名探偵コナン 業火の向日葵

登録日:2016/02/20 Sat 11:16:52
更新日:2024/03/12 Tue 16:02:15
所要時間:約 21 分で読めます





時を超えて交錯する「嘘」と「愛」――

人類の至宝を巡る、芸術的(アート)ミステリー!!


監督:静野孔文
脚本:櫻井武晴
主題歌:ポルノグラフィティ「オー!リバル」

『名探偵コナン 業火の向日葵』とは、劇場版名探偵コナンシリーズの第19作目のタイトルである。2015年4月18日公開で上映時間は112分。
興行収入は44.7億円でシリーズ最高記録を更新、3年連続で歴代最高興行収入を上回った。

【概要】

人類の至宝である名画「ひまわり」を巡るコナンとキッドの攻防戦が展開される。
また、本作は以前登場した『天空の難破船』の時とは違い、キッドがダークな側面を見せる怪盗として描かれており、犯行の手口もこれまでのやり方とはかなりかけ離れたものとなっている。

本来ならば作中で、作者の青山剛昌氏が考案した殺人事件が発生し、伏線や犯人の動機もより深く掘り下げられる予定だったが、尺の都合で1時間分ほどカットされている模様。
なお、オリジナルシーンが加筆されたノベライズ版では、ほんのわずかだがカットされたシーンの一部を確認できる。

例年通り映画の前日談となるエピソード『消えたムンクの叫び』がテレビ放送されており、次郎吉がアニメオリジナルエピソード初出演となった。


以下、ネタバレにご注意ください。


【ストーリー】

昨年、フランスのアルルの古民家で1枚の絵画が発見される。
発見されたのはフィンセント・ファン・ゴッホが描いた「ひまわり」の1枚で、その構図は戦火によって焼失したとされている「芦屋のひまわり」と同じであった。
その後に、ゴッホが他の作品で使われていたキャンバスと同じものが使われていた事が判明し、ゴッホが描いたものである事が証明されかなりの話題を呼んだ。

その絵画が、ニューヨークはマンハッタンにある「ワンワールドセンター」でオークションにかけられる事となり、史上最高額の3億ドルで大富豪である鈴木次郎吉が落札した。
次郎吉は以前から、世界に散らばる7枚の「ひまわり」を日本に集めて展覧会「日本に憧れたひまわり展」を開催しようという夢を抱いており、近々その展覧会を開催するとオークション終了後に大々的に宣言する。
ところがそこに怪盗キッドが乱入し会場は騒然となり、市警のチャーリー警部がキッドを追うも、キッドは何も盗まずに夜空へと消えた。
その光景をテレビ中継で見ていたコナンは「なぜ宝石しか狙わないキッドがひまわりを…」と疑問を抱く。

7月24日、次郎吉が落札した「ひまわり」は専用ジェット機「サンフラワージェット」で運ばれる事となり、そこには次郎吉、園子、「ひまわり」を守る通称「7人のサムライ」の他に何と新一の姿もあった。
ジェット機が羽田へ着こうとしたその時、爆弾でドアが吹き飛び、そのドアが当たってエンジンまでもが爆発してしまう。
それが原因でジェット機はコントロールを失い墜落の危機に瀕するが、何とか着陸に成功し事なきを得る。
しかしそのどさくさに紛れてキッドは「ひまわり」を盗み出していて、その後はそれをビルの屋上に隠して飛び去ってしまった。
コナンはこの「人の命を奪いかねない手口」に戸惑いを見せ、なぜ彼が「ひまわり」を狙うのか再度考えを巡らせた。

翌日、コナンは探偵団と一緒に「損保ジャパン日本興亜美術館」を訪れ、そこにある「5枚目のひまわり」を鑑賞する。
同じ頃、7人のサムライの1人である小五郎の元にキッドの予告状が届き、そこには「5枚目のひまわりを頂く」と書かれていた。
この予告を受け、7人のサムライと警視庁は厳重な警備体制を敷くが、それをあざ笑うかのようにキッドは「5枚目のひまわり」を盗み出す。
キッドはこの時に館長に「ひまわりを100億円で譲る」とのメッセージを残しており、その要求どおり次郎吉は100億円を用意してキッドを待ち受ける。
その後キッドとの取引場所は大混乱となるが何とか「5枚目のひまわり」の奪還に成功。
次郎吉はこれに喜び意気揚々と記者会見を開くも、コナンはこの出来すぎた展開が腑に落ちないでいた。

そしていよいよ「日本に憧れたひまわり展」が、完璧な警備システムが張り巡らされた難攻不落の要塞「レイクロック美術館」にて開催される。
客として招かれたコナンたちは順番に「ひまわり」を鑑賞していくが、その途中でキッドカードを発見。そこには今までにない難解な暗号が書き記されていた。
この暗号でキッドは何を伝えようとしているのか?コナンが頭を悩ます中、突然電気制御室が破壊され、直後に美術館で大規模な火災が発生する。
すぐに警備システムが作動し7枚の「ひまわり」は緊急保管庫まで運ばれるが、2枚目と5枚目の「ひまわり」はなぜか回収されずに残ったままだった。

コナンは「ひまわり」を守り抜く事ができるのか!?そして執拗に「ひまわり」を狙うキッドの真の目的とは……


【事件関係者】

  • チャーリー
CV:咲野俊介
ニューヨーク市警の警部。
7人のサムライの1人でアメリカでの「ひまわり」の警備責任者。アメリカ人だが日本語も堪能である。
警備中にキッドがニューヨークで姿を現したので、見過ごすわけにもいかず他の7人のサムライと共に来日する。

厳格な人物であり、キッドを確保するためなら射殺する事も厭わない性格*1
キッドが危険な手口で「ひまわり」を盗み出した際は、彼を「殺人鬼」「テロリスト」などと非難しており、園子から反感を買う*2
コナンの洞察力と俊敏性を高く評しており、彼の事を「キッドキラー」と呼んで一目置いている。

そのコナンからも信頼されていたが、密かに持ち込んでいた銃を所持していることを見抜いていた彼に「簡単に奪っていい命なんかこの世に1つもないんだからね」と忠告された際には、「覚えておこう。だが理想を追い求めると、いつか現実に裏切られるぞ」と返していた。
なお、ニューヨーク市警には他にこの人がいたが、面識があるかは不明。
また、キッドとの取引の前に公衆電話で『マーク』という人物に銃を用意するよう連絡していたが元米軍兵達の相談役の人と同一人物かは不明。

  • 宮台なつみ(みやだい -)
CV:榮倉奈々
絵画鑑定士。
7人のサムライの1人で歴史・鑑定担当学芸員。
絵画の歴史に詳しく、「ひまわり」に関する様々な学説の研究をしている。
キッドに偽物とすり替えられた可能性のある「5枚目のひまわり」を鑑定し、詳しく解析するために一旦それを工房で預からせてもらえないかと提言するが、直後にキッドが現れたためそれは出来なかった。
彼女の発案でレイクロック美術館の通路に造花の向日葵が植えられ、それに隠す形で防犯カメラが設置される。
ノベライズ版では探偵団に、1、2、5枚目の「ひまわり」は偽物だという説を教えようとして他の学芸員たちと討論を繰り広げる場面もあった。

  • 東幸二(あずま こうじ)
CV:磯部弘
絵画修復士。
7人のサムライの1人で修復担当学芸員。
2枚目の「ひまわり」を発見した本人。
なつみと協力して、ジェットエンジンのススで汚れた「ひまわり」の修復を行う。
双子の兄である幸一は画商をしており、兄弟で様々な絵画に携わってきた。
ノベライズ版で、なつみが5枚目の「ひまわり」にゴッホのサインがないのは贋作である証だと主張した際は、「サインがないのは自分が描いたと知っている人物にあげたかったから」だと反論した。

  • 圭子アンダーソン(けいこ -)
CV:榊原良子
プロデューサー。
7人のサムライの1人で企画担当学芸員。
学芸員のリーダー的存在で、他の女性メンバーとも気心知れる仲となっている。
キッドの動機に疑問を抱いており、久美子と一緒にキッドの真の目的を推理していた。
「ひまわり」を敬愛するなつみとも親しくしていたが、彼女がノベライズ版で探偵団に「5枚目のひまわり偽物説」を吹き込もうとした時は、「またそんな事を…」と話を遮った。

  • 石嶺泰三(いしみね たいぞう)
CV:宝亀克寿
チーター運送勤務。
7人のサムライの1人で運搬・運送学芸員。
運搬のプロフェッショナルであり、絵画の運搬を得意としている。
日本興亜美術館から安全な場所に「ひまわり」を運ぶ際には、運搬作業を迅速に行い次郎吉や中森からも高評価を得ていた。
また「ひまわり」をレイクロック美術館に運送する際は、ダミーのトラックを何台も手配する。
信用していないわけではないが、チーム以外の人間が運搬作業に関わる事は嫌っている。

  • 岸久美子(きし くみこ)
CV:ゆかな
演出家。
7人のサムライの1人で展示・演出担当学芸員。
容姿端麗な頭脳派として知られている。レイクロック美術館の展示システムの発案者でもある。
圭子にキッドの動機について意見を聞かれた時には、「展覧会が中止になればひまわりが解放されて盗むチャンスが生まれる」と返したが、それでも圭子の疑問は晴れないでいた。

  • 原口秀夫(はらぐち ひでお)
CV:柴田秀勝
損保ジャパン日本興亜美術館(現:SOMPO美術館)館長。
美術館に展示してあった「5枚目のひまわり」がキッドに狙われ、それを盗まれてしまう。
その後はキッドとの取引のために東都プラザホテルの個室で待機。
キッドの策にはまり取引のために用意した札束が外に散乱してしまうが、無事に「5枚目のひまわり」を取り戻す。
そしてお金を用意した次郎吉へのお礼として「5枚目のひまわり」を貸し出し、残りの5枚の「ひまわり」を持つ所有者の説得も引き受けた。
実在する人物「原口秀夫」館長がモデルとなっているキャラであり、本人の了承を得て名前や職業の改変無しで登場を果たす*3

  • ウメノ
CV:沢田敏子、皆口裕子(回想)
和装の老婦人。
「5枚目のひまわり」が日本興亜美術館に展示されて以来、毎日足繁く通いそれを鑑賞している。
しかし、本当に見たいのはこの「ひまわり」ではないらしく、灰原と会った時に思わずそう呟いた。
そんな灰原を見て彼女がコナンに興味があると感じ、「見つめているだけではいつか私のようにきっと後悔する…」と助言した。
後に原口の口ぞえで「日本に憧れたひまわり展」に招待され、「2枚目のひまわり」を見て涙ぐんでいた。


【レギュラー陣】

ご存知主人公。
いつもとは違うキッドの手口に戸惑いを見せる。
小五郎が7人のサムライの1人に選ばれた時は、灰原から黒澤明監督の映画『七人の侍』の登場人物に例えられ「頑張ってね菊千代さん」と呼ばれた。

ご存知平成のホームズ。
キッドと顔が似ている事を利用され、今回はキッドの変装のダシに使われまくる。
そのため今回は本物の新一の出番はなく、コナンが蝶ネクタイ型変声機で喋るのみ。

ご存知月下の奇術師。
なぜか今回は今までのスマートな手口とは違い、他人の命を危険にさらすような野蛮な方法で「ひまわり」を狙う。
何が彼をここまで変えてしまったのか?彼の事件に携わった関係者は頭を悩ますばかりだったが……?

ご存知蘭姉ちゃん。
墜落しそうになったジェット機に新一(本当はキッド)が乗っていると知り、悲痛な面持ちで彼の身を案じる。
「ひまわり」の脱出にも一役買い、運び出すためにレイクロック美術館の強固な壁を粉砕する。

ご存知迷探偵。
何と「ひまわり」を守るための7人のサムライに抜擢され、セキュリティ強化要員として奮起する。

ご存知哀ちゃん。
ウメノにコナンが好きだと思われたからか、エンディングではコナンに対し素っ気ない態度をとる。

ご存知天才発明家。
7枚の「ひまわり」を一目見たいという熱意が実を結んだのか、天文学的な競争率だったにもかかわらず、それを制して見事展覧会のチケットを手に入れた。しかし……

ご存知少年探偵団。
展覧会のチケット欲しさに阿笠とクイズ勝負をするが、元太がよく考えずに答えてしまったために負けてしまう。
しかし園子の計らいによって展覧会に行く事はできた。

ご存知蘭の親友。
次郎吉とオークションに参加し、その後の記者会見やワイドショーにも出演する。
新一がジェット機に乗っている事を、彼がキッドと知らずに蘭に教えた。

鈴木財閥の相談役。
今回の展覧会はかねてからの夢だったらしく、その夢を叶えるために世界中の「ひまわり」を日本に集める。
展覧会前日には、キッドからの(と言われた)贈り物を不用意に開けそうになり、危うく焼死しそうになる。

警視庁捜査二課の警部。
彼もまたキッドの手口の変わりように肩を落とし、「認めたくはないんだがな…」と残念そうに呟いていた。

警視庁捜査一課の警部殿。
中森の要請で関係者の経歴を調べ上げる。
犯人の身柄を引き取りに現れた後は、招待客の避難誘導を行った。
なお、今回は捜査一課の刑事は彼しか登場していない。

キッドの仲間である老人。
今回でコナンの正体を知っている人間の1人である事が判明。

  • 後藤善悟
怪盗キッドvs最強金庫』に登場していた次郎吉のボディガード。
中盤で不穏な動きを見せ、レイクロック美術館でウメノの姿を見た時はその頬を一筋の涙が伝った。


【その他の人物】

  • キャスト
CV:知英
レイクロック美術館で開催される「日本に憧れるひまわり展」の受付係。
キャストを演じた知英は、前作『異次元の狙撃手』にゲスト出演した元プロ野球選手の赤星憲広と同じく、応援ゲストとして出演している。


【余談】

本作以降、本編終了後に流れる次回作製作決定の予告で、次作に登場予定のキャラクターの台詞が付くようになった。本作ではジンが担当し、キールバーボンの登場も仄めかされたことにより、次作は黒の組織に関係する内容である事が公開1年前から示唆されていた。

2014年、長年にわたって『名探偵コナン』の音響監督だった浦上靖夫氏が亡くなった為、エンドロールで「In memory of 浦上靖夫」と追悼のメッセージがクレジットされている。

2014年1月27日に急死した永井一郎氏に代わり、富田耕生氏が鈴木次郎吉を演じているが、6年後の2020年9月27日に富田氏も死去した為、富田氏が演じる次郎吉が登場する劇場版は本作のみとなった。

長年、中森の声優を務めた石塚運昇氏は2018年8月13日に死去した為、石塚氏が演じる中森が登場する劇場版は本作が最後となり、2019年4月に公開された『紺青の拳』からは石井康嗣氏が中森を演じており、アニメ版も石井氏が担当。
2020年10月3日と10日に放送された『キッドvs高明 狙われた唇』で石井氏演じる中森と富田氏演じる次郎吉が登場したが、前述の通り富田氏は放送直前に死去した為、2代目中森と2代目次郎吉の共演はこのエピソードだけとなった。


追記・修正は7枚の「ひまわり」を鑑賞してからお願いします。



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最終更新:2024年03月12日 16:02

*1 この点に関しては『まじっく快斗』本編に登場したサブリナ公国のドロン刑事、公開から約1年後に放送された『県警の黒い闇』に登場したとある刑事もこの性格に近い。

*2 特に飛行機の犯行は根に持っており「飛行機爆破のテロリストだ」と批判する程。とはいえ、彼自身も一歩間違えば死ぬような事態だったので仕方ないどころか当然の事だが。

*3 ただし、コミカライズ版では名前が「原田秀夫」に変更されている。なお、美術館の名前は2020年7月に「SOMPO美術館」に名称が変更されたが、コミカライズ版での職業は公開当時と同じままである。