狩装兵 シン・オロチ




[ショートストーリー]
下級戦士(クシャトリヤ)の地位を抜け出し、狩装兵『シン・カルプ』を卒業した彼は、新たに狩装兵『シン・オロチ』を与えられていた。堂々とした、「首付き」の機体である。三大国では従機と呼ばれるカテゴリーの『シン・カルプ』とは、やはり力強さが違う。いや、単純なパワーだけなら『シン・カルプ』もこちらに比肩し得るのだが、そのパワーを活かす敏捷性、動きの正確さ、機体バランスなどではまったく勝負にならない。
「……その下級の機体で、これよりも上位の先代戦士長(バードル)機を一蹴するっていう親方、何者だよ。」
『おい、ぼけっとしてるな!相手の退路を断つんだ!』
「了解だぜリーダー!……あー、こないだまた親方に、資材のツケができちまったからな。」
『そう言う事だ!』
『とほほ……。』
『しかたねーだろー?俺たちは、そこまで腕良いわけじゃねえ。正直リーダーの技量にオンブにダッコになってるところ、あるからな。』
「その分、リーダーに負担がかかってて、当然リーダー機の損傷、損耗が激しくなるからなあ……。」
彼らはそうは言うが、実のところ単機での技量ならともかく、集団戦としての相互連携なら彼らもかなりの物なのである。そうでなくば、昇格して『シン・オロチ』を与えられるわけが無い。しばらく前に野盗同然の一部部族が、商人(カラシン)のキャラバンを襲撃した事があった。偶然それを救援したのが、近場で鋼魔獣を狩っていた……そして獲物にあぶれていた、彼らカナン族若手の下級クシャトリヤ集団である。当時は『シン・カルプ』を駆っていた彼らであったが、部族の救援が来るまで見事キャラバンを守り通した功績により、『シン・オロチ』を与えられたのである。
「うおりゃあああぁぁぁ!!」
『『『あ!?ばかやろぉ!!』』』
「あ、しまった。」
彼の機体が振るった野太刀は、鋼魔獣『シュトルッツォ』を真っ二つに両断する。……リーダー機が必死になって、大きな損傷を与えずに鋼魔獣を機能停止させようとしていたのだが。何故って貴重なパーツが必要だから。
『おま……。やってくれたな。』
「わ、わりぃ……。」
『くそ、そいつを後方のキャンプに届けたら、もっかい獲物の捜索だ。』
『ようやく集落に帰れると思ったのに……。』
『とほほ……。』
[解説]
聖華暦830年代近辺で、カナド人部族はカナン族において、一般のクシャトリヤ(戦士)が使う狩装兵とされている機体。機体の格はさほど高い方では無いが、さりとて最低ラインでも無く、良い意味で特徴の無い事が特徴。カナド人が造る狩装兵は、鋼魔獣を狩ってその残骸から使える資材を集めて建造される。故に本来は、1機毎の差異が非常に大きくなる事が多かった。まあ、各鋼魔獣に共通な代わりに能力の低めな部品を集めて造られる、三大国では従機と呼ばれるクラスの機体であれば話は別なのだが。
しかしこの狩装兵は、歴とした首付き級……三大国であれば機装兵として扱われる機体でありながら、能力的な物をほぼ統一されている。先にも述べたが普通狩装兵は、雑多なパーツを集めて相性の良い物を組み合わせて造り上げるため、1機毎の差異が内部的に大きいのが普通だ。にもかかわらず、この狩装兵『シン・オロチ』は外観は勿論のこと、性能や操作性と言った目に見えない内部的な部分で、ほぼ均一になる様に造られている。流石に三大国、ことに自由都市同盟の機装兵ほどには、機体1機毎の癖が弱くは無い。しかしそれでも充分実用レベルの均一性を持っており、カナン族の技師(マキナ)は賞賛されてしかるべきであろう。
何にせよ、この機体はカナン族で数多く配備されているのだが、これほどに個々の機体が均一に、なおかつ多数造られていると言うのは驚嘆に値する。『シン・オロチ』の初号機は聖華暦800年代初頭に造られた模様だが、830年代の今現在においても初期に造られた機体と最新機の差がほぼ無くなる様に、後期型で加わった改良点はかならず初期型にもフィードバックされ、改造が行われている模様だ。ただしこれほどまでに1機毎の均一性に気を配ったため、単機での性能は他部族の狩装兵に一歩譲る。もっとも性能や機体の癖の均一化は、クシャトリヤたちによる相互連携に良い影響を与え、カナン族は集団戦では無類の強さを誇っているのだ。
その他としては、この機体は狩装兵にしては乗りやすいと言う事がある。たいていの他部族の狩装兵は、性能を上げる事だけに血道をあげ、乗りやすさは度外視される事が多い。しかしこの機体は操縦の癖が、あくまで「狩装兵としては」と言う枕がつくが、非常に少ない部類だ。そのため「狩装兵としては」操り易く、疲労度が少なくなる。その上この機体は、狩装兵では無視されがちな「居住性」と言う物にも気を配っており、これは操手の疲労を軽減する事に一役買っている。この事は継戦能力にも有利に働き、まれにある部族同士の縄張り争いなど小競り合いでは、「長期戦になったらカナン族には勝てない」とまで言われている。
[武装・特殊装備]
[野太刀]
前述した通り、この機体は狩装兵としては例外的に、機体性能を平均化させて数を揃える物だ。バーゼル族やリュトフ族の様な古代の工業施設を再稼働させている例外的な部族を除いては、狩装兵は半ばマキナたちの手造りに近い。そんな中で、これだけの均一な機体を数多く揃える事は、恐るべき偉業と言っても良いだろう。
まあ、それ故にこの機体が持つ武装は規格化され統一され、同じ武器を与えられている。まあまれに役割分担のため、変わった武器を与えられる事もあるのだが……。だが基本的にこの機体に与えられている武器は、高品質ではあったが全て規格化され統一された野太刀だけである。ちなみに予備武器は、各操手の得意な武器を各操手の責任において揃える事になっている。
前述した通り、この機体は狩装兵としては例外的に、機体性能を平均化させて数を揃える物だ。バーゼル族やリュトフ族の様な古代の工業施設を再稼働させている例外的な部族を除いては、狩装兵は半ばマキナたちの手造りに近い。そんな中で、これだけの均一な機体を数多く揃える事は、恐るべき偉業と言っても良いだろう。
まあ、それ故にこの機体が持つ武装は規格化され統一され、同じ武器を与えられている。まあまれに役割分担のため、変わった武器を与えられる事もあるのだが……。だが基本的にこの機体に与えられている武器は、高品質ではあったが全て規格化され統一された野太刀だけである。ちなみに予備武器は、各操手の得意な武器を各操手の責任において揃える事になっている。
[リュトフ族謹製長銃型魔導砲]
カナン族の狩装兵は、基本的にリュトフ族から購入した同じ型の魔導砲を用いている。
リュトフ族は古代の工業施設を再稼働させており、同様に古代の施設を持ってはいるが閉鎖的な武断的部族であるバーゼル族とは異なり、他の部族とも深い交流を行っている。
そして魔導砲の銃身や薬室の様な極めて精度が必要とされるパーツを大量生産するには手作業では困難であり、何らかの工業施設が必要であった。
カナン族の狩装兵は、基本的にリュトフ族から購入した同じ型の魔導砲を用いている。
リュトフ族は古代の工業施設を再稼働させており、同様に古代の施設を持ってはいるが閉鎖的な武断的部族であるバーゼル族とは異なり、他の部族とも深い交流を行っている。
そして魔導砲の銃身や薬室の様な極めて精度が必要とされるパーツを大量生産するには手作業では困難であり、何らかの工業施設が必要であった。
そのためカナン族では初期は銃身と薬室のみをリュトフ族から購入し、自分たちで残りのパーツを組みつけて魔導砲を造っていた。
しかし聖華暦830年現在では、カナン族は自らの生産力は全て狩装兵本体および白兵武器の生産に振り向け、ほぼ魔獣狩りにしか使えない魔導砲は全て交易によりリュトフ族より入手している。
しかし聖華暦830年現在では、カナン族は自らの生産力は全て狩装兵本体および白兵武器の生産に振り向け、ほぼ魔獣狩りにしか使えない魔導砲は全て交易によりリュトフ族より入手している。