武器人間(映画)

登録日:2024/10/27 San 07:43:22
更新日:2024/11/17 Sun 20:39:41
所要時間:約 12 分で読めます





武器と、人間が
…くっついちゃった!!
ナレーション:大山のぶ代(ガチ)


『武器人間(原題:Frankenstein's Army)』は、2013年製作の、オランダ・アメリカ・チェコ合作のインディペンデント体制にて製作された「ファウンド・フッテージ(モキュメンタリー)」形式のホラー・サスペンス・アクション・日本のみドラえもん映画。R15+指定。
監督はオランダ出身のリチャード・ラーフォースト。




【概要】

フランケンシュタイン=ドイツ*1
ナチス=ドイツ

ドイツ繋がりで組み合わせたら武器人間!!
つまり、ドイツにドイツをかけて百倍だ!分かるかこの算数が!?エエッ!?

……という感じで生み出されたロマン溢れるホラー(?)映画。
低予算ではあるが、安価で色々と材料を調達できる現代の映画なので美術や特撮のレベルは高く、是非とも注目したい所。
……寧ろ、手持ちカメラで撮影の済むファウンド・フッテージ方式だからこそ美術に資金を集中でき、多少の粗を誤魔化せた部分も多いのだろう。
なんというか、製作側も自分達の見たいものを作っている感が出てるのはオタク魂を感じられて素晴らしいよね!

因みに、倫理観完全無視の改造手術シーン武器人間の多彩(でもない?)なKILL方法はまぁまぁというか普通にグロいので、低予算のインディペンデント映画だからといってナメてはいけない。
肝心の武器人間が出てきたあたりで撮影方式もあってかチープ感が出てしまうのは少し惜しい所だが……。


2021年に発売された『バイオハザード ヴィレッジ』にて一部の敵キャラが「『武器人間』に似ている」との声がファンから挙がり、本作の関係者も反応する動きがあった。


【日本での公開】

日本では2013年11月2日に公開された。
配給は結構なZ級映画を持ち込んでくれているトランスフォーマー(社名)。
悪趣味部分にインスパイアされたのか、同社が2011年に日本公開した『ムカデ人間』に続く“◯◯人間”シリーズとして公開されている。当然ながら2作の間には1ミリも関連が存在しない

多分にブラックジョーク(コメディ)を含む内容からか“シリアスな笑い”を感じられる作品として、全体的に悪ノリ感MAXで怖さよりも面白さを強調されてプロモーションされた。
後半からのカオス展開にインスピレーションを刺激されたのか、予告編にドラえもんの声優として名高い大山のぶ代を起用して往年の劇場版特報のようなナレーションをさせたことで、当時を知る大きなお友達に笑撃を与えた。
そして大山の起用から更に天啓が閃いたのか、吹替担当の殆どに『ドラえもん』の新旧声優を起用するという謎の采配が取られることに……なんでやねん。

…あえてこじつけるなら、ドラえもんの道具には生き物とロボット(ドラえもん)を合成出来る「ウルトラミキサー」「合体ノリ」があり、劇場版でのび太もキメラ動物を生成していたので、そっちからの連想もなくはないかも?


そんなわけでドラえもんファンにも注目されてしまった本作だが、
概要にもある通りR15+指定になるだけのことはある内容なので*2、自分の耐性に自信の無いニキ&ネキは気軽な気持ちで視聴しないこと。

ドラえもん予告ナレーション「ぼくと皆との約束だよ!

のび太サシャ君「うん、わかったよドラえもん予告ナレーションの青狸!

ドラえもん予告ナレーション「ぼくは狸じゃない~!


【物語】

━━1945年。第二次世界大戦末期。

東部戦線に派遣されたノビコフ軍曹の率いる偵察部隊は、占領下のドイツにて最新鋭のキャメラと録音機器を用いた撮影を行いながら行軍していた。

そんな中で“タイガー・ベア”なる別の偵察部隊からの救難通信を受け取った部隊は、そんなコードネームで呼ばれる部隊の存在を全く聞かされていなかったことから訝しみつつも現地へと向かい━━ある村の破壊された教会へ。

しかし、その教会は奇妙なことに地下に広大で工場を思わせる構造を備えた奇妙な建物だった。
教会の上層部分に身を落ち着けつつ調査を開始した彼等だったが、そんな中で見つけた電極を繋がれた死体のような存在が発電設備を動かした途端に動き出し、詳しく調べようとしていたノビコフは腹部を切り裂かれた上に内臓を抉り出されて殺害されてしまうことに。
余りの事態に混乱しながも更に調査を進めようとする部隊であったが、地下坑道を探索中に出現した武器人間に襲われ新たな負傷者が出ていく……果たして、この地下施設の正体と偵察部隊に課されていた真の任務とは……?


【登場人物】


偵察(特務)部隊員たち


  • ノビコフ
演:ロバート・グウィリム/吹替:たてかべ和也(旧ジャイアン

偵察部隊の(表向きの)隊長。ノビコフだけどのび太じゃない
厳しくも隅々まで目が届いている有能な上官であったが、迂闊に起動させてしまった“ケロイダー”に腹部を切り裂かれてしまう。
腸を引きずり出される苦しみの果てにヴァシリに介錯された。

  • セルゲイ
演:ジョシュア・ザッセ/吹替:木村昴(新ジャイアン)

理知的な性格のポーランド人。
生まれの違いからヴァシリには嫌われているものの、他の隊員からは信頼されている。
ノビコフの死後はリーダーとなることを主張したヴァシリを諌めて階級から自分が暫定的なリーダーとなり調査任務を続行するが、その中でディマが通信妨害や偽の救難信号を出していたことに気づいて問い詰める。その後、ディマの正体を知り怒りつつも渋々と従っていたが、狂気度を増していく工場施設の探索の中でディマを裏切りヴァシリ達と脱出━━を目指したものの捕らえられてしまった。
ディマとの再会時には四肢を拘束された状態で捕らえられていた。
最後はディマが助けるのを断ったこともあり、ディマの選んだ理想の共産主義者のサンプルとして脳の半分を取り出された。

  • ヴァシリ
演:アンドレイ・ザヤッツ/吹替:関智一(新スネ夫

烈しい性格の古参兵。
階級は低いがノビコフの死後にキャリアを盾にリーダーになろうとするが、その性格から他の隊員に嫌われていたので賛同はうけられなかった。
生まれの違うセルゲイのことを嫌っており散々に反発していたが、ディマの正体が明らかになった後は意見を合わせてディマに反逆した。
ディマを裏切り逃げたと思われていたが逃げる途中でセルゲイと共に捕らえられたらしく、片腕を失い拘束された状態でディマと再会。
ディマに理想の共産主義者として選ばれなかったことからあっさりと殺害されるという、ある意味では(イヤな奴だったので派手に死んで欲しいという)視聴者の期待を裏切る死に様となった。

  • イヴァン
演:ホン・ピン・タン/吹替:西村太佑

太目の体型の隊員。
地下坑道で“レイザーティース”に襲われ、ヘルメットが頭蓋骨に食い込む程のダメージを受けて行動不能に陥る。
その後、エヴァが治療に挑むも後述の通りで敢え無く死亡してしまった。
さらにいつの間にか死体を回収されていたようで、名称不明の武器人間となってディマに襲いかかった。

  • アレクセイ
演:マーク・スティーヴンソン/吹替:前田一世

長髪で髭の隊員。
中盤にて、夜になり唐突に襲撃してきた“モスキート”に頭部を刺し貫かれて死亡。

  • ディマ(ディミトリー・アスナ)
演:アレクサンダー・マーキュリー/吹替:松本保典(新のび助

本作に於いて、基本的に視聴者の視線となるキャメラを撮影している隊員。
ユダヤ人でロシア人でないことからやっぱりヴァシリにはバカにされている。
映画の始まりと共に登場しているのが彼。
撮影に夢中になっているのか身勝手な行動をとっては周囲から注意をされており、更には部隊を武器人間の巣窟である教会に誘導した張本人であることがバレて吊し上げにされかかるも、実際にはスターリンの命令でフランケンシュタイン博士の調査を命じられて派遣された真の部隊長であり、階級は大尉と全員の中でも飛び抜けて高かった。
モスクワからの指令書を盾に素性を明かした後で「全員の素性も家族関係も把握して人質にとっている」……としてセルゲイ達を従えるも、ややあっての“ジャパンヘッド”の出現から後の混乱のあたりでぶちギレたセルゲイ達に反逆されて地下に叩き落された。
その時は絶望していたのだが、キャメラを携えていたことからフランケンシュタイン博士に記録係を命じられて生き残りに成功……かと思いきや、自分で撮影する方法が解った博士に用済みと判断されて改造されそうになる。しかし、赤軍の接近を知った博士が逃亡しようとした矢先に生き延びていたサシャに殺害されたため、何とか生存に成功━━したかと思いきや見捨てられ拘束を解かれず放置された。最後は改造されていたセルゲイに顔に嚙みつかれ死亡したものと思われる。

  • サシャ
演:ルーク・ニューベリー/吹替:小原乃梨子(旧のび太

最も年少の隊員。
体格も経験も足りていないので他の隊員からはお味噌扱いされているが、実際には当人は強かで大胆で小狡い性格。
最終的には他の隊員を出し抜き、自分の安全のみは確保していた所で、逃亡しようとしていたフランケンシュタイン博士を殺害
挙げ句に、博士の頭部を回収してソビエトに帰りつき全てをスターリンに報告し終えた。
エンディングでは今回の功績か、スターリンの側で誇らしげに写真に収まっているのだが、その様子から実はディマも含めて、調査の行方を本当の最後の最後まで見守る任務を与えられていた監視員だった可能性もあり。

その他の人物たち


  • エヴァ
演:クリスティーナ・カタリーナ/吹替:大原めぐみ(新のび太)

夜になり、教会の奥から上層部まで逃げてきた一人で看護婦。
ヴァシリにレイプされかかるが「治療が出来る」としてイヴァンの頭に食い込んだヘルメットを外そうとするが、ヘルメットごとイヴァンの頭蓋(脳味噌つき)を外して殺してしまい、それを見た怒りのヴァシリに打ちのめされた。
その後は捕まってしまっていたらしく、フランケンシュタイン博士の改造手術の助手である“マミー・エヴァ”に改造されてしまった模様。

  • 三代目ヴィクター・フランケンシュタイン
演:カレル・ローデン/吹替:肝付兼太(旧スネ夫)

“武器人間”達の創造主であり、スターリンとモスクワが身柄の確保を狙っている狂気の天才科学者。
その名の通りの、かのフランケンシュタイン博士の三代目(孫)であり、元々はナチスの依頼で死んだ兵士の有効活用として“武器人間”の創造を担っていたようだが、現在ではナチスからの命令も関係なく自分の気の赴くままに“武器人間”の創造を行い続けている狂人。
後半からの唐突な登場ながら、流れるように繰り出される数々の非道な実験と余りの倫理観の崩壊ぶりには映画とはいえ乾いた笑いが込み上げてくるレベル。
その人倫に背く価値観から父(二代目フランケンシュタイン)に存在を否定されるも、その父をもテにかけて現在の地位を築いた。
得意料理はアイントプフ(ドイツ風煮込み)。
赤軍の攻撃が迫っていよいよ研究所(教会)が危ないと解った時には自分だけ逃げようとしていたものの、真の工作員であったらしいサシャに暗殺されて頭部のみを持ち去られる末路を迎えた。

【武器人間】

フランケンシュタインが生み出した奇跡の創造物。
元々は、前述のようにナチスの依頼で生み出されるようになった存在であり、申し訳程度にナチスのマークを掲げてはいるものの、殆ど……というか先ず全部が戦場では役に立たなそうな悍ましいだけの虚仮威しのクリーチャーばかりである。
……造形は素晴らしいんだがなぁ。
一応、正面に立たれた場合と逃げ場が無い場合の攻撃力は高いので劇中のような環境では脅威となっていた。


なお名称は公開当時の公式サイト(現在は閉鎖済)で公開された日本語版独自のもので、エンドロールなどでは別名義でクレジットされているキャラクターも多い。
原語版とはかけ離れた名前になっているものも多く、また付記された設定の内で劇中で描かれていないものに関してはそもそも真偽不明である。

  • モスキート
見た目の格好良さから本作のシンボル的に扱われている武器人間だが、実際の活躍は微妙
手足にを備えており、四足歩行ながら竹馬の要領で歩き、マスクの口元に備えた細長いドリルで攻撃する。……効率悪すぎひんか?

  • ジャパンヘッド
頭部がプロペラ戦闘機のようになっている武器人間。
プロペラで飛ぶ……とかではなくて、そのまま突っ込んでプロペラで切り裂く攻撃を行う。
見た目のインパクトはあったが直ぐに弱点を悟られて囮に引き付けられている間に配線を切られて動きを止められる所か炎上して果てた。
“ジャパンヘッド”なのは、当時でプロペラ機=零戦だから?
公式サイトの図鑑には載っていない。

  • プロペラヘッド
“ジャパンヘッド”の同型種。
……改造に手間がかかりそうだが、何気に博士のお気に入りなのだろうか?
こちらはサメのペイントがされているので米軍のイメージなのだろうか。
こちらは反対に、公式サイトの図鑑には載っているが本編には登場していない。

  • ウォールゾンビ
男性の遺体の両腕が鎌のような刃物になっているという武器人間。
コンセプトがシンプルなためか同型・亜種がいっぱい存在する。

  • ケロイダー
まだ自立できる状態ではなかったものの、最も最初に登場した改造途中の武器人間。
電極に繋がれた細身で小柄な死体に見えたが、通電することで動き出しナチス式敬礼を決め、正面に立ったノビコフを右手のドリルで攻撃して腸を引きずり出した。
……妙に艶めかしいが、それもそのはずで演じているのは女性。(一応は男性の遺体に見えるメイクはされているのだが。)

  • レイザーティース
伝説的な拷問器具として有名な“鉄の処女”を思わせる見た目の武器人間で、全身を鎧のような装甲板で覆った状態で正面部分の刃で獲物を挟み込んで攻撃する。
効率は相変わらず悪いが、防御力は高いので劇中のような状態だと実際に驚異的。
挟み込む力の強さは前述の通りで、イヴァンはヘルメットごと噛みつかれて頭蓋骨にヘルメットが食い込む程のダメージを受けている。

  • マミー・エヴァ
エヴァが捕まった後に改造された存在。
戦闘用では無いためか、妙にエロティックで芸術的な造形。

  • ポッドマン
戦闘用の武器人間とは違い、フランケンシュタイン博士が気まぐれに生み出した調理器具と合成させられた食器人間。
調理台から足が生えているような造形で道具入れとして研究所を歩き回る。
博士からは「ハンス」と呼ばれているが元の名前だろうか?

  • デスマーダー
ウォールゾンビの改良型で、基本設計は同じだが装甲が追加されて電極を備えることによる出力増強が図られている。
……が、生身部分は脆いし、何なら動きも更に遅くなっているので広い空間で武器が充実しているなら余り脅威ではない。

  • ハンマーヘッド
“ウォールゾンビ”シリーズの最新作。
その名の通り頭部がシュモクザメ(ハンマーヘッド)のようになっており、両手も同じくハンマー。

  • オペンハイマー
四本腕を備えた博士の助手で武器人間製造の責任者。
元は高名な物理学者らしいが、原子物理学の研究者……ではないと思う。

……というかそもそも原語版での名称は「DENTISTMEDIC(歯科医師)」であり、物理学要素は皆無だったりする。

  • ライジングサン
本編未登場の武器人間(TwitterやFacebookでイラストを確認できる)。
風船のように大きく膨れ上がった人間で、宙に浮かんでの空中移動が可能。
敵の飛行機を発見するとカミカゼスピリットで特攻攻撃を食らわせる…らしい。

風船爆弾+特攻兵器ということで旧日本軍と合同で開発したという設定。
……未登場で終わってよかった。


……他、多数。




追記・修正は武器人間の秘密を解き明かしてからお願い致します。

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最終更新:2024年11月17日 20:39

*1 小説の舞台(の1つ)は確かにドイツだが、主人公ヴィクター・フランケンシュタインの生国はドイツではなくスイスという設定である……ちゃうやん。

*2 予告編では「みんなみてね~」と宣いながら「R15+」の表記がデカデカと出る。みんなはみれない。