巨大化(スーパー戦隊)

登録日:2016/02/17 Wed 06:47:46
更新日:2025/06/01 Sun 14:59:30
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巨大戦――それはスーパー戦隊シリーズの歴史上、無くてはならないイベントである。


【概要】

元々戦隊側の巨大メカは『秘密戦隊ゴレンジャー』の頃から登場していたが、専ら移動用か敵要塞・戦闘機との交戦に使われるのが多かった。
しかし、『バトルフィーバーJ』以降に巨大ロボが登場してからは一変。
一度倒されるか追い詰められた等身大の怪人が何らかの要因で巨大化し、戦隊側も巨大ロボで応戦するというパターンが誕生した。

遡れば東映特撮は『ジャイアントロボ』や『大鉄人17(ワンセブン)』で巨大戦のノウハウを蓄積し、『ジャッカー電撃隊』と『バトルフィーバーJ』の間に放送された『スパイダーマン』では日本の視聴者向けの派手な演出として「等身大ヒーロー+巨大戦」の形式を発明した。

巨大化のパターンは戦隊ごとによって違うものの、たいていは以下の4通りに分けられる。
  1. 幹部又は首領自らが巨大化させる
  2. 巨大化アイテムで巨大化
  3. 怪人が自力で巨大化
  4. 巨大戦専用マシンを召喚

巨大化後は基本的に等身大と同じ姿だが、中には姿形が変化する存在も。
演者である女優の素肌が露出したセクシー系の怪人など、巨大戦には不向きなデザインの怪人がよく巨大化後に姿を変えるが、姿を変えた怪人は凶々しさが増すためパワーアップとしてもわかりやすい。

轟轟戦隊ボウケンジャー』や『忍風戦隊ハリケンジャー』ではこの巨大化のパターンが幹部ごとに違うという演出がなされている。
それではここからは各項目ごとに詳しく解説していこう。

【パターン】

1.幹部又は首領が自ら、或いは専門職の部下を使用して巨大化させる


大地に眠る悪霊達よ…ドーラ〇〇に、力を与えよ!
オルグシードよ!消えゆかんとする邪悪に、再び巨大なる力を……!ハァッ!!鬼はー内!福はー外ーっ!!
ドーザ・ウル・ウガロ!
妖術・肥大蕃息の術!

スーパー戦隊シリーズで一番多い巨大化パターン。
本拠地又は現地にいる敵組織の幹部又は首領が怪人に何らかのパワーを与えて、再生(もしくは復活)させてから即座に巨大化させる方法である。
幹部によってはこの能力によって存在意義をアピールしている者も多い。
巨大化させる方法は様々で、なんらかの術や装置、道具を用いたり、後述のパターン2のようにアイテムを投擲・投与するパターンもある他、中には宇宙忍群ジャカンジャのように怪人の種類に応じて手段が変わる組織も存在する。

しかし幹部の状態によっては巨大化させることが出来ず、怪人がそのまま倒されることもあるようだ。
バンドーラは空腹のあまり怪人を巨大化できなかったことがある
中には「巨大化担当幹部が死んでいたので怪人が倒されても巨大戦ができず、自分も敗れた首領が切り札として移動要塞で巨大戦を始めたらそれを破壊され全滅」という、
組織崩壊の原因になってしまったジャシンカ帝国の惨事もある。(旧仕様の進化獣では「自動で巨大化」だった事も含めて皮肉な展開である)

また、中には「巨大化対象を問わない」ものもあるのが特徴。
つまり、その気になれば敵怪人以外にも戦闘員や一般人、場合によってはヒーローでさえ巨大化する事が可能なのだ。


2.巨大化アイテムで巨大化


こうなったら…。本当は抹茶ケーキの方が好きなんだけど、えぇぃ…!芋羊羹だ!
バルバンの魔人は、バルバエキスを飲む事で巨大化する。だがそれは、自らの命をも縮める、 まさに最後の手段でもあるのだ!
闇の世界の力よ、最後の力を!アミアス・アミアス・アミクロス!災魔復活!
サンギョウカクメーイ!

2番目に多いパターン。
専用の巨大化アイテムを怪人が自ら使用したり、幹部が倒された怪人に与えたりするもの。
爆弾ドリンク、果ては芋羊羹なんて変わり種も。

しかし度々戦隊側にそのアイテムを奪われる、もしくは破壊されるなどの妨害で巨大化できず、そのまま倒されるというパターンも存在する。
基本的に怪人の体質に依存するものが多く、一般人などには使えない、あるいは使っても効果がない場合が多いのが特徴。


3.怪人が自力で巨大化


ビッグバン・プログレス! 超進化獣○○シンカ!
臨技! 邪身豪天変!
こうなったら大きくなってやる!
驚いてるだろうねぇ、アナザーアース人…

怪人が自らの力で瀕死の状態から復活し、様々な能力、もしくは体質で巨大化するパターン。
  • エネルギーを大量に吸収する
  • 自らの技で巨大化する
  • 一度倒されても自動的に発動して巨大化復活する
など作品によっては様々である。幹部の能力もアイテムも必要ないので、妨害される心配が少ないというメリットがある。
「普通の怪人は1.か2.だが、幹部格やボスキャラは自力で巨大化できる」というパターンもある。


4.巨大戦専用マシン/怪人を召喚


弟よ~!(妹よ~!)
リフレッシュパワー!
敵メガゾード、転送反応あり!
闇エナジーが満ちた!行け、邪面獣!

等身大戦の怪人自身は巨大化せず、専用の巨大メカや巨大ロボット・怪人が現れたり、倒された怪人の姿をコピーしたメカ等が代わりに戦うパターン。
その都合上、等身大の怪人が倒されることが必須ということも。
メカは怪人によって様々な改造が施されている場合もあり、同じ種類のメカでも大幅に性能が違うことがある。
このタイプを利用する怪人は少ないが、導入は『バトルフィーバーJ』であり何気に戦隊の歴史では一番最初に考案されたパターンだったりする。

このタイプなら、巨大化(登場)に失敗する事はまず無いのが利点。
…と思いきや、『ファイブマン』にて「巨大戦担当がすっ転んでそのまま退場」という珍事が起きていたりするので奥が深い。

バイオマン』の敵組織・新帝国ギアは怪人自体が存在せず、
ビッグスリーが呼び寄せる巨大ロボ・メカジャイガンおよびネオメカジャイガンが巨大戦を務め、バイオロボがそれを迎え撃つというパターン。
『デカレンジャー』でもこれを踏襲。基本的にはアリエナイザーエージェント・アブレラから購入した巨大メカ・怪重機*1を駆り巨大戦に移行するというものになっている*2
このためアブレラも商品としての魅力には気を遣うようで、機種は文字通り毎週違うものが登場している(ほぼ再登場に近い回自体は結構ある)。つまり新型機の制作~販売開始をすごく早いペースで行っている事になる。

ゴーバスターズ』のヴァグラス側のメガゾードはメタロイドが誕生するとすぐにその能力をコピーし、
(時間差や出現する場所の誤差はあるものの)怪人と同じ場所に現れるという方法で出現するため、
「等身大の怪人の相手をしつつ、巨大戦を同時進行で行う」展開を可能としている。後に『キラメイジャー』の邪面獣でも同様の手法がとられた。

ちなみに仮面ライダーやアメコミ映画のように「ヒーロー同士の対決」があまりないためなのか、戦隊ロボ同士の対決はレアな部類に入る。
せいぜいそれ以前から対立関係が描写されていた『ハリケンジャー』『アバレンジャー』の様なケースか、そうでなければ怪人によるハイジャックが行われた回が大半である。
後者は「作劇上は巨大化と同じ」とは言えるかもしれないが。


番外編

  • 巨大化した怪人がパワーアップする
怪人の中には巨大化すると等身大の頃よりパワーアップする者も存在する。
例えば『シンケンジャー』のフタガワラは巨大化すると両腕の板が等身大より大きくなり、攻防一体の武器として機能する。
また『ゴーオンジャー』のオイルバンキは、巨大化している最中にヒラメキメデスによって改造された強化形態「第二次サンギョウカクメイ」でエンジンオーやガンバルオーを苦戦させている。

  • 最初から巨大
怪人の中には新帝国ギアのメカジャイガンや邪命体エヴォリアンのギガノイドの様に元々巨大サイズの敵も存在し、登場後そのまま巨大戦に入ることになるパターンもある。
また、そういった怪人達は自らの力を制御することで等身大になり、大ダメージを受けると本来の巨大な姿に戻ることもある。
魔法戦隊マジレンジャー』の冥府神がその最たる例と言えよう。

  • 量産型巨大戦要員
『シンケンジャー』で大ナナシ連中や切神が登場したのを皮切りに、巨大化に対応した戦闘員や、量産型巨大怪人、搭乗型の量産型巨大ロボットといった使い回しの効く巨大戦要員も時折登場するようになった。
主に巨大化した怪人に取り巻きとして使役されるか、「今週の怪人はシナリオ上倒す訳にはいかないが、玩具販促のために巨大戦をやらねばならない」といった事情のある時に代理として登場し、
等身大戦闘員と同じく戦隊ロボに斬られて強さをアピールするのが仕事。



【巨大化の変遷と一覧】











このように敵怪人の巨大化は戦隊になくてはならないものになっている。
しかしその反面、この要素は怪人の死亡フラグ、敗北フラグとしても有名である。
等身大の時は戦隊を押していたのに、巨大化したらロボの必殺技で逆転勝利というのは良くあること。
中にはバルバエキスの様に使用したら死亡が確定するものや、アヤカシの二の目の様に死亡して初めて巨大化できるなんてパターンも。

但し例外も多く存在しており、巨大化してロボに倒されても生き残る怪人やもちらほら。
そういった怪人は妙に人気が高く、得てしてファンから愛される傾向にある……かもしれない。
逆に巨大化して倒されはするが、等身大戦でも巨大戦でも戦隊を大きく苦しめ、ときには戦隊がリターンマッチを挑むような怪人はみんなのトラウマになるパターンも多い。



追記・修正は芋長の芋羊羹バルバエキスを摂取しながら、
ビービ虫とオルグシードを体に取り込んだ後、スクスクジョイロの水を浴びてからお願いします。


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最終更新:2025年06月01日 14:59

*1 当時、現実の警察・防犯界隈で「重機でATM施設やサラ金の無人取引施設をぶっ壊し、文字通りの意味で現金を取り出す強盗」の続発が問題視されていたのも元ネタか?

*2 アリエナイザー本人が巨大化する回もあるが、その場合は「そういった体質を持つ人の星から来た犯罪者」「そういう技を身に着けていた」など、基本は3.に近い説明が本人やナレーションの古川さんからなされる

*3 モズーとの相違点として「1:脚部が機械的なデザインになっている(全機体)」「2:頭部にコックピット(空色のドーム状のパーツ)がある(クジャクコングのみ胸部にある)」「3:体に装飾品があるモズーはそれが無くなっている」「4:デスダークのマークである『赤い目の紋章』が胴体にある(ドクガコング以後)」「5:ごく一部のみ、手が大型化しているものがある。」などがある。

*4 同話のコンピュータードラゴンはカー将軍が死ぬ間際に巨大化させて間一髪で間に合っている

*5 死体にも効果がある一方で、生きたトカゲを巨大化させた事もある。最終回では「メモリードール」という機械も巨大化させた。

*6 盗賊騎士キロスが作戦を指揮した場合はこのパターンだった

*7 ヤミマルは、中盤でキリカとの合流を経て強化形態になっている

*8 ちなみにこの回では、ヤバツエコンビはなぜかプリクラにはまっていたため、戦場に出ることはなかった。

*9 一応、従来作でも『ジュウレンジャー』のプリプリカンなど、ほぼ同じ問題を抱えている敵組織の例はあった。エヴォリアンが特異なのは、速筆型と遅筆型の2人による実質的な当番制となっていた点である

*10 実際にインフェルシア最深部の彼らのアジトではこちらの体格で過ごしている(ナイ・メア、バンキュリアと一緒に画面に入るシーンがあるのでわかりやすい)

*11 一番槍を務めたイフリートの様子を見るに、「マジレンジャーが阻止に成功するチャンスを与えること自体は必要」「そのためにはある程度でいいからあっちに合わせるべき」と判断していると思われる

*12 SLマニアの設定は芳ちゃんと京都に行った回で確認可能。

*13 そのため『スーパー戦隊バトル ダイスオー』には設定上本当にマジレンメンバーにのみ対応のマジキングは収録されず、いきなり「当時の最新レッド、トッキュウ1号(レッド)とのSLモチーフつながり」として追加戦士ロボ相当のキャラクターであるトラベリオンが収録された。

*14 レジェンドマジレンジャーの呪文パーツはプログラム言語としての解析はほとんどされていないようだ。

*15 こちらは1人1人独立した巨大化形態は存在しない様子。またマジキングと異なり「マジレンジャーの状態からいきなり5人で合体した状態になる」も作中では披露していない

*16 「ジンガジン」は「ジンガ」の互換パーツであるようだ

*17 この理由からゲキワザとしての仕組み上は「3人が巨大化している」に近いため、モーショントレース方式で「操縦」する

*18 世界史的な話…真面目なお話から悪の帝国ブリカスネタまで幅広い…話も絡むので簡単な注に留めるが、産業革命の震源地・イギリスで最初に改造や改良が始まったのは綿や羊毛を服飾産業用の糸にする紡績機。元々は童話「ねむり姫」とかに出てくる糸車とかだったのが、どんどん自動化されたり、より効率のいいパワーソースに変更されたりして紡績機やその改良型に「サンギョーカクメーイ!」した。その最たるものがガイアークのモチーフの一つ、スチームパンクの元ネタ・蒸気機関で動くようになったカートライト式力織機。

*19 ちなみに変形・合体前のバラメカは「ゾード」と呼ばれているが、こちらの呼び名は『ゴーバスターズ』には用いられていない

*20 シャドーラインにとっては収集対象、かつ勢力を拡大する際の源にもなっている。

*21 近い時期にアニメ版1期が放映されていたため。

*22 鬼ノーワンなど、自力で巨大化したイレギュラーな個体はいるが