バレットM82

登録日:2011/08/14(日) 12:24:01
更新日:2025/09/19 Fri 09:23:12
所要時間:約 7 分で読めます






性能

全長:1447.8mm
重量:12.9kg
使用弾:12.7x99mm .50BMG
装弾数:10+1
動作方式:ショートリコイル
発射速度:32RPM
有効射程:2,000m



概要

アメリカのバレット・ファイアーアームズ社が1982年に開発し販売しているセミオート対物狙撃銃
対物狙撃銃は一度廃れた対戦車ライフルに相当するジャンルで、軽装甲目標や超長距離狙撃に対応する。
本銃はそんな対物狙撃銃の祖と言える存在である。
バレットはBullet(弾)ではなく開発者のBarrettに因む。


歴史

ロニー・G・バレット(1954~)は銃器生産以前には写真家として活動していた。1982年一月にテネシー州ストーンズ川の河川哨戒艇を撮影した際、搭載されているM2重機関銃に魅了されたという。
趣味として遠距離射撃*1を行っていたバレットは.50BMGを撃てる狙撃銃を構想。テネシー州の町工場にスケッチを持ち込み、ボブ・ミッチェルの工場にて手作りの試作銃が完成した*2
設計から製造まで4か月で制作されたそれはヒューストンのガンショーにて好評を博し、82年中に最初に生産した30丁は速攻で完売した。
83年より民間向けの長距離射撃のみを目的として販売を開始。よく売れたものの、数人が手作業で加工、組み立てを行う状況ではどうしても黒字化させることはむつかしく一時期は150万ドルの借金を抱えた。
しかしこの時からCIAがアフガニスタンでの武装勢力支援*3のために購入したりと、軍用としての才能も垣間見えていた。
ディック・スワンによる軍用品見本市への誘いにより軍へのマーケティングを行ったところ、スウェーデン軍が興味を示した。レバノンの地雷除去として最適とされ90年にAG90として採用。
それ以降湾岸戦争にて米英軍より発注されたことでより注目が集まり、2001年時点で35か国の政府機関への輸出が実現している。

2016年にはテネシー州の州銃に選ばれている。

バレット・ファイアーアームズ社

バレット氏は20世紀に入ってから米軍に制式採用された銃の設計者7人*4のうちの一人である。
そして自社生産で米軍に納入しているのはバレット氏が唯一。そんな会社がバレット・ファイアーアームズ社である。
1982年の最初期型生産時から稼働している。軍向けの生産に際し設備投資を行い、現在は大規模生産にも対応している。
2013年には.338ノルママグナムを用いるMRADを開発しており、M82シリーズの後継であるMk22 PSRとして採用され、M24なども含めて置き換えを計画している。
2023年にオーストラリアのNIOAグループに買収。



構造

六角のフレームにパーツを取り付けるようなデザイン。
大型のマズルブレーキにより射撃時の反動を抑えて射手への衝撃を軽減*5し、セミオートの連続射撃を可能にしている。
携帯性を向上させるため、15秒で組み立てができる設計となっている。分解してケースに入れて運搬可能。

.50BMG弾

1921年よりM2重機関銃で使用される弾。BMGはBrowning Machine Gunを意味する。寸法は.30-06弾を拡大したような形。
拳銃や突撃銃でみられる薬莢長20~55mmの.50口径弾*6とは比べ物にならない威力を持つ。
十数mmの鉄板やコンクリートの壁も障子紙の如く貫き、装甲車やヘリコプターに損害を与えられる。
飛行機の風防ガラスを突き破ったり、エンジンを破壊して車やボートを停止させたりといった運用もみられる。

弾頭直径の大きさから榴弾や徹甲焼夷弾といった炸薬を仕込むことができるほか、APDSに近い構造のSLAP弾も用意されており並みのライフル弾とは一線を画す。
メジャーな7.62x51mm弾(PSG1L96A1等々)と比べると弾頭重量で約5倍の650gr。初速は同等の920m/sなのでマズルエネルギーは18000Jとなる。
弾頭重量の重さにより運動エネルギー保持力が高く、空気抵抗や横風に流されず遠距離まで低伸する。
2000m先に到着するのに7.62mm弾は7.6秒かかるが12.7mm弾は4.3秒で到達する。
飛翔時間が短ければ重力による落着も減り、測距の誤差による着弾点のズレが減らせる。7.62mm弾の7mに対し12.7mm弾では2.5mに抑えられる。
総じて通常の小銃弾での1000m程の限度を超えた超超遠距離狙撃にも適しているといえる。

しかしながらもとは機関銃弾であり、より格を下げ取り回しを向上させつつ同等の狙撃能力を得ることを目指す取り組みもなされている。.338ラプアマグナムなどへの置き換えは最たる例と言えよう。



バリエーション

  • M82A1
原型のM82を元に開発された。
前期型はマズルブレーキが丸い。
何度かのマイナーチェンジ(二脚の変更、マウントレールの追加等)を経て現在の形へ。

  • A2
ブルパップ式で対ヘリ用の安価な対空火器という触れ込みだったが、用途が限定的で生産中止。

  • M90/M95/M107
A1の小型軽量モデル。ブルパップ式でボルトアクション。M107として米軍に採用された。

  • M99
M95をさらに簡略化・軽量化したもの。こちらは弾倉を廃止し単発式。命中精度は非常に高い。(1000ヤードで4.09インチ=915mで約10cm)


  • XM109
OSW計画に準じた25x59mm榴弾を使用する短銃身モデル。が短縮され徹甲弾、徹甲焼夷弾、エアバースト弾などが使用できた。予算削減により不採用。



フィクション

  • GUNSLINGER GIRL13巻74話
ミラノ派が義体にも有効な銃器として使用。トリエラの片手足を落としている。

キノがサモエド仮面fに連射。

スクールボーイが使用。
後にランボーもM2重機関銃を使用している。
激しい人体欠損が見られる。

終盤でクラレンス一味が「コブラアサルトキャノン」というハイテクガンを使用。着弾時に大爆発する弾を発射している。
次回作でもロボコップが暴走する2号機に対して同タイプの物を使うがノーダメージだった。

  • 続・戦国自衛隊
大賀一曹が徳川家康狙撃に使用。

漫画30巻にて、龍宮真名が使用。

M82A2が登場。
ACT.3ラストのリキッド包囲時に米兵が使用。スネークも買えば使用可能になる。
即死級の威力と長い射程に加え、セミオートのため連射性能も悪くない。月光相手でも余裕になるほど強力な武器。欠点は値段と重量。
ACT.5ではジョニーが使用、窮地に陥ったメリルの許に駆け付け、多数の敵兵を撃破する活躍を見せた。

M82A1に無理やりフルオート連射機能を持たせたという設定の「鋼鉄破り(メタルイーター)」が登場する。
完全に別のナニカ
作中で対物ライフルという区分があるが、これは対戦車ライフルという扱いであり、
威力その他は30mmガトリングに耐えるパワードスーツを撃ち抜くなど、現実のM82A1とは完全に別物。

ボン太くんが某変態狙撃の為に使用。だが、暴力婦警が武力介入してきた為未使用。

  • バイオハザードⅡ
脱出用ヘリを奪いに来た主人公一同を狙撃すべくアンブレラ社員が使用。撃つ前にアリスにぶん殴られたが。
ちなみにこの社員はカメオ出演した本作の監督。

  • タイムクライシス4
「片手で対戦車ライフルだと?何者なんだ!?」
Stage1のボス、マーカスの武器。
冒頭の台詞通り片手でぶっ放すだけでなく、ワイヤーを使って空を飛びながら撃つ、路面電車を支えている乗用車を爆破してどかし、電車を坂の上から突っ込ませる等の荒業を見せる。
こんなんでも戦闘能力は「それなり」らしい……
そしてこのライフルの弾が本作屈指の初見殺し。発射されても命中を示す赤いマズルフラッシュが出ないので、別の命中サインに気付けない限り延々と食らってしまう。
弾が赤く、こちらに迫ってくるのが命中弾。弾速は遅いのでネタさえ知っていれば回避は簡単。
撃破直前は見てからの回避が難しくなる至近距離での戦いになるので、高火力のショットガンやグレネードでさっさとケリをつけたい。

余談だが、一部の攻撃には発射前に謎のチャージする動作がある。実はM82の皮を被った超兵器なのだろうか?

単行本8巻にてロベルタが使用。
グレイフォックスのアルファ分隊へ向かいのビルの屋上から右手のみで固定した無茶撃ちを叩き込み、乱入してきたFARCの特殊部隊へ超至近距離の乱射を行う。
更には棒高跳びしつつ背面に背負ったライフルを乱射。もはやギャグである。

SCP財団本部が収容しているオブジェクトに、「SCP-2818 人を撃つ銃」なるものがある。
どうやらM82を改造したものらしい。
但しこいつがぶっ放すのは銃弾ではなく、銃弾サイズに圧縮した射手、つまり人間。「人を撃つ」銃ってそっちの意味かよ!

モダン三部作とBO2に登場。
特にMW1のザカエフを狙撃するシーンが印象的。
他のシリーズでは小銃のようにバンバン撃ちまくっているが気にしてはいけない。

  • ハート・ロッカー
PMCが持ってくるが、迫撃砲で死亡。
スキンヘッドが狙撃に使用する。
バンカーに対して発砲するが、威力は控えめ。

遊戯銃

一応、海外製電動ガンでもモデルアップされています。(無駄にセミ/フルに切替えられる素敵仕様)
12kgのバカ長い物干し竿を豪快に振り回せば、英雄になれるかも!?



余談

  • 破格の威力だが、値段も90万と破格。



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最終更新:2025年09月19日 09:23

*1 当時は1000mを超える狙撃ができる銃はボーイズ対戦車ライフルなどかなり古いものしかなく、精度も狙撃向きとは言い難かった

*2 の項目の通り、アメリカでは適法な範囲なら登録さえしていれば個人で自作銃も開発できる

*3 当時はソ連が侵攻していたのでそれへの対抗としての支援

*4 ブローニング、ガーランド、ストーナー、トンプソン、ジョンソン、ライジング

*5 12ゲージショットガンと同程度とされる。額面通りであれば歩兵銃等よりは断然強いが十分抑えきれる。バレット社は二脚を立てての片手撃ちや腰だめに抱えて連射するPR映像を公開している。

*6 デザートイーグルの.50AE弾やAsh-12の12.7x55mm弾