突撃! ベイラム進攻戦



「見付けました! その紫色に怪しく光るセンサー、悪に間違いありません!
 悪の傭兵、タンポテンコ!!!!」
「タントテンポだよ、あとそれ機体の名前だよ」
「タンコペンコ! あなたはここで破れ去る!」
「聞けよ」

 真面目に強気に間違いだらけの口上を、
 通信ではなく外部スピーカーから投げつけるように吐き出す。
 威勢はいいがマキシママイザーは手負い。
 先程までベイラムMTを撃ち抜き切り払いながら
 反撃を何度ももろに食らい、バズーカを使い切ってからの今である。

 対してベイラムの傭兵、ラッツェルの駆るAC、タントテンポは
 出撃したばかりなので当然ながら無傷。
 それも装甲は分厚く、火力も高い。
 明らかにマイの不利だ。

 それでも真っ直ぐで自信に満ち溢れた声色は、自らの勝利を確信していた。
 何故なら……

「何故なら、正義は勝つッ!!!! からです!」

 ラッツェルは困惑し、深いため息をつく。
 距離は十分、まずはミサイルで様子を見る。
 マキシママイザーはハンドガンにブレード2本の接近戦型。
 ミサイルを避けて突っ込んでくるだろう。

「ぢぇァーッ!? ちょっぢょッ! まだッ!」

 10発中8発を浴びACSと共に喚わめくマイに困惑に困惑を上塗りされながら、
 チャージしたリニアガンとバズーカを放つ。
 リニアガンは直撃したが、バズーカは間一髪避ける。
 マイは慌てて、照準も合わないままハンドガンを乱射しながら真っ直ぐ突っ込む。
 マキシママイザーはまだ倒れない。

「話してる途中で撃つのはマナー違反ですよ!」

 左手に光を集めパルスブレードを振り下ろすが、シールドに阻まれ逆に蹴り飛ばされる。

「ゔぉー!!!!」

 わかりやす過ぎて逆に裏を感じてしまうが、マイはランクE。
 上官殿やヴェスパー古参の化け物ならまだしも、コレに限ってそんな深読みは不要だろう。

「人様の敷地に土足で入って人様のMT壊すのは?」
「えっ……? そっ、それはぁ、正義のためだからいいんです!」

 そら見ろ、取って付けたような言い訳だ。
 何も考えずにただ突っ込むだけの頭の弱い人間だ。
 言わずもがな、そんな人間に戦場はお勧めできない。

「マナー講師の才能あるよ……」
「え? そうですか? お行儀はいいってお爺ちゃんからはよくぇえぁッ!?……」

 話の途中だが、今度はラッツェルが装填の終わったミサイルとリニアガンで突っ込む。
 これ以上変に様子を見る必要も無いし、いちいち話相手をしてやる義理もない。
 こういう手合いの安全策は「やられる前にやる」だ。
 調子付く前に叩き潰す。

「ちょっとぉ!! あなたまた話の途中でェ!」

 ミサイル回避は苦手らしい。
 がっつり食らってまたすぐによろけはじめる。
 そこにバズーカを叩き込むとギリギリコアから逸れ、左腕が吹き飛ぶ。
 残る武装はハンドガンだけ。
 主力武装を剥がされたマイは結局、何語かわからない声を上げながら……

「ぬぇーーーーん!!!! もォ゛ーーー!!!!
 ひぢーバガーーーー!!!! ゔぁーーーーん!!!!」

 ……去っていった。



+ 音声記録 : 正義の味方02
音声記録:正義の味方02

残骸から抜き取った音声データ
独立傭兵マイ・マキシマムの独り言のようだ
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 なんなのあの……パンコテンコだっけ?
 酷いよあんなの……だってあんな、話してる途中でさ……
 ……なんでみんなさぁ……卑怯なやり方ばっかりさ……
 恥ずかしくないの?
 悪者はそんなこと考えないか……

 でもわたしは違う……!
 ちゃんとしたやり方で……次は勝って見せる!

 …………正義は勝つ……正義は勝つんだ……!




登場人物

最終更新:2024年08月06日 12:34