ミダス/カオスレル(機動戦士クロスボーン・ガンダム)

登録日:2018-02-16 00:53:07 (Fri)
更新日:2025/01/19 Sun 17:25:59
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ミダス及びカオスレルは、『機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト』に登場するモビルスーツ(MS)及びモビルアーマー(MA)。


ミダス



こいつの前では全てが跪く


形式番号:EZM-S01
所属:エル・ザンスカール
パイロット:キゾ
ジェネレーター出力:7480kw

『機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト』に登場するモビルスーツであり、同作のラスボス機でもある。
名前の由来はギリシャ神話に登場する、触れるもの全てを金に変える能力を持った王の『ミダース』から。
名前は知らなくても「王様の耳はロバの耳」という単語を聞けばピンと来る人も多いだろう。キュベレの養子であったという説もある。


概要

エル・ザンスカールの王であるキゾのために作られた専用機であり、彼の趣味を反映して全身金ぴかとなっている。
一般的なMSが程度の差はあれど角ばったラインをしているのに対し、本機は全体的に丸みを帯びたラインとなっており、人間に近いシルエットをしている。
頭部や肩部は古代の為政者の様に飾ったデザインとなっており、特に扇形の飾りを付けたような頭部は一際特徴的である。
が、その頭部にはザンスカール系の猫目カメラアイ2つと、その下に木星系モノアイ、計3つの目が備わっており、
顔だけを見ると、とてもじゃないがヒトのそれとは言い難い構造になっている。
顎から伸びたパイプや、よく見るとバランスの悪い体型なども相まって、異星人のように見えるかもしれない。

本機は宇宙世紀150年代に存在するほぼ全ての機体を凌駕する7480kwという超出力を誇っており、
これを超えることが出来るのは、ジェネレーターを2基搭載したザンネック(5570kw×2)とV2ガンダム(7510kw)くらいである*1
この高出力を前提とした武装も非常に強力で、ミダス単体ですらかなりのスペックを誇っているのだが、
更にキゾの操縦技術、そして本機の目玉である『ミダス・タッチ・フラッシュ』(後述)が組み合わさることで、
全てを跪かせる王に相応しい機体となっている。

本機にはザンスカールの技術だけではなく、交流のあった木星の技術も組み込まれており、
木星系MSに多く見られる大腿部のスラスターや、先述の木星系モノアイなど、外観からも木星の技術が使われているのが見て取れる。
パイロットのキゾもまた、木星とザンスカールという二つのルーツを持った存在であり、正しく彼のための機体と言えよう。
尤も、キゾ本人は木星(というか)の事を嫌っているのだが。


武装

・帝王の錫杖(カイザー・スタッフ)
ミダス専用の状の手持ち武器。頭部はビーム発信機付きの円盤となっており遠近両方に対応可能。
近距離ではビームの刃を放射状に形成、基部をピザカッターの様に回転させ刃を連続して当て続ける事で高い切断力を実現する。
ちなみに、木星製MSのデスフィズと同系統の技術であり、両国の技術交流による収斂から来るものと推測されている。
遠距離では中間部分から折れるように変形、同じく基部を回転させビームを連射して攻撃できる。
上述の通り、この時代でトップクラスの出力を誇るミダスが振るうこともあり、その威力はバスターモードのクジャクとまともにぶつかり合える程。

・ビーム・クロー
ミダスの手にある三本の爪から形成されるビーム刃。
帝王の錫杖と同様、ミダス自体の高出力に物を言わせ、この時代の標準的なビームシールドを安々と切り裂ける。

・ビーム・マント
肩部や椀部の発生器から展開される、マント状のビームシールド。
例によってこの装備も高出力であり、スマッシャーモードのクジャクの一斉射をギリギリ防げるほどの防御力を持つ。

・耐ビームコーティング
ビームに対する備えとして金色の塗装に付与されている。
とはいえどちらかと言うとキゾの趣味による意匠という面が大きく、
そもそも実際の戦闘では相手のビームはほとんどビームマントで遮断していたため、活かされたかは疑問。

ミダス・タッチ・フラッシュ
ミダスの最大の特徴となる武装で、おそらくその機体名の由来となったと思われるもの。
扇状の頭部が展開し、中にある目玉のような模様から光が放出されると、その光を浴びたMSは動作を停止する。
別世界の海賊が持っている目くらましとは違い、本当にMSが動かなくなってしまう驚異的な武装であり、
一度この光を浴びたら最後、基本的にコクピットのパイロットが何をしようとMSは動かなくなる。
そして、この武装で動けなくなったMSを、カオスレルのギムレット・ビット(後述)で死者の軍団へと変貌させる。

+ その仕組み
その正体は、MSのコンピュータに感染するコンピュータウィルスである。

放出された光は単なるフラッシュではなく複雑に明滅しており、それをMSのカメラで読み取ると、
カメラを通じてウィルスのデータがOSに侵入(感染)してしまい、汚染されたMSは停止信号を受けていると誤認して動かなくなる。
この仕組みを解明したフォントは、これを「カメラで見ただけでデータを読み込んでしまう」QRコードに例えている*2
有効なのは主にMS*3で、宇宙戦闘機や戦艦に効果はない。
これは、元々存在するMSの駆動系プログラムの脆弱性(バグ)を利用する形となっている為。

過去のMSを研究している中で駆動系プログラムの脆弱性とそれを利用したこのシステムを発見したことで、キゾの野望が動き出す引き金となった。

なお、メインカメラだけではなく各種センサーにまで干渉して誤認させるシステムのようで、カーティスのように視覚センサーを用いていなかったり、
逆にジャックがクセでやっている、メインカメラ以外のセンサーを切るという特殊な運用をしているMSに対しては、
ウィルスが不完全な形…言い換えれば特に意味のないデータとしてOSに侵入・処理されるため、停止しない。
しかし、ウィルスのデータ量が膨大なため、不完全な形であっても侵入してきたそれを処理する影響でOSは処理落ちを起こすことになり、
停止こそさせられなくとも、その動作速度を多少低下させる程度の効果は与えられる。

MSを主戦力とする宇宙世紀においては反則としか言いようのない武装だが、前述の通り戦艦や宇宙戦闘機・フライトシステムには効かない。
劇中では、MSは停止したものの、フライトシステムであるアインラッド側に動力を切り替えて束縛を逃れた例もある。
他にも「可変機がMS以外の形状に変形」「Vガンダムの手足を破壊して強制的にコアファイター化」といった逃げ道もあるため完璧ではない。
また、動けずともハッチの開閉程度は出来るため、コクピットから脱出する余裕はある。

コンピュータウィルスの運用には対策となるワクチンソフトも必要なのだが、この停止ウィルスに関してはそれが開発出来ておらず、
それ以外の対策をしなければ、運用している側のミダスとカオスレルまでウィルスの影響を受けることになる。
修繕しようとする場合、OS自体のアンインストールと再インストール作業が必要となるが、そんなことを戦場でする暇はない。

そのため、ミダスとカオスレルは2種類のセンサー、すなわちザンスカール系と木星系のカメラアイを明滅に合わせて高速で切り替え、
光に乗せられた分割ウィルスを各カメラで別々の情報として処理する事で、機体への影響を防いでいる。
これは他のMSでも有用な手段であり、後述の通り対策として使用された。

宇宙空間では勿論のこと、大気圏でも使用できるようだが、光を著しく減衰させる水中で有効なのかは不明。



カオスレル



さぁ、おなりなさい!
私のお人形にっ!


形式番号:EZMA-S01
所属:エル・ザンスカール
パイロット:マリア・エル・トモエ、サイキッカー達

ミダス同様、『機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト』に登場するモビルアーマー。
キゾの妻であるトモエが搭乗する。

概要

全長200メートルを誇る、超巨大モビルアーマー。こちらも全身金ぴか。
巨体の内部の大半は後述する武装を運用する為のコンピュータで占められている。
モビルアーマーというよりも腕の付いた戦艦と言った方が早く、木星が開発していた「モビルシップ」に近い存在である。
普段は他の戦艦と並走しており、戦闘時にはMA形態に変形する。

戦艦状態ではぱっと見戦艦にも見えなくもない。戦艦の割には刺々しいが。
この状態での戦闘は難しいが、ギムレット・ビットの展開は可能で、対空砲も一応備わっている。
ミダスの母艦としての役割も持っており、ミダスの格納、補給、修理が可能。

MA形態になると、巡航モード時に艦首となっていた部分が下になり、艦橋部がそのまま顔の位置になる。
また、機体中央に納められていた長い腕が展開され、ようやくMAらしい(?)形態となる。

コックピットにはキゾの妻であるトモエと配下のサイキッカー12人が乗り込んでおり、
サイキッカー達によってトモエのサイキック能力を増幅、分担している。
この増幅されたサイキック能力でギムレット・ビットを操り、死者の軍団を作るのが本機の主な役割だが、
後述の様にギムレット・ビットは繊細なので、ミダスとの共同運用が前提となっている。


武装

  • 大型ビーム砲
巨大な両腕にそれぞれ4問、頭部に2問備わっている。
戦艦モードでは両腕が体のくぼみに沿って納められているため、対空砲の様に使う。
MAモードでは、前方への攻撃手段として使われる。

  • ギムレット・ビット
貫通力を高めたビットで、宇宙世紀では珍しい物理タイプのビット。
内部にエンジェル・コールが仕込まれており、コックピットに突き刺すことでパイロットを溶解させる。
更に、ビットにはカオスレルからの指令を受信する端末が備わっており、パイロット不在となったMSをトモエのサイキック能力によってカオスレルから操れる様になる。
この性質上、敵MSをほぼ際限なくコントロール下に置くことが可能であり、敵が大勢で攻めてくれば攻めてくるほど、より多くの手駒を手にすることが出来る。
但し、貫通力に特化したためか非常に繊細で、側面からの衝撃には簡単に壊れてしまうため、ミダス・タッチ・フラッシュで停止させた相手か、戦艦くらい巨大な的にしか使えない。

  • 耐ビームコーティング
ミダスと同様。
何度もビームの直撃を受けながらも最後まで爆散しなかった所を見ると、ミダスのそれと違いそれなりに役目は果たしたと思われる。



作中での活躍

ミダスの初登場は南米マリアシティの戦いからキゾとトモエが脱出する場面にて。
ザンスカール本国から差し向けられた部隊を壊滅させたが、この時はまだシルエット位しか判明していなかった。

その後、宇宙に上がりキゾがエル・ザンスカール帝国の建国を宣言、
こちらでも差し向けられたザンスカール軍をミダス・タッチ・フラッシュで停止させ、カオスレルのビットで死者の軍団を作り上げた。

直後に襲来した『蛇の足』と『サーカス』との戦いでは、目標が合致した両組織の前にやや押され気味で、サーカスのグレゴとの一騎打ちではほぼ互角であった。
キゾの油断もあって追い詰められてしまうが、ミダス・タッチ・フラッシュで戦況をひっくり返し、グレゴを討ち取るとそのままバイラリナとバンゾを死者の軍団に加える。
しかし、グレゴのパイロットであるクォ・グレーの悪足掻きによりミダスの片方のカメラが潰されてしまったため、一時的にミダス・タッチ・フラッシュが使えなくなってしまう。
それでもウイルスが完全に効かずに動いていたクロスボーンガンダムX-0も圧倒して勝利し、局地的に見れば凄まじい戦果と言えるが、
大局的に見るとミダスとカオスレル以外の全ての戦力を失った他、同じく動く事が出来たデスフィズをはじめ、かなりの数の敵にとどめを刺せずに逃がしてしまう。

最終決戦では、高速で移動する林檎の花の船上でミダスはゴーストガンダムデスフィズの2機と、カオスレルはディビニダドと対峙する。
修理済みのミダスは冒頭からミダス・タッチ・フラッシュを使うも、ミダスと同じ対策――木星系と連邦系の2系統センサーを組み込まれた彼らの機体には効かず、純粋な力量勝負となる。

後者の戦いはギムレット・ビットとフェザーファンネルの相性が悪かったのか、パイロットの実力差か、あるいはそもそもの設計コンセプトの違いもあるだろうが、
カオスレルはディビニダド相手に苦戦、ビームとパワーを用いたさながら怪獣プロレスの様な光景を繰り広げる。
最後は相打ちという形でディビニダドは爆散、カオスレルは林檎の花の艦首に百舌落とし*4で串刺しとなり、行動不能となった。

前者は2対1という不利な状況でありながら、途中でデスフィズを討ち、ゴーストガンダムと限界ギリギリの死闘を繰り広げるが、最後はビーム・マントを逆に利用され「自機の高出力ビームごと殴られる」形で大破。
最後の痛み分けでパイロットのキゾも死亡し、動作を停止した。

その後、トモエもキゾの後を追って自害。
主を失った両機は最終的に林檎の花と共に太陽へ突っ込み、「エンジェル・コール」と共に燃え尽きたと思われる。

後年、停止ウイルスの発見者であるファルド・オーファムによって秘匿されていた停止ウイルスのコピーの存在が発覚するも、
ファルドの娘レオによって破壊され、再び利用されることなく葬られた。


余談

ミダスの特徴的な頭部デザインのモチーフになっているのは、インカ帝国の像などにみられる扇形の飾りである。
デザイン当初はカブトムシのツノの様に縦に長い頭部だったが、他のザンスカールMSにも似たようなデザイン*5があったため、
縦ではなく横に伸ばし、そこにキゾの妻であるトモエのイメージであるインカ系のイメージを組み合わせたらしい。
作中でも、トモエやベルがミダスの頭部のデザイン元になったと思われる帽子(飾り?)を身に付けている。

カオスレルのコンセプトは読者公募デザインコンテストでアイデア賞を受賞した「カオズレール」と「マリオネット型無人MS」を元に作られたが、
元々がMSデザインのコンテストだったこともあって、デザイン的には原案からかなりかけ離れている*6
なお、外見のモチーフになったのはエルメスである。




追記、修正はワクチンを作ってからお願いします。

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最終更新:2025年01月19日 17:25

*1 ゴーストガンダムに関しては数値化されたデータが無いものの、解説ではミダスの方が機動力で上回っているとされている

*2 ちなみに、フォントの時代からするとQRコードは大昔の技術で、おそらくこの時代では既に廃れている様子。

*3 劇中では、カオスレルやディビニダドといった分類上MSではない機体も対策を必要としているため、恐らくモビルアーマーなどにも通じるはずだが、どこまで有効かは不明。

*4 微妙に動きが異なるがEXVSシリーズからの逆輸入と思われる。

*5 おそらくはアビゴルだろう

*6 原案イラストは両方とも作者本人によってネット上で公開されている