Cheetahmen2(チーターマン2)

登録日:2012/04/01 Sun 12:30:18
更新日:2025/07/28 Mon 14:06:05
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『Cheetahmen2』(通称:チーターマン)とは、NES(北米版ファミリーコンピュータ)用として発売される筈であった横スクロールタイプのアクションゲーム。
擬人化(野生のチーターが改造されたミュータント)されたチーターマン3兄弟を操作し、悪の博士ドクター・モービス達を倒すという物語。
尚、上記の通りで本来のタイトルは複数形のチーター“メン”な上に、続編であることを示す“2”までが付いているのだが、日本では初紹介時に“チーターマン”とされてしまったことからか“チーターマン”として定着してしまっている。


概要

本作に関して説明する前に、まずはその前身である初代『Cheetahmen』(例の如く以下は“チーターマン”と表記。)について説明しておく。
尚、初代は2とは全くストーリーも世界観も違っており、初代では『Action52』のゲーム世界がバグったことから、それを救う為に立ち上がったチーターマン達が現実世界のゲームマスター(『Action52』のプレイヤー)に助力を求めてゲーム世界に召喚。
ゲームマスターの腕前を加えたチーターマン達が『Action52』のバグ(なので、他のタイトルのキャラが敵として登場してくる)に立ち向かう……という、言いたいことは解るが微妙に座りの悪い設定となっている。

始まりは海外メーカーActive Enterprises社が1991年にNES向けに開発した「Action52」というソフト。
尚、この『Action52』を販売するにあたりTVCMを打つなど堂々とマーケティングを行っていたが、任天堂と正式なライセンス契約なんぞ交わしていないモグリのメーカーである。

そのため、NESソフトにも関わらず市場での値段(希望小売価格)は199ドル(日本円にして約3万円。当時のレートでは2万6000円にもなる。)とゲームソフトとしては凄まじいまでの高額。
以下に、コンセプトが壮大だとはいえ勝手をやり過ぎである。
……任天堂法務部もまだ甘かったのか、それとも本格的に活動する前だったのか売れないと見越して放っておかれただけなのか……まぁ、任天堂自体には影響が無かったからかもだが。

このソフトが高額な価格設定とされた理由は1つのソフトの中に52本ものタイトルが収録されているため……コンセプトは解らないでもないがファミコン当時のゲームの容量では無理がありすぎないか?
なので、1本あたりのゲームの値段は大体400円ほど。
そう考えるとお得……かもしれない。なんてことはある筈もなく下記の通りで現代のアセットクソゲー以下の代物ばかり。無駄に容量を詰め込んだので起動させるとカートリッジが焦げ付く匂いまで醸し出すという、二重の意味で危険なソフトであったらしい。

その中でもチーターマンは目玉タイトルだったらしく、フィギュア化企画をほのめかす告知やコミックがソフトに付属していたりしていた。
というか、ストーリー的にも『Action52』の全ての要素を統合した集大成となっている。
生意気にもTVCMではアニメーションまで使用されている。

が、実はこれ、収録されているゲームはほぼ全てクソゲー
しかも一部のソフトを選択するとクラッシュしたり、1時間も遊んでいるとカセットが熱くなって焦げたプラスチックの臭いがしてくるという香ばしすぎる代物。
また、グラフィックやゲームデザインその物が古臭く、ファミコンどころかATARI時代を思わせるシンプルなゲームも多く、とても日本で言えばスーファミメガドラCD-ROM2を遊んでいた時代のゲームとは思えない。

無論、一応は目玉のチーターマンに限って良作……という都合のいいことがあるはずもなく、意味不明なストーリー、劣悪な操作性、理不尽な難易度、息をするように飛び出すバグなどを兼ね備えたクソゲーである。
もっとも、Action52のほかの作品に比べれば比較的まだマトモな方ではあるのだが。


そして、このチーターマン2も伝説級のクソゲーと呼ばれている代物である。
1992年に発売が予定されていたが、発売前に倒産した為世に出回る事は無かった……

……はずが、1996年にある人物により会社の倉庫跡に埃を被って放置されていたチーターマンが発見され、翌年にそれを買い取ったバイヤーの手により非公式で発売される。
もちろん人の手で加えられない限りデータしかない未完成品の状態だったため、カセットはAction52のものが使い回されている。
それでもなお伝説のクソゲーとして万単位で取引されるコレクションアイテムとして知られる辺りすごい、というか倒産した会社に対する皮肉というか……。

そして10年後の2007年に日本の動画サイトに投稿され、その作りこみの酷さとバグの豊富さ、妙に良曲なBGMから一躍話題となり、今では「デスクリムゾン」と「たけしの挑戦状」、「四八(仮)」に並ぶクソゲーとしてカルト的人気と知名度を誇っている。

2012年には有志によるクラウドファンディングで復刻版がリリースされた。こちらは専用の赤いカセット。
やはり現在ではプレミア価格がついているが、それでも25000〜30000円程度なのでオリジナル版よりは圧倒的に入手しやすい。

初代『Cheetahmen』のストーリー(っぽいもの)

THE ACTION GAMEMASTER WAS AT
HOME PLAYING HIS VIDEO GAME.
WHEN SUDDENLY...

AN ARM REACHED OUT OF THE TV
AND PULLED HIM INSIDE...

WHEN HE LOOKED UP HE SAW THREE
GIGANTIC YELLOW BODIES. IT WAS
THE CHEETAHMEN...

HE BEGAN TO EXPLAIN.... THE
CHEETAHMEN TOLD OF THE ENEMIES
HERE IN GAME WORLD. DONT WORRY
WE WILL FIGHT FOR YOU

THE CHEETAHMEN RAN OFF....
....AND NOW....

(※以下意訳)
アクションゲームマスターが家でゲームを遊んでいました。
すると突然……テレビからアームが伸びて中に引きずり込まれました……
彼が見上げると三つの黄色い巨体が見えました。チーターマンでした……

チーターマンはこのゲーム世界の敵について説明し出しました。
「心配するな、俺たちがお前のために戦ってやろう」

チーターマンは走り出し……
……そして今……

登場人物

◆アポロ
1・2面の操作キャラ。(初代では5・6面)クロスボウの使い手。何故か1Pと2Pで矢の発射位置が違う。本作の知名度を挙げた某動画ではコメントでお悩み相談や近況報告を一方的に受けさせられている。
長男だが、矢の連射が効かない上に射角も狭いので一番弱く、雑魚にもかなり苦戦する。
特に足元の奴には攻撃手段がないので避けるしかない。

◆ヘラクレス
3・4面の操作キャラ。(初代でも同じ。尚、無限ジャンプもやっぱり可能。)空手の使い手であるが故にガチムチな体格をしている。
次男だが、その体格からアポロより兄貴っぽく見える。
寧ろガチムチだからこそ兄貴。てかフツーに兄貴より強い。

◆アリエス
5・6(最終ステージ)の操作キャラ。三男で、鉢巻をしており棍棒を扱う。
しかし、後述する問題で使用不可能の不遇キャラに……。
初代では1、2面で使えたのがせめてもの救いか。
兄達はギリシャ神話の登場人物から名前を拝借してるのに、弟だけは星座からの命名。
……まあ、ギリシャ神話全般に目を向ければ由来を同じとも言えるが。

◆ドクター・モービス
アポロ達を改造した黒幕……なのだが、なぜか2面のボス担当。
しかも攻撃パターンは画面左端から右に走り、また左端から出てきて走るのを延々繰り返すだけ科学者の癖に完全に肉体派
さらにどういう訳か右端→左端のワープ位置が何故か内側に寄っている。これが意味する事は……(後述)

◆エイプマン

          

4面のボス。モービスがチーターマン抹殺のために作り出したらしい。
OPのイメージだとチーターマンよりデカそうだが、ゲーム中では一般的な類人猿程度の大きさしかない。
ドット絵が漢字の(もち・ぶつ)に見えてしまう為「」と呼ばれている。また、時々「(もんめ)」にもなる。
こいつも作り主と同様攻撃パターンがおかしく、前後に小刻みにステップを踏みながら右から左へ移動するだけ。この動きがものすごく気持ち悪い。
しかも振り向く事が出来ず、飛び越されてもなお奇怪なステップで前進する事しか出来ない。
エイプマンお前は泣いていい。

◆サイゴス
ラスボス。モービスの部下で右腕にメカメカしい義手をしている。
アリエス同様、登場する事が出来ないという不遇なキャラクター。
ちなみに実際に動かしてみると、モービスと同じくジョギングする事しか出来ず、こちらは右側を往復するだけで体当たりすらしてこない。部下なだけあってモービスより弱かった訳である。



問題点

  • まずグラフィックが全体的にお粗末で特に雑魚敵にミミズみたいな一本毛のような手抜きが存在する。

  • 敵が画面に2体しか出てこない。

  • 2面以降からジャンプするたびに「ビィン」という謎の効果音が付く。結構うるさい。

  • 前述したジャンプや敵に衝突した時の効果音にBGMが圧迫されて途切れる。
    また、頻繁に処理落ちしてBGMが遅れる。


  • 唐突すぎるステージクリア。一定の距離を進むと文字通り"間"もなく次ステージに表示が変わる。初見だと「え?」と思う程に突然。

  • ヘラクレスとアリエスはジャンプ中に攻撃することで空中歩行出来る。更にそこから同様の手順をすると簡単に無限ジャンプができてしまう。

  • 2面ボスのモービスと戦う際、アポロが画面右端に行くと身体の半分が画面外にのめり込み、ループして画面左端から身体の半分が飛び出す。
    先述通りモービスは画面右端の少し内側で左端までワープしてしまうので、この状態のアポロまで体が届かない
    こうなるとボウガン撃ち込まれ放題になってしまい、延々と背中を撃たれ続けるだけのおじさんになってしまう。

  • 極めつけは、エイプマン。上述通り、飛び越えても振り向けず前進し続ける、この状態で左端に行ってしまったら画面外に消えてしまう。こうなるとゲームが続行できず詰む
    倒すことは可能だが、プログラムミスで次に行けないのでどのみち詰む。アリエスの出番などなかった。
    • 一応、有志作成の修正パッチや先述の復刻版で5面以降に行くことができ、アリエスもそちらで操作できるが、ラスボスのサイゴスを倒してもゲームは進行しない。
      つまりEDが存在しない。ROM内にED用のスペースはあった為、作る気はあった模様だが……。


上記の他にも上下ワープ等のプログラムの作りの甘さ等が多々あり、

「これ2、3日で作ったんじゃないの?」「発売しなくて本当に良かった」

と酷評されている。

未完成ソフトをそのまま非公認発売したもののためまだデバッグが行われていなかった可能性もあるが、それを差し引いてもとても擁護できるものではない。


余談

このゲームの唯一と言っていい長所であるBGMの出来は良く、ステージのBGMは1分に当たる程の結構な尺でかなりの良曲*1
未だに多くのアレンジが生み出されている程で、これが「伝説のクソゲー」たる所以だろう。

ちなみに開発したActive Enterprises社は任天堂非公認のメーカーで、これ以外にも致命的なほどのプログラムミスが多い、商品とは呼べない代物を多く開発していた。
そんな物を2万円以上というぼったくり価格で販売していたのである。

しかも数年後、何をトチ狂ったのかAction52をSEGA GENESIS(北米版メガドライブ)専用ソフトとしてまさかのリメイク。チーターマンも当然収録された。
出来が多少良くなったゲームもあったことはあったが、チーターマンはなんとNES版に輪をかけてクソゲー化
唯一の評価点だったBGMまでもが凡庸な印象の物に変えられてしまっている。

当然だが両方とも売れ行きは芳しくなく、上述していた通りに会社は倒産した。
尚、倒産する前には当然のように無許可でファミコンやスーファミ、メガドラを一度に遊べる液晶画面付き携帯機を発売するとほざいていた述べていたが*2、結局は試作品すらお目見えすることはなかった。

後に怒りのクソゲーオタクことAVGNがAction52と共に本作をレビュー。
102本ものクソゲー*3をぶっ続けでプレイするという苦行にさすがの彼も目に見えてわかるほど憔悴し、当然怒り心頭で「キャラ商売を舐めてる」「猿のクソ同然」「こんなゲーム災害に大枚はたくくらいなら橋の上から199ドル投げ捨てた方がマシだ」と吐き捨てた。

ちなみにニコニコ運営が音楽の著作権を伺う為に元制作者に連絡を取った所、「過去の事は忘れたい」という返事が返ってきたという。こうしてチーターマンは公認黒歴史となったのであった。

ちなみに、最後にもう一度触れておくが元の綴りは記事名通り『Cheetahmen2』であり、本来なら『チーターメン2』と表記するのが正しい。
恐らく語呂の良さでこちらの呼び方が浸透したと思われる。スーパーマンしかり、ウルトラマンしかり、アンパンマンしかり。X-MEN「えっ?」



wiki籠りはこの世界のアニオタについて話しました。

「心配するな、俺たちが追記、修正してやろう。」


この項目が面白かったなら……\ドギャン/

最終更新:2025年07月28日 14:06

*1超兄貴』シリーズのBGMを手がけるシンガーソングライター・葉山宏治は、「音楽的にすごいとは思えないが確かに耳に残る。ゲーム音楽はいかに少ない発音数で多くの音を鳴らすかが重要。チーターマンはすき間だらけだが、あえてそこに独自の妄想音をリズミカルに入れたくなる。スカスカの“クセ曲”です」と若干の貶しを入れながらも高く評価している。

*2 この時代のゲームは著作権の無法地帯と言える状態で格段珍しくなかった

*3 ナードが所有するNES版Action52のカセットは52本中2本がクラッシュして起動せず、GENESIS版の52本目は他のゲームの高難易度モードのため実質的な収録タイトルは51本。これに本作を足して計102本となる