METRO 2033

登録日:2017/04/06 (木) 20:49:18
更新日:2024/01/03 Wed 21:01:01
所要時間:約 20 分で読めます





2033年。核戦争から数十年後のモスクワ。
放射能に汚染された地上はモンスターたちの世界となり、
人々は、モスクワ地下鉄・メトロ各駅を生活の場所とした。
しかし、そこも安全ではなかった。

人間同士の争い、ネズミの襲撃、そしてモンスターの侵入。
日の射さない暗く、湿った空気がよどむトンネルの中、それでも人は生きる―
こんな未来から、物語は始まる。

―序文「物語の舞台」より―



2005年にロシアで刊行された、ドミトリー・グルホフスキー著のポストアポカリプス小説。
元はグルホフスキー氏のWEB小説であり、その数年後に改めて執筆された版を書籍化したもの。50万部のヒットを飛ばし、続編の『METRO2034』や、各作家のアンソロジー版も刊行されている(ちなみにグルホフスキー氏は様々なアンソロ展開を期待しているようだ)。
各国で翻訳・出版されており、日本版は小学館からハードカバーの上下巻として刊行されている。
日本のアニヲタにはこの小説を原作として製作されたPC、Xbox360、XboxOne、PS4ゲームの方が馴染み深いかもしれない。

マッドマックス2』しかり『北斗の拳』しかり『Fallout』しかり、核戦争後のポストアポカリプスの名作は数多く存在する。
これらは「どこかに希望の種が遺されている」「頭のネジが吹っ飛んだヒャッハーな活劇に振り切る」方面の面白さを求めたものが多いが、『METRO』がそれらと趣を異にするのは「地下鉄という閉鎖空間や人類の暗い未来といった息苦しい絶望」「平凡な少年の目を通して思想・哲学的な人生観」を描く点にある。
また、決して派手ではない、日本のホラー作品にも通じる「どこから襲われるか分からない静かな恐怖」「怨霊の様な霊的な恐怖」を楽しむこともできる。

本項では原作小説とゲーム版のそれぞれを紹介する。
両者の大筋は同じだが、ゲーム版は展開の都合上随所にオリジナル展開が挟まれている他、英語圏展開を考慮して一部の単語が英語読みに改められている。本項では「博覧会駅/エキシビジョン駅」のように「原作版/ゲーム版」の順で表記する。
また初稿執筆者のプレイ環境の都合で、ゲーム版の情報は2015年以降で最も入手しやすいXboxOne/PS4版『METRO REDUX』を基準にしている。これ以前の版を遊んだことのあるアニヲタ諸氏は、追記・修正するなり脳内補完して読み進めるなりしてほしい。




あらすじ


最終戦争から20余年。核シェルター機能が備えられていたモスクワメトロには、辛うじてメトロに逃げ込めた人々とその子孫たち、およそ4万人が生き残っていた。
超高濃度放射線に汚染され、核の冬が続く地表は人を襲う突然変異体(ミュータント)の楽園と化し、最早人類を受け付けない。
メトロの人々は各駅ごとに自治政府を作り、隣駅と同盟を結んで交易を行ったり、または対立する駅を襲撃して物資を奪ったり、あるいは共産主義思想やスラブ人優勢思想や宗教にかぶれて啓蒙を行ったり、はたまた何物からも見捨てられてトンネルを放浪したりと、地表の生活を縮小再生産して細々と延命していた。

そんな中カルジスカヤ=リジスカヤ線の北方にある「博覧会駅/エキシビジョン駅」は、昨今新種のミュータント、否新たな人類の危機に悩まされていた。
交流が途絶して久しい北の「植物園駅」方面から現れる「黒き者(チョルヌイ)/ダークワン」は、強靭な身体能力に加え、人の心を耐えがたい恐怖で襲い、洗脳、破壊してしまう力を持っていたのだ。
殺戮の天才である人類の兵器で殺し、拘束しても、歩みを止めず理解できないそいつらはまさにダーク、「闇」そのものであった。

ある日、メトロ中央部の「地下都市(ポリス)」から、状況確認のために一人の兵士が博覧会駅にやって来た。
博覧会駅に義父と共に暮らす青年・アルチョムは、ハンターと名乗った兵士と暫しの交流を持つ。やがてアルチョムの冒険欲、心根の強さを見抜いたハンターは、彼に自らの記章を預けてこう言った。

「もし俺が戻らなければ、何が何でもポリスに向かえ。ここで起こったことをすべて報告しろ」

植物園駅へのトンネルに入ったハンターは、翌日になっても戻ってこなかった。
アルチョムはメトロ全線の脅威となる黒き者(チョルヌイ)の存在をポリスに知らせ、救援を乞うべく、南の駅に出発するキャラバンの護衛隊に志願した。
胡散臭い商人、さすらいの哲学者、障害を持つ孫とその保護者の祖父、滅びゆく駅、謎の二人組、地底の宗教集団、そしてメトロ全体を取り巻く何者かの意志。過酷な旅の中でアルチョムは様々な出来事を経験し、自らの生きる意味を考えていく。


メトロ


現実のモスクワ地下鉄では「メトロ2号線」と呼ばれる核シェルターを兼ねた政府の秘密路線が存在すると噂されるが、『METRO』では通常の路線にも核シェルター機能が備わっていた設定になっている。
機能性と野暮ったさが絶妙に混ざり合った日本の地下鉄と異なり、いかにもな社会主義リアリズムに傾倒したモスクワメトロは、ひとつの駅がかなり大きく、さながら宮殿の様に装飾されている。小さい駅しか利用したことがない人には想像しづらいかもしれないが、やろうと思えば結構多くの人が住める。

モスクワ核攻撃の際にはおよそ20万人が逃げ込み、避難指揮を執った軍関係者の元で管理政府が作られていたが、避難生活の長期化と物資欠乏が進行するにつれて軍は強行政策が横行し権威は失墜。後に各駅のメトロ職員が中心となり、無数の都市国家が乱立する状態になっていった。過酷な生活や人類間での新たな戦闘の余波で、2033年時点ではおよそ4万人程度にまで人口が減少している。
かつては端から端まで電車で1時間で移動できたメトロは、駅間の政策・抗争によって主要トンネルの往来が制限され、迂回線や保線通路も全く手つかずの状態になっていることで、隣駅に行くのですら数時間、下手をすれば数日かかる。

人々の生命線は空気清浄装置・浄水装置・数トンの備蓄ビタミン剤。
主食は栽培しているキノコや苔、地上から奇跡的に回収してきた先祖を元にした養殖豚や鶏、地下水脈で釣った魚。
メトロ内ではどうしても工面できないエンジンや燃料、その他スクラップは「ストーカー」と呼ばれる特攻隊員(命知らず)が地上から回収し、市場に並ぶ。ストーカーは多くの市民から尊敬される危険な職業である。
トンネルに残る車両や、区間扉はほとんどが生活物資やバリケード用としてばらされ、現存するものはほぼない。駅間の移動は基本的に徒歩や手押しトロッコで、車やバイクのエンジンを積んだレールカーは希少品。
電気が死に、無線装置は貴重、有線電話も極々狭い区間しかないため、壊滅した駅の話に尾びれが付いた「メトロ2号線の影の支配者」だの「食人族」だの「悪魔崇拝者」だのといった噂が絶えない。

統一通貨は紙クズと化した紙幣に代わって、旧軍の軍用弾薬が用いられている。例えば豚の串焼肉(シャシィルク)一皿が大体弾薬(たま)3発。

各駅ごとの貧富の差は非常に激しい。
複数の路線の乗換駅や環状線は通行税、養殖環境を確保している駅は貿易、地上から持ちこまれた工作機械がある駅は手間賃と、それぞれの手段で繁栄している。
一方そうした強みの無い駅は、日々の食料は愚か、寝床や照明にすら事欠く。ミュータントの侵入や浸水・陥没等で住人が逃げ出したり、物理的に壊滅したりして放棄、音信不通になった無人駅もある。

長年メトロで暮らした人々の目は地下生活に慣れ、うかつに強い光を見ると目が数分間潰れてしまうまでになっている。
メトロ生まれの子供は非常に肌が白く、地上が近い駅では被爆による遺伝的障碍児が生まれることも多い。
まともな教材や、そもそも落ち着いて勉強を教える環境も余裕もないため、知識や文化はどんどん失われていく。
人類がかつての栄光を取り戻すのは、最早絶望的といってもいい。


亡霊



人類は、天国も、地獄も破壊してしまった。我々が生きるこの奇妙な世界では、死後の魂が同じ場所にとどまってしまう。
わかるか? 死んでも、疲れ果てた魂が生まれ変わることはない。魂が安らげる場所はない。
生前と同じ世界にとどまるしかないんだ。つまり、地下鉄の世界に。

メトロには、現世と来世が共存している。ここはエデンの園であり、地獄でもある。
私も、お前さんも、死者の魂と共に生活している。死者の魂が、がっちりと輪になって、我々を取り囲んでいるのだ。
銃殺されたもの、化け物に食われたもの、焼け死んだ者……その他、ありとあらゆる非業の死を遂げた人々の魂だ。
それらがどこに消えるのか、消えないなら存在を感じないのは何故か、
暗闇に光る重さの無い冷たい視線を感じないのは何故なのか、私はずっと考えてきた。

―第六章『強者の権利』より―


死のうが生きようが全方位に救いのないのが『METRO』の世界観。核戦争によって荒廃を極めたこの世では、超常現象が頻繁に起きる。
声を吸い込んでしまう闇、人が行方不明になるトンネル、突然現れる自然発火球体(アノマリー)……。
地上には出られず、さりとて地下にいても未来はない。全てが破壊された世界の悲しみを伝えてくる。


勢力

地下都市(ポリス)/ポリス駅
環状線の中心近く、4路線の乗換駅(アレクサンドロフスキー庭園駅、ボロヴィツカヤ駅、レーニン図書館駅、アルバツカヤ駅)と周辺トンネルの総称。
都市の単語がそのまま都市名になっているのは「他に現存していない最後の都市」だから。
交通の要所ということもあって非常に繁栄し、メトロ全住民の間で半場伝説と化している。ゲームでは中立警備隊「レンジャー」の本部もここに存在する。
戦前の大学関係者の多くが集まったこと、直上にロシア国立図書館が位置していることもあり、他の駅ではごく潰し扱いされるインテリが活躍する唯一の駅。今や地球で唯一「文化」を保持する場所となっている。
そのため暗黙の中立地帯でもあり、時に各勢力どうしの対談の地にもなっている。
原作ではインドのカースト制度から引用した社会的区分が導入されている。「パラモン」が文民、「クシャトリア」が旧軍人(レンジャー)、「ヴァイシャ」が平民(生産者)。「スードラ(奴隷)」は流石に存在しない。
ゲーム版では描かれていないが、やはりというかパラモンとクシャトリヤはかつて戦争状態にあった程仲が悪く実は一枚岩ではない。
またこの地を選んだことに別の理由が隠されている……。

●ハンザ同盟:環状線
メトロ中央部を回り、いくつもの路線との乗換駅を有する環状線は物流の要として繁栄する。
必然的に環状線の各駅は防衛のために手を取り合い、メトロ最大の勢力を築き上げた。
無秩序な難民流入やスパイの侵入を防ぐため、環状線駅はほぼ封鎖状態となり(多路線の乗換駅との間にも歩哨が立つ)、厳密なパスポート検査をパスしないと入線すら出来ないやや排他的な政策が目立つ。
だがその分気象センターを始めとする設備や制度を維持できる経済も確立している。また他駅を全く助けないわけではなく必要とあれば協力もする。
経済的に豊かだけあり一大勢力の一つである共産主義とも渡り合える軍事力ももつ。
さらに実はある重大な秘密も隠し続けていることが後に分かる……。

●赤の路線:ソコリニキ線
路線図が赤線で記され、赤い村(クラスノセリスカヤ)駅、赤い門(クラスヌィエ・ヴォロータ)駅、共産主義青年同盟(コムソールスカヤ)駅、レーニン図書館駅、レーニンが丘駅等、駅名もやたら赤いソコリニキ線にはソビエト時代を懐かしむ人々が自然と集まり、やがて全路線の赤化を唱えるようになった。が、現在は停滞している。
ハンザとの1年半にもわたる戦争を経て、現在は不可侵条約を結び、商売上のパートナーとしてなぁなぁの関係を続けている。一方で第四帝国とは激しく対立している。
スパイへの警戒はハンザ以上に厳しく、勢力圏内では思想統制も激しいため、他路線の人々からは嫌われている。

●第四帝国(ファシスト)
複数路線の乗換駅であるトヴェルスカヤ駅、プーシキンスカヤ駅、チェーホフスカヤ駅に突如として勃興した、スラブ系民族至上主義を掲げる全体主義国家。
あからさまにドイツ第三帝国に影響されており、言葉の意味も発音も理解せずにドイツ語を使い、他路線の人々からも「ナチ共」と呼ばれ嫌悪されている。
コーカサス人やイスラーム系の人種を黒き者(チョルヌイ)と呼び、一方的にミュータント認定して虐殺している。
第二次大戦の宿敵であることから共産主義者達とは激しく対立している。

物語中の主要駅

●国民経済達成博覧会駅/エキシビジョン駅
主人公アルチョムが暮らす、人口200人ほどの平均的な地方駅。地上の畜産パビリオンから連れ帰った豚の養殖が始まった最初の土地とも言われ、豚の串焼肉(シャシィルク)と独自配合のキノコ茶が名産品になっている。ポリスほどではないが時計の管理やネズミの駆除といった駅の適切な管理が行き届いており、それなりの蔵書があり学校が開かれている数少ない恵まれた駅。
南のアレクセーエフスカヤ駅、リジスカヤ駅/リガ駅とは同盟を結び、ハンザ方面への防備を任せている。その2駅にとって、この駅は黒き者(チョルヌイ)/ダークワンの進行を食い止める最後の砦でもある。

●チミリャゼフスカヤ駅
原作のみに登場。セルポフスカヤ=チミリャゼフスカヤ線の最北端。
アルチョムが幼少期に暮らしていたが、大発生したネズミに襲撃され、アルチョムを含めてわずか5名の生存者を残して壊滅、無人駅となった。

●カース駅
ゲームのみに登場。「呪駅」の名の如く、度重なるミュータントの襲撃で荒廃し、滅亡寸前となっている。
戦いに巻き込まれたアルチョムは、ミュータントの侵入口を封鎖するため、爆薬片手にトンネルを駆け回る羽目になる。

●クズネツキー・モスト駅/アーモリー駅
タガンスカヤ=クラスノプレスネンスカヤ線に位置する、多数の工作機械を有する工廠(アーモリー)駅。銃器類の製造・メンテナンスを一手に担う。
ここでしか直せない機械が多く、その重要性故に特定の勢力に与さず独立状態を保ってはいるが、赤い路線のルビャンカ駅との乗換駅ということもあって、共産主義者が圧力をかけてきている。

●キタイ・ゴーロド駅
原作のみに登場。キタイ・ゴーロドは民族戦争が作ったパンドラの箱。 質を問わなきゃ何でもある。コーヒーが苦いかはわからない。
スラブ人の6号線側(カルジスカヤ=リジスカヤ線)と、コーカサス人の7号線側(タガンスカヤ=クラスノプレスネンスカヤ線)に2分されている。金さえ払えば何でも手に入る無法地帯。

●ホール駅
ゲームのみに登場。「穴駅」の名の通り、ミュータントの侵入口が至る所に空けられてしまっている。
「地下の子供達」と称する自警団たちが、女子供を逃がすため最後の防衛線を張っているが……。

●勝利公園駅
原作のみに登場。アルバツカヤ=ポクロフスカヤ線の西の最果て。
詳細は不明だが、隣駅キエフスカヤ駅とのいざこざの果てにトンネルを爆破され、完全に孤立してしまっている。
孤立した駅を待つのは「死」のみ。しかし……?



主要登場人物


●アルチョム
この物語の主人公。博覧会駅で義父と暮らす20代(ゲームでは20歳)の青年。原作上巻のカバーに描かれているのが唯一の外見描写。
赤ん坊の頃に母親に連れられてメトロに避難してきた。母親とはチミリャゼフスカヤ駅の災難の際に死に別れ、今では顔を思い出すことも出来ない。
外へのあこがれは強いが、殆ど博覧会駅から出たことがないこともあって世間知らず。ふとした言葉に自尊心をくすぐられて気分を害したり、何かあるとすぐに「この人は頭がおかしいのでは」と考えたり、自分に迷惑をかけた障碍児が蹴り倒されても無視するなど、いろいろとひどい。
一方、故郷を救うため必死にポリスを目指したり、嫌っていた人物であっても何とか助けようとしたり、障碍児の事情を知った後には、彼を攻撃する者に命がけで反撃しようとするなど、いっぱしの正義感も持ち合わせている。
とかく状況に流されがちだが、よく言えばごくごく普通の感性を持った等身大の若者である。
日頃は駅の雑務やトンネル警備をしているため、一通りの戦闘術を身につけている。また、トンネル内で起こる様々な精神干渉に一種の耐性を何故か持っている。
幼少期のトラウマ故、ネズミを心底嫌っており、食べるなんて言語道断と考える程である。
あとかなりの本マニア。もし平和になったら間違いなく図書館で本の虫になるであろうぐらいの本好き。
ゲームでは主人公らしいがややポエマーな好青年になった他、黒き者(チョルヌイ)/ダークワンの精神攻撃に耐えられる数少ない人間。

●アレクセイ/ホスイ
博覧会駅の責任者でありアルチョムの義父の父。
ゲーム版では語られないが赤ん坊のアルチョムを母から受け取り救出した人でもある。
現在は駅の管理に精を出しているが、かつては「トンネルの声」なる独自の生存理論を持つほど危険な旅をこなしたハンターに並ぶ猛者だった。実際駅にある本はアレクセイが地上から帰ってきた際に持ってきた物である。
現在ではダークワンによる精神攻撃や駅の苦境により、かつての面影を感じさせぬほど精神がまいっている。
だが例え駅が封鎖されようと最後までダークワンに立ち向かう、偉大な責任者でもあり、立派な父である。
自分の人生の後悔から、アルチョムには駅内に留まる平穏無事な生活を望んでいるが、
皮肉にもアレクセイがアルチョムのために持ち帰った本によって、かつての自分のような外の世界を見る冒険家になっていく。

●ハンター
ポリスからやってきたストーカー(ゲームではポリスのレンジャー)。「ハンター」は階級名みたいなもので、本名は不明。
アルチョムの義父の友人でもあり、ゲームでは以前にアルチョムと出会っている。アルチョムが黒き者(チョルヌイ)/ダークワンの影響を受けていないことを信じ、彼に言伝を託した後、行方不明となった。
原作ではわざわざ他人がハンターはロシア語ではないと発言したり、カウボーイと呼ばれる等、開拓精神と精神の強さを持つ。
また決して勇猛果敢の男では収まらずアルチョムの隠し事を見抜いたり、ダークワンの精神攻撃をメッセージと受け取る*1等、優れた洞察力も持つ。
変人でハンターとは相容れそうもないハンですら「偉大な人物」と言わしめる程であった。
「敵なら殺す」というシンプルな割り切りで世界を見ており、例え恐怖を感じいかなる苦境に追い込まれても決して諦めない。アルチョムと共に過ごした時間は短かったが、その生き様はアルチョムの大きな支えとなる。
だがその生き様故か、はたまたダークワンからのメッセージが原因か、後に……。

●ユージーン
ゲームのみに登場。リガ駅へ向かうキャラバンに加わったアルチョムの友人。
一同を助けたアルチョムに自分のショットガンを譲ってくれる気のいいやつ。
だが後に死亡した事がわかる

●ブルボン
スワレフスカヤ駅への秘密のルートを辿ろうとしている謎の旅人。キャラバンを守ったアルチョムの噂を聞きつけて同行を依頼し、土地勘がないアルチョムはそれに乗る。
ゲームでは頻繁に詐欺師と罵倒されている辺り、後ろ暗い経歴があるようだ。ゲームではチュートリアルの一環として上から目線で色々な知識を教えてくれるありがたい人、むしろいてほしい人だが、特にそんなことのない原作ではアルチョムに「こいつ殴りてぇ」とウザがられる。
後に自身が発した「ネズミを恐れることはない。恐ろしいのは、ネズミが全く姿を見せない時だ。」というMETRO世界の鉄則をアルチョムにいやという程教えることになる……。

●ハン/カーン
窮地に陥ったアルチョムを助けた初老の男性。トンネルの謎を追い求める探究者であり、トンネルの怪現象から生き延びる術をアルチョムに教える。未来を言い当てる預言者でもあり、優れた交渉人でもあり、神出鬼没のベテランストーカーでもある。
ゲームでは常識の通用しないトンネルに適合したどこか神秘性を感じさせる素敵な賢者、という感じだが。
原作では「私はチンギス・ハンの最後の生まれ変わり」と自称し、まさに運命とも言うべき行動を起こした、と思いきや悲しみに暮れる初老の老人になったり、と思えば必要なら非情な手段も躊躇いなく選ぶ、と思ったらハイエナを一瞥する狼になり、と思うとアルチョムには見えない物が見えたと言いだして大真面目に焦燥しはじめたり完全に矛盾した発言をしたりと
「掴みどころがない」とか「賢者」を通り越して「キチ○イ」に片足を突っ込んだ人。
覚悟した時は「目に炎が宿る」とすら評されるおっかない状態で、アルチョムは感謝しつつも内心引いており、時にはハンから全力で逃げようとすることさえある。ぶっちゃけ「闇」より怖い。幸い言葉は通じるし、ハンターの願いを聞き入れた味方(?)なのが救い。
常識外れの存在とあり「生涯闇を見つめる勇気と忍耐のある者が、そこに最初の光を見出す」という『METRO』屈指の名言を残す。この言葉は特にゲームでクローズアップされ、ハンターの意志と並んでアルチョムの支えになる。

●アンドリュー
ゲームのみに登場。アーモリー駅で鍛冶屋を営む傍ら、反共産勢力に手を貸している。
カーンの友人でもあり、彼の仲介を受けてアルチョムを助ける。

●ミハイル・ポルフィリェヴィチとワーニェチカ
原作のみに登場。持病を抱えた老人と、感情の自省が効かない孫。キタイ・ゴーロド駅付近でアルチョムと出会い、成り行きで途中まで同行する。
当初はワーニェチカを嫌い、足の遅いミハイル・ポルフィリェヴィチにイラつくアルチョムだったが、最終戦争前の老人の話や、彼らが辿ってきた辛い歩みに共感し、旅の友と考えていく。

●エヴゲニー・ドミトリェヴィチとセルゲイ・アンドレーヴィチ
原作のみに登場。無人駅の筈のポリャンカ駅で屯している2人の中年男性。戦前は高層アパートで車の整備に燃えていたらしい。
ハンとは違った意味で浮世離れしており、哲学的な会話を繰り広げる。彼らの会話もまた、アルチョムにとって大きな指針となった。

●ダニーラ
原作とゲームでまるで設定が違う人。原作ではポリスのパラモンの仕事を請け負う青年。アルチョムとは年が近く、すぐに友人になる。
一方ゲームではミラーの部下であるレンジャーの1人。原作との共通点はアルチョムと共に行動するくらい。

●司書
モスクワ中央図書館に住みついているミュータント。文献を探すストーカーが幾度も殺されたことで、ポリス住人最大の恐怖となっている。
パラモン達は自分達をこう呼ばれることを酷く嫌う。

●メリニク/ミラー
ポリスで有力ストーカー部隊を束ねる(ゲームではレンジャーのボス)50代の豪傑。元は軍の大佐だったらしい。地味に娘持ち。
原作ではハンターのような冷徹な行動力を持つ一方で、さりげないが、最高の心遣いをアルチョムにするなどまさに軍人の鏡。
そのため部下からの信頼も厚い。
一方やや中間職的な一面を持ち、相反する多数の勢力を納得させるのに苦労させられる一面も。
ゲーム版ではポリスの治安維持業務の傍ら、最終戦争前の遺産の捜索を続けている。ゲームではそれらを使って強いロシアを取り戻そうとする危なげない長台詞をぶつ。専用のガウスガンを振りまわして突撃する猛者だが、高難易度ではあっさり返り討ちにされてプレイヤーを苛立たせる。
その後、力に固執せずに消滅させようとする等、軍人の檻を証明したように見えたが……。

●ウリマン/ウルマン
メリニク/ミラーの部下であるストーカー(レンジャー)。原作とゲームで大きく異なる人その1。
アルチョムと年が近いが、過酷なストーカー生活の中でハンターと同じような物の考え方に染まっている。多面的なプリズムを通して物事を見るアルチョムに対し、シンプルな狙撃スコープ越しの視点から自分の人生観を語り、アルチョムを大いに勇気付けた。
ゲームではミラーの良き部下であり皮肉屋であり、頻繁に軽口を叩きまくるやかましい奴になった。
でもなんだかんだ助けてくれるいい奴であったのだが……。

●パーヴェル/パヴェル
ウリマン/ウルマンの相棒のストーカー(レンジャー)。原作とゲームで大きく異なる人その2。
原作では消防車を改造した装甲車を操るドライバー。一方ゲームではウルマンと共にファシストの軍勢を襲撃し、アルチョムの道案内を担当する。
歴戦の兵士の勇気と大根役者の演技力を兼ね備える男。

●ウラジミール
ゲームのみに登場。地上のスパルタ前線基地にて武器弾薬の管理を行う老人。元は軍のミサイル士官であり、その経験から旧軍の施設にも詳しい。
アルチョムにただで銃器や弾を分けてくれるありがたい人。


ゲーム版について


2010年に発売されたFPS。このご時世に珍しく対戦プレイを搭載しておらず、完全な一人用ゲームになっている。
思想・哲学よりの原作を、雰囲気はそのままに見事なアレンジを加えてアクションゲームに仕上げている。
ちなみに制作した4Aゲームスは『S.T.A.L.K.E.R.』のスタッフが立ち上げた会社である。

ハーフライフ』や『コール・オブ・デューティー』シングルプレイの様な一本道ゲームで、世界観を楽しむことに力が注がれている。体力や残弾ゲージの様なゲーム的情報は極力排除、扱いづらい銃器や定期的な充電必須の照明機器、限りのある銃弾やガスマスクフィルターなど、あえて不便さを盛り込む(しかし不快なほどではない)ことで緊張感を保っている。
特に各駅におけるモブキャラクターの会話には異様に力が入っている。世間話という形で原作で語られた要素を補完してくれるので、ついつい聞きたくなること請け合い。
グラフィックや音響も素晴らしい。ヘッドフォンをつけてプレイした日には、ガスマスクをつけたアルチョムの苦しそうな息遣いも合わせて、あたかもゲームに入り込んだ錯覚に陥る。モブ声優の使いまわしに目をつぶれば、日本語ローカライズも完璧。

快適なスポーツ系FPSを好む人にはストレスがたまるし、敵AIの動きがバカなのでガチガチのサバイバルホラーファンには物足りないところがある。リソース管理の難しさや、敵の目を(一人称視点で)避けていくステルス要素から、FPS初心者にも厳しい。
しかし、そのサバイバル要素から来る心理的な焦りや、暗いトンネルの奥から迫りくるミュータントの恐怖、何より俊逸なストーリーテリングや臨場感あふれる演出で、ゲームへの没入感は高い。歯ごたえのあるゲームに挑戦したい人や、ちょっぴりホラーなゲームを遊びたい人、作り込まれた世界観のゲームを探している人なら、手に取ってみる価値は十分以上にある。

ようは小説をそのままゲームに落とし込むことに成功した作品である。

いまから遊ぶのであればXboxOne/PS4版『METRO REDUX』がオススメ。続編の『METRO Last Light』やPC版のDLC要素がセットになり、画質リマスターと60fps化が行われている。PC/360版では一部のシーンが第三者視点になっていたが、『リダックス』では完全1人称視点になり、臨場感が更に上がっている。
Steamに登録しているユーザーならば旧版を購入するのもよいだろう。

後にオープンサンドボックスを採用した直系の続編「METRO EXODUS」も登場。
新たな物語の核心が始まる他、過去作の続編として立派に胸を張れる出来栄えになっている。

システムもろもろ


武器

落ちている物を拾ったり、倒した敵の死体から分捕ることが出来る。スコープやサイレンサーなどのカスタムパーツ付きのモデルも店売りされている。
『リダックス』では店売りモデルは全て裸の状態になり、所持している武器に応じてカスタムパーツを別途購入する方式になった。

余り重い武器ばかり持つと移動速度が低下する。ミュータント戦では走り回って距離を取る戦法が有効なので注意したい。

なにより大手企業ばりの職人芸光る凝ったモデルやモーションは見物。
リソースが厳しく限られる中、ようやく掴んだ最高にイカス銃をじっくり眺めるのも一興である。



どの敵にも共通するのは「頭を狙え!」「暗殺しろ!」
特に倒した後に弾を分捕れる人間とは違い、ミュータントは戦利品を落とさない。ヘッドショットを狙って一撃殺を狙っていくなりナイフで暗殺することが重要だ。
また、メタルギアシリーズよろしく敵に発見されると一斉に攻撃されるため、見つかる前に出来るだけ数を減らしたい。
ちなみにリダックスではナイフが超強化されている。どれぐらい強いのかというと発見されてなければ重装兵ですらナイフ一本で死ぬ
視認されてなければどんな状態の敵兵も暗殺&気絶ができるすぐれた体術もあわさり、暗殺術に関してはアサシンクリードもびっくりの性能の高さである。








追記修正は、闇を見続ける勇気と忍耐と覚悟を持つ方にお願いします。


この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 小説
  • 外国小説
  • METRO
  • METRO_2033
  • メトロ
  • ロシア
  • ドミトリー・グルホフスキー
  • WEB小説
  • 2033年
  • 核戦争
  • てらそままさき
  • 銃弾
  • ガスマスク
  • 隠れた名作
  • 世紀末
  • 小説
  • 神ゲー
  • マッドマックス
  • Fallout
  • 近未来
  • FPS
  • ポストアポカリプス
  • 地下鉄
  • モスクワ
  • PC
  • Xbox360
  • XboxOne
  • PS4
  • ホラー
  • サバイバル
  • ゲーム
  • 海外文学
  • 予言書
  • モスクワ2160
  • 民間防衛
  • スノーピアサー

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年01月03日 21:01

*1 正確には降伏勧告だと踏んだ様子