名前は仮です。もっといいのがあればそちらに致します。


 ミシガンは転んで死んだ。それを聞いたのはレッドガンが壊滅してから数日後であった。
 事態は数か月前に戻る。

 いつも通りリハビリを兼ねてのシミュレータで、あのテスターACを動かす。独立傭兵...G13レイヴンによって一方的にやられたあのACをだ。訓練の成果か幸いにも、機体が爆発する直前に脱出ポッドが動いたことで一命は取り留めれた。自分は運がいいのだろう。
 その後、近くの野戦病院で目覚めた。その時にあの独立傭兵のことを耳にした。G13、不吉な数字だ。曰く、それを付けた隊員はことごとくが不幸な最期を迎える、といったものだ。どうやら、解放戦線の多重ダム襲撃の際解放戦線側に寝返り、G4ヴォルタとG5イグアスを撃破したらしい。
 そういう話を聞いていくうちに、体の調子もよくなってきた。リハビリを兼ねてシミュレータを起動し、ACの操作に慣れていく。脳にこびりつくあの独立傭兵の動きを鮮明に思い出しながら、自分の機体を動かしていく。射撃のタイミングはこの時、ブレードをこの時に振るう、そういった動きを考えながら実践していく。前よりも動きが鮮明になったと思える。この調子だと自分もレッドガンの番号が得られるだろうという思いにふけりながら、数日こなしていった。
 シミュレーション、それも正規では一番下だが番号を持つG6レッドの機体を安定して撃破できるようになったころ、こんな話が聞こえてきた。

 G4ヴォルタが壁で死んだ。

 この時の自分は頭が真っ白になっていただろう。なんたってレッドガン、それも最も堅牢なタンク型ACをつかうG4が死ぬとは思わなかったからだ。その話を詳しく聞くと、単機で壁を越えようとしたが、解放戦線の機体に数で押されたらしい。数で押しつぶすベイラムが、それを実感させられる屈辱を味わわされたのだ。
 たしか、G4はG5との共同で作戦をしていたと聞いていた。なぜ単機で壁を攻略させようとしていたのかはわからない。それを考えるのは自分たちではないと思い込み、G4ヴォルタの戦死という事実を受け止めた。

 その後、アーキバスに雇われたG13がヴェスパー部隊の番号付き、V.Ⅳラスティと共に壁越えを果たした。やはり、G13は不吉なのだろうか。
 壁越えからしばらくして、ベイラムは中央氷原へと向かった。その際俺も前線基地へと赴いた。野戦病院以来何かと付き合いのある情報通の友人からの話だとアーキバスのヒアルマー採掘場の拠点に惑星封鎖機構が強襲艦を持ち出してきたらしい。どうやら、ベイラムもアーキバスも、やりすぎたようだ。
 G13も、その後に封鎖機構の燃料基地を襲撃し、特務機体とやらを撃破したという話もある。
偶然いたG3五花海曰く、アーキバス側に追い風がありもしベイラムにレッドガンとミシガン総長らがなければ自分はアーキバスに付いたかもしれないと言っていた。

 G13は旧宇宙港の襲撃に成功したようだ。だが封鎖機構の出してきた化け物...通称「アイスワーム」が出てきたせいでコーラルの取り合いどころじゃなくなったのだろう。ベイラムはアーキバスと停戦したらしい。暫くはアーキバスとのいざこざもなくなるだろう。

 自分は惑星封鎖機構の基地襲撃にアサインされた。どうやらアーキバスとの合同作戦らしい。
レッドガンは自分以外にはG3、G6とMT部隊だけ、アーキバス側はV.Ⅰ、V.Ⅴ、V.Ⅵ、V.Ⅷの番号付きとその下のMT部隊、後は番号付きではないヴェスパーの特殊部隊だった。たしか、名前は「ヴェスパー・ザナドゥ」だったか何だったか、略称はV.Xだから実質番号持ちのようにも見えてしまう。
 結果として、基地襲撃は成功した。その分被害も大きいが、強襲艦やHC、LCといった封鎖機構の兵器は軒並み彼らが持ち去ってしまった。こちらにも、少しは分けてほしいものだ。

 それからしばらくして、人が少ないことに違和感を持った。情報通の友人曰く、近々レッドガン部隊のほぼ総出での大規模作戦があるという。自分は、アサインされなかった。

 ミシガンは転んで死んだ。それを聞いたのはレッドガンが壊滅してから数日後であった。
幸い、MT部隊は全員無事だったとのことらしい。ミシガン無きベイラムは終わりである。G3の言葉を思い出し、そう思った。近々ベイラムはルビコンから撤退する用意を始めるらしい。現状、ACを扱えるのは俺と情報通の友人、そして援護のために来る士官を含めたわずか数名である。
G13も行方がわからない。この先、俺たちはどうなるのだろうか。


投稿者 秋棒

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小説 秋棒
最終更新:2024年02月24日 22:45