天気の子

登録日:2019/08/12 Mon 01:51:20
更新日:2023/10/28 Sat 11:13:26
所要時間:約 6 分で読めます





夢に僕らで帆を張って

来るべき日のために夜を超え

いざ期待だけ満タンで

あとはどうにかなるさと 肩を組んだ






天気の子
Weathering With You


『天気の子』とは、新海誠監督によるアニメーション映画。2019年7月19日公開。
2016年に超大ヒットし、社会現象を巻き起こした『君の名は。』と同じく劇中の使用曲には、バンドのRADWIMPSが書き下ろした曲が使われているが、
『君の名は。』の時以上に映画製作に深く携わっており、新海監督がストーリーを作る→それを元にRADWIMPSが曲を作る→それを受けてさらに新海監督が話を膨らませていく
というような場面も多かったようで、実質的には音楽監督のような立ち位置になっている。
また、本作では新たな試みとしてオーディションによって選ばれた三浦透子が新たに女性ボーカルとして迎えられている。

新海監督によれば、「大ヒットした前作で受けた批判などを意識した上で、批判した観客を逆にもっと怒らせる映画を作りたい」というのが最初のイメージだったとのこと。
また、新海監督曰く「ド真ん中のエンタテインメントが来た」とコメントする一方で、「あえて賛否が分かれるメッセージを込めた」とも語っている。

公開されるや前作の評判を受けたロケットスタートを決め、1ヶ月ほどで興行収入100億を突破。
その後は賛否がわかれる作風もあり勢いは衰えているが、それでも動員1000万人を大きく上回り、興業収入は140億を超えた。
いずれにせよ2作連続で100億超えを果たした新海誠の名声は不動のものとなり、ポスト宮崎駿の最右翼に躍り出たと言っても過言ではない。

ちなみに、作中にコスプレイヤーが登場するシーンがあるのだが、そこに初代プリキュアアクアゴジラ初音ミクのコスプレをしたキャラクターがいる。
クレジットされていないがプリキュアのコスプレイヤーの声優は花澤香菜。「コスプレをしている人」とはいえ制作会社が違う為、ちゃんと東映に許可を取ったという。





◇ストーリー


――これは、僕と彼女だけが知っている、世界の秘密についての物語――

「あの光の中に、行ってみたかった」
高1の夏。離島から家出し、東京にやってきた帆高。
しかし生活はすぐに困窮し、孤独な日々の果てにようやく見つけた仕事は、
怪しげなオカルト雑誌のライター業だった。

彼のこれからを示唆するかのように、連日降り続ける雨。
そんな中、雑踏ひしめく都会の片隅で、帆高は一人の少女に出会う。
ある事情を抱え、弟とふたりで明るくたくましく暮らす少女・陽菜。
彼女には、不思議な能力があった。

「ねぇ、今から晴れるよ」
少しずつ雨が止み、美しく光り出す街並み。

それは祈るだけで、空を晴れに出来る力だった――

(映画パンフレットより)




◇登場人物

◆森嶋 帆高
声 - 醍醐虎汰朗
本作の主人公。離島から家出してきた16歳の少年。
家出の理由については劇中では詳しい説明はされておらず*1、周囲に対して嫌気がさしたからと本人は言っている*2

とにかく喧嘩早いと言われた前作の主人公の瀧とは別ベクトルの激情家であり、新海作品屈指のアウトロー。
「スマホの充電を限界まで使い切るタイプ」と新海監督に解説されたように、良くも悪くも考えたことを即座に実行に移すところがある。

東京に来てからしばらくはネットカフェに泊まり、その金すら無くなった後は殆ど路上生活同然の根無し草な日々を続けていたが、東京に行くのに利用した船で出会った須賀圭介に雑誌記者として雇ってもらう。
そして、ホームレス生活をした時に「ある物」を拾ってしまい、それが彼の生活に大きな影響を及ぼす。

幸か不幸か、記者の仕事としてネタの一つである「100%の晴れ女」の都市伝説特集への投稿締め切りが丁度終わった頃に、探し求めていた陽菜と出会った。
やがて帆高は彼女に魅かれ、彼女の能力で「晴れを届ける」商売をすることを思いつくが、この決断が後々重大な「運命」と、帆高自身の「暴走」をもたらし、一つの固い覚悟と共に抱く大きな夢へと結びつく。

ちなみに、カップヌードルは2分派。


◆天野 陽菜
声 - 森七菜
本作のヒロイン。
長い髪をおさげの二つ結びにしている、(自称)18歳の少女。
胸は慎ましい。実はある意味で当然だったのだが
1年前に母親を病気で亡くしており、現在は弟の凪との二人暮らし。
代々木の廃ビルの屋上にあった小さな祠で祈ったことで局地的な範囲を一時的に晴れにする、不思議な能力を手に入れる。
基本的には明るくやや強気な性格だが、一方で帆高程じゃないが相当にアグレッシブであり、自己犠牲的な一面もある。

元々はハンバーガー店で働いていたが、ある理由からバイトをクビになり、生活費に困窮するあまり風俗のバイトに手を出そうとするほどに追い詰められていたところを帆高に出会い、彼の思いついた「晴れを届ける」商売を共に行うことを決める。



◆天野 凪
声 - 吉柳咲良
陽菜の弟。小学生だがイケメンで大人びた性格。
プレイボーイで絵に描いた美少年。とにかくモテる。
姉の陽菜の勉強机の周りは彼女の好きな小物が一杯なのに対して、凪の部屋はトロフィーや表彰状が並ぶ。幼くして完璧超人である。
恋愛経験豊富であることから帆高には「先輩」というあだ名で呼ばれている。
当初は帆高を警戒して彼にキツく当たっていたが、「晴れを届ける」商売をするうちに打ち解け、彼に懐くようになる。
そしてゆるキャラ化。


◆須賀 圭介
声 - 小栗旬
主に都市伝説をメインに扱い、雑誌『ムー』などに記事を提供する有限会社K&AプランニングのCEOで、ライター。
大雑把だが面倒見のいい性格。
だが過去の経緯や境遇もあってか、どことなく斜に構えたちゃらんぽらんな男である。

東京に向かう船の中で帆高が船から落ちそうになったところを救い、船内の食堂で食事とビールを奢らせた後、帆高に名刺を渡した。
後にその名刺を頼って訪ねてきた帆高を記者として採用する。
数年前に妻・明日花を交通事故で亡くして以降そのことを強く引きずっており、妻の私物やメモを捨てずに残している。
亡き妻との間には娘の萌花がいるが、現在は親権を妻の両親に取られており、親権を取り戻そうとしている。

自分も過去に両親の元を飛び出して東京に出てきたことから、同じような境遇の帆高には感情移入しているが、一方で大人としての常識や上記の自身の抱える問題などから板挟みとなり、苦悩する。

新海監督曰く彼は常識人としての世間の代弁者として描かれており、初期のプロットでは映画のラスボス的な立ち位置にいたこともあったとのこと。



◆夏美
声 - 本田翼
須賀の事務所で働く女子大生。
カラッとした明るい性格。
圭介と共に、事務所に住み始めた帆高の面倒を見る。
圭介の事を「圭ちゃん」と呼んでおり、本人曰く「そういう関係」との事。

大学卒業後は事務所ではなく別の会社に就職するつもりでおり、就職活動に勤しんでいる。



◆須賀 萌花
声 - 香月萌衣
圭介と亡き妻の娘。幼稚園生。
親権は圭介の妻の両親が持っており、圭介は親権を取り戻そうと協定中である。
喘息の持病があるため雨の日は外では遊ぶことができない。


◆安井刑事
声 - 平泉成
経験豊富でベテランの老刑事。
ヤクザの「シバタ」が逃走中に捨てた拳銃の行方を捜査しており、その拳銃を偶然拾った帆高に行きつくと同時に、帆高が両親から捜索願いの出されている家出少年と判明したことから、帆高を確保するべく行動する。

刑事ドラマに出てくるベテラン刑事風の性格で、力ずくの確保ではなく相手への説得を重視する方針を取っている。
恐らく拳銃にも実弾は入れてないと思われる。実際、帆高に突撃されるまでは一切銃を向けようとしなかった。
帆高を確保したのが高井でなく彼だったなら、終盤の陽菜探しに協力してくれ、帆高の『暴走』を防げたのではないか…というシーンも幾つかある。運命の皮肉を感じずにはいられない。


◆高井刑事
声 - 梶裕貴
安井の相棒でリーゼント風の髪型をした若い刑事。
安井と同じく帆高を確保するべく行動する。
正義感は強いが感情的になりやすい性格で、相手の言い分に耳を傾けないようなところがある。
帆高に対して拳銃の発砲をさせないよう呟くなど、決して悪人というわけではないが、若さゆえに融通が聞かない面もある。
拳銃絡みの事件であるが故に視聴者も高井刑事に共感出来るが、よくよく見ると黒に限りなく近いグレーな行為*4を重ねてしまっており、その点からも青さが目立つ。

主人公目線では本作の『悪役(ヴィラン)』に近いポジションであり、上述の通り社会制度的な不備を体現するかのような場面もあるが、その彼もただ一刑事がやれる範疇で真面目に仕事をしているだけ(むしろ彼の目線から見れば、主人公は何をしでかすかわからず言うことも聞かない傍迷惑な少年である)。
という点も、主人公と色んな意味での社会の対立を描く本作において重要である。
職務上仕方ない部分もあるが、彼がもう少し帆高に手を差し伸べていれば、帆高が暴走するような事も起きなかったであろう感は否めない。
帆高とはあらゆる意味で対極、そして似た者同士。


◆冨美
声 - 倍賞千恵子
夫の初盆の日を晴れにしてほしいと依頼してきた老婦人。
盆の煙の意味や、昔からの信仰の中での天気と人とのつながりの意味を陽菜に教える。



◆スカウトマン木村
声 - 木村良平
新宿の違法風俗のスカウトマンをしているチンピラ。
陽菜を未成年と知りながら風俗の仕事をさせようとしたが、帆高に割り込まれ、危うく射殺されそうになる。
その時は完全にビビって腰を抜かしてしまうなど、所詮はいきがってるだけのチンピラである。

実はこれでも嫁と子供もいる。バチ当たり。


◆アメ
帆高がホームレス時代に知り合った野良の子猫。
帆高に懐いており、K&Aプランニングの事務所で保護され、そのまま須賀のペットになった。
結構お利口さん。

エンディングでは成長してすっかりデブ猫になっていた。








怖くないわけない
でも止まんない

ピンチの先回りしたって 僕らじゃしょうがない

僕らの恋が言う
声が言う

「行け」と言う







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最終更新:2023年10月28日 11:13

*1 これは「全力で力を使い果たすまで何かを追い求めるような物語を目指し、マイナスの動機に追い立てられる物語にしたくなった」という意図で敢えて詳細を伏せている。

*2 小説では両親と殴り合いのケンカをしたことが示唆されており、映画でも序盤では絆創膏を顔に貼っている。ただし、帆高当人も後になって「当たり前の生活の場所」と振り返っている他、夏美や須賀も帆高の入社祝いの際に「そんな理由で東京まで来たのか?」「馬鹿な奴だなぁ」と呆れている台詞がひっそり挿まれており、児童虐待等の深刻なニュアンスを含む関係性ではないようである。

*3 公務執行妨害は結構重罪であり、普通ならば三年後に新しくオフィスを構えることはまずできない。安井刑事が温情をかけてくれたのか、もしくはこの一連の事件自体が警察にとっても厄ネタだったのが幸いして不起訴や略式の罰金で済んだのだろう。

*4 作中、逮捕令状を提示出来ない任意同行の段階で、帆高を暴力でもって拘束してしまっていたり。刑事事件ではない家出人の帆高をこれまた任意同行であるにも関わらず追いかけまわしたり。公判が維持出来るか際どいチョンボが見て取れる