コーヒーを注ぎ 香りが事務所内に漂う、カリカリのトーストを
熱く黒い液体で流し込む傍ら 資料へ目を通す

『ランク外傭兵1人、私を含めて2人の運搬業務… 仕方ないですね』

オオダ火薬のルビコン参入はかなり遅い時期であった。
もとより、コーラルの争奪戦には興味なく、企業や傭兵にルビコン解放戦線への弾薬や物資補給による '戦争の安定'を保ち細く永く金を稼ぐのが目的であった。
兵装を開発しない企業はこうして不足し始めたところに漬け込むのだが

コーラルを求め参入していた2大企業
ベイラムは封鎖機構の兵器を取り込んだアーキバス戦力の差をつけられてた所に 惑星内戦力のレッドガンが壊滅し撤退した。
一方アーキバスはRADによるバスキュラープラント強襲と解放戦線の蜂起 二つの戦線で戦力を割き結果として現地戦力はジリ貧となった。

しかし、戦力を再構築 様々な目的の部隊を設立
ルビコンに彼等が駐屯し続ける限り戦火は絶えることはない。
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『偵察の結果ですがアーキバスの簡易的な拠点のようですね。』

依頼主の気怠そうな声が通信される。

新米のランク圏外。ジャンク部品でその日その日の生活せら危うい
そんな最中にたまたま舞い込んだ仕事

"報酬前払い!" '本社のエリートAC乗りも同伴'

という謳い文句に釣られて来てしまった。
しかし、その構成はどう見ても独立傭兵を盾に後方からミサイルを垂れ流すような物でそれ操るのはエリートというAC乗りは会計担当だという。

夏の火に入るなんとやらだろう。

『〜ルートは陥没により使えない。仕方なく… ハルバナさん聞こえてますか?』

『へ!? あ、すいません! 』

『…MTの群れといえアーキバスの戦力です。緊張も仕方ありません…』

『す、すいません。それでどう突破しますか?』

『私が先行し 弾幕を用いて撹乱しましょう。 そこを貴女には物資を担ぎ突破してもらいたい。
あなたの装備では弾除けにもなりませんからね 』

サラッとディスってきやがった( ゚д゚)
実際弾除けにもならないし。 そう使われずに済むのはありがたい。
命あったの賜物だ。
カッコいいからと大金叩いてシュナイダーACの中古を買ったが
思いの外、紙装甲で何度死にかけたことか…
この仕事を終えたらまともな製品を買おう。

『わ、わかりました。速さはありますから』

『混乱は長持ちしません。 迅速な行動よろしくお願いします
では、お先に失礼』

そう言って依頼主は機関砲とミサイルをばら撒きながら襲撃を仕掛けた。
無線に紛れる混乱に陥るMT部隊の声。ミサイルの噴射音が響く

『ふぅー…よし!行こう!』
ジェネレータの出力を上げ 翔んだ

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『くっ、ACがこちらにももう一台! シュナイダー製!武装は少ないが何か荷物を』

『まさか特攻か? ……通達! !シュナイダーACを優先しろ! !』


傍受したら盛大な勘違いをしていた様だ。
妙に食い付きが悪いわけだ

……いや、無理もないだろう。先の解放戦線との戦い その一部
局地的に機体が自爆特攻を仕掛けたという噂があった。


『…何か、勘違いした方々がそちらへ向かってしまいました。 こちらを片付けたらすぐに追いつきますので。頑張って避けてください』

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『頑張って避けてください』


…………
はい!?

いくら軽い機体で機動力はあるといえそれに耐えれないんだが?


『例のシュナイダーACを発見! くそ!この先に主要キャンプ地って知られてるのか!?』

『まさか、'また'内通者が?!』

『詮索は後にしろ!! 今は全力で撃破しなければ!!!』


いやいやいや! 偶々です! 偶々!!
と言ってもおそらく信じてくれないだろう。
こうなればやけだ…

『ちっくしょう!! 荷物届けるって仕事で受けて!前金受け取ったからもう引き返せない!!!』


『命あっての賜物だろ!?馬鹿野郎!!!?』

『敵機追いつけません!!! 速すぎる!!』

『くそ!あの空力バカがますます嫌いになってきた』


『そこどけ!そこどけぇ!!! 』

もはや涙と負荷でまともに前が見れない
…多分 何体かMTとか引き飛ばしたと思う。

辛うじて見えた機体の損傷具合はほぼ無傷だった
エネルギー系に強いのが幸してる様だ
しかし。いつまで続くのだろう 早くおうち帰りたい

『突破しろと言いましたが…流石に飛ばしすぎです。』

依頼主の通信が入った 向こうの戦闘にカタを付けたのだろか

『しかし、良くやりました。駐屯地を突破しました。
あとは合流地点で商品の荷下ろしをしたら終わりですよ。』

少しほぐれたような優しい声が聞こえ。力が抜け速度が落ちる。

程なくして、依頼主の機体と合流した。


曰く、自爆特攻と勘違いした結果 狙いがこちらに集中したらしく。
依頼主は駐屯地の地形などの把握が出来たらしい。

依頼主の取引先へその情報も送付し 弾薬と運送料の他
情報料も支払われたらしく。

私の報酬詳細にて
その情報料金が振り込まれていたのはのちの話だ。

『お疲れ様でした。 新参者と聞いて不安でしたが 良くやってくれました』


機体の燃料を補給中
依頼主はそう言いながら私にコラコーラを差し入れてくれた

『そういえばお名前を伝え忘れてました。オオダ・セイコと申します。』

ぺこりと頭を下げる依頼主に自分も慌てて頭を下げ名乗る

『わ、私はアレン! ハルバナ・アレンです!』

『ふふ、存じてますよ』

『あ、そ、そうでしたね あはは…』

依頼主の少し歪な笑みは悪意のようなものはなかった。


『ハルバナさん 今後も物資輸送のお仕事を定期的にお流しますね。良い飛ばしっぷりでしたから』

『え、嫌で… んん、考えます…』

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小説 汁葉
最終更新:2025年02月06日 13:22