大山のぶ代

登録日:2024/10/19 Sat 00:50:00
更新日:2025/04/28 Mon 03:35:51
所要時間:約 10 分で読めます



大山のぶ代日本の俳優・声優・タレントで、初代体操のお兄さんだった砂川啓介の妻である。
1950年代後半から1990年代半ばの世代からは、かつて『サザエさん』の初代磯野カツオ3代目ドラえもんを演じたことで知られている俳優である。

【プロフィール】

本名:山下 羨代(のぶよ)(旧姓:大山)
生年月日:1933年10月16日
没年月日:2024年9月29日
出身地:東京都渋谷区恵比寿(旧・東京府東京市渋谷区伊達町)
愛称:『ペコ』、『のぶえもん
配偶者:砂川啓介
身長:162cm
血液型:O型
事務所:アクターズセブン

【来歴】

四世代が同居する大家族の末っ子として誕生。幼少期から特徴的な声の持ち主だったらしく、
これが原因でいじめにあうこともあり幼少期は引っ込み思案の少女だった模様。
そんな大山を見かねた母親から『声を出すような部活に入りなさい』と言われたこともあり紆余曲折を経て演劇部に入部した。
高校では演劇部と水泳部を掛け持ちしていたが、母の体調が芳しくなく入院したことにより部活は両方とも退部することになる。
高2の頃母を子宮癌により亡くしたことで、手に職をつけないといけないという思いを一層強くし、大山は演劇の道に進む決意を固める。
しかし父親からは猛反対されたようで父から『役者になるなら家を出ろ!』と、
半ば勘当のような形で家を追い出されたことにより一人暮らしを始めるのであった。

実家を追い出されたのぶ代は俳優座養成所第7期生として入所する*1
前述の通り父とは勘当状態であったが、兄弟との関係は良好で兄からは仕送りをしてもらうなど兄弟たちは影ながら大山を支えていた。
しかし兄からの仕送りだけでは生計を建てるのは困難で、大山も様々なアルバイトを経験するなどこの頃は大分苦労していた模様。

1956年にNHKのドラマ『この瞳』でデビューしたことをきっかけに女優としても頭角を現していき、
徐々に出演するドラマやバラエティ番組も増えていった。
この頃になると大山の特徴的な声を高く評価する者も多く『大山の声は少年役向き』と勧められたことで声優としての活動も本格的にスタートさせることになる。

1960年のNHKの人形劇『ブーフーウー』が大山にとって声優としての出世作になり、
1965年のTVアニメ『ハッスルパンチ』のパンチ役でアニメ声優としてのデビューを飾る。
以降、『サザエさん』『ハリスの旋風』『のらくろ』『無敵超人ザンボット3』など、様々なアニメの主要人物の声を担当するようになる。
また、声優以外にも時代劇やワイドショーの料理コーナー、刑事ドラマ『太陽にほえろ!』の脚本など、タレントとして各方面で活動していた。

舞台での共演をきっかけに俳優であり初代「たいそうのおにいさん」でもあった砂川啓介と1964年に結婚。なお、同時期に『おかあさんといっしょ』に出演しているが、担当コーナーが全く違った上、片やアフレコ収録、片やスタジオ撮影だったので出演当時は一度も会ったことがなかったとのこと。

そして、1979年に彼女の代名詞とも言えるアニメ『ドラえもん』のドラえもん役に就任。
あまりのハマり役となり、他の作品に声を当てるのは難しくなったと判断し、以降声優業は2005年の勇退までドラえもん一本に絞って活動した。
ドラえもん、バトルドームも出ぇたぁ!」のCMで知った人もいるかもしれない

2001年に重度の直腸癌が判明し、退院後にドラえもん役の降板を表明。
さすがに唐突過ぎてすぐとは行かなかったものの、最終的には全声優陣とスタッフを一新する番組リニューアルが決定。
2005年3月18日をもって正式に降板した。

ドラえもん降板後も音響芸術専門学校の校長に就任し、後任の育成にあたる等精力的に活動していたが、この時期に脳梗塞により緊急入院を余儀なくされ闘病生活を送ることに。
その後、必死のリハビリや自宅療養の甲斐もあり体調を回復させ活動を再開することになる。

2010年にはドラえもん降板以降初の主要人物役であるゲーム『ダンガンロンパ』のモノクマ役を演じ、
2013年には『ダンガンロンパ』がアニメ化されたことで、ドラえもん以来となるアニメ主要人物の声優を演じた。

2015年までは以前のような大きな活動はできなくなったものの『徹子の部屋』にも出演するなど健在ぶりを見せていたが、
2016年以降は認知症が進行したことで老人ホームに入所し、2017年には夫である砂川が他界。
以降は芸能界から事実上の引退状態となり、認知症は進行していたものの老人ホームにて他の入所者との交流を楽しむなど静かな余生を送っていた。
2024年9月29日に老衰により他界。享年90。

死去に伴いテレビ朝日は同年10月12日放送分の『ドラえもん』の後半で大山版の名場面集を流す追悼企画を編成。また、ドラえもん公式Youtubeでも大山版の第1回作品である「ゆめの町ノビタランド」が期間限定で配信された。

【特色】

  • かなり個性的なハスキーボイス……もとい、独特なダミ声とでも形容すべき特徴的な声質の持ち主。
    特に1979年4月2日から2005年3月18日にかけての、いわゆる『大山ドラ』を見て育った世代ならば「ドラえもんの声」と言えばそれだけで通じてしまうほど。
    ……が、前述の通りかつてはこの声に対してコンプレックスを抱いた時期もあったそうで、幼少の頃は周囲にからかわれることもしばしばだったという。

  • 声優として演じる役柄は代名詞であるドラえもんの他はほぼ少年役などが主流であり、女性役を演じることは非常に稀だった*2
    アニメ版『あべこべ惑星』での性別反転したドラえもんなどは例外
    また、あまりにも特徴的で存在感があり過ぎる声のため、ドラえもん役として著名になってからはガヤ*3などがほぼできなくなったとか。

  • 未来の子守用ロボットならば汚い言葉遣いはしないはず」と考え、やや過激で乱暴だった原作のセリフを演出家と相談して変更するなど、
    並々ならぬこだわりと熱意を持ってドラえもん役に臨んでいた。
    だが、当初は自分の演技がファンの考えるドラえもんのイメージと合致しているのか不安で仕方がなかったという。
    そんな時、試写会にやってきた作者の藤子・F・不二雄に「あれで合ってますか?」と尋ねたところ、
    「ドラえもんはああいう声をしていたんですねぇ」と言われ、嬉しかったと後年繰り返し語っている。

  • テレビのバラエティ番組などに出演した際は物腰柔らかな態度と笑顔を見せることも多かった反面、
    役者の仕事においては妥協を許さずにかなり厳格な姿勢で臨んでいた事でも知られる。
    特に新人への指導や教育などに関しては相当に厳しかったらしく、泣かされた者もいるほどだったとか。
    とは言え、ただ怒鳴りつけるのではなく、新人には具体的にどこが悪いかをきちんと指摘して改善するように促していた他、
    自身の癌が発覚して入院した際も病室に機材を持ち込んで収録を行うほど仕事に関して手を抜かない性分だったため、
    自分にも他人にも厳しいと言った方が正しいかもしれない。
    また、それだけ全力で取り組んでいた声優業へいわゆる話題性だけを目的にしたタレント声優が起用されることも好まなかったという。

【私生活などのエピソード】

  • 夫の砂川とは大山が31歳時の1964年に結婚。
    2人とも子ども好きだったので実子を望んでいたが、結婚一年後に宿った長男は妊娠7ヶ月後に死産。大山が38歳の時に第2子となる長女が生まれるが、未熟児での誕生だった上に僅か3ヶ月後に亡くなってしまう。さらには今後の妊娠は母体に危険であると医師から告げられてしまう。
    大山は妻としての負い目もあって一時期は砂川の浮気を黙認するまでなるも、第一子の死産に加えてやっとの思いで授かった2人目の子どもを早くに亡くしたことは『人生最大の悲劇』と言っても過言ではないほどに大きなトラウマとなっており、次第に追い詰められていく大山を見た砂川もやがて夫婦2人の生活を決めたという。
    砂川は2017年に80歳で死去しているが、生前には「ペコを残して逝きたくない。最期を看取ってやりたい」と語っていたという。残念ながらその望みが叶うことはなかった。

  • ゲーム『第4次スーパーロボット大戦S』発売時には声を務めた神勝平が登場する『ザンボット3』が参戦する事で出演のオファーがかけられたが、
    理由を説明した上で辞退している。
    プロデューサーを長年務めた寺田貴信氏曰く「理由には納得できたし勝平に対する思い入れの深さも伺うことが出来た」との事。
    理由は寺田Pの意向もあり非公開だが、一説にはドラえもん役に専念するためとされている。
    これ以降、スーパーロボット大戦シリーズでは坂本千夏が勝平役を演じている。

  • かつてはヘビースモーカーであったが、脳梗塞で倒れて以降は禁煙することになった。その後、認知症を発症してからはタバコ自体に興味を示さなくなった模様。

  • 『ドラえもん』のキャスト陣とは仲が良く、特にのび太役の小原乃梨子としずか役の野村道子とは「親友」と公言していた仲。
    小原とはアフレコの際に一番離れた場所で収録していたので、一部週刊誌で不仲説も囁かれていたが、「ドラえもんとのび太の会話が多いので音声が混成しないようにするため」そして「ヘビースモーカーの大山がタバコ嫌いの小原に配慮したため」というのが真相。

  • 声優業を途中から『ドラえもん』に絞った事もあり、戸田恵子とはアニメでの共演経験が皆無で、面識自体もプライベートで一回・ドラマ撮影で一回(但し役としての絡みは無し)だけだったという。
    ちなみにその貴重な同時出演作品となった2007年のドラマ『探偵 左文字進11「完璧な犯罪」』の主演・水谷豊とは彼の子役時代から面識があり、水谷主演の『熱中時代』にも生徒の母役でゲスト出演した縁があった。

  • 上記したようにドラえもん役に対しては強い思い入れを見せていた一方でパロディには寛容な姿勢を見せていたようで、降板後には自らパロディキャラを演じる事もあった。
    また後述の『トリビアの泉』出演時にはアルカノイドの用語や筐体へ投入する100円玉を秘密道具を取り出す時のような口調で紹介するなど「ドラえもん」のナレーションも行っており、なんとスプラッタ映画『武器人間』の予告編ナレーションをドラえもん風の口調で行った事もあった。*4

【趣味】

  • 趣味は麻雀、ゴルフ、アルカノイドで、特技は料理、利き水など。
    料理に関してはプロ級の腕前で、前述のようにテレビの料理コーナーを担当し料理関係の著書を数多く出版している。
    利き水に関しては水を一口飲んだだけで産地などが即座に分かるなど、専門家レベルだった模様。

  • 中でもアルカノイドについてはかつて所持していた別荘に筐体を置くほど気に入っていた。
    とある待ち時間にゲーセンで暇潰しとしてアルカノイドをプレーしたのがきっかけでアルカノイドにハマり、
    仕事で地方に行く際にはその地方のゲーセンに立ち寄り必ずアルカノイドをプレーする程であった。
    この事はフジテレビ系列のバラエティ番組『トリビアの泉』にも紹介された。
    また『とんねるずのみなさんのおかげでした』でタレントの意外な趣味の腕前を披露していただくという企画で大山も出演してプレイしたが、収録が終わってもまだ続けており
    とんねるずやスタッフが「大山さん終わりましたよ!」と声をかけてもプレイに熱中していたという逸話もある。
    もっとも本人曰く『アルカノイド以外のゲームはできない』らしい。
    ちなみにこの筐体は2024年現在は東京・高田馬場のゲーセン「ミカド」(ナツゲーミカド)に設置されており、
    誰でも料金さえ払えばプレーが可能である。

【主な出演作】


アニメ・ゲーム


その他




みなさん、こんにちは。追記修正おねがいします。

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  • 10月16日生まれ
最終更新:2025年04月28日 03:35

*1 ちなみに養成所の同期には『若大将シリーズ』や『北の国から』で知られる田中邦衛がいる。

*2 ただし、当たり前だがテレビドラマ等の顔出し作品においては普通に女性役を演じている。

*3 その場で大勢の人が話し込んでいる環境音的な音声のこと。

*4 なおこのネタの延長という事なのか、同作の吹き替え版でも大半のキャラに新旧『ドラえもん』レギュラーキャストが登用されている。