ミ「ポリポリ 香ばしいわ」
素直に笑う表情が可愛い。そう、まだ少女なんだ・・・。
俺「結構いい風味でしょう?」
なんで、こんな若い少女たちが戦場に。納得できない・・・・な。
ミ「欧州にもご勤務されたんですって?トゥルーデから聞きました」
俺「ええ、カールスラント語もまだ覚えていますよ」
さて、脳みそに活をいれるか。
急にカールスラント語に切り替えたせいか、ミーナさんの目が大きく見開かれる。
ミ「私の国にも?」
俺「ええ。・・・・・・よい思い出だけが残っています。決して忘れることは無いでしょう」
お世辞じゃあない。お世辞なんかじゃ・・・。
ミ「お上手です、カールスラント語。緑茶とこのカリントーは合いますね・・・。
良い思いで、とはその・・・恋人とか、ですか?」
ぐっ!鋭い人だ・・・。いや、俺がまいた種、か。
俺「・・・私の大事な思い出の人と出合ったのは、御国の首都の大使館で行われたパーティー会場
でしてね」
恋人かという問いには、答えない。私だけの思い出。彼女に言ってどうする・・・。
俺「正しくはその前に出会い、パーティーの席で話しを交わした、のです。あるとき、夏でした・・・彼女に
誘われて、彼女のふるさと、カールスラントの東部に旅行したのです。彼女の故郷へ」
ミ「婚前ですねw?」
・・・もう、どうとでもなれ!俺は一体どうしたんだ?まっすぐに俺を見るミーナさんの目・・・のせいか?
催眠魔法でも持っているのか? でも、目を逸らしたくない。
俺「ええw。若気の至り、ですか。・・・・・素晴らしい土地でした。白夜の野原にそよぐ草花。今でも夢に見ます」
ハァ・・・破廉恥行為ですね・・・。
ミ「東部のどのあたりですか?」
俺「ええと・・・ポズナニアです」
そう、ポズナニア・・・。
ミ「あらっ!私の故郷です!」
え? ほお。
俺「そうですか。奇遇ですね。すてきな土地でした」
21年・・・変わったのだろうか。
ミ「・・・・私ったら、長居してすみません。お風呂の時間ですよ?」
俺「あ、わざわざ申し訳ない。有難うございます」
ミ「 あの。その方のことは今でも?」
?
俺「忘れる事はできません・・・」
即答する。
ミ「 幸せな女性ですね。 あ、お風呂ですよ!」
ん??ああ、そうか。このひとも年頃なんだ・・・。
俺「では、お風呂に行くとします」
ミ「ご馳走様でした。おやすみなさい」
俺「またいつでもどうぞ!おやすみなさい」
テントの外まで見送る。
ふう。
・・・・・なにをペラペラ喋っているんだ。俺は・・・。あの目に見つめられて調子が狂ったかな。
でも、あの目は昔・・・・・・
「おーれさん!」
俺「わっ!!! あ、エーリカ君か。びっくりさせないで下さい。撃ちそうになった」
ハ「あ、本当に銃抜きかかってるし!こんな美少女を殺そうなんて ひっどーい!」
あはは(汗
俺「びっくりして反射的に抜いただけ!ごめん。ハンマーは起きてるけど、薬室は空だから」
嘘だ。
ハ「頭ナデナデして」
??はいはい。
俺「びっくりさせてごめん」
こんな子が娘だったら・・・。
ハ「ミーナとなに話てたの?グフフ・・・」
え?何時から居たんだ??
俺「あはは。芳佳君とリーネ君を迎えに来て、彼女とも少しお茶して。ミーナさんと話をしていたんだよ」
完璧かつ端的な説明だ、うん。
ハ「ふーーーーーん。お茶といえば御菓子が付き物ですねぇー?」
あ。そうだ。聞いてみよう。
俺「うん、扶桑の甘い菓子があったんでね。ねえ、エーリカ君。ちょっと質問があるんだけど」
ハ「ん?なに??ミーナ隊長の3サイズでも知りたい?恋人は今は居ないよ!いくの?俺さん?」
いやいや、違うw。
俺「キミたちのお国では、結婚後の姓はどうなるんだっけ?片方の姓を名乗る?別性のまま?」
ハ「えとねー、男女どちらかの姓を名乗る場合もあるし、両方の姓を名乗ることもあるよ。」
俺「ああ、そうだったね・・・そう、か」
ディートリンデ・・・いや、よくある名前なんだろう・・・。地域にちなんだ名前とか・・・扶桑にもある・・・。
ハ「ジーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」
俺「いや、昔の知り合いの名前を思い出したんだ。ん?なにをじっと私の顔を見ているの?」
ハ「えへへー。協力したんだから、ご褒美ちょーだい!そのお菓子って美味しいの??」
ああ!そうだった。
俺「解った解った。机の上に油紙で出来た袋が二つあるからね。あげるよ。明りは小さくつけているから、
すぐにわかるよ」
ハ「あっりがとぉぉぉ! ビューーーーーーーーン!」
俺「食べ過ぎないでな!」
元気だなw。かりんとう見て困惑するんじゃ?ま、いいか。舌で異文化を味わう。
国際理解への第一歩だ。
ディートリンデ・・・か・・・・。懐かしいな。 マリー・・・マリアンネ・・・・。
そんな感傷も、風呂の入り口に鎮座している立て札を見て忘れてしまう。
海賊旗によくあるような骸骨と交差した骨、いや、骨は♂マークを交差させたもの。
うら若き乙女たちにも、見落とし・勘違いの無さそうな効果絶大なシンボルだ。作成者とそれを確認・了承
した責任者(多分、ミーナさんだろう?)のユーモアセンスに敬意を表し、私は帽子を立て札の横に引っ掛け
笑いながら風呂場に入った。
「トゥルーーーーデェ!」
ノックもなしに飛び込んできた姿に動じることも無く、日記に万年筆を滑らせるバルクホルン。
バ「ハルトマン!何時も何度も言っているだろう?のkk・・・・」
ハ「はいはい。ねえ、俺からお菓子ギンバイしてきたんだ!一緒に食べよう!」
溜息をついて日記を閉じるバルクホルン。ハルトマンはベットに腰掛けて、紙袋を開けている。
傍らにはブランデーの瓶。
ハ「ねえねえ!早く食べよう!」
椅子をベッドに移動するバルクホルンの目に写った物は・・・。
バ「おい、エーリカ。これはなんだ?!」
ハ「扶桑のお菓子ー!甘いんだって!」
バ「これ・・・がか? どう見てもネコか犬の・・その・・・排泄物、にしか見えんが?」
ハ「なんというぶち壊しな表現するのかねー」
息を止めて目を近づけて良く見るが、見れば見るほど・・・。細い指先で突いてみる。なんだ?
いやいや、しかし色艶が・・・。そっと摘んで、少し潰してみるが、硬い。力を入れると砕けた。
ハ「なにやってんのー?そのまま指で摘んで食べればいいじゃーーん」
バ「言われるまでもない!検査しているんだ!カールスラント軍人たるもの!無闇に得体の知れぬ
物を口に入れるなど!もってのほか!」
ハ「トルゥーデって、いっつも固いんだから~。俺さんがそんな悪戯をこの美少女にするとでも
思ってんの??ひっどーい!」
そんな声を無視して、砕けた大きな塊を選んで摘みあげ、鼻先で断面を確認。気泡のあとがわかる。
ふむ。排泄物の断面は見たことは無いが、違うみたいだな。匂いを恐々嗅いで見る。油・・・植物油かな?
バ「よし。念のため、私が先に食べてみる。エーリカは万が一のとき軍医を呼べ」
ハ「全部食べちゃーダメだよー!」
バ「だっれが!お前が言うな!」
パク
・・・噛まずにじっと口内に神経を集中しているトルゥーデ。
バ「お?・・溶けてきた! おお・・・甘みが・・・。よし、咀嚼するぞ。(サクサク) おい!美味しいぞ!」
ハ「なーんだ。泡吹いて痙攣するくらいしてくれるかと思ったのに」
バ「面白いのか?そんなことをして?」
ハ「期待してないよー。んじゃ、いっただきまぁーす!(ポリポリ)おいひぃー!」
バ「うむ。日持ちもよさそうだな!モグモグ 見た目が悪いが味は良い」
ハ「甘みになんかコクがある~」
持参のブランデーをラッパ飲みするハルトマン。
ハ「ブランデーとも相性ばっつぐん!」
バ「グラスぐらい用意しろ・・・。この部屋には食器類はないからしょうがないか・・・」
愚痴りながらも、手は順調に伸びるバルクホルン。ブランデーも少し舐める。一方、ハルトマンは
豪快に。
ハ「俺っていい人だよねー」
バ「お菓子で釣られたのか?うーん まあ、階級を押し出してくる普通の将官とは違うな」
ハ「私の目は、人を見ることに関してはカールスラント1なんだよ~」
バ「鏡を見ろ!其処にあるのはなんだ!片付け出来ず、寝坊で怠惰な人物の目だろうが!」
ハ「ミーナに気があるのかなあ?」
バ「なに!アイツ!!」
ブランデーの瓶を握り締めるバルクホルン。なぜか、視線は机の横に吊るした
拳銃に向いている。
ハ「落ち着いて。(ポリ) 瓶割らないでよ。なんていうのかなー。あの二人、いい組み合わせかも!」
バ「ええ??俺って確か・・・」
ハ「48歳だっけ?ダンディーじゃん。行動も若いよ。マロニーなんぞとは大違い!」
うぇ。嫌な名前を出すなよ、と睨むバルクホルン。
バ「・・・年過ぎないか?ミーナは18歳だぞ?30歳差って親子じゃないか」
ハ「カンケーないじゃん。お互いが好きなら、さ」
バ「おい・・・ミーナも・・・その・・・あいつに・・・なのか?」
ハ「勝手に私が言ってみただけー!でも、なんかビンビンするんだー」
なぜか安堵しているトゥルーデ。
ハ「なに安心しているの? ハハーン。トゥルーデも俺のこと気になるんだー」
バ「ぶッ!・・・冗談も程ほどにしろ!」
ブランデーにむせる姿を見てケラケラ笑うハルトマン。
ハ「ん?それじゃ、もしかしてミーナを???えーっ!女と女!ヒューーヒュー!」
バ「バカをいうな!わたしは!ノーマルだ! 経験はないが・・・」
声がトーンダウンする。
ハ「そっかー!ライバルが減ったなー。じゃ、私がアタックしようかな ルン♪」
ブランデーの消費量だけが相互間で増加中。
バ「ハ・・・ハルトマン!お前は・・・ファザコンだったのか!!」
ハ「ふふ?どうだろうね?トゥルーデおねぇちゃん♪」
かりんとうを咥えたままで、上目遣いで見るハルトマン。
顔が真っ赤になるバルクホルン。ブランデーを呷る。
ハ「まあ・・・、もう3年も経つんだし・・・」
バ「・・・ああ そうだな」
ハ「ミーナだって、頼れる人が必要だよ、きっと」
バ「・・・私達がいるぞ・・・」
ハ「仲間への気持ちと恋人とでは違うでしょう」
バ「・・・・・」
ハ「ミーナには幸せになって欲しいよね・・・俺さんじゃなくてもさ。でも・・・・強制は出来ないしね」
かりんとうを咥えたままで呟くハルトマン。じっと窓越しに夜空を見るバルクホルン。
バ「ミーナ次第・・・・・だな」
1-1終
最終更新:2013年02月02日 11:59