全て遠き理想郷

登録日:2009/08/16(日) 19:11:32
更新日:2025/01/21 Tue 16:11:43
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アヴァロン
全て遠き理想郷


全て遠き理想郷(アヴァロン)』とは『Fate/stay night』と『Fate/Zero』に登場する宝具のひとつ。

ランク:EX
種別:結界宝具
防御対象:1人

アーサー王伝説における常春の土地、妖精郷の名を冠した『約束された勝利の剣』の鞘。
しかし、そのアーサー王たるセイバーの手からは失われた宝具であり、使用不可となっている。


【概要】

宝具としての能力は二つあり、一つは「持ち主の老化を停滞させ、その身のあらゆる傷を癒し、呪いを撥ね退ける」というもの。
もう一つは真名解放を行うことで「数百のパーツに分解された『全て遠き理想郷』が所有者への絶対防御と言ってよい防御能力を発揮する」というもの。
またこの宝具を「人に埋め込む」という行為が可能で、埋め込まれた人間は前者の治癒能力を得る事が出来る。
なお運用にあたっては持ち主であるセイバーの魔力は必要とするが、剣側の『約束された勝利の剣』とはとくに依存関係は無く、鞘単独で上記の効果を発揮する。

【治癒能力】

治癒能力については、例え致命傷レベルの傷を受けた者でも回復するほどの凄まじいもの。埋め込まれた人間の生命力は死徒並みと言われる程。
ただし、本来の持ち主たるセイバー(アルトリア)の魔力がなければ、この治癒能力を十全に発揮させることは出来ず、
さらに、セイバーが手にしていても、例えば宝具のような強力な概念武装で受けた致命傷レベルの傷となると、即座に回復するほどの効力は発揮できない。
それでも、多少時間があれば、対象が死亡していない限りは概ね完治させられる時点で、強力な治癒能力であることは間違いない。

その性質上、セイバーの魔力がないと宝具としての能力はほぼ機能しないため、セイバーが退去すると力は失われるが、彼女以外の魔力でも微弱ながら治癒能力は発揮する。

【絶対防御】

絶対防御能力は「この世界における最強の守り」と形容されるが、正確には防御というレベルではなく「遮断」とでも形容すべきもの。
分解した鞘に包まれた対象はその瞬間のみ、妖精郷の壁によりこの世から隔離されることで、この世の理全てから断絶される。

その結果、あらゆる物理的・魔術的干渉は勿論の事、現存する五つの魔法、並行世界からのトランスライナーすら通用しない
多次元からの攻撃と交信も六次元まで遮断するという。言うなれば個人を対象とした移動要塞。
要はセイバーを七次元の妖精郷に避難させる、というもの。

相手が現世に属する限り、何者にも侵害されぬ究極の一であり、TYPE-MOON世界最高峰の守り。魔法の域にある宝具である。

ただし、絶対防御能力については常時発動型ではなく真名解放型なので、発動タイミングは見極める必要がある他、展開したまま攻撃することも出来ないので、戦闘中に使用するのならば、慎重な運用が必須となる。

【劇中での活躍】

セイバーの宝具だが冒頭の通り「Fate/stay night」時点でセイバーの手からは離れており、彼女はこれを持たない状態で召喚されている。
しかしセイバーも知らなかったが衛宮士郎の身体に埋め込まれているという形で登場していた。
かつてのセイバーのマスターであり、士郎の育ての親でもある衛宮切嗣が冬木大火災で致命傷を負った士郎にこの鞘を埋め込み、その能力で士郎の命を救っていたのである。

度々本編で見られた、士郎の由来不明だが驚異的な治癒能力の正体がこれ。
[バーサーカー>バーサーカー(Fate)]]によって殆ど真っ二つに切りつけられた際には数時間で元通りの姿に戻り、
更にセイバーが接触して意図的に魔力を込めれば回復力が増し、胴体が千切れかけている程の傷からも生還させ、
果てはランサーの『刺し穿つ死棘の槍』の呪いによる治癒不能の傷を、呪いそのものを無効化して治癒したりもしている。
一方、UBW(凛)ルートではセイバーと士郎との間の契約が切られたため、一度はほとんど機能しなくなるが、
士郎とアーチャーの戦いでは、セイバーが側で二人の戦いを見守っていったためか微弱ながらも力を発揮し、
アーチャーの斬撃で士郎が受けた傷を、普通ではありえない速度で回復させていた。

ただ、前述の通り鞘を埋め込まれた士郎ですら切嗣からそのことを教えられていなかったため、
明らかに尋常ではない士郎(『全て遠き理想郷』)の回復能力に、それを見た遠坂凛どころか士郎本人まで首を傾げ、
「セイバー自身が何か特殊な回復能力を持っていて、サーヴァントである彼女の魔力がマスターに逆流したお陰で、それが発現した……のかもしれない」
と推測して
なお、通常であれば使い魔の魔力が主に逆流することは本来はありえないが、絶対に起きないわけでもなく、
『Zero』(第四次聖杯戦争)において、言峰綺礼は切嗣との戦いに敗北し、彼によって一度殺害されたが、
その後に綺礼のサーヴァントであったギルガメッシュが「この世全ての悪」から溢れた魔力の泥を浴びたことにより、
その泥がパスを逆流して綺礼にも流れ込み、その効果で理外の蘇生を果たすという現象が起こっている。
また、セイバー自身も切嗣が『全て遠き理想郷』を使えば士郎と同じような状態になっていただろうことを肯定しているため、
鞘かセイバーどちらの問題かは不明だが、士郎のような現象は十分ありえるらしい。

作中で数え切れない程に彼の命を救い続けた能力だが、『約束された勝利の剣』の攻撃のみ例外なのか、
デッドエンドの一つでセイバーに斬られるものでは、治癒能力が働かずに死亡している。
また、とあるデッドエンドでは士郎の固有結界の暴走によるダメージにも治癒能力が働くことはなかった。
一部のエンドでは生存を諦めただけで治癒も働かずに死亡するなど、その治癒能力には非常にムラがある。


Fate(セイバー)ルート以外のルートでは失われたまま(士郎に埋め込まれたまま)で終わるが、
唯一Fateルートではセイバーの手に戻り、『約束された勝利の剣』に並ぶ彼女の最大の切り札となった。
また鞘を返却されたセイバーはそれ以前よりも魔力量が増えたと語っており、内一回は令呪によるブーストを受けたとはいえ、士郎がマスターの状態でも『約束された勝利の剣』を計四回使用することが可能となっている。
参考として、士郎とは比べ物にならないほどの魔力量を持つ凛がマスターの状態でも、『約束された勝利の剣』の連続使用は二回が限界と語られているため、
鞘を返却されたことによるセイバーの魔力量の増加量は破格と言えるものと推測される。

Fateルートにおけるギルガメッシュとの最終決戦では、相手の最大最強の『天地乖離す開闢の星』に対して『全て遠き理想郷』の絶対防御を発動、そのダメージを「遮断」して防ぎ、
渾身の一撃故に反応できないギルガメッシュに肉薄し、『約束された勝利の剣』を直接叩きつけるというカウンターによって、ギルガメッシュを撃破している。

尤も、「世界を切り裂いた」とされる『天地乖離す開闢の星』の凄まじい破壊力を恐れていた影響もあるが、
セイバーの高ランクの「直感」スキルと『全て遠き理想郷』の防御能力をもってしても、
その「直感」がセイバーに「この戦法の成功率は極めて低い」と警告するほどに、このカウンター戦法は博打であった。
というのも、『全て遠き理想郷』の展開が早すぎるとカウンターが成立せず、逆に鞘の存在を知られて警戒されてしまうが、
逆に展開が遅すぎると、宝具の防御が間に合わず、セイバーは『天地乖離す開闢の星』を真正面から受ける羽目になってしまうため。
故に、セイバーは最大の切り札としてより効果的に使用するために闇雲に使わず、最低でも数回に渡ってギルガメッシュの『乖離剣エア』による攻撃を観察して、
それによってギルガメッシュに生じる隙や、特性などを見極める必要性を理解し、タイミングを計れるギリギリまで実践は避けようとした。
そしてその結果、セイバーは「英雄王」たるギルガメッシュの打倒に成功したのであるが、博打要素の大きな最終手段であったことに変わりはない。

Fate/unlimited codes

格闘ゲーム『Fate/unlimited codes』ではセイバーの必殺技の一つに採用されている。
コマンドを入力するとセイバーが目の前に『全て遠き理想郷』を展開し、敵の攻撃がこの『全て遠き理想郷』に命中すると発動する当て身系の必殺技。
当たった攻撃が近距離の場合、セイバーが相手に突進し、真名解放した『約束された勝利の剣』で斬りつけるという、前述のギルガメッシュ戦を再現した特殊演出が入り、
遠距離の場合は相手に向かって『約束された勝利の剣』を放つ。
どちらの場合もガード不可で、発動に成功すれば確実にダメージが入るが、発動しなくても『全て遠き理想郷』を展開した時点でゲージを消費するため、これまた原作よろしく、発動タイミングはきちんと図る必要がある。

【Fate/Zero】


第四次聖杯戦争に際してアインツベルンが「最強のカード」を引き当てる切り札としてコーンウォールから発掘し、
セイバー召喚の為の触媒として使用された後はアイリスフィールの体内に封入される。
ちなみに、失われた鞘を発見し、コーンウォールに納めたのはリチャード一世であることが『Fake』で明らかになっている。

敵の攻撃に対する備えとすると同時に、「器の守り手」たる彼女の崩壊を押し留める効果を見せた。
アイリは契約者ではない為にセイバーから離れれば効果を発揮しなかったが、彼女が触れた途端に傷は愚か、魔術回路やスタミナすら回復した。

戦いの最終局面において、アイリから最後の戦いへと赴く衛宮切嗣へと託され、
正規の契約者たる切嗣にセイバーの魔力が流れた事で鞘の効果は十全に発揮し、致命傷の一撃を貰っても復帰を可能にしたという。

切嗣は鞘に治癒能力がある事は知っていたが、いざその効力を目にするとこれ程のものとは思わなかったと驚愕していた。
固有時制御の反動による自傷にすら癒す効果を利用し、限界を超えるレベルで固有時制御を発動させ、
預託令呪をこれでもかと投入する言峰綺礼との最終決戦においてその機能を遺憾なく発揮した。
というかこれが無かったらDead End確定だった。

ただし、これらの描写に関しては色々物議をかもしている。
切嗣の場合、預託令呪をふんだんに使う言峰綺礼に心臓をただの一撃で破裂させられているので、『全て遠き理想郷』の回復力でも蘇生が間に合わないのでは?と言われることもある。
というより士郎や本来の持ち主であるセイバーでも即死級の重傷から数秒で全快する即時復帰は叶わないので、本編と矛盾するとして批難するファンも居る。


戦争終結後、セイバーの消滅により宝具としての機能は失われたが、魔力を込めれば微弱ながら治癒能力を発揮する為、大火災によって瀕死となった士郎を救う為に切嗣によって使用される。
この時のアヴァロンは鞘のままでは瀕死の人間を治せるほどの力はなかったので、分解し埋め込むことで治癒力を増やす形で使用された。
その10年後再びセイバーが召喚された後はセイバーとのリンクが取り戻されたことで機能が復活し、前述の通り強力な治癒効果を士郎にもたらした。

また、本来士郎は剣以外の宝具を投影することは不得手だが、コレは体内に長年埋め込まれた事でその構成を完全に身体が記憶している為、容易に投影できる。
能力がワンランク下がっている状態でも『この世全ての悪』の呪いを持ち主から跳ね除ける力を見せた。

コンマテ3によると、例えほぼ全ての宝具を持っているに等しいギルガメッシュさえも『全て遠き理想郷』を使っているセイバーを傷付けるのは不可能と説明されている。

また、長時間鞘を埋め込まれた者の起源と魔術属性を剣にする能力があるとされている。
士郎の起源が剣になりかけている原因とされ、あの投影が出来たのも鞘の影響で起源と魔術属性が剣になったと説明されている。

なお第五次聖杯戦争の終結から十年後、凛とウェイバー・ベルベットによって大聖杯は解体される為、
セイバーとの繋がりは完全に断たれることになって鞘のイメージも消えてしまい、使用する事は出来なくなる。
アーチャーが全て遠き理想郷を投影出来ない理由もコレとされている。
またその内に士郎の身体からするっと抜け落ちて本来あるべき星の内海に帰るとも言われている。


妖精郷(世界の裏側)

ブリテンを代表する魔術師マーリンが生前のアルトリアに語った内容によれば、
「”キミたちの世界”という土台の下に”妖精郷”という隙間があって、その下が惑星の地表」
「妖精郷もキミたちの世界も一枚の皮、織物(テクスチャー)にすぎない。どちらも惑星の地表に張り付いた”外観”」。

英雄王ギルガメッシュ以降、魔術王ソロモン以降、西暦以降と段階的に神代が終わっていく中で、妖精や幻想種が去っていった世界。
しかし神代の気配が残る5世紀のブリテンには妖精郷の扉がまだギリギリ開いており、妖精が自由に現世と裏側を行き来できた。

竜種となったジーク、一瞬とはいえ幾度も往復できるアストルフォの幻獣ヒポグリフなど、
幻想種にとっては不可侵どころか馴染み深い場所ですらある。
ただし、これらは超現実的・超常的存在だから出来る芸当であり、例えばヒポグリフは本来「有り得ない」魔獣だからこそ不可能なる場所へと「次元跳躍」できる。
普通の人間やサーヴァントのような、現世に縛られている(現実に存在することを許されている)存在には、
神代の環境が残り続ける世界の裏側へ干渉したり、そこに留まる術が最早無い。
なお基本的に物質的な肉体を持ったまま裏側に行けないので、竜種は地面に潜って肉体を捨てて魂だけになって裏側に渡り、
巨人は魂だけになって渡るような芸当はできないので、裏側に行けず現世に留まるしかなった。

この宝具によって辿り着ける後述の理想郷アヴァロンも、「Garden of Avalon」においては、
共に世界の裏側に存在する場所であるとマーリンは解説している。
ただし、どの程度位相が異なるのか等、差異の有無や程度については明言されていない。


理想郷アヴァロン

地球という惑星が持つ魂の置き場。星の内海。
星の内部たる世界だが地底にあるわけではなく、星の外側と同一座標・同一空間でありながら三次元の外観より数次元ほど上にズレた位相。

昼は春の陽射しと夏の匂いに満ち、夜は秋の空気と冬の星空に覆われ、花々と虫、森には水と緑と獣たち、水場には妖精たちがいる妖精郷。
表層の歴史に寄り添いながらも一切関わりを持たない異郷。
人々が思い描いた楽園の原典。知恵持つ獣には辿り着けない理想郷。

魔力の密度は特濃で、神代の魔力が残る土地でなければ生きられない五世紀のブリテン人でも一呼吸で内側から破裂するレベル。
マーリンいわく「楽園だなんて言わず、兵器として使った方が有効なんじゃないか?」

半分は高次元生命体であるマーリン、星の獣キャスパリーグ
FGOにおいて聖剣によって不老不死となり1500年さまよったifのベディヴィエールや、聖剣返還で死するとともに迎え入れられたアルトリア、
そして、彼女を求めて気の遠くなるほどの旅をしてきた、「Réalta Nua」ED*1の士郎などがここに到達している。
また、FGOの第2部第6章『妖精円卓領域 アヴァロン・ル・フェ 星の生まれる刻』では、アルトリア・キャスターとともにマーリンの導きを受けた主人公たちが、
異聞帯のブリテンのものとはいえ、人の身で星の内海・アヴァロンの光景を本格的に目の辺りにすることとなる。

尚、EXTRA CCCにて八次元まで交信を遮断するというムーンセル中枢の障壁が登場。
これを単なる物理・魔術防御力による防壁だと誤解しているファンも割といるが、作中ではちゃんとBB
「まるっと円形の、八次元まで交信を遮断する霊子障壁」と説明している通り、このムーンセルの交信の方を受け付けない類の遮断障壁である。(攻撃とは言われておらず別)


そして原初の女神の力を手にし、ムーンセルを長時間掛かりで突破したBB
こうした設定の為、これらの原初の女神レベルの力の前にはアヴァロンでも遮断は出来ないと思われる。
あとはあくまでギャグ展開によるコメディ補正の加護で突破した自称良妻



【余談】


元々のアーサー王伝説ではエクスカリバーと異なり、特に名前は設定されていない無名の鞘。
エクスカリバーは湖の精からもらった剣なので、その辺の繋がりからつけたのだろう。最終戦で「エクスカリバーの鞘!!」などと叫んで鞘を展開して勝っても微妙だし。
また能力も「身につけている間は傷を負わない」とシンプルなもの。

pixiv等のイラストサイトでは、切嗣・アイリ夫妻とイリヤ・士郎兄妹(姉弟)が一家団欒しているイラストなど、
本編では有り得なかったが有り得てほしかった光景を描いた作品群が、この宝具にあやかって「全て遠き理想郷」と呼ばれたり、タグ付けされたりしている。

ちなみにフィギュア業界では、グッドスマイルカンパニーから出た名作「セイバーリリィ~全て遠き理想郷~」の事を指す。




追記・修正よろしくお願いします。

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最終更新:2025年01月21日 16:11

*1 「stay night」のコンシューマー版である『Réalta Nua』で追加された新ED