マチカネタンホイザ(競走馬)

登録日:2023/08/16 Wed 00:54:11
更新日:2025/02/10 Mon 03:42:04
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マチカネタンホイザ(Matikanetannhauser)とは日本の元競走馬

メディアミックス作品『ウマ娘 プリティーダービー』にも登場しているが、そちらでの扱いは当該項目参照。
マチカネタンホイザ(ウマ娘 プリティーダービー)

目次

【データ】

誕生:1989年5月7日
死亡:2013年12月7日
享年:24歳
父:ノーザンテースト
母:クリプシー
母父:アローエクスプレス
調教師:伊藤雄二 (栗東)
主戦騎手:岡部幸雄→柴田善臣*1
馬主:細川益男
生産者:稲原牧場
産地:平取町
セリ取引価格:-
獲得賞金:5億720万円 (中央)
通算成績:32戦8勝 [8-2-2-20]
主な勝鞍:95'高松宮杯(GⅡ)

【誕生】

1989年5月7日生まれの栗毛の牡馬。
父ノーザンテーストに似た巨大な流星が右鼻にかけて斜めに流れており、そのせいで鼻が曲がって見えることから、厩舎関係者の間では「ハナモゲラ」という愛称で呼ばれていたとか。

父は通算10回のリーディングサイアーに輝き、社台グループの基礎を築いたノーザンテースト。
ウマ娘のモデルとなった競走馬でノーザンテースト産駒はタンホイザだけだが、母の父となるとサクラバクシンオーエアグルーヴ、イクノディクタス、ダイワスカーレットトーセンジョーダン等が該当し、どこかでノーザンテーストの血が入っている競走馬まで広げると更に多くの数になる*2

母のクリプシーは牝系を辿ると二冠馬サクラスターオーやダービー馬ウイニングチケットらを子孫に持つ牝馬・スターロツチ*3に至る中々の名血。

名前である「タンホイザ」は19世紀ドイツの作曲家、リヒャルト・ワーグナーのオペラ「タンホイザーとヴァルトブルクの歌合戦」から取られている。
しかし「競馬と生産及び賭事に関する国際協約」、通称「パリ協約」の命名規則*4によって字数制限に引っかかってしまうため、
最後の長音を削って「マチカネタンホイザ」、英名「Matikanetannhauser」に落ち着いた。

【戦歴】

1991年9月の中京競馬場の3歳新馬戦芝1700mでデビュー。
デビュー戦をレコード勝利で飾る幸先の良いスタートになったが、3戦2勝の3番人気で出走した朝日杯3歳S*5は1番人気ミホノブルボンの4着に敗れる。

1992年のクラシックシーズンもミホノブルボンが無敗で二冠を達成する後ろで皐月賞7着、ダービー4着と負け続きで、
菊花賞では勝者ライスシャワーと2着ミホノブルボンに1 1/4+アタマ差の3着に食い込むなど好走を見せたが、無冠どころか年間0勝でクラシックシーズンを終える。

古馬となった1993年はダイヤモンドS*6をレコード勝ちし重賞初勝利。
目黒記念もライスシャワーを抑えて連勝し、メジロマックイーンの3連覇が懸かった天皇賞(春)に出走。
勝者ライスシャワーから大きく引き離されたものの4着と掲示板は確保。ちなみに3着メジロパーマーとは6馬身、ライスシャワーとは10馬身近くも離されている。
その後も重賞では勝ちきれないながらもオープン特別で2勝を積み重ねて有馬記念に出走したが、奇跡の復活を遂げたトウカイテイオーの4着*7

翌1994年も現役続行、アメリカジョッキークラブCを勝利したもののそこからはGⅠ含めて勝ちきれないレースが続く。
そしてジャパンカップ。有力候補と思われていたビワハヤヒデとウイニングチケットは共に天皇賞(秋)*8で屈腱炎を発症、引退したため出走せず、
GⅠ馬不在の日本勢にとっては日本総大将マチカネタンホイザが爆誕したのである。
しかしレース直前になって鼻出血を起こしていることが発覚。
鼻でしか呼吸できない馬にとって鼻出血は致命的になるため、直前になって無念の出走取消。なお勝ったのは日本の伏兵マーベラスクラウン。
容態も落ち着いて年末の有馬記念に出走…かと思いきや今度は蕁麻疹を発症してレース当日に出走回避。
「飼い葉に紛れ込んでいたクモを食べたからではないか」という逸話が有名であったが、これは現在では「『顔面だけの蕁麻疹』を指す厩舎の俗語『クモ疹』を本気にして報道した社がいた結果の俗説」というのが通説となっている*9

こうしてGⅠを2連続で出走回避してしまったが、1995年も気を取り直して現役続行…かと思いきや、今度はフレグモーネ(蜂窩織炎(ほうかしきえん))を発症し休養を余儀なくされる。
話題は前年の三冠馬ナリタブライアンに搔っ攫われ、長らく競ってきたライスシャワーもこの年の宝塚記念で姿を消し、期待も薄くなってきた中での復帰戦は高松宮杯*10
1番人気のヒシアマゾンが、普段は最後方からの追い込みのハズがなんと掛かってしまったため逃げに打って出る大波乱の展開。
一団となっての大混戦、ヒシアマゾンにつられてペースを上げていた馬が下がっていく中で、外から飛んできたのがマチカネタンホイザ。

内からアイルトンシンボリが突っ込んで、マチカネタンホイザ!
外からマチカネタンホイザ!マチカネタンホイザ!
…こんな競馬は久しぶりに見ました、ビックリしました
思いもよらない展開でした

実に1年半ぶりの勝利。この時中京競馬場のスタンドに押し寄せた6万2000人の観客からはG1もかくやとばかりの大歓声が巻き起こったという。
なおこの高松宮杯だが、翌年からGⅠに昇格している
昇格が1年早ければGⅠホースになれていたと考える人もいるかもしれないが、高松宮杯はGⅠ昇格と同時に短距離1200mという全く別物のレースとなったため、間が悪かったというわけではない。
しかしこれが最後の輝きとなったのかそれ以降は掲示板にすら届かず、12月のステイヤーズステークス7着を最後に引退した。
通算戦績は32戦8勝[8-2-2-20]、獲得賞金は5億1752万7400円。
シルコレでもブロコレでもなく4,5着が多いというどうにも残念な印象の反面、栄えあるノーザンテースト産駒の中で最高額を稼いだ。

【引退後】

引退後は種牡馬入り。
ノーザンテーストの後継種牡馬として期待されたものの目立った活躍馬は現れず、またタンホイザ以外のノーザンテースト産駒からも後継種牡馬が現れなかったり夭逝してしまったため、日本国内から父系ノーザンテーストの競走馬は消えてしまった。
だが、中国に輸出されたメジロアルダンの子孫が大成功を収めノーザンテーストの父系を継いでいる。
種牡馬も引退した後は功労馬として小須田牧場に後輩のマチカネフクキタルとともに繋養される。
ちょっかいをかけられても食事中以外は軽く受け流すなど仲良く過ごしていたが、2013年12月7日に死去した。

【創作作品での登場】

  • 『優駿たちの蹄跡』
第17戦「一生懸命ハナモゲラ」の主役馬。
現役時代のエピソードが当時調教助手を務めていた早川仁史氏の視点で描かれる。
もちろん鼻出血と蕁麻疹も拾われている。

95年のレースを元にした7巻収録「出たぜタンホイザ」と8巻収録「それって不安夢」で主役を張っている。
前者では前年のジャパンカップと有馬記念に出走できなかった鬱憤を高松宮杯にぶつけようとするも、ライバルとして目を付けた相手が続けざまに回避した事で自分のことを棚に上げて逆ギレ、そのまま勢いで勝利した。
一方、後者ではジャパンカップと有馬記念に出走できなかったトラウマからくる様々な理由で出走できなくなる不安夢で寝不足に陥り、巻き込まれたナイスネイチャと揃って惨敗している。
当然鼻出血と蕁麻疹にも触れられている。

91~93年をモデルにしたアニメ第2期に際して新登場した、自称「普通」の天然真面目少女。
本人は「普通」である事を気にしているが、そういうところが逆に突き抜けているどころか普通に変人である事には気付いていない。
ハナモゲラ要素が髪色だけでなく、「帽子を片耳に入れて斜めに被っている」という形でも表現されている。
やっぱり鼻出血と蕁麻疹はネタにされる。
中の人の演技もあって「えい、えい、むん!」などクセになるフレーズを生み出すことに定評がある。


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  • 岡部幸雄
最終更新:2025年02月10日 03:42

*1 他にも武豊や柴田政人、田中勝春といったジョッキーの騎乗経験もある。

*2 ノーザンテーストを母母父に持つステイゴールドの血が入っているゴールドシップやナカヤマフェスタ、父父にノーザンテーストを持つメジロライアンやその産駒であるメジロドーベルやメジロブライトらが該当する。

*3 発音はスターロッチ。1960年牝馬優駿のほか、初の4歳(現3歳)牝馬で有馬記念を勝利。半妹にミホノブルボンの母母母にあたるカミヤマトがいる。

*4 「空白部分・記号も含めて18文字」「外国語に由来する馬名は原則原語表記」

*5 現・朝日杯FS

*6 現在は3400m。当時は3200m

*7 2着ビワハヤヒデ、3着ナイスネイチャ、6着メジロパーマー、8着ライスシャワー、11着ウイニングチケット

*8 勝者ネーハイシーザー。タンホイザは9着

*9 ソース:2022年1月14日中日スポーツ掲載、若原隆宏記者の記事『「食ってないよ」…マチカネタンホイザ有馬記念取消事件の真相に迫る』より。真面目に検証しているので参照されたし。えい、えい、むん。 URL:https://www.chunichi.co.jp/article/399912

*10 当時はGⅡ。夏開催の芝2000m