デズナラク8世

登録日:2023/09/03 Sun 00:00:14
更新日:2025/05/17 Sat 11:05:07
所要時間約 10 分で読むがいい






バグナラクは死を恐れない……。

下等生物が死に尽くすまで、殺し合うだけだ!



デズナラク8世とは、スーパー戦隊シリーズ第47作『王様戦隊キングオージャー』に登場する敵キャラクターである。

CV:志村知幸
スーツアクター:清家利一



【データ】

体長:196cm(異常成虫時:48.8m)
重さ:157kg (異常成虫時:390.9t)
分布:シュゴッダム(朝、昼)
好物:チキューの大地
観察ポイント:実はシュゴッドとの共生を望んでいたのか、人知れず小型シュゴッドのタランチュラアビスを守っていたようである。


【概要】

チキューの地下深くに広がる非公認国家・地帝国バグナラクの現国王。
通称「奈落王」で、テレビ朝日公式サイトで「昆虫界のナラクキング」とも称されている。
ミミズのBNAを備えた漆黒の体と黒いマントが特徴的な異形の姿の持ち主で、全身の各部からモチーフ元を思わせる赤く太い触手を複数伸ばし、顔中に散りばめられた琥珀のような目を持つ。

先祖が人類とシュゴッドに敗れ、地下へと追いやられてからの2000年の間に戦力を蓄え続け、チキューから人類を殲滅するべく、怪ジームやサナギムを指揮して地上の五王国に攻撃を仕掛けてくる。


【人物像】

一人称は「私」または「我」
地底へと追放された過去から人間を「下等生物」と蔑み、事あるごとにその抹殺を口にするなど、人間に対しては凄まじい憎悪を燃やしている。

その大きさも並大抵のものではなく、本来ならば庇護対象であるはずの国民や部下にすら一人でも多くの人間の殺害を最優先させて、「人間を殺せ」「己が死すとも殺せ」という過激な教えを吹き込んでいる。
加えて、敗走や負けて無様を晒すような真似を極端に嫌っており、命からがら逃げ帰ってきた部下に対して「負けて死ぬなら戦って死ね」と吐き捨てて乱雑に扱うなど、
もはや人間への勝利のみを妄執する過激思想に染まり切っており、暴力に物を言わせて全てを捻じ伏せんとする乱暴な振る舞いは邪悪の王そのものと言える。
そのため、彼が戦場に現れると朝の子供向け番組とは思えないくらい「死ね!」「殺す!」の単語が多く飛び交う。

特にジェラミー・ブラシエリに対しては同じバグナラクの血を持ちながらも人間にも肩入れし、自分達の邪魔をしたり煙に巻くような態度でのらりくらりと振る舞うその姿勢から、「半端者」呼ばわりして心底嫌っている*1
だが、そんなあまりにも猪突猛進過ぎる姿勢のせいで貴重な兵力を無駄に消耗させる欠点もあり、物語中盤ではそのせいで一度は死んだダイゴーグをわざわざ蘇らせる羽目になるなど、バグナラクの国力をただひたすらに消耗させる悪循環に陥っている。

その一方、カグラギ・ディボウスキに騙されてトマトを手渡された際に一瞬唖然としたり、ジェラミーから聞かされてきた三大守護神の寓話を一字一句そのまま覚えていたりと、厳つい見た目に似合わず意外と純朴な姿を垣間見せる事も多い。
加えてチキューの環境そのものに影響を与えかねない作戦を実行するとなった際には、「許せチキューよ…」とどこか申し訳なさも見せており、
あくまでも憎んでいるのは人間だけで、チキューに対しては少なからず愛着を抱いていることがうかがえる。



【戦闘能力】

武器は自身の腕から生成した「蛇腹剣ナラクレイモア」で、赤い斬撃を放って周囲を薙ぎ払う。
また、体中から生える伸縮自在の触手も武器となり、地面に突き刺して土壌からその養分を吸い上げることも可能。
さらにはそうして吸収したエネルギーを怪ジームに注ぎ込み、片腕がクローワームに変化した強化態へ変貌させることもできる他、サナギムに突き刺して吸収する形で捕食する描写もあった。

昆虫最終奥義はマントを脱ぎ棄て、無数の触手で相手を強襲する「デステンタクルズ」で、巨大化させて振るえば高層ビル群を容易に薙ぎ倒し、瓦礫の山に変える力を発揮する。

このように攻撃に特化した能力を備えるが、特筆すべきは歴代敵首領の中でも類を見ないほどのフットワークの軽さ
一国の王という立場でありながら、部下達への士気の向上や敵への牽制も兼ねて頻繁に前線に出撃し、自ら王様戦隊の面々を迎え撃つことも一切厭わない。
実際に第9話では「平時は王様達はそれぞれ自国の城にいる」点を利用し、4王国を彼本人が直接襲撃してギラ以外の4人に重傷を与え全滅させる大金星を挙げた。

「奈落王」の肩書は伊達ではなく、王様戦隊も1対1なら容易に下し、異常成虫になればゴッドキングオージャーと正面から戦えるようになるなど、当代の王に恥じない実力を持つ。
一方、2000年近く生きてきたジェラミー=スパイダークモノスには常に翻弄されていたり、団結した王様戦隊には押されているなど、苦戦する場面も割と少なくない。


【光を求めて彷徨い続けた奈落王を待つモノ】


我はバグナラクの王、デズナラク8世!
森羅万象の区別なく……我が深淵が喰らい尽くそう!!


人類掃討の為、カメジムの入れ知恵もあって様々な策を講じるも、そのどれもが王様戦隊の活躍によって無に帰してきた状況に苛立ちを募らせたデズナラクは、
ザリガジームにチキューの核にまで届くトンネルを掘らせ、異常成虫になった自分がその中に飛び込み、マグマのエネルギーを取り込んで内部からチキューの何もかもを破壊して宇宙の藻屑に変える「チキュー破壊計画」を発動。
人類を掃討してバグナラクが平穏に暮らせる世界を作る今までの目標を廃し、人類もバグナラクもチキューもまとめて全て消滅させる壮大な自爆作戦は、追い詰められた彼が取れる最後の手段だった。

カメジムやジェラミーから止められるも、「人類を殺し尽くし、我が深淵で塗り潰す。それのみがバグナラクの汚名をそそぐのだ!」と、
もはや一族の憎悪を晴らすことしか頭にないデズナラクはその制止をことごとく振り切り、非情に徹しきれないスパイダークモノスが他の王達を制止したことも手伝って、遂にチキューの核に突入してしまう。


明るい……


そうしてチキュー内部に到達したデズナラクは、マグマのエネルギーを取り込んでチキューを徐々に蝕んでいくが、そこへ臣下や国民達を揃えた王様戦隊の駆るゴッドキングオージャーが到着。
79秒という短い時間で熾烈な攻防戦を繰り広げるも、マグマの中から引きずり出されて地上に戻され、体も元の大きさに戻ってしまう。

そしてその直後、ジェラミーからバグナラクの王座をかけた決闘を申し込まれる。
当然「半端者」の言うことなど聞き入れる気のなかったデズナラクだが、ジェラミーから本気の証としてクモノスレイヤーを預けさせられると、半ば仕方無くそれを了承。
この時、デズナラクの体は異常成虫の反動で既にまともに戦える状態ではなくなっていた上、
むざむざと実質的な敗走を喫したために彼をバグナラクの恥晒しと認識したサナギム達からも「シニゾコナイ!オウノザ、ヨコセェ!」「バグナラクノオウハ、オレダァ!」と吐き散らしながら王座を奪わんと襲い掛かられる始末*2であり、あらゆる意味で余裕は無くなっていた。

決闘の日当日を迎えると、バグナラクの王の間にてジェラミーと対峙し、クモノスレイヤーを返すと、5人の王が見届ける中でスパイダークモノスと激しい戦いを繰り広げる。


森羅万象ことごとく、我が深淵に飲まれて死ねぃ!


背水の陣の覚悟で残る力の全てを振り絞って力を振るうが、「スパイダーフィニッシュ」を喰らって地上のシュゴッダムまで吹き飛ばされ、勝負はジェラミーの勝利に終わった。
ジェラミーはデズナラクにも手を差し伸べるが、未だに人間との共存を否定するデズナラクはそれを突っぱね、見かねたジェラミーは遂に彼に止めを刺そうとする。
……しかし、その手を止めたのはギラだった。


先に手を出したら悪とか、勝ったら正義とか……全部間違ってる!

本当に大切なのは、どっちが先に謝れるかだ。


そうしてギラはデズナラクに対し、頭を下げて謝った。
この行いにデズナラクは激昂するが、ジェラミーはそんな彼を取り押さえ、ギラの言葉に耳を傾けるよう訴える。

バグナラクが復活してからの戦いにおいて、バグナラクは先に手を出し、地上の五王国の何もかもを破壊して蹂躙したのは紛れもない事実である。
当時はただの一般人だったギラも巻き込まれた被害者の一人であり、それは許せない所業だが、自分達人間も守るためとはいえ、バグナラクの民を何人も手に掛けてきた───罪があるのは自分達も同じことだった。


情けか、哀れみか…下等生物如きが舐めるな!

人間を舐めるな!


たとえバグナラクが勝っても、人は必ず立ち上がる。何千年かけてでも復讐する。

人間もバグナラクも同じなんだ。

それが、何万年も繰り返すだけなんだ……だから、ここで終わらせる。

……ごめんなさい。


力説の後、頭を地につけてもう一度謝罪するギラ。
人として、王として、民だけではなくずっと敵対してきた自分達すらも守ろうとするその姿にデズナラクも心を打たれたのか、握りしめていたナラクレイモアを思わず手放した。


これで…こんなことで、終わるのか?

そして始まるんだよ…。お前さんも、本当はそれを望んでいたはずだ!


2000年間、拗れに拗れた因縁に終止符を打とうと、心を鬼にして戦ってきたデズナラク。
そんな自分の戦いと苦労が、たった一言で終わることへの悔しさ、そして長きに渡って続いた戦いが本当に幕を閉じるかについての疑問……少なからぬ安堵。
様々な感情が心の中で渦巻き、困惑する中、ジェラミーからも言葉を受けたデズナラクは答えを出そうとする。

だが、そんな彼の体を一筋の瘴気を帯びた刃が貫いた。
それは側近だったはずのカメジムの武器・ムシマルピンだった。


いけませんいけません。最後まで戦っていただかなくては……

カメジム!

喧嘩両成敗、引き分け、痛み分け……吐き気がするほどつまらない!
私が丁寧にお膳立てした戦いを、台無しにはさせません。


なんとここに来てカメジムこそが2000年以前からチキューで暗躍し、人類とバグナラクに憎しみを植えつけて戦わせていた張本人だったという衝撃的な事実が判明。
敗者となったデズナラクはカメジムに用済みと見なされ、そんな彼を処刑しようと天に謎の光が集まり始める。

串刺しにされ、動けないデズナラクを助け出そうと必死にピンを抜こうとするジェラミーだが、デズナラクはそんなジェラミーに最期の言葉をかける。


光の届かぬ奈落の底、人が忌み、恐れ、嫌う場所で、我らは生きている。

しおらしくするなデズナラク!

だが、木と水と大地と同じ、森羅万象と共に我らは生きている。

お前が王となり、認めさせてみせろ……! 『バグナラクは、ここにいる』と!

お前さんも一緒だ!

……明るい……


直後、デズナラクはジェラミーを突き飛ばすと、天から降り注ぐ謎の光を浴び、灰と化して消滅した。

地上に侵攻し、五王国に少なからず被害をもたらしたその罪は非常に重く、「過去の事情について深くは知らない現代の人々を一方的に敵視する」という皮肉にも自分がずっと人間達から受けてきた仕打ちをそのまま返してしまっていたデズナラクにとって、
最期を迎えるまで真相に気付かぬままカメジムという真の黒幕の掌の上で踊らされ続けた事実は、他者に背を向けるような真似を何より嫌う彼としてはある種の因果応報と言える。
しかしながら、本来ならば自ら他の命を守ろうとする程の心優しさを持っていながら、2000年間続いた誤解による因縁と偏見によって暴君としてしか振る舞う以外に自分を保つことも、
国のために働くこともままならない程に追い詰められた点には同情の余地があり、最後の最後で元の優しさを取り戻し、敵対していた者達も認めようとするだけの器を持っていたことも確かであった。

他の国家と手を結べずに自分達だけのプライド・自国及び自国民の利益に執着していったその姿は、序盤に強く見られた自国の利益ばかりを優先する4王国の王達のあり得た可能性にも見え、
同時に彼もまた、それ程の孤高の暴君へ変えられてしまった世界の被害者とも評することができよう。
せめて最後の最後に人間とバグナラクの和解の道を解放できたことは、人間との戦いに疲弊を感じかけていたデズナラクにとって救いになったと言えるかもしれない。

またバグナラクを欺き、地底へと追いやった黒幕たるカメジムに対して憎しみを向けず、求め続けた天の光に想いを馳せながら果てたのも、彼が憎しみから解放されたことの証左と思われる。

その後、カメジムは新たに王となったジェラミーを迎えた王様戦隊のゴッドキングオージャーによって倒され、デズナラクを始めとした多くのバグナラクの無念は晴らされた。
そして、デズナラクが散ったその場所……彼の実在を確かに刻む墓標として、その影が残るそこに訪れたタランチュラアビスは手向けの花を贈ったのだった。

後に第45話にて、ジェラミーやサナギムたちの手で、バグナラクの国内に専用の墓が作られていたことが明かされた。


【余談】

  • 名前の由来は、奈落と「死」を意味する英単語「death」

  • モチーフ元となったミミズは、その独自の見た目から不快害虫と同じく人間から忌避の対象にされがちな生き物だが、土を耕して栄養分が貯まりやすくしてくれる役割もあり、地球には欠かせない存在である。

  • 身に着けているローブをよく見ると、王様戦隊の6人のスーツと同様に自身の国であるバグナラクの国章がある。

  • 演じる志村氏は、過去に『烈車戦隊トッキュウジャー』にてサーベルシャドー役で出演していたが、スーパー戦隊においてレギュラーとなったのは本作が初。
    さらに言うとニチアサキッズタイム作品のレギュラー悪役を演じたのは『スマイルプリキュア!』のウルフルンから11年ぶり。
    渋めの声質ながら饒舌だったウルフルンとは打って変わって、押し殺したような声で声で重々しく喋る本作での演技のギャップに驚いた視聴者は少なくないはず。

  • タランチュラアビスが最後に彼に手向けた花はマーガレット花言葉「私を忘れないで」「優しい思い出」



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最終更新:2025年05月17日 11:05

*1 ただし、心底嫌い始めたのはジェラミーが第12話以降、ギラ達側に寄せた行動を取ったためであり、それ以前は言い伝えの件などでバグナラク側に寄せた行動をしていたので普通に接していた。

*2 とはいえ、戦闘員である彼ら程度ならばまだ一蹴できるだけの余力は残っていた。

*3 奇しくもこの時の姿は王鎧武装・凌牙一閃と似ている。