チンプイ

登録日:2013/09/21 Sat 19:11:25
更新日:2025/06/21 Sat 10:39:30
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『チンプイ』は、藤子・F・不二雄の漫画作品および本編に登場する宇宙人の名称。


概要

普通の小学生の元にやってきたマール星人が巻き起こす騒動を描く。

原作は漫画全集「藤子不二雄ランド」の巻末として連載されていたが、58話をもって終了。
ラスト2話が単行本最終巻に描き下ろしで掲載される予定だったが、その最終巻が刊行されず、またラスト2話も描かれる事なく作者が死去。
これにより、未完の作品となった。

ストーリー

マール星の王子、ルルロフ殿下は恋をした。
地球に住む一人の少女、春日エリに。
なんとしても彼女のハートを射止めたい彼は、ネズミ型のマール星人『チンプイ』と型のマール星人『ワンダユウ』を地球に住む春日エリの元へ派遣する。
しかし、エリには意中の相手がいた。
そう、クラスメートの美男子、内木である。
勿論、そんな彼女は殿下の求愛を拒否する。
が、チンプイはエリが大変気に入り、そのまま居候。
かくして、チンプイと春日エリの愉快な毎日が始まるのであった……。

アニメ版

1989年11月2日~1991年4月18日まで、テレビ朝日系列で放送。
制作は勿論シンエイ動画

アニメ版の最終回は、ルルロフが内木の身体を借りて、エリに会いに行くという、
原作にはないオリジナルエピソードとなっている*1
また、当時のアニメ誌では、『ルルロフは内木なんじゃないか?』という仮説が乗っていたが、
原作の中盤でルルロフが内木の存在を初めて知る回(海中撮影したけれど)があるので、
少なくとも人格的にはルルロフは内木と別人のようである。

なお、「エリとルルロフの子供が登場する」「妃殿下となった未来のエリが現在の地球に里帰りする」というエピソードがあり、
少なくとも「エリとルルロフが結婚する時空」自体は存在するようだが、それが漫画で描かれている世界の未来なのか、パラレルワールドの未来なのかは不明である。

アニメ版のチーフディレクターである本郷みつる氏は、作者に結末を教えて貰っており、後にそれを知った佐藤竜雄氏が「最後はどうなるんです?」と聞いたところ…、

本郷みつる「忘れた。」
ただ「エリ、内木さん、そしてマール星人たちが誰も不幸にならない終わり方」であるらしい。

また「映画版の中で結論じみた事は出している」とF先生が言ってたりもする。
この映画版は劇中劇としてエリの伝記映画(という建前だがだいぶ脚色あり)が勝手に作られていることを知ったエリは怒るがエリ役の少女・リリンが成り行きで自分をかばって負傷してしまい、彼女の熱意と負傷への責任を感じたエリが代役*2をする…というストーリー。
…と、いうことは…?

放送後、藤子・F・不二雄ミュージアム向けの短編映画が2014年と2025年の2回製作されており、2025年版では声優陣が一新されている。

登場人物

  • チンプイ
声:堀絢子(TV版、2014年版・2019年版Fシアター)、久野美咲(2025年版Fシアター)
主人公。ネズミ型のマール星人で、ラーメンが好物。は苦手。
エリがルルロフ殿下と無理やり結婚させられる事には少なからず同情的であり、
エリが自らの意志で納得し、マール星に行くことを望んでいる。
マール大学を首席卒業しているため、かなりエリートであると思われる。
魔法ならぬ、科法の使い手。
ちなみに科法とはマール星人が使用する能力で、一件魔法のようだが地球以上に発展したマール星の科学技術とのこと。
したい事を念じて自分の名前を唱えるだけで発動する。
ブラックホールを作り出して物を片付けたり、人工的に雨を降らせたりと用途は多岐にわたる。

ある話では「宇宙人見たいがチンプイじゃリアリティがない」と贅沢を言う地球人にヒーロー(『パーマン』のバードマン)・漂流者(『ドビンソン漂流記』主人公)・星が壊れ難民となっていた顔見知りの王族(『ウメ星デンカ』のウメ星王家)を引き合わせた…って漂流者は助けてやれよ!
アニメでは「藤子・F・不二雄スペシャル~ドラえもん+チンプイ~」でワンダユウと共にドラえもんのび太と対面している。
だがラストで「チンプイは地球でいえばネズミに当たる」「ドラえもんは猫型ロボット」という事実を明かされて、
ネズミ嫌いのドラえもんと猫嫌いのチンプイは、顔を見合わせてから、お互いに怖がって逃げ出した。
プイプイとは関係ない。

  • ワンダユウ
声:八奈見乗児(TV版、2014年版Fシアター)、山寺宏一(2025年版Fシアター)
犬型のマール星人で、チンプイから「じいさん」と呼ばれるほどかなりの年配。
常に地球とマール星を行き来している。
エリを何としてでも殿下と結婚させるため毎度あの手この手を使って暗躍していて、ある回のオチではエリに「家族を置いて遠い星に行くのはちょっと…」と言われてもズレた答えを返してしまった。

  • 春日エリ
声:林原めぐみ(TV版、2014年版・2019年版Fシアター)、潘めぐみ(2025年版Fシアター)
もう一人の主人公。かえでが丘小学校の六年生で、ちょっぴりオッチョコチョイな女の子。
ひょんな事からルルロフ殿下に気に入られるが、本人は内木の事が好き。
なぜ、自分がお妃候補に選ばれたのかは未だにわからない。
が、劇中では常に相手を思いやる行動をしていた為、それがルルロフ殿下に気に入られたと思われる。
またマール星で彼女のグッズが売れまくった時「地球で使えない」と収益を散財目的で寄付・投資に回したら、それらの全てが大成功したため幸運の女神としても見られるようになった。
ED主題歌「シンデレラなんかになりたくない」は、まさに彼女の心情がよく現れているといえるだろう。
実は「ドラえもん のび太の日本誕生」に登場した、あるキャラの子孫……!

  • 内木一郎
声:佐々木望(TV版)、山本和臣(2014年版Fシアター)、伊瀬茉莉也(2025年版Fシアター)
エリのボーイフレンド。
それと同時に、エリから思いを寄せられている。
運動神経抜群、成績優秀で、女子達の憧れの的。
エリからは「彼への思いをずっと持っていられたらマール星に行かなくていいんだ!」と期待を寄せられているが、彼が作中で「エリとルルロフ殿下の婚約」をどこまで知っているかは不明(チンプイが初対面時説明しようとしたのをエリが遮っている)。

  • ビルーカス
声:大塚周夫(映画)
カバ型マール星人で、映画監督。
エリの伝記映画を製作した。
2112年 ドラえもん誕生」にも登場し、ドラニコフを俳優としてスカウトしている。

  • コビウリ
声:富山敬(映画)
リスザル型マール星人で、ビルーカスの助手。

  • 小金山スネ美
声:梨羽侑里
エリのクラスメート。
元・華族の金持ちで、『ドラえもん』のスネ夫が少女になった感じで、両親の外見もスネ夫の両親のそれとほぼ同じ。オタクの従姉妹は登場しない
あまりにも似ていることから小金山家と骨川家が遠い親戚説を挙げられるが公式には無関係とされている。

  • 藤野ほたる
声:深雪さなえ
アニオリキャラのエリのクラスメートで、少々天然気味なロングヘアーの少女。

  • 秦さやか
声:伊藤美紀
エリのクラスメートで原作とアニメで大きく外見が異なる。
原作では『キテレツ大百科』のみよちゃんなどに代表される藤子漫画によくいる*3もこもこ髪の少女なのだが、
アニメ版ではキテレツのママのようなショートヘアをしたボーイッシュ少女になっていた。
原作では下の名前も出てこないので、これだけだと「同姓の別人では?」とも思えそうだが、原作の秦さんのセリフをアニメではさやかが言っている*4ので同一人物らしい。

  • 大江山政男
声:中村大樹
エリのクラスのガキ大将で、スカートめくりや内木イジメなど、徹底的なワル。
実はエリに密かに想いを寄せている。

  • 木常コン三郎
声:金丸淳一
政男の子分で、狐顔の少年。アニメ版では「小山政夫」という名前。
気が付いた方も多いかもしれないが、本作にはスネ夫ポジがスネ美と彼の2人になっている。
むしろ『パーマン』のサブ(ガキ大将取り巻きのチビ)と三重(お金持ちの見栄っ張りな子)のパターンに戻ったともいえる。

  • マイケル・マラソン
声:中原茂
気まぐれな性格のミュージシャンで、コンサート当日に事務所を抜け出しちゃう困った人。
最後はエリの部屋でコンサートを開いた。

  • 春日百合
声:鈴木弘子(TV版)、日笠陽子(2025年版Fシアター)
エリのママ。
超がつくほどのサディストなんじゃないかと思うくらい、人使いが荒い。
そんな時は、大抵チンプイの科法でうまくいく。
上記の他にもエリとの約束も平気で破って扱き使うばかりか「その方が励みになるでしょ」と開き直るなど、藤子作品の母親キャラとしては野比玉子よりも最低の部類に入る。
しかし連載最終回(遠い思い出)はエリが母親の愛情に気がつく感動話だったりする。もっともこれは偶々最後に載っただけでストーリー上の締め話ではないのだが

  • 春日のどか
声:津村鷹志
エリのパパ。商事会社の課長。
のんびりやのマイホームパパだが、妻には頭が上がらない。
実は本人の知らぬ間にマール星では公爵扱いされている。

  • ルルロフ殿下
声:菊池正美
マール星の王子。
王室典範の規定により、婚約するまではエリに顔を見せることが禁止されている。
作品が未完のまま終わった為、最後まで姿を見せることはなかった……。が、アニメ版最終回では「エリと直接会話する」ことには成功した。



追記・修正は科法で。

この項目が面白かったなら……\チンプイ!/

最終更新:2025年06月21日 10:39

*1 時期的に原作終盤はアニメ制作に間に合わなかったらしく、そこまでほぼ全部使用した(例外は他の藤子キャラと共演する第51話「ヒミツのバードウォッチング」のみ。)のにラスト3話は立て続けに未アニメ化。

*2 ちなみにルルロフ役は最初から適当な人が居らず欠員だったが、結局チンプイが担当した。

*3 そもそもエリ自身も前髪以外はこの容姿である。

*4 「御先祖は日本王!?」より。