モツ(内臓肉)

登録日:2011/11/28 Mon 18:45:10
更新日:2025/05/26 Mon 12:20:26
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■モツとは

モツとは、日本における内臓肉の総称である。
呼び名は「臓物(ぞうもつ)」を略したもの。

獣肉食には欠かせないが、ヨーロッパなどの諸外国と違い、肉食の歴史が浅い日本では、部位ごとの呼び方を分けずにモツと呼称した。
ホルモンとも。「モツ」「ホルモン」は狭義には小腸のみを指す。

家畜を屠った後は余す所なく食べるか皮や骨などを道具に利用するかするのは全世界に共通のこと。世界中で内臓肉の利用法が存在する。
しかしニオイや脂のクセが強く、香味野菜や香辛料、味噌などの発酵調味料や酒で相殺したり、強火で茹でて煮汁を捨てたりといった特殊な調理法が必要になる。
下茹でが必須だったり汚れを徹底的に洗ったり、傷みが早いので捌いた直後に調理に供さないといけないなど正肉に比べて手間が多いので、下賤な食べ物と認知された時代や文化もあった。
日本はその典型で、家畜を屠る仕事は一段階下の身分の人々のものとされ、内臓肉はそういう人々の食べ物として蔑まれたりもした。

が、それは過去の話。正肉の部位よりも味わいが複雑で独特の香りや歯応えが楽しめ、癖になりやすく飽きにくい点は換えが利かない。
ステーキやベーコンだけが肉の食い方ではないのだ。
また、鉄分やビタミンも豊富な栄養食品でもある。

一方で、その性質上好き嫌いがかなりはっきり分かれやすいく、内臓というイメージや見た目から敬遠する人も存在する。
栄養があるから、食わず嫌い延いてはお残しは良くないからと食卓や給食で完食するよう強要されて却って余計嫌いになったという人もままいる模様。
網や一緒に調理した他の食材に味やにおいが移るのを嫌う者もいるため、複数人のバーベキューや焼き肉で焼く際は同卓の人に確認を取るのが無難。
また、新鮮な物であっても細菌や寄生虫などが潜む可能性が高いため、しっかりと加熱してから食べること

因みに「ホルモン」の由来は大阪弁で「捨てるもの」「捨てられるもの」を意味する「放るもん」が訛ったものとする説もあるが事実ではない。
生理物質のホルモンから、栄養豊富で活力を与えるものとして名付けられたとする説が有力。戦前は内臓肉に限らず、スッポン料理など広くスタミナ食を「ホルモン料理」と呼んでいたという。


■主な部位


◆心臓
ハツ、ハートと呼ばれる。コリコリした食感が楽しい。

◆腸
大腸(テッチャン、しま腸)や小腸(ホルモン)
小腸はプリプリの脂、大腸は歯応えがたまらない。
肉を食べ飽きたら是非とも。

◆胃
牛の4つある胃袋は、それぞれミノ、ハチノス、センマイ、ギアラと呼びわけられ、味わいも違う。
+ 部位ごとの特徴
  • ミノ(第一胃)
名前の由来は切り開いた時の見た目が蓑笠に似ていることから。
肉厚で弾力性があり、コリコリとした食感。クセも少なく食べやすい。
特に肉厚の部位を「上ミノ」、間に脂が挟まっているものを「ミノサンド」と呼んだりもする。

  • ハチノス(第二胃)
その名の通り、蜂の巣のような網目状の構造をしている。
弾力性が強く噛み応えのある食感と、あっさりした味わいが特徴。コラーゲンも豊富。
焼肉の他、イタリア料理のトリッパなど煮込み料理にも使われる。

  • センマイ(第三胃)
名称は「千枚」に由来し、無数のヒダが重なっている構造からこう呼ばれる。
見た目のグロさとは裏腹に脂が少なくあっさりした味わい。ただし発酵物が通る部位のため下処理は必須。
湯通しして細く切ったセンマイをポン酢や酢味噌などで食べる「センマイ刺し」も人気。

  • ギアラ(第四胃)
他の部位に比べ脂が多く、濃厚な味わいと噛み応えのある食感が特徴。
名前の由来については、米軍基地で働いていた人々が報酬(ギャラ)として貰っていたとするものや、偽腹(ぎばら)が訛ったとするものなど諸説ある。
赤みがかった見た目から「赤センマイ」と呼ばれることもある。

ちなみに生物学上「胃」に相当するのは第四胃のみで、他は食道が進化したものとされる。

特にミノとセンマイが人気。
豚の1つしかない胃袋はガツとして流通している。

◆肝臓
レバー。どの動物のものも美味しい。個別項目「レバー(食肉)」も参照。
モツの食感は「コリコリした」と表現されるものが多いが、レバーはかなり柔らかく歯応えが無いのが特徴的。
ビタミンA・Bや鉄分が非常に豊富で貧血気味な人や妊婦の栄養補給にもよく勧められる。
かつては日本でも生のレバ刺しとして食べられたが、今は食中毒の危険性から生食が法律で禁止されている。お品書きにレバ刺しが復活する日は果たして来るだろうか…。
ちなみに、シロクマのレバーはビタミンA過多で中毒になるので地元の猟師でも食べないのは有名な話。

◆舌
ご存知タン。
仙台名物として有名な牛タンやタンシチューの他、焼肉では豚タンも定番のメニュー。
昔は食べ方が分からなくて普通に捨てられていたらしい。実に勿体ない。

◆血管
大動脈等。
特に心臓に近い大動脈は「ハツモト」「コリコリ」等と呼ばれ、その名の通りのコリコリした食感とあっさりとした味わいが特徴。
下処理が面倒過ぎるor栄養分がありすぎて精がつきすぎるので、付いた名前がヨメナカセ。

◆横隔膜
肋骨側か背中側かによって「ハラミ」「サガリ」とも呼び分けられるが、
地域によって逆だったり呼び分けずに全部ハラミorサガリだったりするため呼称が少々面倒。
横隔膜は肺を動かす筋肉ということで本来は精肉に近い部位の筈だが、法律上は何故か内臓肉となっている。
つまり便宜上モツ扱いなだけで、実物は非常に食い応えのある赤身肉である。内蔵系特有の臭みや癖も全く無い。
屋台の焼肉丼で使われる部位などとしても人気。

◆卵巣
鶏の卵巣がキンカンの名で呼ばれる。甲府のモツ煮込みでお馴染み。ちゃんこ鍋の一つであるそっぷ炊きにも使われる。中には焼き鳥の具として使う店もある。


テールと呼ばれる牛の尾が定番。煮込みやスープで食べられる。

◆アキレス腱
長時間煮込むことで食べられるようになる。

◆腎臓
味噌漬けにしたりする。

■主な料理


◆モツ鍋
博多名物。たっぷりのモツと、キャベツ、ニラで食べる。
〆はちゃんぽん麺を煮込む。

◆煮込み
モツ鍋と違い、時間をかけてトロリと煮込む。
築地の名店、岸田屋のモツ煮込みは、ご飯にかけてがーっといただく。トローリ…。幸せになれる事間違いなし。
居酒屋のモツ煮込みは大抵かなりおいしいと思う。
モツは脂の強さと臭いの強さを打ち消すために長く煮込むのが定番で、近似の調理法は世界中で定番になっている。
スペインやフランスならニンニク・ハーブ、ワインやブランデーなど強い香味の調理法をたくさん持っているし、アメリカの中原の人々はトマトや豆の缶詰を活用し、韓国ならキムチとニラという鉄板を使う。

◆モツ焼き
かつては鶏の代用品だったが、現在は一品としての地位を得た。
こんがり焼けたモツは、ビールが進む逸品です。

刺身
レバ刺やセンマイ刺、スナギモ刺等。
トロトロトロリの、リキリキ力一杯!
ゴマ油とで食べるのはまさしく天下一品。
なお食中毒事故から、現在は姿を消している。

◆モツ炒め
韓国では定番の料理。

最後に、これらの内臓肉は、とても鮮度が落ちやすいので、早めに食べてしまおう。
くれぐれも熟成させようとか思わないように。




追記・修正は、自分の内臓を煮込んで食べたいほどのモツ狂いの方がお願いします。いい意味で。

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最終更新:2025年05月26日 12:20