エヴァレットは、PCを立ち上げた時、一件の通知が追加されていることに気が付いた。

通知があれば毎回確認し消す几帳面な性格なので、この通知がいつ送られたものなのかは大体予想が付けられる。
そして、その内容に目を通す。

通知の元は、母だった。

通信でもなく文章データのファイルだったことに少し辟易する。
これはつまるところ、"話し合い"ではなく、決定事項の通達ということである。
ただ通信で"話し合い"をしたところでどうせうまくいかないのは分かり切ったことだが、それこそこの前の件もあり何か面倒ごとが押し付けられたとしても不思議ではない…

そう思いながらファイルを開いたが、それは指令書ではなく、通達書…いわば「お知らせ」だった。

内容は、早速この前言及した"監視"が決定したことの知らせと、その人物の情報だった。

自分が疑われるというのは癪だが、本社がこういった状況にどれだけ危機意識を持っているか、送られてくる人員の質で分かる。そう思い、それを見る。

…膝から崩れ落ちたいような気持になった。
よっぽど気にしていれば本社の実動員。適当よりだったとしても本社の下っ端くらいが回されるものかと思っていた。
しかし、派遣されてくるのは、つい最近ルビコン…つまり現地で登用されたという元独立傭兵だ。適当にも程がある。自分が信用されてると思えばいいが、本社はまだ失敗から学んでいなかったのか。そう思いつつファイルのページを進めると…
母からの伝言が添付されていた。

かいつまんで説明すると、こうだ。
―"本社は『いらない』などと言ったが、それで何かあった時に疑ってくるのも本社だ。だから、私の権限でも口添えできそうなレベルでなるべくよさそうなものを推薦した。普通に戦力として使ってくれてもいい。経歴からもある程度の信頼は置ける。それに、彼に対して貴女にもしてほしいことがある。"―
と。

母は色々と突っ込みどころのあることはするし言うが、無能と言うほど無能ではない。
何か意図はあるのだろうととりあえず資料に目を通してみる。

Bランク。なるほど腕はそこそこ立つらしい。
そして、アイランドウォーの動乱の頃から、立場上は独立傭兵だが、アーキバス系列の仕事がほとんどだと。
アイランドウォーの動乱といえば、私がまだ実戦に出てないほどの昔だ。
そのころからアーキバスと関わっているというのなら"信用に足りる"というのも頷けなくはない。
そして、"してほしいこと"とは何なのか…

『彼は強化手術として、他にはない独自タイプの強化を施されている。その強化に対するテストや測定などをしてほしい。レベルは2までとする。』

…独自タイプ?11世代とは違うのだろうか?
測定レベル2。これは後遺症などが一切残らないレベルのラインだ。確かに名目上監視として送り込まれたものを実験で使い捨ててしまったら大問題だろうしそれは致し方ない。
これはいうならば"監視"というよりは、監視の名目を被った戦力増強、及び非検対象の補充だ。
母ならがよく考えたものだと思うが、むしろそれがバレたら余計大目玉を喰らう結果にならないか。

と心配になったが、そもそも監視の派遣を提案したところで突っぱねたような上層部だ。これに気付くとも思えない。
使える部下と実験対象が派遣されるのだ。無能なMT乗り数十二人にも勝る戦力。これは喜ばしいことではある。

彼女は資料を読む手を止め、二人(ウズラマとエリカ)にこのことを伝えておくことにした。

通信記録:現場の意識
+ ...
通信記録:現場の意識

アーキバスのAC乗りの通信記録。
ログが残されている通常通信の一つだが、このログを閲覧した人物はまだいないようだ。
----------
《やあどうも。敏腕スパイのバーンズさんだ。あの社畜女のところに送られてくる奴の情報をだいたい確認できたぜ》

《バーンズか。ありがたい。いつもすまないな…で、どうだった?》

《気にしなさんな、これくらいできなきゃ便利男は名乗れないさ。んでもって…まぁ、"白"だろう》

《その心は?》

《ソイツは元独立傭兵らしい。アーキバス(ウチ)とは仲がいいようだが、つい最近ルビコンで正式にアーキバス(ウチ)に編入されたようだが…再教育センターやそれに関するとことの関りは過去一切なし。まぁ、『空いてた奴を適当に回した』といった感じだ。
まぁ…それを抜きにしても、あの社愛溢れる社畜姉さんが謀反なんて、まずないと思うけどな。》

《私も流石にないと思っているのだが…、不審がる行動をしてると送り込まれた監視がその母推薦だからな。流石に疑ってもしまう。》

《真面目だねぇ…本社の奴は誰もそこまで考えてないと思うぞ。
…んでもって、これは本題とは関係ない話なんだが…見て見ろ(ファイル転送)》

《……凄い…美人だな。普通に。》

《だろ?》

《で、これが何だ?》

《男だ。性格には元だが》

《……エヴァレットのとこのと言い、V.Vのイレヴンといい…どうしてここはこう… (溜息)》

―――通話相手 V.O サリエリ



投稿者 ootori

タグ:

小説 小説 ootori
最終更新:2023年12月04日 15:31