童磨(鬼滅の刃)

登録日:2018/06/10 Sun 16:58:00
更新日:2025/10/05 Sun 17:49:43
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まさか!死んでないよ

彼女は俺の中で永遠に生き続ける

俺が喰った人は皆そうだよ、救われてる。もう苦しくない、つらくもない

俺の体の一部になれて幸せだよ


童磨(どうま)とは、漫画『鬼滅の刃』の登場人物である。




◆プロフィール

本名:不明
身長:187cm
体重:86kg
趣味:酒風呂*1、水煙管(煙草)、舞踊
死地:無限城内


◆概要

鬼の首魁・鬼舞辻無惨直属の精鋭集団「十二鬼月」の上位階級"上弦の弐"を務める
表向きには新興宗教団体万世極楽教(ばんせいごくらくきょう)の教祖として振舞っている。

初登場は妓夫太郎の過去回想。
当時は『上弦の陸』の座にあり、人間時代の兄妹に救いの手……というか魔の手を伸ばし、鬼となる道を示した。

そして何より、蟲柱・胡蝶しのぶの姉で花柱だったカナエや、主人公の竈門炭治郎の同期嘴平伊之助の母・琴葉を殺めた張本人でもある


◆外見と得物

上弦の鬼としては珍しく外見上の異様は見られない、長身かつ筋肉質なイケメン
だが、白橡(しろつるばみ)色の長髪は頭の上に血をかぶったかのような赤黒い模様が浮かび、瞳は色……と、浮世離れした特徴も見える(髪の模様は鬼になってそうなったのかもしれないが)。
目の文字は右目が「弐」で左目が「上弦」となっている。

服装については、左右に房飾りが垂らされ黄色の縁取りがある蓮の花に似た形の黒い帽子を被り、頭髪と同じく血のような模様が描かれた上衣を纏ってその上からキリスト教の聖職者が身に着けるストラを思わせる意匠が施されたガウンを羽織り、下はベルトで留めた白い長袴と黒い靴(あるいは足袋?)を履いている。帽子については人間時代の幼少期から被っており、また回想シーンを見るに先代教祖だった父も同じものを着用していたため、教祖の証なのかもしれない。

その他、蓮の花と葉の絵が刻まれた二対の黄金の鉄扇を愛用しており、後述の用途に幅広く用いている。


◆性格

一人称(おれ)
二人称は、無惨に対しては「貴方様」。同じ鬼には名前に男なら「殿」「君」、女なら「ちゃん」を付けて呼び、その他の大抵の相手には「君」「お前(ら)」。

屈託なくヘラヘラ笑って飄々とした態度を取り、穏やかな優しい口調で他の上弦にも気さくに話しかけては自分達が仲間であることを強調し仲間意識を説くなど、いがみ合いがデフォルトな鬼としては異端と言えるほど友好的かつ陽気な性格で、おまけにノリも非常に軽い。
しかしそんな明るさとは裏腹に、殺した遊女を担いで貪り食いながら「命というのは尊いものだ 大切にしなければ」と笑顔でのたまい、女の生首を嬉々として壺*2に活けるなど、その言動の端々からは数百年の時を生きた鬼らしい狂気が垣間見える。

また教祖らしく「信者の皆と幸せになるのが俺の務め」と考えているが、「誰もが皆死ぬのを怖がるから、信者を喰べてあげる(・・・・・・)ことで信者達は苦しみや辛いことから解放されて怯えることも無くなり、自分と一つになって永遠の時を生きていく」という歪んだ憐憫を元にした狂気の救世を掲げ、それが人々の幸せに繋がると本気で信じて信者を笑顔で殺害し貪り喰らう狂人。
曰く「信者の想い、血肉をしっかり受け止めて救済し高みに導いている」
女性に対しては基本誰であろうと優しく接していたが、その実「栄養価が高く、食べると手っ取り早く強くなれる」程度の認識でしかない。またプレイボーイじみた事もしていたようだが、所詮食糧としか見ていないのでそこに愛は無かった模様。

その実態は共感性はおろか、感情や情緒が完全に欠落した何か。もはやサイコパスとも形容できない。喜怒哀楽の感情や心を揺さぶる感動といった情緒が全く存在せず、童磨が心を動かされるのは生理的に快不快を味わった時のみ
そのため基本的にあらゆる物事に対して何も感じることが無く、生まれつき持つ高い知性により人間や他の鬼達のように喜怒哀楽があるかのように振舞っていた。
加えて「新興宗教の教祖」でありながら、神や仏、極楽などのあの世の概念そのものを「人間が妄想して創作したお伽話」「人間は死んだら腐って無になるだけ」と根本から全否定するリアリスト。そういったあの世の概念を信じている人間は等しく「精神の弱い人たち」「気の毒だよねぇ」と見下し冷笑してもいる。


自身の居室の棚には童磨がこれまで「救ってきた」人々の頭蓋骨が棚にきれいに並べて飾られており、壺には女性の頭蓋骨が本当に生けてある。
明確に過去の人間時代を自覚して振り返ることができるだけでなく、人間時代とさほど人格面の歪みが変わらないという異端の鬼。
そしてそれはつまり、鬼となる以前から化け物の精神を備えていたとも考えられるだろう。
一方で感情の情緒が欠片も無い反面、如何なる場合でも物事に対して本気になることができないという欠落も抱えており、の間際ですらその気質は変わらなかった。


対人(対鬼?)関係

童磨のある意味最大の特徴。
上記の通り共感性が皆無なことに加え、
  • 無邪気と言うより不躾に他者の神経を逆撫でする言動と挙動
  • 天然なのかわざとなのか敢えて相手の逆鱗を削るような煽り
  • 笑顔かつ素で煽る上に無駄に馴れ馴れしくフレンドリーに絡む行為
  • 高い知性を持つが故の、賢しらに他人を馬鹿にして見下す上から目線思考
これらが相互作用し合い、結果として強烈な煽りスキルを有している。

特に主に絡みの対象である猗窩座からは、上記のことに加えて童磨が後から鬼になったにもかかわらず序列を抜いたこともあって完全に嫌われ露骨に敵対視されている。何なら猗窩座へ常時テレパシーを送りまくった*3為、送らせないようにしてほしいとあの猗窩座が本気で無惨に懇願したことが後に設定集で判明した挙句、後の会議等でも一切通信を送るシーンが無かったのであの無惨が部下の希望を聞き入れて本当に送れないよう措置を取ったことが示唆されている。
ただし、童磨の方は猗窩座から攻撃を受けても「じゃれ合い」と捉えて一切敵視していないばかりか、彼が己に勝てるとは全く考えていない。それどころか(勝手に)自身を「猗窩座の一番の親友」と自称している。
なお、他の上弦はおろか無惨にまで猗窩座と同じ感覚の軽いノリで絡んでいるからか、基本的に無惨を含めた他の鬼からも邪険に扱われ*4、あまり任務も与えられていなかった模様。

とにかく人(鬼も)を見下すことに関しては一切ブレないため、孤立するのが必然とも言える。

ただし無惨への忠誠心自体は本物。
極端なリアリストだった童磨にとって無惨との出逢いそのものが衝撃だったようで、彼への忠誠心は崇拝の域に達している。
その忠誠心から肉体の損傷にも全く頓着がなく、自分の失態が判明した時には無惨に罰として自身の目玉をほじくって差し出すと心底楽しそうに自ら提案するほど*5
だが、無惨からの受けは概して低評価で、あしらい方もかなり雑。これは「強い執着や渇望がない者は鬼として大きな進化をしない」という無惨の実体験からくる失望に依るところが大きいと思われ、内心では「あんまり好きじゃない」と評している*6


万世極楽教

童磨が教祖を務める宗教団体で、ここでは彼は信者たちから「教祖様」と呼ばれている。
信者は約250人。これは目立つと無惨に叱られるからということなので、増やそうと思えば更に増やせると思われる。

「穏やかな気持ちで楽しく生きる」ことを教義として掲げており、「辛いことや苦しいことはしなくていい。する必要がない」と説いていた。
人間関係のトラブルで逃げてきた人達を保護する駆け込み寺的側面もあったようだが、その実態は童磨の表社会での隠れ蓑にして餌場。ちなみに童磨が食していた女性たちはみな白装束を着せられている。
童磨が鬼と化してからは、無惨との出会いに感動した童磨によって無惨が教団の神に位置づけられている。

地位にも金にも興味が無い童磨だが、信者からの人生相談を受けるカウンセラーのような仕事をしてよく信者から相談を受けており、欲望で身を持ち崩す彼らの存在を等しく馬鹿馬鹿しく思いながらも、どのような感覚なのか興味自体はあったとか。
そして相手を取っ替え引っ替えしながら度々子供の恋愛ごっこみたいな真似もしていたという。

なお童磨が教祖となる以前から、彼の父が何人もの女性信者に手を出していた事が回想で明かされており、どうも前々から問題のある団体だった模様。
また「青い彼岸花」や産屋敷一族の捜索は信者に行わせれば効率的なのだろうが行っていない。普通に考えてカルト教団に逃げてきたものに長期間外に出たり調査能力があったりするものがそうそういるとは思えないし、人海戦術の弱点として逆に探られる危険性もあるため無惨から許可されなかったのだろう。*7


◆戦闘能力

瞬間移動じみた高速移動が可能な敏捷性など持ち前の身体能力の高さもさる事ながら、鉄扇による接近戦でも鬼殺隊の柱と互角以上に打ち合えるその実力は、キレた猗窩座の攻撃を受けても「おっ、ちょっと前より強くなった?(要約)」と軽いノリで受け流し、猗窩座の眼前で「自分には絶対に勝てない」と笑顔で宣う域に達している*8
しかもその気になれば至近距離からの猗窩座の攻撃も避けられるとのこと。
当然ながら高速再生も完備しており、身体の一部が損壊しようと何の痛痒も感じていない。おまけにに対する高い適応力、免疫獲得能力をも併せ持つ。

だが童磨の真価は極低温にまで冷やされた凍てつく己の血を媒介にした、凶悪かつ多彩な血鬼術の数々。
氷刃や巨大な氷柱といった物理的な攻撃から強烈な冷気による範囲攻撃、呼吸封じの搦手まで多彩な術を使用しており、血鬼術という一点においては鬼の中でも頂点に君臨する術者。
渇望も執着もないため無惨の経験的に本来童磨は大成する筈もないが、そんな感情抜きにして上弦の弍にまで上り詰めた点も含め、「才覚は人一倍あった」とおまけコーナーの「コソコソ話」で語られている。

また非常に抜け目の無い側面も持ち、例え明確に格下であっても自身の見たことが無い技術・技能を持つ者を相手にした時は「情報は有益」と判断。
敢えて全力を出さずその者が持つ手札を全て切らせてから殺して今後の糧にしようとする冷徹な態度を取るが、その油断のなさが裏目となり舐めプになりやすい点は欠点の1つ。
一方で、本人曰く探知能力には長けていないらしい。


装備

  • 鉄扇
蓮の花の紋様が描かれた黄金に輝く鋭く大きな対の鉄扇。
一振りするだけで人間をバラバラに切断し、切られた後も僅かな時間身体を切断された事に気が付かないという恐るべき切れ味を誇る。
そして武器以外にも血鬼術を繰り出すための触媒にもなり、斬撃と同時に鉄扇の軌道上の空気や周囲の地面さえ凍り付かせることができる。


◆物語での活躍

遊郭篇


どうしたどうした 可哀想に

俺は優しいから放っておけないぜ。その娘間もなく死ぬだろう

お前らに血をやるよ。二人共だ。“あの方”に選ばれれば鬼となれる

本編での初登場は96話。
周囲の環境から迫害され妹すら殺されかけ自らも重傷を負った人間時代の妓夫太郎と梅の目の前に、花魁2人を笑顔で貪り食いながら出現。なお当時はまだ上弦の陸だった。

命とは尊いものだ。大切にしなければ

さあ お前らは鬼となり俺のように 十二鬼月…上弦へと上がって来れるかな?

そう言って欺瞞以外の何物でもない言葉を語りかけながら兄妹をスカウトし、鬼に仕立て上げたのだった。

そして堕姫と妓夫太郎が死亡し、上弦の鬼達が無限城に召集されたことで再登場。113年ぶりに集った同僚達に無駄にウザ絡みした結果玉壺には引かれ、猗窩座には馴れ馴れしく肩を組んだせいで下顎を拳で粉砕される報復を受ける*9
それでも笑顔でガンスルーを決め込むばかりか、逆に煽り返して猗窩座をキレさせている間に無惨が降臨。
妓夫太郎の死亡によってキレかけている無惨に対しても、全く態度1つ変えず一方通行気味に喋り倒すが、ロクに相手にされず無惨の説教は終了。無惨様も童磨の相手をするのが面倒臭くなったのだろうか。
その直後玉壺に下された無惨の命令に興味を抱き、彼の困惑を無視して同行しようと絡むも再びキレた猗窩座の一撃で頭の上半分が消し飛ぶダメージを受けてしまう。
……が、持ち前の高速再生で難なく復活、上下関係を重んじない猗窩座に釘を刺した黒死牟を諌めようとするもやはり無視されることに。


猗窩座よ…気に喰わぬのならば入れ替わりの血戦を申し込むことだ…

いやぁしかしだよ黒死牟殿 申し込んだ所で猗窩座殿は我らに勝てまいが

加えて俺に至っては猗窩座殿よりも後で鬼となり

猗窩座殿「(#^ω^)…(ピキピキ)」

早く出世したのだから彼も内心穏やかではあるまい!わかってやってくれ

それに俺はわざと避けなかったんだよ。ちょっとした戯れさ。こういうふうにして仲良くなっていくものだよ
上に立つ者は下の者にそう目くじら立てずゆとりを持って…

と、さも友達であるかのようにケラケラ笑いながら、フォローに見せかけて露骨に喧嘩を売るハイレベルな煽り芸を披露し猗窩座を無言でキレさせるも、結局は両者に無視される形で2人の対面は終了
(なお童磨自身は知る由もないことだが、後に明らかとなった黒死牟の過去を考えると「上に立つ者は下の者に~」という発言はピンポイントに彼の地雷を踏みぬいていたと言える)。
半天狗や玉壺にもガン無視されて無限城に1人残され、最後に鳴女に絡もうとするも一蹴される形で無限城から自身の根城である教団施設に放り出され、皆が構ってくれないことにいじけるも、気を取り直し「教祖」として振る舞う。

なおこの下りでも判る通り、かつて自分が鬼にした妓夫太郎と堕姫の死に対し全く感傷を覗かせる様子が無く、この時点でその冷淡な本性を端的に表している。

無限城決戦篇

140話では柱を含めた多数の鬼殺隊員が無限城に落とされる中、無限城の一角、寺院を模した建物や橋が架かった池の広がる一室で胡蝶しのぶと遭遇。
そこでは教団の信者と思わしき多数の女性を食い散らかしている最中だったが、しのぶを見るや目を輝かせたのち「いい夜だねぇ」「美味しそう」と満面の笑顔を見せながら対峙する(劇場版でのこの場面のねっとりとした発言は必聴)。

信者を惨殺しておきながら自身の狂気の持論を誇らしげに語ったことでしのぶの怒りを買い、更に自身がカナエを殺害した張本人であることを明かしたことで完全に激怒したしのぶと対決。
そしてしのぶのスピードを皮肉抜きで賞賛しながらも、彼女に鬼の弱点たる頚を斬る力がないことを悪びれなく嘲笑いつつ、毒への異様な適応の速さと驚異のスピード、呼吸そのものを封じる凶悪な血鬼術によりしのぶに致命傷を与え劣勢に追いやっていく……。

え 立つの?立っちゃうの? えーーー…
君ホントに人間なの?
鎖骨も肺も肋も斬ってるのに
君の体の大きさ…その出血量だと死んでてもおかしくないんだけど…

しかし、姉の幻影に励まされ死力を振り絞って立ち上がるしのぶにドン引き。
心から心配しながら素直に諦めて死を待つよう提案するも当然のことながら一蹴され、全力を発揮したしのぶに翻弄され遂に頚に毒の一撃を叩きこまれてしまう。

かくして持てる力のすべてを駆使したしのぶの渾身の一撃を受け遂に決着が付いた。

……かに思われたが。

(ほんと頭にくる ふざけるな馬鹿)
(なんで毒効かないのよコイツ 馬鹿野郎)

無慈悲にも、しのぶ渾身の一撃すら童磨の免疫獲得の驚異的な速さの前には無力だった。
これまでとは比べ物にならない速さで瞬く間に毒を分解・解毒し、満面の笑みを浮かべながら最後の最後で自分を圧倒したしのぶをなんとハグしつつ、童磨は感動の余り号泣しだした

えらい!!頑張ったね!

俺は感動したよ!!こんな弱い女の子がここまでやれるなんて!
姉さんより才も無いのによく鬼狩りをやってこれたよ 今まで死ななかったことが奇跡だ
全部全部無駄だというのにやり抜く愚かさ これが人間の儚さ 人間の素晴らしさなんだよ!
君は俺が喰うに相応しい人だ!永遠を共に生きよう! 言い残すことはあるかい?聞いてあげる

地獄に堕ちろ

人間の存在を冒涜するかのような憐憫と愛玩に染まった歪んだ人間賛歌をしのぶに謳い、最後の最後まで彼女を侮辱しながら最後の恨み節を聞き届ける。
なお、その賞賛に聞こえる台詞をよく見ると、「弱い」「姉よりも才能がない」「全部無駄な足掻き」「愚か」と、ひたすらしのぶを虚仮にしているだけ

そしてその瞬間、童磨の部屋にしのぶの継子・栗花落カナヲが遂に到着すると同時に、しのぶを鯖折りで殺害する。
師が惨たらしく殺された光景を目の当たりにしてしまい、我も忘れて激高しながら攻撃するカナヲを嘲笑うかのように童磨は語り掛けるが、彼女が目撃したのは大切な師の身体を取り込んで吸収していく童磨の姿だった

いやー危ない危ない 吸収してる最中に斬りかからないでおくれよ

己を救ってくれた師で親代わりでもあった恩人の遺体すら奪われ、戦いや抵抗も含めたしのぶの全ての尊厳を侮辱されたことで憎悪に震えるカナヲを、童磨はしのぶの遺品である髪飾りを舌で舐めながら更に笑顔で嘲笑う。

おや?挑発に乗らないねェ この子が先刻指文字やってたからかな?

俺の能力とか教えたのかい?一瞬だったのに凄いなぁ

無駄なのにね 頑張り屋さんだね

いやぁそれにしても今日は良い夜だなぁ 次から次に上等な御馳走がやってくる。

そうしてカナヲと相対しある程度やりあった頃、童磨は猗窩座の敗北を感じ取る。*10

悲しい 一番の友人だったのに……

もう嘘ばっかり吐かなくていいから

カナヲと対峙する童磨は、猗窩座の死を知ったことで涙を流し大仰に悲しんでみせる。

貴方何も感じないんでしょ?

しかし、カナヲには童磨の言動が単に上辺だけのものだとお見通しだった。一番の友達が死んだというのに、顔色も、しぐさも、血の巡りも、童磨は何一つ変わっていないのだから。
そしてカナエが死に際に「そんなあなた(童磨)の事を気の毒だと言っていた」とカナヲは告げる。本当は感情など持たず、空っぽで何もないのに、滑稽で、馬鹿みたいだ、と笑うカナヲは挑発する――。

貴方 何のために生まれてきたの?

君みたいな意地の悪い子初めてだよ 何でそんな酷いこと言うのかな?

経緯やその後の状況こそ違えど”感情を持たなかった”同士であるカナヲからの冷徹かつ残酷な指摘に、ようやく本当の表情を見せた童磨。果たしてそれは、能面のような無表情であった。

かくして、童磨とカナヲとの戦いが始まった。

ややもすると 今喰った柱の娘より実力があるのかもしれない

しのぶの指文字で粉凍りのことを教えられたカナヲは、童磨の初見殺しを回避して善戦する。その剣技はいまだ未熟なれど、既にカナヲの実力はしのぶを上回っていたのだった。

しかし、カナヲの強みは「視力」であると見抜いた童磨は「凍て曇」でその眼を封じ、そして怒涛の血鬼術による連続攻撃で彼女を追い詰める。
辛うじて血鬼術を回避し続ける防戦一方のカナヲに対して、更に童磨は瞬間移動とも思える超神速で彼女の刀を奪いとる。
上弦の弐は伊達ではなく、カナヲと童磨の間には埋めがたい地力の差があったのだ。

見極めて正確に 最小限のところを 被害が最小限の所を 見極め…

どぉありゃアアアア!!! 天空より出でし伊之助様のお通りじゃあアアア!!

刀がなくば回避不能の「散り蓮華」でとどめを刺されそうになったカナヲだったが、伊之助の乱入により辛くも難を逃れる。
傷だらけのカナヲを見て、伊之助はしのぶに怒られることを心配するが……

死んだのか? しのぶ

カナヲの表情を見て、伊之助はしのぶがもういないことを悟る。
暗に自らが食べたことを伝え、俺の体の一部になって幸せだよ、と笑う童磨に伊之助は激昂。獣そのものともいえる伊之助の猛攻によりカナヲの刀を取り返すも、童磨の余裕は全く崩れず、再び瞬間移動とも思える超神速を発揮し、伊之助の被り物を奪い取ってしまうが。

あれー?何か見覚えあるぞぉ 君の顔

伊之助の顔に見覚えがあると断言する童磨。自分のこめかみに指を突き立てて脳内の記憶をたどり、15年前の出来事を思い出す。
それは極楽教の教祖として出会った女性――伊之助の母親、琴葉のことだった。

親は猪だと否定する伊之助に、人間なんだから人間から生まれてるでしょ、と指摘する童磨。激高する伊之助の攻撃を容易く躱しながら、あっけなく返り討ちにして話を続ける。

琴葉は頭の鈍い女で、夫や姑による家庭内暴力に晒され続けた末、救いを求めて万世極楽教の門を叩いたのだった。
そして、琴葉がゆびきりげんまんの唄ばかりを子守唄として歌っていたことを明かす。
伊之助の記憶に、子供のころのことが蘇る。

寿命が尽きるまで手元に置いといて喰べないつもりだったんだけど
信者を喰ってるのがバレちゃった

童磨は琴葉を治療し、手元に置き続けるつもりだったが、彼女に人食いの現場を見られたことで始末することを決意。
しかし、崖際に追い詰められた琴葉は、最後の賭けとしてせめて伊之助だけでも助かるようにと息子を崖下に投げ落とし、追い付いた童磨にとうとう殺されたのだった……。

本当に奇跡だぜ この巡り合わせは
俺の母親と 仲間を殺した鬼が 目の前に居るなんてなァア!!

いまだかつてない怒りを見せる伊之助。
地獄を見せると息巻く伊之助に対し、童磨はこの世には天国も地獄もないとズレた持論を展開する。
天国や地獄は人間の空想で、悪人は死後地獄に行くと思わなければ弱い人間は生きていけない、と嘯く童磨に、伊之助とカナヲが襲い掛かる。

しかし、童磨はまともに戦おうとはせず、高所に逃げて「結晶ノ御子」を繰り出す。
童磨と同等の血鬼術を放ち、無数に生み出される「結晶ノ御子」にカナヲと伊之助はなす術がなく翻弄される。

この時までは、童磨は完全に鬼殺隊の2人に勝利していた。
猗窩座が倒されたことで時間が無くなってきたとして立ち去ろうとする童磨。
「結晶ノ御子」を6体も生み出せば鬼殺隊を全滅させられるだろうと読み、扉に手をかける――。

だがその直後。童磨の視界が2つに崩れた。

えっ?

それは童磨の顔が溶け、目が零れ落ちたことによるものだった。
柱3人分の力に匹敵する強さを持つ上弦の鬼を葬り去るための、しのぶの最後の作戦が嵌ったのだ。
カナエからの情報を元に組み上げられ、お館様のお墨付きをもらったそれは、しのぶ自身を毒の塊に変えておき、女ならば確実に喰らう童磨に命を捨てる覚悟でわざと喰わせるというものだった。
しのぶの全体重37キロ分、致死量の700倍もの藤の花の毒*11を喰らった童磨は、再生が追い付かないほどの速度で腐り、溶け、砕けて行く。
そして実はカナヲはしのぶから予めこの作戦を知らされており、毒が効いて止めを刺せるようになるまでの時間稼ぎをしていたのだ。

「結晶ノ御子」も崩壊し、童磨と伊之助・カナヲの戦いは、完全に戦況が逆転。

(絶対にしのぶ姉さんの命を無駄にはしない!)

往生しやがれド腐れ野郎!!

最後のあがきとして、血鬼術「霧氷・睡蓮菩薩」を繰り出す童磨。
神などいないと笑っていた鬼が最後に頼りにしたのは、巨大な氷の仏像……神であった。
しかし、技の精度の低さから苦し紛れの技だと判断したカナヲは、自身の眼が潰れることを覚悟した大技、花の呼吸・終の型「彼岸朱眼」を使用する。
動体視力を極限まで上げたカナヲは、童磨を追い込み頸を切る一歩手前まで詰め寄ることに成功するも、そこでついに凍りついてしまう。
しかし、その後ろから伊之助が放った獣の呼吸・思いつきの投げ裂きによって刀が押し込まれ、遂に童磨の首は落ちたのだった。


末路


(え~~ 頸斬られちゃった)
(こんな雑魚に負けるなんて 俺が)
(あんな 頸を斬る力も無いような剣士ですらない毒使いに)
(剣術の基礎もできていないような奴に)
(これで消滅するなんて俺が可哀想すぎる)

己の頸を落とした相手をまだ見下し、自分を憐れむ童磨。
人に尽くし世の中に貢献して生きてきた己が死ぬことを受け入れたくないと、最後の手段として猗窩座のように鬼を超える存在に進化しようと試みるも……

(死ぬんだ 俺)

何処までも空虚だった童磨には進化の道などなく、無情にも童磨の頸は崩れ始めるのだった。

(あ~~ やっぱり駄目だ 何も感じない)
(死ぬことが怖くもないし 負けたことが悔しくもない ずうっとこうだったなぁ俺は)

いよいよ死を迎えるにあたって、童磨は過去を思い出す。
童磨の父は信者の女性に見境なく手を出す色狂いで母にめった刺しにされて殺され、その母も半狂乱になりながら服毒自殺したことを。そんな凄惨な光景を前にしても、目の前で一気に両親を失っても、童磨は部屋が血で汚れたことに対する不快感しか覚えなかった。
二十歳で鬼になり、百年以上も生きた。それでも結局、人間の感情は自分にとって夢幻に過ぎなかったと童磨は思い返す。

あ やっと死にました? 良かった
これで私も安心して成仏できます

そうして闇に落ちていく童磨の前に、死んだはずのしのぶが現れる。
首だけの童磨を片手に、彼を倒せたことを満足げに語るしのぶ。

まだ鬼の始祖も残っていますが きっともう大丈夫
仲間の誰かが必ずやり遂げてくれる 私はそう確信している

そんなしのぶを見る童磨の胸の中に、何かが生まれた。

……わぁ
何だろうこれ 何だろう
今はもうない心臓が 脈打つような気さえする
これが恋という奴かなぁ可愛いねしのぶちゃん

恋。
初めて知った、人間らしい感情であった。
高揚する童磨は、もしかしたら天国や地獄もあるのかも知れない、と考え直す。

ねぇしのぶちゃん ねぇ
俺と一緒に地獄へ行かない?


とっととくたばれ 糞野郎


何とも言えない表情を浮かべるしのぶとは対照的に、童磨は頬を染め、産まれて初めての心からの笑顔で告白する。
児戯のような告白に、しのぶは満面の笑みで拒絶の言葉を返すのだった。


公式ファンブックにて

その後公式ファンブック『鬼殺隊見聞録・弐』によると、生前は天国や地獄を否定し「人間は死んだら腐って無になるだけ」と語っていた童磨だったが、死の淵で思い直したためか他の鬼と同様無事(?)地獄に堕ちたらしい。
蟲の呼吸の斬られ心地について他の鬼達が戦慄する中、「いいじゃない 可愛いんだから許してあげなよ」と笑っていた。
全然反省してねぇ……。


◆余談

  • 絡みと言動のあまりのウザさに玉壺の任務に勝手に付いていこうとした童磨を攻撃し、彼の行動を妨害した猗窩座であったが、仮に上弦の鬼が3体も刀鍛冶の里に侵攻していたであろうことを考えると里は壊滅不可避で、猗窩座の行動は結果的に宿敵である鬼殺隊の窮地を救ったとも言える。
    ただし、猗窩座の言うとおり無惨が彼の命令もしくは許可無しに鬼同士で徒党を組むことを許していないことも事実。
    迫られて困惑する玉壺の様子や鳴女が問答無用で元の場所に転送した事から見ても、無惨は今回は童磨を送る気は無かったというのが本当なのだろう。
    ……玉壺と半天狗が失敗した時に八つ当たりされていた可能性は大いにあるが。

  • 「他者を見下し」「省みることも慮ることもなく」「自分の行為の正当性を疑いもしない」精神性は無惨に近いものがある。両者の決定的な違いは、無惨は「生への執着」を体現する怪物だが、童磨は生に対する執着がなく、自分の死にすら関心を持てなかったことか。

  • 強い虚無性を孕んだ性質からか、無惨には鬼にされた当初はあまり期待されていなかったが、彼の予想に反してあっという間に「上弦の弐」まで上り詰めたことが語られた。この点も無惨が童磨を嫌う理由の1つかもしれない。

  • 公式ガイドブックによると猗窩座はパワハラを受けたとはいえ無惨のお気に入りの一人で、また黒死牟はかつて猗窩座から入れ替わりの血戦を受けたことが嬉しかったとされている。その猗窩座より童磨の方が早く成長・出世したことは無惨と黒死牟にとっても複雑だったのかもしれない。

  • 前述の通り鬼になったのは猗窩座より後で、少なくとも陸兄妹を鬼にした百数十年前の時点では上弦の陸だった事が判明している。それから入れ替わりの血戦で上弦の弐にまで上り詰めたと思われるが、その当時の上弦の弐が猗窩座だったのか、あるいは他の鬼だったのかは不明。もし前者だった場合、自分を負かした奴が馴れ馴れしく親友面してくるわけなので猗窩座からなおさら嫌われるのもむべなるかな。

  • 上陸兄妹との出会いの後、入れ替わりの血戦に勝利して今の序列に昇格したと思われるが前任の『上弦の弐』がどうなったのかは不明。後に「血戦に敗北した鬼は(無惨の許可は要るが)捕食してもよい」と判明したので恐らく死亡したと思われる。

  • 当人は鬼の中では珍しく(一応)他の鬼と友好関係を結ぼうとしていたものの、(滅茶苦茶嫌っていた猗窩座と、塩対応丸出しだった黒死牟以外の)他の鬼達からはどう思われていたかは不明。少なくとも玉壺からは引かれるなどしたが、それでも彼の作った(しかも高値で売れると明言されている)壺を贈られているあたりそう悪い関係ではなかった模様。堕姫と妓夫太郎を鬼に引き入れてから交流があったかは判らないがしていなさそうだ。

  • 神も仏も信じない童磨が、最後に繰り出したのが「仏像」だったことは中々に興味深い。無意識的に救いを求めて縋ったのか、はたまた冒涜か……。
    なお「神も仏もない」という考えを持つキャラは霞柱・時透無一郎の亡兄「有一郎」もいる。だが有一郎の場合「どれだけ善良に生きていても、神や仏は守ってくれない。だから俺が(弟の無一郎を)守らないといけない」という考えからで、「おとぎ話」と一蹴する童磨とは性質の異なる価値観である。

  • 扇を用いる遊戯「投扇興」は、投げた扇と的の倒れ方で点数を競うものだが、一部の流派では倒す的のことを「」と呼ぶ。また高得点を得られる形のひとつに「胡蝶」というものもある。

  • アニメ版での声優について、他の上弦の鬼は予想がばらける中、童磨に関しては正式発表前の時点でそのキャラクター性から演じられるのは宮野真守氏しかいないという意見が多くあった。しかし、主演たる花江夏樹氏にも「このアニメは(他の作品でなら主役やレギュラーを張る人気の若手でも大ベテランでもチョイ役に充てることに躊躇がないので声優の使い方が)おかしい」といったことを言わしめる本作において、さすがに視聴者からの予想そのままのキャスティングはしないだろうとも思われており、実際に登場するまでは様々な推測が飛び交っていた。直近で出ていた妓夫太郎が意外なキャスティングだったこともそれに拍車をかけていた。
    そして童磨が初登場する『遊郭編』最終回においては、放送中まだ童磨が出ていない時点にもかかわらず、なぜか宮野氏の名前がSNSでトレンド入り。そして最後の最後、エンドロールにてついに童磨役が宮野氏だと確定した際には*12、誰もの予想ド真ん中で納得しかないキャスティングにファンは逆に驚きを見せたのだった。


何だか俺はこの項目の追記・修正に参加させて貰えなかったような気がするのだが 考え過ぎだよな猗窩座殿

ダン!

猗窩座殿!話してる途中なのに


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最終更新:2025年10月05日 17:49

*1 元々酒好きだったが、鬼の「人間の食べ物・飲み物を一切受け付けない体質」によって飲めなくなったのでそうしている模様。

*2 玉壺の作ったものという可能性もある。

*3 序列が上の鬼は下の鬼へ脳内で通信を送ることができる。

*4 黒死牟からは発言を全スルーされ、玉壺からは引かれ気味な対応をされ、半天狗からも絡みを避けられ、鳴女からは誘いを食い気味に断られた。

*5 高い自己再生能力を持つ鬼がこのような自傷行為をしても意味はないのでこの提案は文字通りの意味ではなく「上弦の座を返上する」という意味での発言ではないかとの見解もある。

*6 ちなみに他の上弦で評価が低めなのは「頭の悪い子供」「足手纏い」と評した堕姫くらい。堕姫の場合は実力面で「上弦」と認めていないところもあるだろうが……。

*7 「産屋敷一族を探す=鬼に協力する敵対勢力」とされて襲撃を受けるし、「青い彼岸花」の存在が鬼殺隊に知られれば発見され次第根絶やしにされることは間違いない。

*8 実際仮に両者が戦った場合、徒手空拳を用いての正攻法で戦う猗窩座はアウトレンジからの攻撃も得意とする上に自身と同等の戦闘力を有する分身をいくらでも生成できる童磨と相性が良いとは言えず、加えて「女を食った方が手っ取り早く強くなれる」童磨の考えが正しいとするなら人間時代から女に攻撃することすらできない猗窩座とは確固たる実力差が生じていたと思われる。

*9 アニメでは発言のタイミング的に「女の首を壺に活けて飾ってある」発言でキレられたようにも取れる。猗窩座の記事を見れば、これが彼の地雷となった可能性も解るだろう。

*10 ちなみにその間に最初に着ていた上着を脱いだのか失ったのか、薄手の肌着のみになっていた。

*11 本誌掲載時は70倍だったが計算ミスだったとのことで単行本で修正された。

*12 ただし、キャラクター名はこの時点では「上弦の鬼」表記。