ここは惑星ルビコン3、独立傭兵レイヴンと、鶴の一声ならぬ鴉の一声で立ち上がったルビコニアンたちにより企業を打ち負かし、夜明けを迎えた星。
 ルビコニアンたちから英雄視されているその独立傭兵は、一時の平穏を享受していた。
「レイヴン、ルビコン解放戦線から依頼が来ています。」
 企業、そして惑星封鎖機構を退けたものの、そこから重い腰を上げたベイラム、アーキバスの2大企業と、それに連なって星外、ルビコン問わずの企業や組織が乱立していたルビコン3では、今日も企業が解放戦線へ獲物を見るような目を光らせていた。

独立傭兵レイヴン、あなたに緊急の依頼がある。今回の依頼は、「壁」の防衛だ。企業も自社戦力を送るには手間取っているのか、今回は独立傭兵のAC2機、いずれも高いランクとのことらしい。
現在全部隊を再編中の我々は迎撃をしようにも、戦力は足りず、補填予定の主力防衛部隊は現在、ジャガーノートの輸送護衛の最中で不在だ。そのため、我々は信頼できる実力をもつあなたに依頼を出す。
折り行ってもう一つ、今回の防衛戦はあなたの他にも、先の技研都市制圧作戦の際、我々に協力してくれた独立傭兵にも依頼を出した。彼と上手く協力してほしい。

解放後、自力でルビコンを守るとした解放戦線が自分に依頼を出すのはよほど緊迫した状況なのだろう。もう一人の傭兵もいるらしいが、2対1は流石にきついだろうとレイヴンは考え、依頼を受けることに決めた。
『…壁を狙っているということはベイラム、あるいはアーキバスでしょうか。相手はACです。油断しないようにしましょう。』
エアは今回の依頼について考えていたが、レイヴン…621は一独立傭兵として、「依頼ならする、ただそれだけ」だとエアに伝えた。
『そうですね…わかりました。』

~~

 ルビコン解放戦線の要塞通称「壁」、先の2大企業や惑星封鎖機構も重視した彼の地に、それこそレイヴンが壁越えのときに降りた地点に、2機のACがいた。
「レイヴン…解放者気取りも今日までだな。貴様には地面が似合いだ。行けるな?ブリトール」
やたらと演技めいた口調の男、名は「ヴェンティオット」
AC「スローダウン」はアサルトライフル、レーザーライフルとRaDの散布型ミサイルのみを装備した射撃特化型の軽量機である。
「はい、そのつもりです。」
ブリトールとよばれた男「ホール」は鼻声じみた抑揚のない声で答える。
AC「ブリトール」は大豊製マシンガンとガトリングキャノンを装備した高機動の機体である。
「フン…それはよかった。じゃ、行こうか。」
そう言いアサルトブーストを起動させたスローダウン、ブリトールの二機。

『メインシステム、戦闘モード起動。』
『ミッション開始、僚機と共同し、敵ACを撃破してください。敵AC、スローダウンおよびブリトールです。』
「ルビコンの解放者、レイヴンだな。こちらはアンゲルス・サーシェル、ダンテだ。協力感謝する。」
白色に金色の差し色の高貴さを感じさせるAC「アンゲルス・サーシェル」を駆る「ダンテ」は還流型ジェネレーター特有の青いアサルトブーストを起動する。
レイヴンも愛機であるLOADER4の戦闘モードを起動させ、ダンテに追従する。
 4機ものACが接近し、初撃は「アンゲルス・サーシェル」が両肩のニードルミサイル4発を「スローダウン」へと向ける。
「フッ、遅い!」
が、当たる寸前にクイックブーストで回避される。そこにすかさずダンテはムーンライトの光波を当てる。怯んだスローダウンへ追撃とばかりにパルスブレードを起動し、一気に接近してきたLOADER4に、大豊印の弾幕をブリトールは垂れ流す。

流石に弾幕によるACS負荷つまるところスタッガーはまずいと判断し、後ろにクイックブーストを吹かすLOADER4、しかしそこにミサイルの弾幕が襲いかかる。カーラのそれよりは少ないとはいえ、同じ武装に621は苦虫を噛んだような気分になる。

ついでと言わんばかりにマシンガンとガトリングの弾幕、アサルトライフルとレーザーライフルの猛攻でACS負荷に陥ったLOADER4を守ろうと、ブリトールへと重リニアライフルを当て、更に光波をあてブリトールもスタッガーに陥る。
「プランD、いわゆるピンチですね。」
アンゲルス・サーシェルの武装はどれも衝撃値が高く、脅威に感じたスローダウンはアサルトライフルで牽制していた。スタッガーから回復したLOADER4はブリトールにパルスブレードで接近し、斬る。

が、ブリトールのアサルトアーマーが発動、LOADER4には当たって




いなかった。逆にカウンターでアサルトアーマーがブリトールに炸裂しACS負荷に陥る。
そこにパルスブレードの連撃が来たことでブリトールは撃破される。
「機体から…パルスが逆流する!ギャアアアアアアアッ!!」
『ACブリトール撃破、残りはスローダウンのみです。』

 一方、スローダウンはアンゲルス・サーシェルとの駆け引きで一進一退の状態となっていた。アンゲルス・サーシェルはリニアライフルを連射し、スローダウンは両腕のライフルをそれぞれ時計回りでぐるぐると円を描くように撃ち合っていた。
アンゲルス・サーシェルのリニアライフルがリロード状態になり、そこにスローダウンが接近しアサルトアーマーを仕掛ける。直後、パルスの奔流が二機を襲う。動いていたのは…ダンテのアンゲルス・サーシェルであった。

両肩のニードルミサイルを放ち、直撃。MOONLIGHTの光波の連撃、直撃。リニアライフルのチャージ、発射、直撃はせず避けられる。
「まだだ…私はまだここでは死なん!」
今にも血を吐きそうなのをこらえ、チャージしたレーザーライフルをアンゲルス・サーシェルへと構える。少し遅れてアンゲルス・サーシェルもリニアライフルを構える。
勝った。ヴェンティオットはそう確信した。




直後、後部から衝撃が来る。ジェネレーター破損、メインブースターも使い物にならなくなる。
「メインブースターがイカレただと!?馬鹿な…こんな結末は…」
ヴェンティオットは遺言を最後まで言えず、スローダウンは爆発し、沈黙する。
『スローダウン撃破、ミッション完了です。』
レイヴンからしたらちょっとした強敵であったが、それでもアイビスシリーズやバルテウス、カーラとチャティ…そしてウォルターを自らの手で屠った621の前では、雑兵に過ぎなかった。

~完~

AC「スローダウン」
パイロット「ヴェンティオット」

 アーキバスグループに与する独立傭兵

もともとは地球圏に住んでいた一般人であったが、あるパイロットに憧れ、それを真似ていた。多大に影響を与えたそのパイロットは、テロリストとして処刑されたが、ヴェンティオットの前ではそういった情報はなく、今もどこかで戦っていると盲信している。
自身を「ランク1のパイロット」と自称しているが、その腕は上位ランカーにはとても届かない。

AC「ブリトール」
パイロット「ホール」

 とある機関所属のパイロット。

ホールはその機関の実験により旧世代型の手術で無理矢理にも最新鋭強化手術を行われており、結果的に感情というものが排除され、機械的な人間性を獲得している。
元はシュナイダー社の人材公募プログラムによって選ばれたシュナイダーの人間であったが、ある人物とともに退職している。

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小説 秋棒
最終更新:2024年09月19日 23:04