魔導龍翼(フリューゲル・ドラグニア)
[解説]
魔導龍翼……一般的には龍翼と呼ばれているが、これは一言で言ってしまえば龍騎士の乗った機兵を空高く打ち上げるための、ロケットブースターである。
無論、この聖華暦830年代の聖華世界においては、空を飛ぶ事は不可能に近い。
無論、この聖華暦830年代の聖華世界においては、空を飛ぶ事は不可能に近い。
いや、単純な高所からの滑空を行うグライダーならば実は既に存在する。
機装兵『トゥルビネ』は展開式の主翼による空挺降下中の滑空を行うし、機装兵『ソルダート・バンディエラ』は翼状パーツによって高所からの短距離滑空を行う能力を有している。
これは原始的なグライダーと言って良いだろう。
もう少し進歩すれば、向かい風を受けて揚力に転化し、若干の上昇を行う事すら可能かも知れない。
機装兵『トゥルビネ』は展開式の主翼による空挺降下中の滑空を行うし、機装兵『ソルダート・バンディエラ』は翼状パーツによって高所からの短距離滑空を行う能力を有している。
これは原始的なグライダーと言って良いだろう。
もう少し進歩すれば、向かい風を受けて揚力に転化し、若干の上昇を行う事すら可能かも知れない。
それだけではない。
かつて米国で実際に飛んでみせたライトフライヤー程度の飛行機ならば、いやそれ以上の能力を持ってはいても構造的には簡易的なレベルの飛行機であるならば、この世界の魔導工学であっても既に実現できるであろう。
だが実際には実現していない。何故か?
かつて米国で実際に飛んでみせたライトフライヤー程度の飛行機ならば、いやそれ以上の能力を持ってはいても構造的には簡易的なレベルの飛行機であるならば、この世界の魔導工学であっても既に実現できるであろう。
だが実際には実現していない。何故か?
それは飛竜系を始めとした、空を飛ぶ魔獣の存在があるが故だ。
軽飛行機の類では、無理に空を飛んだところで身を護る事はできない。
記録には残っていないが、おそらくは空を飛んで襲われた軽飛行機械の類はいくつか存在したのではないだろうか。
軽飛行機の類では、無理に空を飛んだところで身を護る事はできない。
記録には残っていないが、おそらくは空を飛んで襲われた軽飛行機械の類はいくつか存在したのではないだろうか。
もしもゆっくり飛ぶ軽飛行機程度の物が実現していたのならば……。
一気に一足飛びに超高機動の機体を求めずに、更には科学技術の力を借りる事を厭わずに、ゆっくりと飛ぶ事が叶っていたのなら、既に新人類は空をその手に取り戻していたのかも知れない。
そして三次元の飛行感覚を持ったパイロットを手に入れ、機動制御プログラムが無くともパイロットの経験で、雲に妨げられずに地上の地形が見えて航法装置が要らない低空であれば、自由にとは言わずともそこそこの機動力で空を飛べていたのかも知れない。
空の魔獣にも対抗し得る戦闘機動を行う能力を、手に入れられていたのかも知れないのだ。
一気に一足飛びに超高機動の機体を求めずに、更には科学技術の力を借りる事を厭わずに、ゆっくりと飛ぶ事が叶っていたのなら、既に新人類は空をその手に取り戻していたのかも知れない。
そして三次元の飛行感覚を持ったパイロットを手に入れ、機動制御プログラムが無くともパイロットの経験で、雲に妨げられずに地上の地形が見えて航法装置が要らない低空であれば、自由にとは言わずともそこそこの機動力で空を飛べていたのかも知れない。
空の魔獣にも対抗し得る戦闘機動を行う能力を、手に入れられていたのかも知れないのだ。
閑話休題。
魔導龍翼は、そう言った自由な飛行の可能性を捨てて、単にまっすぐに垂直上昇するだけの機能を持った、ロケットブースターだ。主動力は魔導スラスターであり、それに空力制御用の翼を備えた物が、この装備の根幹である。
無論、魔導スラスターは専用の軽量高効率の物であり、翼はそれを装備した機装兵をただただまっすぐ垂直に打ち上げるための、言わば弓矢の矢羽根的な役割をするものなのだ。
無論、魔導スラスターは専用の軽量高効率の物であり、翼はそれを装備した機装兵をただただまっすぐ垂直に打ち上げるための、言わば弓矢の矢羽根的な役割をするものなのだ。
龍騎士たちは、この装備で空高く――飛竜系の魔獣の巡航高度である50mを超える60mの高さまで――跳躍し、高高度からの飛び降り攻撃により敵を撃破、あるいは跳躍の頂点で飛翔中の飛竜などの敵を討滅するのだ。
[プロトタイプ及びMk-Ⅰ]
聖華暦700年代初頭に開発された、最も原始的な最初の魔導龍翼。
プロトタイプはカーライル王朝・聖王国の赤龍騎士団に所属する龍騎士がアイディアを出し、騎士団所属の技師たちと協議を重ねて造り上げた。
だがそれを大量配備する方法が無く、そこで彼らは設計を技師たちの伝手を頼ってホルン社に持ち込んで、量産してもらった。
これが魔導龍翼Mk-Ⅰである。
プロトタイプはカーライル王朝・聖王国の赤龍騎士団に所属する龍騎士がアイディアを出し、騎士団所属の技師たちと協議を重ねて造り上げた。
だがそれを大量配備する方法が無く、そこで彼らは設計を技師たちの伝手を頼ってホルン社に持ち込んで、量産してもらった。
これが魔導龍翼Mk-Ⅰである。
この頃の魔導龍翼の構成は、魔導スラスターと空力制御用の翼だけであり、魔導龍翼の駆動は完全に操手である龍騎士たちの魔力頼りであった。
一部の龍騎士たちの機体には増槽が取りつけられていた物もあったが、これは機体重量を増して跳躍高度を低下させるため、操手の魔力切れの危険と二者択一であった。
だがこんな代物でも魔導龍翼開発前の、増槽を装備した機装兵で、バーニアが焼き切れる寸前まで噴射を続けて、理想とは程遠い低高度までの跳躍で我慢していた時代よりはマシであった。
一部の龍騎士たちの機体には増槽が取りつけられていた物もあったが、これは機体重量を増して跳躍高度を低下させるため、操手の魔力切れの危険と二者択一であった。
だがこんな代物でも魔導龍翼開発前の、増槽を装備した機装兵で、バーニアが焼き切れる寸前まで噴射を続けて、理想とは程遠い低高度までの跳躍で我慢していた時代よりはマシであった。
[Mk-Ⅱ]
聖華鍛冶師協会が開発した、「固形化した液体エーテルをカートリッジに封入し、必要時に解放する事で爆発的な魔力供給を行うシステム」であるマナ・カートを搭載したバージョン。
当初このマナ・カートは、海の物とも山の物ともつかない装置でしか無かった。
だがホルン社の技師が、この装置と魔導龍翼との相性の良さに気付く。
マナ・カートは原理的に、瞬間的にしか魔力を取り出す事はできない。
だがシステムとしてはそこそこ軽量であり、なおかつ供給できる魔力は瞬間的であっても100マギアを超える。
どうせ魔導龍翼は、龍騎士の機装兵を空高く打ち上げる一瞬しか使われないのだ。
当初このマナ・カートは、海の物とも山の物ともつかない装置でしか無かった。
だがホルン社の技師が、この装置と魔導龍翼との相性の良さに気付く。
マナ・カートは原理的に、瞬間的にしか魔力を取り出す事はできない。
だがシステムとしてはそこそこ軽量であり、なおかつ供給できる魔力は瞬間的であっても100マギアを超える。
どうせ魔導龍翼は、龍騎士の機装兵を空高く打ち上げる一瞬しか使われないのだ。
そしてマナ・カートは魔導龍翼に搭載される。
実験機では10個のマナ・カートを搭載していたが、これでは重すぎて跳躍高度が稼げない。
そこで搭載するマナ・カートを6個に減らし、しかも使い切ったマナ・カートを次々に廃棄して捨てる事で、重量問題は解決した。
更に必要時には3個までのマナ・カートを同時に消費する事で、更に跳躍の到達高度を数倍にする機能、更には龍騎士本人の乗る機装兵の手でもって、容易に予備のマナ・カートを補充する事ができる機能も付ける事で、この装備は完成を見る。
これが魔導龍翼Mk-Ⅱであった。
実験機では10個のマナ・カートを搭載していたが、これでは重すぎて跳躍高度が稼げない。
そこで搭載するマナ・カートを6個に減らし、しかも使い切ったマナ・カートを次々に廃棄して捨てる事で、重量問題は解決した。
更に必要時には3個までのマナ・カートを同時に消費する事で、更に跳躍の到達高度を数倍にする機能、更には龍騎士本人の乗る機装兵の手でもって、容易に予備のマナ・カートを補充する事ができる機能も付ける事で、この装備は完成を見る。
これが魔導龍翼Mk-Ⅱであった。
[Mk-Ⅲ]
聖華暦800年代における現行の赤龍騎士団主力機装兵『ドラケン』には、更なる改良が加わったMk-Ⅲが採用されている。
まず第1の改良点は、魔導スラスターの高効率高出力化と更なる軽量化である。
そして第2に、計算した結果では無く経験則によるものだが、空力制御用の翼形状の改良が施されている。
まず第1の改良点は、魔導スラスターの高効率高出力化と更なる軽量化である。
そして第2に、計算した結果では無く経験則によるものだが、空力制御用の翼形状の改良が施されている。
[疑似魔導龍翼]
聖華暦800年代における赤龍騎士団新兵用機装兵、『ソルダート・ロッソ』に搭載されているのが、この疑似魔導龍翼である。
本来の魔導龍翼よりも出力曲線がマイルドになっており、新兵には扱いやすいが熟練龍騎士には物足りない。
更に以下の点で、大きく本物に劣っている。
本来の魔導龍翼よりも出力曲線がマイルドになっており、新兵には扱いやすいが熟練龍騎士には物足りない。
更に以下の点で、大きく本物に劣っている。
- 機装兵の手によるマナ・カート補充が不可能。専門の工兵により、補充する必要がある。
- マナ・カート搭載数は4個まで。
- 一度に消費できるマナ・カートは1個まで。多数のマナ・カートを一度に消費しての超高高度跳躍は不可能。