別に愛されていないことを愛されている男



中村晃久(なかむら てるひさ)

  • 登場作品:新生,月下美人,秘密,荒井,鳴七,稲in
  • 種族:人間
  • 職業:鳴神学園高校 二年B組
  • 年齢/誕生日:16歳/2月12日
  • 身体:167cm・58kg ♂ B型
  • 趣味:昆虫観察
  • 好きな/嫌いな食べ物:酢豚に入ったパイナップル、カレー風味のもの/人の握ったおにぎり、カレーうどん
  • 関連人物:荒井昭二《クラスメート,親友,恋敵》,真鍋ライカ《部活》,本郷茜《呪い,クラスメート》,赤川哲也,時田安男,曽我秀雄,袖山勝《クラスメート》,茂爺《親戚,?》,遊女の霊《?》
  • 関連用語:映画研究会,昆虫研究会《所属》,荒井の友人《?》

概要

 趣味人「荒井昭二」の友人のひとり。とはいえ、「荒井の友人」枠にも関わらず特定分野に対して優れた技術や卓見を有するわけでもなく、部活などで親密な付き合いがあるような体でもない。少なくとも現状では。
 かといって善良だったり真面目というわけでもなく、中村くん本人は無神経な言動が鼻に付くふてぶてしい人物である。が、荒井さんの中では微妙に憎み切れない不思議なポジションを確保している。結果、友人であることに変わりはないと思われていた。

 初登場以降やたら金に汚いキャラ付けが施されており、知人間に妙なアルバイト話を持ち込んでは多大なるトラブルを巻き起こすともに小金をせしめるというスタンスが定着している。

モブから名脇役へ

 ……だったのだが、『荒井』発表に先駆けて明かされたキャラクター紹介文により、「荒井の友人」ではなく「自分が荒井の無二の親友だと思い込んでいるクラスメート」という立ち位置であることが判明してしまった。友人ですらなかった。
 しかし『新生』の「牧場奇譚」紹介文には名前こそ出ていないものの中村くんの事を友人として扱っているため、「かつては友人だったクラスメート」なのかもしれない。

 そんな中村くんだが「厚顔無恥」を絵に描いたものが歩き出した、という認識を行えば彼という人物を捉えるのは容易だろう。
 プライド自体はかなり高いのだが、先述の通りそれに見合った能力があるわけでもなく肥大した自己認識でそれを補っている。
 必然的に周囲とは相応の軋轢を生むことになるのだが、本人は気づく節はもちろん気づく気もない、といったところである。

 辛辣だが温厚な荒井さんの口から中村くんのことが語られることも多く彼からは比較的穏当に評されているものの、実際に周囲の人間から中村くんに向けられる人間評は程度の差こそあれあんまり好ましくない、というもので共通している。
 もっと言えば、この項を含めたファンからの評価もほとんど罵倒じみたもので染め上げられてしまっている。登場作品全体を見渡したとしても、作中での行動は良識という観点に立てば一貫して褒められる要素が見つけられないのだから恐れ入る。

 かと言ってプレイヤーから必ずしも嫌われているといわれればそうでもない。
 どう見ても凡人なのに場合によっては物怖じなく(図々しく)話に関わってくる肝の太さに感服したり、本人は飄々としている風で実際は生き汚くしぶとい姿に怪物性を見出されたりで、なんとなくただものではないという共通認識が出来上がっている。

 また、たとえ嫌われ役が回ってきてもキャラをぶれさせずにマイペースに振舞う。話の根幹に関わることはなくても周縁部にいる中村くんが取った行動の影響で他者がいい方にも悪い方にも成果を持ち帰り、そのことで話が転がっていくことが多い。
 などと、物語の「トリックスター」としての役回りは優秀であり、原作者もそういった意味で彼の使い勝手の良さを認めている。


アパシー・シリーズ

新生

 「牧場奇譚」に登場。
 初登場作品。
 青森で牧場を経営している親戚に要請されたのか、夏休みの一ヶ月間を泊まり込んでの長期アルバイトの話を荒井さん相手に持ち込んだ。本人はいたって乗り気ではなく、出発三日前に見え見えのウソをついて中村くん自身は早々に話から離脱した。

 以降の話はひと夏の冒険に似た荒井さんの体験談に終始するので、特に中村くんのことが話題に上ることはない。
 後続作品を見ればわかるのだが、この時の荒井さんは中村くんに対してかなり真摯な対応をしていると言える。

月下美人

 第一巻「蝶の道」に登場。
 当初は「真鍋ライカ」さんに乞われるままに彼女からお金をもらって、荒井さんと彼女のことを引き合わせるという役回りである。
 しかも行動の悪印象を援護するかのように、他人を容姿で判断したり、これでもかというほどお金に執着していたりと品位に欠ける言動まで目立った。金の無心に関しては本人は隠しているつもりなのか否定しているが、やはり本心は見え見えである。

 「牧場奇譚」で見受けられた少々難がありそうな一面から名誉挽回したいところだったが、それどころか完全に悪化している。
 それだけに留まらず、自分が世間一般的な思考をしていると思い込んでいるようである。周囲をあまり見ておらず、思い込みが激しい部分があるのかもしれない。

 荒井さんが年の割りに大人びた見識を持ち合わせているにしても、彼ほど俗な考えをしている高校生も珍しい。
 偏見に満ちた彼の歯に衣着せぬ物言いに眉をひそめた人も多いのでは。
 反面、この作品で中村晃久という男のキャラクター性が一気に固まり、有象無象から一気に脱却を果たしたことは確かである。

 とは言え、この話の焦点は真鍋さんにその親代わりの白井先生を交えた荒井さんとの交流に絞られており、中村くん自体は印象的とはいえ、話を引っかき回すことで加速させる程度の役割に終始している。
 さりとて、クライマックスシーンに向けて前後不覚になっての暴走して暴力沙汰という暴挙はなかなかいただけない。

 (ネタバレにつき格納)

+ ...
 散々やりたい放題した中村くんが痛い目をみるだろうと予測していた読者も多いだろう。
 しかし彼はそんな期待を裏切り、いや裏切ることのなくといった方が正しいのかもしれないが、死なない黒木先生にボコられ顔を腫らし、呼び出し程度で済んでしまう。まぁ、やったことを考えれば相応の処置ではあるのだが……。

 最後にはこの一言である。

 「何も覚えていないというのは、本当に恐ろしいね。ごめんよ」

 これには流石の荒井さんも開いた口が塞がらなかったようだ。

秘密

 「牧場奇譚」も「蝶の道」も荒井昭二が一年生時の話のため、中村くんが二年生になっても荒井さんと同じクラスなのかどうかは明言されていない。(2020年10月時点)
 25周年Twitter企画「秘密」では、坂上くんが二年B組を訪ねると中村くんが居るため、十中八九、クラスメートなのだと思われるが……。[これで他クラスの可能性も捨てきれないのが中村くん]

 無事、二年B組であることが判明した。

 「Twitter企画」ルート。
 坂上が一年G組で「福沢玲子」と接触した後、荒井のいる二年B組を訪ねると彼が現れる。
 最初は荒井の行方について渋って口を割らないものの、荒井が坂上を呼び出したとわかると散々値踏みしてきた上で教えてくれる。
 彼曰く荒井がB組に居ないのは病欠ではなく「時田安男」監督率いる映画研究会のアシストの為に一日中作業に掛かりっきりで視聴覚室にいるかららしい。
 [実際の所どのように処理されているのかは不明だが、坂上は野球部が授業を休んで大会に出場する(所謂公欠)のようなものかなと推測している。]

 が、彼はそれ以外にも……

 (ネタバレにつき格納)

+ ...
 ・自分が荒井の親友であること
 ・時田の『ミイラ人間と美女』の第二弾が完成間近であること
 ・実際は自分も手伝う予定だったが、授業も大事なので荒井に譲ったこと
 ・「ああ。中村がいけなくて残念がっていたと伝えておいてくれよ。頼んだよ、坂上君」

 ……などなど、果たしてそれは今必要なのかという情報まで喋り、ちゃっかり言伝まで預けてくる。
 坂上もやはり鬱陶しく感じたようで、初対面かつ先輩に当たる人物にして面倒くさそうな人認定をしていた。
 『ミイラ人間と美女』については何も知らない可能性のあるプレイヤーに対する配慮であるとも考えられるが、他は……。

 [そもそも『秘密』発売段階で中村くんが映画研究会と関係を持つシナリオが存在せず、彼が映画に詳しい等の設定も存在しないため、本当に手伝いを依頼されていたのかどうかも怪しい。
 『鳴七』にて、映画研究会に属していたことが判明。なぜこのような発言をしたのかは、後に発表されたキャラクター紹介文からも、なんとなく察することができる……かもしれない。]


 「とりあえず助けよう」ルート。
 再びB組を訪れた坂上に応対する。荒井の存在を尋ねる坂上に、中村くんは彼とは思えない返答をする。耳にタコができる程「荒井君は親友だ」と言っていた彼だが、B組にそんな生徒は存在しないというのである。

 プレイヤーが坂上の秘密へ近づくために、彼もまた一役買っているともいえるだろう。

 「このままおとなしく成り行きを見守る」ルート。
 とても現実のものとは思えないような効果を発揮した秘密道具「もしもなれたら」の謎を探るべく、「日野貞夫」の投票結果を開票しようとした所で教室に入ってくる。

 「新堂誠」曰く集会に参加したメンバーとその話中の人物を集めたらしいので彼がいること自体はおかしなことではないが、問題は新堂さんが彼を知らなかった事である。
 [新堂さんが顔を知らなかっただけかもしれないが、中村くんに限っては呼ばれてもいないのに来たという可能性が捨てきれない。]
 誰か聞かれてももったいぶって中々名乗らなかったり、荒井に親友であることを否定されても恥ずかしがっているだけだと思っていたりと相変わらずである。

(ネタバレにつき格納)

+ ...
 荒井さんの誘導により、生贄として中村くんの投票を行うことになるのだが、彼のなりたい職業はなんと大統領だった。彼は将来地球は一つの国家となると思っているらしく、その地球という国の大統領になりたい……いや、なるようだ。
 彼曰く投票なんかに頼らなくてもなれてしまうらしい。

 [なお現実には世界連邦という地球上の国家を統一した国家が構想されることもあるが、実現がされたことは一度もない。]
 『秘密』には明確な時代設定が存在しないものの、彼の目が黒い内にそうなることはほぼないと言っていいだろう。

 「岩下明美」と荒井と日野によるカリギュラ効果があったにも関わらず、結局は全部の票を獲得し晴れて大統領になることができた。ここで彼について特筆すべき点は全員に大統領と書いてもらえることが当然だと思っている自信過剰なところである。
 投票時と内容が変化することがある「もしもなれたら」であり、周囲の反応から考えても全員が大統領と書いたとはとても思えないので、何か不思議な力が働いているとみていいだろう。

 そして彼は突如現れた二体のスンバラリア星人に連れ去られてしまう。
 なんでも、「風間望」がいうにはスンバラリア星では新しい大統領を決める時に宇宙中からランダムで候補者を選出するそうで、今年は彼が選ばれたらしい。
 [大統領の任期は10年らしいので中村くんは10年間地球に帰ってこれない事になる。]
 図太く肝が据わっている中村くんもこれには動揺を隠せなかったようだ。

 ちなみに連れ去られた後で彼を心配している者は誰一人いない。むしろ希望通り(スンバラリア星のではあったが)大統領になれたためか、穏やかな空気が流れていた。


荒井

発売前
 2021年6月21日より公式twitterから発表されたメインキャラクタービジュアルと紹介文。一人目は語り手かつタイトルにも名を置く荒井昭二
 「ソウルフレンド達が紡ぎ出す先鞭万華の協奏曲」と銘打たれた本作で次に紹介が来るキャラクターは誰なのかと心躍らせたファンも少なくなかった。
 「牧場奇譚」でクローズアップされた「カズ」さんか、荒井が腕を「神」と崇め、人気も高い「曽我秀雄」くんか、『ドラマCD』以降再注目されつつある「時田安男」か……。

 しかしそんな中、大手を振って発表されたのは紛れもない彼だった。
 荒井さんの親友どころか友人と言っていいのかも正直微妙な彼が二番手というツッコミもあるにはあったが、一部ではそれよりも忌憚なき……というか結構辛辣な紹介文が波紋を呼んだ。[飯島氏曰く「愛情の裏返し」なんだとか。]
 とはいえ、『荒井』の前身と思われる「牧場奇譚完全版」で彼の活躍があることは度々アナウンスされていたので妥当といえば妥当なのかもしれない。

 そんな今作の中村くんだが、とりわけファンの関心事となっているのは彼の生死だろう。
 『新生』で「荒井の友人」として登場したにも関わらず、先述のように異質な存在である彼は、「荒井の友人」のお約束ともなっている「」に『新生』・『月下美人』・『秘密』と未だ遭っていない。

 それは現に今作のプロフィールで「友人」から「荒井昭二のクラスメイト」へと格下げされているように、既に「荒井の友人」ではないことの証左と言えるのかもしれないが、大量に中村くんにまつわるシナリオが書き下ろされる今作においてもなお彼が死ななかったとすれば、いよいよ荒井の自称親友という無二のポジションは確固たるものになり、それに期待してしまうのが人情というものではないだろうか。

発売後
 多数のルートに登場。
 今作は中村くんが荒井さんに話しかけてくるところから始まる「牧場奇譚」がベースになっていることも手伝ってか、彼の出番は異様に多い。
 登場するルートの数だけで言えば曽我くんに代表する「荒井フレンズ」も全く敵わない。登場する分岐の全てで中村くんがクローズアップされるわけではないが、まるで「荒井の親友は自分だけだ」と言わんばかりに全編に渡って存在感を放っている。

 彼の容姿はそもそも作品によりあまり安定しないが、過去作品と比べると短めの髪に比較的浅黒めの肌と活発な印象を受ける。
 しかし、彼は例え行動的だったとしても運動部に所属していたり、アウトドア趣味があったりするような描写は特に見当たらない。強いて言えばあるルートで「プールで日焼けしていた方が楽しい」という発言があった位で、むしろ「茂爺」からは「相変わらずのモヤシ」だと言われている。そのため、筋肉質というよりかは細身だと思われる。

 性格面においては以前の作品に比べて面倒臭さが増しており、見栄っ張りですぐばれる嘘をつく所は健在。鉄板の勘違いも荒井さんに対してだけという訳ではないようである。
 日和見主義でのらりくらりな印象が強い彼だが、本当に譲れない目的があると脇目も振らずに執念深く追い求める部分があり、その勢いには荒井さんも驚いていた程である。

 また、比較的器が大きく、飄々としたイメージがつきまとう彼にも限度はあるようで、今作ではたびたび激情を露にする。そして(出番が多いことを差し引いたとしても)表情差分が多く、かなりの頻度で変わるため前作までのどこか人間味が欠けたイメージが覆されることとなった。

 あまり勉強熱心な方ではないらしく、それゆえなのかは定かでないが、作中何回か間違った知識を披露する。しかし物事を知らないというよりも、肝心な所が抜けていて詰めが甘いといった方が正しいか。思い込みの激しさからくるものなのかもしれない。
……と、ここまでだと情けない部分が際立つ彼だが、憎めない愛嬌と思わず笑ってしまうような親しみやすさがある。

 「恥の多い人生を送るって…もしかして、それは?」ルート。
 話の前口上により分かることなのだが、荒井さんは語ることのできる中村くんの恥エピソードを複数持っているらしく、最近あったものの内の一つをピックアップして話してくれる。
 『牧場奇譚』や『蝶の道』のように、荒井さんに相談を持ちかけるところから話は始まる。

 彼の相談事とは、「同じクラスの「本郷茜」さんが自分の事を好いているらしいが、大人しい性格ゆえ告白できないらしく、彼女を助けられる良い案はないか」というものだった。
 勿論これは中村くんの勘違いであったわけだが、そもそもの勘違いの理由には本郷さんとの考え方の差が大きく出ているといえるのではないのだろうか。

 荒井さんのアドバイスを元に本郷さんに接触を試みるも空回りし続けた挙句、彼女に勘違いのしようがない位の罵倒を浴びせられた中村くんは本郷さんを呪うことを決意する。自分にも返ってこない特別な「呪い」をすると自信満々に言う彼に対し、荒井さんはアパシー・シリーズ史上初めて興味を抱く。
 その後も些細なミスから生じた摩訶不思議な作用により自分の首を絞めてしまうというおっちょこちょいな面を披露し荒井さんに呆れられながらも何とか成し遂げる。

 このエピソードでは中村くんのポジティブさや少しズレた所に加えて、自分を足蹴りにした者への執念深さ、その者を地獄へ叩き落すためには本来彼が面倒臭がりそうな地道な作業でも黙々とこなすという意外な一面が描かれているといえるだろう。

 「やりたくない」ルート。
 中村くん本人も学生の本分は勉強だと考えていたようで、荒井さんと同じ「駅前の塾」の短期コースを受講する。

 この塾に幽霊が出ると話し出す中村くんだったが、内容とそぐわないオチになっており、荒井さんにも遠回しに指摘されている。

 一方で彼は自ら塾が困るような噂を流していたわりに、閉校になった時は人が変わったように食らいついていた。
 普段あまり物事に執着しない彼が塾に躍起になっていた理由は成績上昇により上がるお小遣いのためで、あの手この手で塾生を減らそうとしていたことがある人物から荒井さんへリークされる。

 しかし、夏休みが明けて二学期が始まると、中村くんは行方をくらましてしまうのだった。

(ネタバレにつき格納)

+ ...
 実はこれらのことは「時田安男」が映画を撮るために仕組んだ罠であり、小遣い稼ぎ云々は勿論、中村くんの親戚が経営していると言っていた牧場までもが舞台のセットであったと荒井さんは推測している。

 撮影に利用されたクラスメイト達も[以前から変わり果ててしまった生徒も居たようだが]なんだかんだ学校に登校してきており、全体としての被害はまだ大きくないほうであろう。

 しかしながら、報酬に目がくらんだのか、中村くんは一生懸命作り話を広めている内に本当の話だと思い込んでしまったようだ。
 時田くんと共謀していた所で思わぬ穴に落ちたのか、全ては時田くんの計算なのかは二人のみぞ知るところであるが、映画が発表されれば全ては明かされるのかもしれない。


 「他のバイトを探す」ルート。
 荒井さんに思いがけず牧場バイトを断られ、うろたえる。
 あれこれ言って何とか荒井さんを引き留めようとするものの、天の邪鬼な性格に呆れられ、やはりバッサリ断られてしまう。

 その後はクラス中の生徒に声をかけ始めたようだが、同時に「荒井くんはもっと割の良いバイトがいいに違いない」と吹聴して回ったらしい。
 それがクラスメートで荒井さんの友人「袖山勝」の耳に入ったところから物語は始まる。

 「自分もいかない」ルート。
 本当に海外旅行へ出かけているために「駅前の塾」には姿を見せないが、仲間内でアルバイトの話をしている時に名前があがる。

 鳴神学園がアルバイト禁止なのをいいことに、割の悪いブラックバイトの仲介をすることで稼いでいる様子。
 一緒にバイトの誘いを持ちかけ、予定日付近でドタキャンするのが常套手段だそう。
 ちなみに荒井さんのクラスメイト達は見事に引っかかっている。
 用心深そうな面々ではあるのだが、それだけ中村くんの誘い方が巧みだったのかもしれない。[その割に荒井さんへの断りの電話では真実なのに嘘だと思われていたが。]

(ネタバレにつき格納)

+ ...
 また、選択肢によっては偶然現場を訪れ、身の危険に晒された荒井さんを救出することになる。
 塾での出来事に一切関わっていない中村くんからしたら何が何やらだったに違いない。


 「無理にでも一緒に行かせる」ルート。
 軽い鎌かけの上で正論を持ち出されただけであっけなくぼろを出し、乗り気でない風でありながらも荒井さんに同行を余儀なくされる。

 なお、ここでの「茂爺」とのやり取りから二人の関係が明らかになる。
 根幹ルートでの荒井さんの体験と照らし合わせて考えるに、辺鄙な僻地でキツい肉体労働の上、茂爺の性格からして親戚だからと特別扱いしてくれるわけはない、とでも思ったのかもしれない。

 そして「曽我秀雄」を荒井さんと再会させた立役者である。
 曽我くんの抱える裏事情はまったく知らず、彼の通り一遍な説明を鵜呑みにして牧場を曽我くんに紹介し、彼に頼まれるままに荒井さんを牧場に呼び寄せたようだ、

 ちなみに、寝るまでの間、ふたりの会話に割り込もうと関係のない自慢話をするも完全に聞き流されていた。
 それから中村くんは曽我くんが一夜にして作り上げた「ユートピア」の住人にされてしまい、牧場の他の従業員たち共々に人間としての生涯をここで閉じることになってしまったようだ。

 それから荒井さんは夢のような体験に裏付けを与えるべく、中村家の消息を訪ねる。
 けれど彼の家は売りに出されており家族もろとも消えてしまった……? という形で幕切れとなる。

 「牧場を探索する」ルート。
 荒井さんと会話したときに牧場に対して怯えていた理由が明らかになる。

 (ネタバレにつき格納)

+ ...
 第一厩舎の炭鉱に彷徨っていた「遊女の霊」が探し求めていた、ひょんなことから契りを交わした(と勘違いされた)相手が中村くんである。

 起請する気はおろか、彼女の陰惨な過去のことなど知る由もない中村くんは、荒井さんに憑いてきた遊女の霊にとり憑かれてしまう。そんな中村くんの運命を決めるのは荒井さんの何気ない一言だった。

 荒井さんが祝福の言葉を述べると、中村くんは遊女の霊に怯え苦しむことに。その程度は酷いもので、完全に日常生活に支障をきたしていた。しかし、月日が経つにつれ彼女を受け入れ、覇気こそ失っているものの、ひっそりと逢瀬を楽しんでいる様子で、ハッピーエンドと取れなくもない。逆に言うとその程度で済んでしまうのは彼だからこそなのかもしれない。

 一方、荒井さんが警告すると、一日の猶予もなしに中村くんの家は全焼してしまう。彼だけでなく家族までもを巻き込んだ凄惨な事件である。家族は家から逃げ出し重傷で済んだのだが、当の中村くんは死亡してしまう。
 炎の中、起き上がろうとするも何者かが身動きを取れないよう押さえつけた様子だったというのだから偶然でもなんでもなく、遊女の霊の犯行だろう。布団を搔きむしった跡や彼の形相からも苦痛のほどが読み取れる。

 遊女の霊が中村くんを殺害したのは愛ゆえか、はたまた裏切りの代償なのか。荒井さんは、中村くんの素直過ぎた態度が遊女の霊の行動の引き金になったと考えているようだ。

 [以前より、死なない事でも注目を浴びつつあった中村くんだったが、本シナリオでついに一線を超えることとなった。]


鳴七

 「牧場奇譚」ほかに登場。
 荒井昭二のクラスメートとして引き続き登場。何かにつけて荒井さんに対して相談を持ち掛け、そこから話が展開していくことも多い。『鳴七』では特にアルバイトの仲介人として暗躍している所をクローズアップされている。
 斡旋対象を他学年まで広げたため学校内外で大問題になり目を付けられているようだが、本人は気に留めていない様子である。

 基本的に後を考えず抜けている部分が散見される彼だが、準備期間が与えられると緻密な計画を元に抜かりなく仕上げることができる。しかし、予定外の出来事に弱かったり、詰めが甘かったりでいまいち決まらないことも少なくない。
 自分の思い通りに行かないとたとえ友人(中村談)であろうと逆恨みで嫌がらせをするなどひねくれているところもある。
 幸い、そこにユーモアが挟まれることで幾分か悪印象が緩和され、絶妙な塩梅を保っている。

 『荒井』からかなりのシナリオ再録がある本作品だが、作品に登場した人々は誰も彼も新たな一面が掘り下げられている。
 彼も例外でなく、自尊心が高いがお高く留まらず茶目っ気がある一方、高を括っているとシャレにならない置き土産を残していく。そういった箇所がより増幅された中村くんは、レギュラー陣にも引けを取らない人気を博することになった模様である。

 「牧場奇譚」。
 詳細は上記「荒井」の節を参照。

 中村くんに関する主な変更点は、「牧場を探索する」ルートが存在しない点である。 

 「ヒナキちゃん」。
 立ち絵は出ないものの、「倉田恵美」の口から、「一年前、N君が学園内の生徒にアルバイトを斡旋して仲介手数料を稼いで多大な被害がでた」という事件が語られる。イニシャルや内容を鑑みても、中村晃久のこととみて間違いないだろう。のちに『生徒名簿』により、正式に本人であることが明かされた。 

 クラスメイトだけでは飽き足らず、男女関係なく、しかも上級生にまでも手を広げていたのだから驚きである。
 中でも、口うるさそうなこういう誘いにはあまり乗らなそうな面子が入っているのも芸術点が高い。
 また、人によって微妙に誘い文句が違っている所からも口の上手さがうかがえる。

 「時田君の自主製作映画」。
 「映画研究会」の第一作目の脚本担当を志望するも、その能力の低さゆえ却下されてしまう。へそを曲げた中村くんはそのまま退部してしまうが、惜しむものは誰もいなかったのか、忘れ去られたというのだから悲惨である。

 時田監督の下、第一作目『ミイラ人間と美女』の撮影を開始。編集にも精を出していた時田くんは、撮った覚えのないものが映像に紛れ込んでいることに気がつく。それはミイラが映っているシーンに必ず入り込む変顔をした中村くんだった!
 因みにこの場面、テキストだけに留まらず、なんと変顔のためだけに専用スチルまで用意されている。[製作陣の力の入れようが凄い]

 時田くんが白旗を揚げた場合、黒幕は鳴神学園に巣食う小僧妖怪の一端、「きりとり小僧」となり、変顔画像を使われた被害者の一人となる。

 中村くんが赤川くんに協力を得たと判明した場合は、中村くんの目論見がすぐにバレてしまい、時田くんと赤川くんの両者から反撃される。周囲に謝り倒すも、事を知っている荒井さん達一同は無視を決め込んだ。

 [彼の脚本能力ははっきりいって微妙とみてよさそうだが、牧場奇譚の「行きたくない」ルートにて荒井さんに対して語った幽霊の話をみてもその片鱗が見られる。
 また、別のシナリオでその時の話と思しきものが出てくるが、中村くんの話との関係は不明である。] 

 「思い出はイチゴ味」。
 クラスメート達をアルバイトへ斡旋しその仲介料をピンハネすることで懐を暖めるやり口により、資金調達は順調だった。
 しかし、とある分岐では事件現場に彼が紹介した従業員の衣服が残されていたこと、仲介手数料を中抜きしていたことから重要参考人として警察に目を付けられていた。アリバイがありなおかつ犯人について特に口を割らなかったため無事解放された。

 「窓枠の中で」。
 事故に遭った男子生徒のクラスメイト、男子生徒Cとして現れる。[作者Twitterによると、「刑事」を除き、名前のあるキャラが別のシナリオで名前の無いモブとして出てくる場合、語り部がそのキャラの名前を知らないだけであり、同一人物であると明言されている。]
 亡くなった男子生徒の親友であり、恐怖から助け出すことが出来なかったと説明している。荒井さん以外に対しても親友であると嘘を吹聴している[本当に親友なのかもしれないが]可能性が判明したフレーズである。

 「殺人クラブ」。
 このシナリオの探索パートでは、各シナリオで語られたキャラクターたちが鳴神学園の至るところに潜んでいる。
 「中村晃久」はその一人であり、校舎裏の中庭(小)にいる。いる場所と本人との関連性はないわけではないが場所そのもののインパクトは大きくないため、しらみ潰しに探していかないと中々見つからないかもしれない。

 荒井について尋ねると嬉々として色々喋ってくれる。情報の引き出しは他の追随を許さず、信憑性はともかくその量はなんと五倍。中には攻略の足掛かりになる情報もあるが、律儀にすべて聞いていると三十分以上消費してしまうのでほどほどに。

 怖い話について尋ねると彼なりの高校生活についての考えと高額時給の清掃アルバイトに関する怖い話をしてくれる。内容は割愛するが、辺りに広がるゴミ屋敷の風景や悪臭が想像させられる描写に加え、人間の嫌らしさに焦点が与えられた話である。

 そして最後にはアルバイトの勧誘を忘れない。一か月で三十万稼ぐことの出来る南国での仕事だそうだが、真偽は不明。本人は海外のバイトでも紹介できると豪語しているが、前例を見るに話を盛りすぎて原型を留めていないパターンだと思われる。 

 特別シナリオ「アパシー 鳴神学園七不思議 秘密」に登場。
 詳細は上記「秘密」の節にて。

 「これは……罠だ。黙って様子を見よう」。
 『秘密』にも同名の選択肢から派生するエンディングが存在するが、リライトされているため、展開が大いに異なる。

 『ミイラ人間と美女』で時田くんが呪いを使用していたことを見破った中村くんは、黙っている代わりに次回作の映画の主演を自分にするように迫る。
 誰から見ても大根役者だった彼は部員からの不満を募らせるが、ラストシーンでは彼らを二重の意味で驚かせることになる。
 そのシーンとは、殺人鬼にチェーンソーで切りつけられるというものだった。チェーンソーは勿論撮影用のレプリカなのだが、中村くんは見違えるような迫真の演技の末、肩から血を流しながら倒れてしまう。

 自分の演技力を自覚し、なんとしてでも箔を付けたかった中村くんは、自分自身に「実際のチェーンソーで切られた時の痛みを感じる」呪いをかけており、本当に死にもの狂いで撮影に挑んでいたようだ。
 その時の撮影は一命を取り留めたものの、何度も繰り返すうちに精神的ショックによって命を落としてしまう

 しかしながら、そこで終わらないのがこの男である。彼の魂はこの世に留まり、新たな肉体に憑依してチェーンソーで切りつけられ続けているようだ。

 [本人の台詞を見ると、中村くんが執着しているのは映画の出来ではなく、もっと別の部分な気がしてならない。この状況を嬉々として受けとめている一部の映研メンバーも異常だが、仮に映画が完成したとして、彼は成仏するのだろうか?]

稲in

 坂上修一の足跡を求め「七不思議の集会」の出席者の居場所を訪ねてあなたは鳴神学園構内を歩く。
 そうして巡り合えた出席者のひとり荒井昭二から「七不思議の集会」で披露した話の追想の中で彼が触れられている。

 「屋上」「飛び降り」が連想されつつも新たな思想と能力を手に入れた「相沢信彦」の実験台となるはずだった。荒井さんは相沢さんにクラスメイトを差し出すように言われるが、彼に心酔している荒井さんは断るはずもなく。同じクラスの中村くんに白羽の矢を立て、呼び出すことに成功する。数多くいるクラスメイトより彼を選ぶ理由は以下の台詞より明確である。

 「出しゃばりで落ち着きがなく、平気で他人を騙してもそれが当たり前だと思っている鳴神学園の粗大ゴミです。」

 そんなことを知る由もない中村くんは何を勘違いしたのかこれまた数段高いテンションで荒井さんや周囲の人々に絡みにいく。[一言発するごとに彼をよく知らない視聴者からもヘイトを集めていき、ターゲットにされるのも仕方なしと納得にもっていく様子はもはや才能なのかもしれない。] 

 偶然かはたまた運命か。結論から言うとまたもや彼は生還する。しかしながら、屋上に来るまでの記憶がないらしく荒井さんの雑な嘘を信じ込み、いるはずのない謎の人物を追いかける形でフェードアウトしていった。


情報提供・文章の補足、編集方針の動議その他諸々歓迎します。
もし興味を召されたなら下のコメント欄に書き込みなどされると嬉しいです。

  • 鳴七の話のリンクに関しては、登場話早見ができ次第修正します。 -- 名無しさん (2022-08-13 14:57:02)
  • 編集が競合して消えてしまったかもしれません。申し訳ございませんでした -- 名無しさん (2023-02-13 01:43:59)
  • 何かありましたらこちらにご一報お願いいたします。復旧をお手伝いいたします。 -- 名無しさん (2023-02-13 01:50:14)
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最終更新:2023年10月29日 09:58