クレイジー・Dの悪霊的失恋

登録日:2022/02/13 Sun 21:28:18
更新日:2025/04/18 Fri 18:41:21
所要時間:約 7 分で読めます





鳥を見た。

まるで地上の出来事をつぶさに記録しようとする監視者のように

私が大切なものを失くしたあの日のエジプトの空を

それは漂っていた。




これは、なくしたものを探し求める者たちと、

ひとりの少年の物語。




「クレイジー・D(ダイヤモンド)の悪霊的失恋」とは『ジョジョの奇妙な冒険第4部』のスピンオフ作品である。

原作は『ブギーポップ』シリーズの作者であり、同じくジョジョシリーズのスピンオフ小説である『恥知らずのパープルヘイズ』を手掛けた上遠野浩平、作画は『ノー・ガンズ・ライフ』の作者であるカラスマタスクが担当。
ウルトラジャンプ2022年1月号より月刊連載開始。

コミックスは全3巻。
2023年6月には上遠野浩平による小説版も発売された。


【概要】

ジョジョのスピンオフは『岸辺露伴は動かない』や『デッドマンズQ』の様な原作者である荒木飛呂彦本人が原作の漫画作品か、他作者の場合は上記の『恥知らずのパープルヘイズ』や『The Book』のようなノベライズ作品としての発表だったため、他作者が漫画作品として公式のスピンオフを出すのは本作が初となる。

また、「部の間の空白期間」を描くという試みもシリーズとしては非常に珍しい例なのも特徴の一つ。
本作は「第4部」開始のおよそ1ヶ月前の前日譚として描かれているが、前作である「第3部」の後日談的な要素も強く、そちらからの登場人物やその関係者も登場している。
特に、再起不能になっただけで死亡していないDIOの部下達のその後が描かれている点はファンの間では話題となった。


【あらすじ】

1999年3月。

DIOの元配下であるホル・ホースはとある老婆から消えてしまったオウムを探しだして欲しいという依頼を受け、マライアにコンタクトを取る。
彼女の酒場にいたボインゴのスタンド、トト神の予言によってオウムの手掛かりとなる場所を突き止め、その地へと向かう。

その目的の地では花京院典明の従妹である花京院涼子が彼の墓参りに訪れていた。
帰り道、彼女は「DIO」の名が書かれた奇妙な漫画本を発見。
それはホル・ホースと共に行動していたはずのボインゴのトト神だった……。



舞台は杜王町──

これは彼のスタンドがクレイジーダイヤモンドと呼ばれる以前の物語。




【登場人物】

◆主要人物

スタンド:クレイジー・ダイヤモンド

4代目ジョジョにして、本作の主人公。変な前髪その1。
第1話ラストで暴走車をクレイジー・ダイヤモンドで殴り飛ばし、轢かれそうになっていたホル・ホースを救う形で登場。
クレDの能力は既に使用しているが、「スタンド」と言う概念がまだ彼の中で固まっていないせいなのか、4部初期によく見られた「完全な元通りにならない」形で治る事が多い。
ホル・ホースに対しても一度は警戒するが、妙なナリをしている彼のお前は他人を気にしててめえのスタイル決めるアホかよという言葉が琴線に触れ、彼を「兄貴」と称しながら打ち解ける。

なお、「クレイジー・ダイヤモンド」と言うスタンド名は4部本編開始時に空条承太郎が付けたものであるため、前日譚であるこの段階では名無しのスタンドである。
タイトルはあくまで分かりやすくするため、との事。


スタンド:皇帝(エンペラー)

「1番よりNo.2」がポリシーのDIOの元配下で、本作におけるもう1人の主人公。
老婆からの依頼を受け、脱走したオウムを探しに杜王町へと足を運ぶ。
過去にボインゴと組んでいた際、時計のズレのせいで大失敗してしまった反省から、腕時計を大量に身に着けている。(なお、本人は「オシャレ」と言い張っている)
本作ではボインゴとはぐれて1人でいた所、ひょんなことから仗助と出会い、彼と組む事になる。


  • 花京院涼子
本作のオリジナルキャラクター。変な前髪その2。
エジプトでDIOと戦い、命を落とした花京院典明の従妹。
典明本人は生まれついてのスタンド使いだったが、劇中描写からして彼女自身はスタンド使いではない模様。
彼の墓参りに杜王町を訪れていたが、その帰りにトト神を拾い、DIO*1の名が書かれていた事、そしてトト神の「能力」を悟った事で、それを使って以前から知りたがっていた「(典明の)死の真相」を知る為の行動を始める。


  • オウム
名前は不明。
後述する老婆のもとで飼われていたが、突如として姿を消してしまう
DIOの配下としてペット・ショップと共に調教を受けているという経緯から
ホル・ホースはスタンド使いであると判断している。



◆DIOの元・配下達

ホル・ホースについては「主要人物」の項目を参照。


スタンド:バステト女神

なんとケニーGと結婚し、現在では酒場を経営している。酒場には後述するオインゴ・ボインゴ兄弟も居候させている。
SPW財団からDIOに関する話を聞き、彼への忠誠心自体は無くなっているが、彼の配下として働いていた時の事を時折悪夢として見ているらしい。
第3部から10年経過してもグンバツな足や、ブチギレた時の顔芸ぶりも含めて容姿は衰えていない。


スタンド:ティナー・サックス

直接の登場シーンはない*2が、酒場を訪れたホル・ホースに幻覚越しに声をかけて会話をしている。
上述の通り、原作では全く接点の無かったマライアと結婚しているが、それらしい言及や描写がないため、現在何を仕事としているかは不明である。
少なくとも普段から酒場の周囲にティナー・サックスの幻覚を展開しているらしく、そのせいで迷宮と化した道を地元の悪ガキのケチな小遣い稼ぎに利用されている。そんな状態でどうやって営業してるんだ……


スタンド:クヌム神(オインゴ)、トト神(ボインゴ)

マライアの酒場に1ヶ月もの間、居候している。
オインゴは各キャラから言及があるだけで直接の登場シーンはない。

ボインゴの方はホル・ホースに「今後自分に関わらない」を始めとするさまざまな条件でトト神の能力で彼に協力。
彼と共に杜王町へとやってくるが、何故かトト神を残して行方不明になってしまう。
10年前から精神的にはともかく肉体的にも全く成長しておらず、日本語が話せる*3など本作きっての不可解な存在となっている。




◆その他

  • 老婆
「オウム」捜索の依頼人。
息子が可愛がっていた「オウム」を彼が死んでからも育て続けていたが、
鳥かごに鍵を賭けていたにもかかわらず突然消えてしまったために今回の件を依頼することとなった。
(SPW財団ではなくホル・ホースに依頼したのは危険と判断された場合、殺処分されてしまうと考えたから。)


  • 老婆の息子
故人。
元々はDIOの配下で調教師だったらしく、ペット・ショップや「オウム」の調教を行っていたのだが、
どういう訳か逃亡しようとしたために殺されてしまったらしい。


スタンド:ホルス神

DIOの配下のスタンド使いであるハヤブサ。故人(故鳥?)。
老婆の息子の写真に写っており、「オウム」共々彼から調教を受けていた模様。
息子からは実の子のように可愛がられていたが、過去の回想から自分の意思でDIOの配下についたと思われる。


スタンド:世界(ザ・ワールド)

ご存知、ジョースター家の宿敵たる吸血鬼。故人。
承太郎に倒され、その存在がこの世のもので無くなった今も尚、一部の配下達の心に強い呪縛を残しており、マライアは彼に関する悪夢を見続け、ホル・ホースは杜王町で彼の声を聞いた際に彼に対する精神的な敗北の記憶から凍り付いている。
また、涼子の回想などでもその存在について言及されている。


スタンド:法皇の緑(ハイエロファントグリーン)

かつてDIOと戦ったスタンド使い。故人。
本作では杜王町出身であるという設定になっており、彼の遺骨はこの地にて埋葬されている。
エジプトから帰国後に家族に何も告げずに承太郎達を消しに向かっており、次に涼子が行方を知ったのはエジプトで遺体として発見された時だったため、彼の死についてはある事ないことが言われたらしく、真相については涼子は知らない状態になっている。
承太郎やSPW財団からは詳細な説明がなかったのだろうか……?


  • 仮頼谷一樹
ぶどうヶ丘派出所で勤務する警官で、東方良平の部下。
オカッパヘアーと右頬の泣きボクロが特徴だが、自身以外を「愚民」「愚図」と見下し「頂点」を目指す野心家。
というのも、幼少期に祖父*4から「人間とは善人ぶっておっても内にドス黒い闇を抱えた浅ましく愚かな存在」「頂点を目指す者は下らぬ誇りや信念などに拘わらず最終的に勝てばよかろうの気持ちでいればいい」と教え込まれたため。
「世界の高みに立つ資格」を得る前に祖父は失踪するが、ボインゴとトト神と接触し「過去」と「未来」を手に入れたと歓喜する。




【余談】

  • 上遠野浩平氏は2013年発行の「かつくら(vol.5)」にて、現在執筆中のジョジョの二次創作作品として本作の名を仮称として挙げている。本作はこの作品をコミカライズした作品となっている。






あんたのそれ、ペンだよな?
手の中にいきなり現れたってことはよ
もしかしてあんたは俺と同類……
ってことになるんスかねェ~~


けどよお 同類つっても「ハイッ仲良くしましょ」ってなわけには
いかねっスからねェ~~


こいつ……
管理人か!!!


じっくり見せてもらうっスよ
あんたがどんな追記・修正をしたのかをよおお~~っ


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最終更新:2025年04月18日 18:41

*1 典明自身がDIOの名を口にしていた事、エジプトでDIO本人を目撃した事から帰国後の彼の奇妙な動向に関係があるのではと考えていた。

*2 マライア曰く「(ホル・ホースが)嫌いだから」らしい。

*3 ホル・ホースは世界中にガールフレンドがいると豪語していることから話せても全くおかしくない

*4 祖父は太平洋戦争時に諜報任務でスイスのサンモリッツァ向かった際に第二部のラスボスであるカーズと接触。その際に吸血鬼となった描写が見受けられる