「蒼穹の絆1-10」

―タイムリミット― エイラ視点


 意識が戻ってから三日後、軍医の許可を貰って病室から俺が出てきた。あとは通院治療だってサ。

私のタロットでは、ちゃんと意識が戻るって出たんダゾ!どうだ!凄いダロー!更に言えば、俺は暫く
ここに居るとデタ!そのほうがサーニャも喜ぶし、私も嬉しい。ミーナもナ。ああ!晴れやかな気分!
晴れやかな早朝の空気!気持ちいい!

早朝から、俺が海岸を歩幅をとって散歩・・・競歩かナ?している姿が見える。良くなったもんだ。ゴムボート
に引き摺りあげたときは、正直ダメだと思ったンだけどナ。ヨカッタヨカッタ。
ミーナも前にもまして仕事をこなしている。恋するとああなるヨナ。私もそうだし。横目でサーニャを見る。
ウン、着陸ダナ。いつもやっているようにピシッと同時着陸しようナ。目と目で微笑む。大事な人を護る。
わたしはサーニャの守護天使ダ!


朝風呂を終えて、食堂へ直行。腹減ったゾ。飛行携行食は少ないからダメだ。眠そうなサーニャをエスコート。

ミ「皆さん、揃ったわね。ではいただきます」

 ミーナが居てくれるって・・・やっぱり安心できる。新入りだと気を使って遠くに席を取っている俺。もっと
 近づきゃいいのに。
 今朝は扶桑食ダ。ミソシルが胃に沁みる。アア、おいしいね、サーニャ!

ル「ねえねえ!ミーナ!俺さん何時までここに居るの??」

ウ。この質問がここで出るとは。みんな、息飲んでる。もう、いっちゃうのかな・・・やっぱり?でも占いで・・。

ミ「治療が終わったら、中断していたお仕事の残りをやるそうよ?まだ暫く居ることになるわね?」

 占い道理ダ。ふっふっふ。私って凄い。

ル「そっかー!嬉しいな♪ 芳佳!オッカワリー!」

俺「ええ。それでもあと10日ぐらいでしょう。治療だけで一日終えるわけではないですし」

 え。それだけカヨ?サーニャの箸が止まった。短すぎダヨ。占いでは・・・。

香「えー?それだけですか?こんな居心地の良い基地ないですよ?他に。あ!階段から落ちてください!」

 笑いが起きる。ミーナも笑ってる。

俺「痛いのはもう嫌だよ、勘弁してくれw」

 じゃあ、私が秘蔵の薬で・・・あれ?恋薬しかないか?うー。

シ「いっそのこと、転属してしまえば?ガランド少将に頼めばいけるでしょ?」

 おお!グッドアイデアダ!サーニャも皆も頷いてるゾ。ミーナも!

俺「ダメです。公私混同です。敵前逃亡並みに恥、で・・・」

ペ「なんで!努力しないんですか!!」

 エ?ペリーヌ?どうした??なにそんなに怒ってる?みんな唖然としてるゾ?

ペ「俺さん、私を励ましてくださったじゃないですか!努力しないとって!わたくし、勇気を振り絞って
 頑張りました!今度は、俺さんが!努力すべきですわ!道を探すべきです!」

 顔を覆っていっちゃったゾ。アレアレ・・・。どうしたんだ?ツンツンめがね。
 みんな黙っちゃった。
 俺、硬い表情で食事を続けてる。困ったナ。


―タイムリミット2― バルクホルン視点

 朝のブリーフィング及び幹部会が終わった。執務室からゾロゾロと皆仕事に向かう。聞いてみるか。
足を止め、皆が出てからドアを閉める。

バ「ちょっといいか」

ミ「なぁに?トゥルーデ。真剣な顔しちゃって?」

 早速気付かれてたか。

バ「俺さんのことだが。今後どうするんだ?」

ミ「来年春頃まで、ロンドンの扶桑代表部に居るらしいわ。近くに居るなら、ね?」

バ「そうか・・・。電話と手紙、か・・・」

 どっちも、防諜目的で検閲される。公用は早々使えるものではないしな。

ミ「私がロンドンに行くときくらいは、逢えるんじゃない?」

バ「私も、クリスの見舞いで時々はいく。よければ、伝令するから、な?」

 これなら、本音のやり取りも出来るぞ? このくらいしか手伝えなくてすまん。

ミ「ありがとう。トゥルーデ。そのときはお願いします」

 笑顔だけど、どこか寂しそうだな。ドアを閉めながら、戦争が何時終わるのか考える。先が見えない・・・。


―タイムリミット3― シャーリー視点

 射撃場に増設されたクレー射撃場で、私以下、手ほどきを受けている。
どうにもやりにくいもんだね。
半円の射台。クレーを放り出す機械は、半円の中心を結ぶ直線上、半円の端と端にある。そこから、その
直線のほぼ真上へと(まあ実際は違うみたいだけど?)そこを緩やかな上昇カーブを描いて左右の機械から
クレーが二個左右に飛び出すわけ。なんで、左右のクレーはある一点で交差して飛び去る。

射撃台は円弧に沿って置かれている。一箇所だけ、交差点の真下あたりで合計8箇所。発射の回数が射台に
よって、ダブルの2回発射とシングルの一回発射が混じるんで、最初はもう大混乱w。単純なほうがいいよw。

まあ、俺さんの後ろにゾロゾロとくっついて、見よう見まねでやってみた!

向かってくるように見えるヤツ、飛び去るヤツ、真横から、斜め横から。いやー!おもしろいぞ!
飛行対象に対しての全方位射撃が学べるわ。夢中になってやってみた。1ラウンドに25発消費する。ルッキーニ
も楽しんでいる。普通の射撃より動きがダイナミックで楽しいわー♪

俺さんが、休憩しましょうと声をかけるまでに3ラウンド。結構撃ったね。

 ブローニングのオート5自動散弾銃をラックに置き、冷えたコークを流し込む。うめーーっ!
 ねえ、俺さん。散弾銃だと思っていたんだけど、結構難しいんだねー?

俺「散弾だから、適当に撃ってもあたる、と思ったんでしょ?」

 ばれてらw まあ、そうおもっていましたけど。

俺「散弾でも、後ろを撃ってしまったらクレーはそのままとんでっちゃ居ますからねー」

 狙い越し、飛行経路を読んで、先を打つというわけだね?

俺「そうそう。で、射撃角度によってそれが変わるんで。なかなかねえ?」

 確かにそうだ!と大笑いする。やってみてホンットよかった!俺さん、有難う!これからも練習続けます!

 時々、タバコを咥えたままで何か考え込んでいる。
 寂しいんだろw。私と別れるのが?

 そういうと、タバコを吹いて笑ってる。でも、ほんとに寂しそうだな・・・。このまま、ここに居てくれたら。
 ずっと射撃とか教えてもらえるのになあ・・・。そうすりゃ、ミーナだって・・。

 ん? んーーーーー。閃いたぜ。
 その夜、じっくりと検討した私は公用電話をかけた。旧友!話そうじゃないかw。



―別れ― ハルトマン視点

 結局、別れる日が来ちゃった。軍隊っていっつもこう。ずっと転属のない部隊があればねえ。でも、この
501だって・・・何時までも続くわけじゃない。はぁ。おセンチ気分。

トラックに積み込まれるテントやら机やら。
上空からそれを見て、凄く寂しくなる。

バ「ハルトマン。余所見ばかりするな!」

 ウン・・・・。

バ「・・・・寂しいのか?」

ハ「お前だけじゃない。・・・・行くぞ?」

 解ってるけどさ、みんなそうなのは。 でも、溜息が出るのは止められないよ・・・。


訓練を終えて、急いで正面玄関に走っていく。トゥルーデも一緒。急がないと!

ハ「まってよーー!」

 もう、皆集まってるし!

 ぜぇぜぇいいながら走りこむ。 はぁ、間に合った。

ミ「間に合ってよかったわ。ほら、ご挨拶しなさい」

 ミーナ・・・。ミーナの顔が見れないよ・・・。

俺「エーリカさん、お世話になりました。有難う」

香「エーリカさん、お風呂楽しかったわ。またいつか逢いましょうね!」

 涙が出てきた。二人に抱きつく。

バ「おい・・・ハルトマン?」

 いいじゃん!最後なんだもの!

バ「俺さん、カヨさん。お世話になりました・・・」

俺「有難うございました。では、皆さん」

 ミーナに!ミーナに何か言って上げて! 思わず大声で叫んでしまった。
 トゥルーデが肩をきつく握り締める。離せ!

俺「・・・ミーナ中佐。皆さん。お元気で!!」

 それだけ??ねえ!それだけ??
 なのに、敬礼して・・・・車に乗っちゃった。

 カヨが・・・ハンドルから片手を離して手を振った。
 俺さんは・・・背筋を伸ばしてまっすぐ・・・こっち見てもくれない。振り向いてもくれない。

 みんなが手を振る。わたしも、涙をこらえて手を振った。
 バカ・・・。




―3ヵ月後― ハルトマン視点

 ブリーフィングルームで、ミーナたちが来るのを待つ。
俺さんたちが行ってしまって、もう3月くらい経つ。まだ、寂しさが抜けないよ。
はぁ・・・。つまんないな。
みんなは、普段どおりの顔を装ってる。でも、あの二人の話題になると急に食いつくから丸解り。
ミーナには、みんな気遣って話題にはしないようにしているけど、ね。

ミーナも、ずっとロンドンへ行く用事がないから・・・俺さんとは会えないまま。たまに手紙が届くけど、
検閲があるから、素っ気のない・・・内容みたい。トゥルーデが頑張ってくれてるらしいけど。なんとか、
ならないもんですかねー。

そういえば、今日は射撃教官が着任するとか言う話。どうせ、ブリタニア海兵隊の鬼軍曹でしょ。
もういいよ。つまんないもん。ブルドックみたいな顔をしたオッサンでしょ。ふん。
拳銃も、クレーもしっかりやった。けど、褒めてくれる相手が、ブルドックじゃあね。
精神的なことって結構大事だよ。モチベーション。ウィッチはそれに左右されるのよ。ふん。


あ。トゥルーデがきた。しっかりしている振りでもするか。気分治しに早く飛びたいなぁー。はぁ。

着座して、ミーナの顔を見る。あれ??今日はとっても笑顔だ。ははーん。俺さんと連絡がついたの?
電話かな、手紙かな? よかったね、ミーナ!

ミ「皆さん、おはようございます。今日も皆元気ね?では、本日の予定に・・・」

 言葉にも張りがある。何時逢えるの?早く逢えるといいね!

ミ「では。最後になりますが。本日着任した新しい射撃教官を紹介します。週に二日間、指導して
下さいます」

 ブルドックぅ?どーでもいいや。今日の空は・・・。あれ?やけに丁寧に・・・?

バ「起立!気をーツケッ!」

えっ!なんで?軍曹でしょ?

あれ? あの横顔は!
みんながざわめく。見間違いじゃない?

うっそーーーーー?


バ「敬礼!!」

俺さんじゃああああああああああああああああん!
皆、壇上に駆けつける。誰も敬礼などしない。抱きついて喜ぶ。
ミーナ!こういうことだったの?教えてよ!ずるいよ!

よかったよ・・・・ミーナ。よかったね!


1-8終
最終更新:2013年02月02日 12:03