父(あたしンち)

登録日:2022/05/27 Fri 23:58:26
更新日:2025/04/13 Sun 10:06:44
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はっは


この記事では、『あたしンち』に登場する父について紹介する。



概要

タチバナ家の大黒柱。母(妻)共々夫婦揃って作中で名前が呼ばれていない。

丸い頭に長い人中(鼻の下)と丸い眼鏡が特徴。水木しげる作品に登場しそうな顔つきをしている。
夫婦揃ってあまり顔と身体のバランスが取れておらず、耳がクマに近いレベルで上の位置にある。
職業はサラリーマンだが、「あたしンち」が家庭中心の作品であるためか職場での描写は皆無。


人物

口やかましい母とは対照的に家では無口であまりしゃべらない。
おまけに無表情で腰が重く、考えがミステリアスすぎて掴みきれない。ちなみに滅多に名乗らないが、一人称は「わし」(状況によっては「俺」の場合もある)。
思考が読めない時が多々あるが、長年連れ添っているだけあって母は些細な仕草などから割と父の言わんとすることを理解している(それでも斜め上過ぎて読みきれない時も)。

また普段顔にほとんど変化が見られず、セリフも「はっは」と発するのみ。そのため、喜怒哀楽の表現のほとんどはボディランゲージ頼り。
とは言ってもそこまで重苦しくはなく気さくな雰囲気はあるが。
一方外では腰が軽く、家族以外に対しては普通に会話する。若い頃も今より口数が多い。

母と同じく九州の田舎出身(大分県)で、大自然の中で育ったから(?)か言動が大胆すぎる……というか粗野で、非常にフリーダムな行動が多い。
例を挙げると、

  • 母との会話の返答が数日後
  • せっかちで、浴槽のカランの湯を注いでいる途中でも浸かる
  • おかわりが待てずカラのお茶碗をビール瓶の上に置きうっかり落としかける
  • 家族の誰かがじれったくしていて自分の行動が妨げられていると、しびれを切らして勝手に遂行してしまう
  • 年頃の娘がいる前で風呂上がり全裸で家中をうろつく*1
  • トイレの戸を開けながら用を足し、しかも水を流しているときの便座の水流で手を洗う
  • 外出時に便意を催すと近くで野グソをし始める
  • みんなで泣けるテレビドラマを見ていたら感極まって故意に電源を落とす
  • コンビニの商品を無意識に外に持ち出してしまう万引き目前の行動を起こす(流石にこれは本人も珍しく慌てていた)

……などなど枚挙にいとまがない。
そしてここに酒の酔いが加わると、

  • 知らない他人のカバンや靴を自分のものとすり替えて家に持ち帰ってきてしまう(稀に両方右足などという笑えない事態も)
  • 家の中のものを片っ端からゴミ袋に放り込んでしまう「捨て魔」と化す

などグレードアップ、というか悪化する。
しかも前者について母は「間違えて持ち帰ってきてしまったものが元々持っていたものより高価なら儲かったのでセーフ」と泥棒行為を容認する始末。いい年した大人がこれでいいのか……。

こう見ると破天荒っぷりが目立つが、外ではまともなこともあり、礼儀やマナーに関しては割と常識的。
自由人ながらも決めるところは決める、メリハリを持って振る舞える人物であると言える。
厚かましい母の非常識的な行いや、家族に対しての理不尽な行為をビシッと咎められる貴重な存在でもある。
ちなみに怒ると「このバカちん!」と声を荒らげるが、それすら越えてマジギレしている時は「ンチッ↑」と独特な舌打ちをする。口元は笑っているためあまりそうは見えないものの、最大級の不快感の表現なのでこれを見ると母はとたんに青ざめて大人しくなる。

一貫した趣味は酒、パチンコ、野球を中心としたスポーツ観戦。酒好きではあるがその味の良し悪しはあまり解らない。
また配管関係や機械系に強いようで、簡単な水道管や自転車、ドライヤーの修理は行える模様。サラリーマンというだけで職種は判っていないが、もしかしたら仕事もその方面なのだろうか?

こう見えても影響されやすい性格で、特に「男のカッコよさ」や「ダンディズム」を感じさせるものに惹かれる傾向がある。
ケチな母とは対照に、自分の気に入ったものはあっさり買ってしまう豪快さも併せ持つ(母も自分の旅行には頻繁に行っているが)。
ひょんな事から何かによくハマりだすが、熱しやすく冷めやすいタイプのためすぐに挫折し飽きてしまう。そのためアニメオリジナルエピソードでは扱いやすい

ちなみに迷信やオカルト系は信じていないリアリストで、どうやら自分で体験(経験)したことのないものには否定的な部分があるらしい。
曰く「幽霊は見たことないし、UFOは乗ったことないし、厄払いで払えるんなら災いじゃないだろう」とのこと。
また、トイレットペーパーがない時は普通のティッシュで尻を拭き、水に溶けないから詰まる危険があると指摘されても「詰まったことあるか?→ないから問題ない」と堂々言いきり、たばこの包装ビニールも可燃物として捨てるタイプ。ダイオキシンが発生するから危ないというみかんの指摘にも「ダイオキシンが発生するところを見たことあるか?→ないから問題ない、頑張ってゴミに燃えてもらえ」と宣う。

愛車はフォルクワーゲン・ゴルフ(初代)。

また、アニメエンディングテーマ『LET'S GO! あたしンち』の彼のソロパートも異常。
歌詞は「ほほほほほーいのほほほのほい」に始まり「びゅーんびゅーん」や「でゅわでゅわーん」など、9割が謎の擬音と笑い声という一種の電波ソング。
掴みどころがないという父の特徴を上手く表現している歌詞である。



家族との関係

家での無頓着さや傍若無人な様子からは想像し難いが、家族想いなことが窺えるエピソードは多い。思考回路の謎すぎるヒトだが、要所要所で確かな愛情が光るところも彼の魅力のひとつ。

見合い結婚で結ばれた。なお、父曰く母を選んだ理由は「人助け、かな……」。
母の取る行動には一人大受けしていることが多く、父にとって母は面白い存在なのかもしれない。
母を信頼しているのか、食事では箸を出されるまで一切動かず、おわかりも自分で入れないなど亭主関白を超えてもはや乳幼児のような様子が目立つ。
しかし母は母で父を振り回すこともあり、夫に必要とされていることには満更でもないようだ。ある意味ツーカーのいい関係が保てている。
母の作るトンデモ料理に対しては、みかんやユズヒコに比べると耐性があるようで、二人が文句を言うような夕飯でも騒がずに黙って食べている事が多い。そもそも酒>料理が優先順位な事もあるのだろう。
ただし、あまりにも酷い飯の場合には怒って出前を取るよう指示する。

かわいい愛娘。名前は父が付けた。
眼鏡を取ると、小さいもののみかんと似た目をしており、みかんの特徴的なは父からの遺伝。
雑巾の手形からみかんの昔の手形を思い出してひっそり成長を実感したり、みかんのファッションの勧めを聞いていないようでしっかり聞き入れていたり……と、母とは一転してみかんには好意的であるが、その好意は直接表さないツンデレ寄りな一面も。
特にみかんの幼少期にはかなり気にかけており、娘の散髪時に「髪は長い方がかわいいのでは」とこだわったり、ずっと面倒を見たがったりしていた。
今でもが近付いてきたときにみかんのになるなど(真意は不明)、父親としての振る舞いを見せる。

息子。ちなみに父は何気にユズヒコのことを名前の通りに呼ぶ数少ない人物でもある。
同じ男同士として、ユズヒコのみかんや母には分かってもらえないことを受け入れられる寛容さがある。
しかし、基本的にはやっぱり何を考えているかは分かりにくいので、ユズヒコとしては気まずく感じている。
時間ができたときに、たまに二人だけで昼食後の散歩や漁港に赴くことがあるが、父が野ションや野グソをするのをユズヒコが全力で阻止するなど、もはや介護同然。
なお、普段気にせず丸出しの父が健康ランドの大浴場でユズヒコのモノを見て凄んだことから「負けている」様子。

父を取り巻く人物

仕事の描写が少ない都合上、父の知り合いの描写も少ない*2が、アニメ「新あたしンち」では父が晩酌を交わすエピソードが78話中3つと多め。

  • 父の友人
CV.岩尾万太郎
父の仕事仲間の白髪のおじさん。
父と同じ九州弁で話し、居酒屋で彼や店主の夫妻と日常のあるあるをオムニバス形式で語り合う。
ただ、同僚であるにもかかわらず、仕事の話はしない。オフには仕事の話を持ち込まない主義なのだろうか。


名言

  • 出前取れ出前
母の料理が食べることすらできないと判断したときの常套句。父の代表的セリフの一つ。
巷では頭文字を取って「DTD」と略されることも。
アニメでは他にも「腹壊すぞ腹」など、「(名詞)動詞(同じ名詞)」の構文が時折現れる。

  • カーナビ使えたら迷えなくなるじゃないか
カーナビの代わりに母の道案内で二人でドライブしていたが、目的とは違う蕎麦屋に着いてしまい、そこで昼食を取っていたときの一言。
そこの蕎麦屋では他にはない綺麗な風景を見ることができた。
カーナビを扱いきれなかったことを母が嘆いていたが「お前がいる」とフォローする粋な一幕。

  • 甘やかしてるのはお前だ
ユズヒコに秘境に友達と釣りに行きたいと頼まれ、父はユズヒコに自身が昔使っていた釣り竿を託すことに。
執拗に反対していた母が釣り竿を渡した父に「甘やかさないで」と言ったことに対しての発言。
冒険をしたいというユズヒコの気持ち、そして成長のきっかけを後押しした。なおこの釣り竿は折れてしまったが、それを見てもいの一番に「楽しかったか?」と息子を労う心意気を見せた。

  • 女房は戦友だ
甥っ子・勝弘の結婚式で贈った式辞の一部。*3

「こいつを見てくれ」と言うなり母をこき下ろしたかと思いきや、今までもこれからも文字通り共に歩む存在なのだと説き、「女房は戦友だ。戦友ってのは、そいつのためなら命を張れるってことだ。横にいる優子さん(勝弘の結婚相手)のためにも命を張れ!」と激励。そして彼女に対しても「かっちゃんはいいヤツなんです。どうか一緒に戦ってください。お願いします」と結んだ。
なおこのスピーチはその場で出た言葉で、本来の原稿は母が持ってくるのを忘れてしまい、焦りと緊張から会場でヤケ酒を飲んで酔っていた状態だった。しかし「波乱万丈な結婚生活でも二人三脚で乗り越えて欲しい」という心からの新郎新婦への想いは会場に染み渡ったのだった。

普段は恐ろしいくらいマイペースで謎過ぎるヒトだが、酔いが回ったアドリブでもこれ程真摯な言葉が出てくる辺りに、彼自身が妻をどう思っているかが垣間見える。



「もういい、追記しろ、追記」

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最終更新:2025年04月13日 10:06

*1 当然股間はモザイクで隠されている。原作ではモザイクの色は肌色だが、アニメでは青色。

*2 下記の友人が出てきたのも単行本13巻からと結構遅め

*3 「こいつ(母)を見てくれ、昔は美人だったが今じゃコレだ。手だってガサガサだ。どこに出しても恥ずかしくないおばさんだ! 一緒に町を歩けるか? 俺は歩ける。というより歩いてきた。 結婚してからずーっとこいつと一緒に歩いてきた。 辛いときも、苦しいときも、ずっと……これからも二十年でも三十年でもずーっとだ! いいか、女房は戦友だ 戦友っていうのはな、そいつのためなら命を張れるってことだ」。