エア・マッスル(遊戯王)

登録日:2025/03/22 Sat 03:10:24
更新日:2025/05/10 Sat 15:59:30
所要時間:約 5 分で読めます




エア・マッスルとは、高橋和希原作の漫画遊☆戯☆王』に登場するである。
炎の凡骨デュエリスト城之内克也が愛用していた。



【概要】

コミックス第2巻(文庫版では1巻)収録のエピソード「毒の男」にて登場した靴。
いわゆるスニーカーであるが、その相場値段はなんと10万円
更に出回っている数も少ないらしく、路地裏にあるシューズ専門店のような怪しい店でしか取り扱っていない。

しかしそれほど値が張るだけあって、靴としての性能は抜群。
更に後述の事から非常に頑丈なのが見て取れる。
だが非常にレア、そして靴として一級品ということはそれを狙う悪質なヤツラもおり、彼らは「エア・マッスル狩り(ハンター)」として名を馳せていた。


【登場経緯】

どこから情報を仕入れたのか、城之内は路地裏にあるスニーカー専門店「ジャンキースコーピオン」の情報を得る。
そこに遊戯本田を連れてくることから物語が始まる。
元々治安の悪さに定評のある童実野町の更に奥地のここは超危険地帯。その為かヒロインの杏子はこの回未登場である。
店のオーナーも「イカれている」という噂に違わず、毒の抜いていないサソリをペットにし、更に客に対しても横柄な態度を取り続ける。
彼の店で取り扱っている靴はレア物ばかりで、自らが履いているシューズもこれを巡って殺人沙汰が起こったほどと宣う。

そんな彼は「シューズには履く為の資格が必要」と称し、城之内に度胸試しを持ちかける。
件のサソリをエア・マッスルの中に入れ、その中に足を突っ込めば資格を得られるという。オレ達ゃ電撃ネットワークじゃねーぜ!
城之内は相変わらずのクソ根性でそれを承諾、足を突っ込むが…
実は店主はフリをしていただけでエア・マッスルの中にサソリは入れておらず、その度胸に免じて相場価格の半分の5万円で売った。
と同時に「エア・マッスル狩り(ハンター)」という不良軍団の情報も教えてくれるなど、一見して態度が悪いがスニーカーへの愛は本物かと思われたが…

しかし城之内達はその帰り道、早速ハンターに襲われてしまう。
「キキィィィィィ!!」「イイイイイイイヤッ!」等の奇声を発するヤツらに不意打ちされ後ろからタイヤを被された*1後集団でいたぶられた上に靴を奪われるが、そんなことでへこたれる城之内ではない。
「300メートルしか履いて歩けなかったぜ」ということで早速そのハンターたちにリベンジ。
正面切っての戦いではやはり、某風紀委員を除いて無双の城之内と本田だったが、ハンター共から「オーナーと自分たちはグル*2」と聞かされる。
それに遊戯は激しい怒りを覚え闇遊戯となり、件のオーナーに勝負を仕掛ける。

醜悪な本性を露わにしたオーナーと一悶着のあと、遊戯はエア・マッスルを傷つけながらも取り返すことに成功する*3
+ エア・マッスル奪還の顛末
不良達に強奪させる形で城之内から代金の5万円を騙し取ったオーナーだったがそこに闇遊戯が現れる*4

だがオーナーは悪びれもせず『城之内に売ったエア・マッスルがいつの間にか自分の手元に戻ってきた』かのような白々しい演技の後、
今度は本当に靴の中に蠍を仕込んだ上でエア・マッスルを闇遊戯に返却するのだが、そんなことはお見通しだった闇遊戯は靴の中に多数のコインを入れた上で、
『蠍が入った靴の中に交代で手を入れてコインを取っていき、靴の中のコインがなくなった時点でコインを多く取った方が勝ち』というゲームをオーナーに挑む。

突然の出来事に戸惑うオーナーだったが、『自分が勝った場合、自分が取ったコイン1枚につき10万円を闇遊戯が支払う』をゲームを受ける条件として提示し、闇遊戯もそれを承諾してゲームスタート。

最初は蠍に刺されるリスクを考慮して『自分の番に1枚だけコインを取る』という安全策をお互いに取るが、
これでは埒が明かないと思ったらオーナーは闇遊戯に『自分の番に手を入れてコインを取りさえすればどんな手段を使ってもいい』と確認取ると、
なんとオーナーはエア・マッスルにナイフを深く突き立てて蠍を刺し殺し、中のコインを全て掴み取って握り込むという手段に打って出る。

「ペットの蠍ちゃんは殺すことになったが、これで自分の勝ちは決まりだ!」と狂喜して勝ち誇るオーナーだったが、
エア・マッスルの中にあるコインを全て握りこんだことで手を引き抜けなくなってしまい、「少年とハシバミの実」かな?
更には突き立てたナイフの刃は蠍を貫いておらず、エア・マッスルどころかペットの蠍すらも犠牲にする強欲なオーナーは自分のペットの蠍の毒針に刺されるという形で『飼い犬に手を噛まれる』を体現するという自業自得な末路を迎えるのだった。

しかし城之内は1人で勇気を出して取り戻してくれた遊戯に感心しその事を問わない上に「傷は勲章として残しておく」とまで宣言した。

そして以降の城之内はこのエア・マッスルを履き続ける(さすがに紐は新しくしている)。
デュエリスト・キングダム、バトルシティ、エジプト、そして高校卒業の時期まで。
過酷な旅に向かうこととなった城之内の足を、エア・マッスルはずっと支え続けたのだ。


【靴の感想】

城之内は大金はたいて手に入れたこともあり「ミッドソールの軽いクッションが最高のフットギア」と非常にお気に入りであった。
しかしその相方である本田の評価は妙に悪い。
曰く「履けりゃゲタでも構わん」との事で、仮にも親友である城之内に「靴ごときに命を掛けたバカとして一生語り継がれるだろーよ」とまで言い張っている。
その本田は靴を自分でも臭いと言うまで履き続けており、ある意味では両者のスタンスの違いが見て取れる。


【考察】

…と、エピソードとして完結しており、更に全編を通した城之内のファッションアイテムとしての地位を確立したエア・マッスル。
だがそのわずか3話後エピソードで、城之内の家庭は飲んだくれの父親と二人暮らしで城之内は新聞配達のアルバイトをして学費を賄っている苦学生であるというのが判明する。
ここで良くツッコまれるのが、「苦学生のくせに靴に10万円ポンと出してるじゃないか」というもの。

一応の反論としては、『当時(【毒の男】の回の時点)の城之内にそんな設定はなかった』というのがある。……たった3話後で出てきて以降の描写からしても重要なこの設定が後付というのも違和感はあるが。ジャンプ漫画は昔からライブ感で設定つけて矛盾することも多いがそれはそれ。
だが同時に「非常に頑丈な靴に金を掛けてずっと履き続けていれば必然的に得をするんじゃないか」という意見もある。
他、趣味にお金を掛けるくらいは稼げている考察もできる。

作中、城之内が明確にお金に困ったのは、『妹川井静香の手術代が払えない』という事であるが、趣味趣向を行いながらの生活費とは文字通り桁が違う話*5
妹のタイムリミットを知ったのも王国編での話であり、それまでは兄として協力できる範囲の資金援助の範疇を想定していたとしてもおかしくはない。
またコミックス5巻収録の「100万円をゲットせよ!」の回では学費や生活費だけでなく、親の借金までも100万円の賞金で工面しようとしていた他、その親の借金も普段から僅かずつ工面していたらしいことが判明している。

なので『バイトしまくりでそのくらいなら余裕があった』というのが落とし所だろう。中坊の時から新聞配達している無法者らしいし。
高額なガレージキットの制作経験の組み立ても異様に手際がいいうえ、文化祭の回では「けっこー昔からプラモとかガレージキットで腕ならしてたんだぜ!」と言っていることから(両親の離婚前の頃だけかもしれないとはいえ)そういうのの購入経験もあるだろうし。

どちらにせよ城之内が5万円で買ったこの靴は、穴が開いた状態で割と酷使されながらも壊れたりせず、城之内の足だけでなく懐事情を大いに助けたであろう。
アニメなどではこの話はオミットされがちだが、実はひっそりエア・マッスルを履いた城之内の足が強調されるシーンが多い。

なお城之内の父親であるが、皮肉なことに彼は漫画版・東映アニメ版通して*6"しか"作中で姿が写っていない。ちなみに東映版ではCV:稲田徹
屋内にも関わらず安全靴を履いてるが、頑丈なそれで外に出ることはなく、物語からもフェードアウトした。
城之内が「かっこいい靴」を求めたのも、そんな父親の「無骨な靴」に抵抗感があったのかもしれない。*7


【余談】

元ネタはナイキのシューズ「エア・マックス」。
発売当時の熱狂ぶりは半端ではなく、テレビニュース等でも頻繁に取り上げられ、余り注目されない「靴」の中ではかなりの知名度を誇った。
と同時に余りにも品薄な為、履いている人間を襲ってその靴を奪うという「エア・マックス狩り」という行為も頻発し、殺傷沙汰にもなっていた(毒の男が話していた「靴を巡った殺人事件」は実際に起きている)。
同誌の「こち亀」でも取り上げており、様々なパチモノを掴まされて大損する両津の顛末が描かれている(こちらで多く描写された贋物も実際に横行した手法である)。

なお本物のエアマックスは高いものでも定価は2万円代後半。
だがブームの際のエアマックスは日本で在庫がなく、スニーカー店個人が海外から輸入したものは10万どころか30万円で売ってた店もあったという。
時事ネタを積極的に取り入れる高橋先生なので、これらを元ネタにした可能性が高い。

ハンターたちが城之内をタイヤを被せて両腕を封じるシーンは一部で有名。
というのも遊戯王は御存知の通りカードゲーム漫画、アニメとなっていき、2025年現在はコレクション向け限定レアリティのカードも多数登場。
特に高額なものでは10万円もザラではない。エア・マックスに匹敵する価格となる。
…というわけで、カードなどで高額レアを引いたという報告にタイヤシーンの画像をレス画像にする行為があちこちで見られる。
挙げ句には遊戯王マスターデュエルでURを3枚以上引いた場合とか、遊戯王関係ないソシャゲで目玉キャラを引いた時なんかも現れる。
勿論実際に奪いに行かないので、ある意味では嫉妬を込めた祝福である。それにハンター達は後にボコボコにされてるからね。

ちなみに上記ジャンキースコーピオン店主の本名は不明。遊戯王ではよくあること。
ファンの間では「毒の男」と呼ばれているが、そのタイトルは本編を読めば非常にウィットに富んだものだとわかるだろう。
カードプレイヤーじゃないので当たり前だがゲーム作品には未登場…と思いきや遊戯王ダンジョンダイスモンスターズには登場している。



【更なる余談】

そしてなんとこのエア・マッスル…本家であるエア・マックス95として発売される事が決定したのだ!

2025年の秋にNIKEよりエア・マックス95発売より30周年を記念するモデルの一角として
まさかの遊☆戯☆王 x NIKE AIR MAX 95というコラボで、ホワイトとサイキックブルーの二色が発売される事が三月に告知されたのだ!!
まだこのエア・マッスルを元にしたエア・マックス95が、どんなディティールで発売されるかその詳細は分かっていないが、気になる方は随時情報をチェックされたし。

しかし幾ら漫画のメインキャラの一人が長い事履き続けていたとは言え、ゲームがメイン題材の漫画で、なおかつ一話しか取り上げていない当時のご時世を象徴する(というか下手したらこの項目を読むまで存在さえ忘れられていた)アイテムが、本家とコラボするなんて一体誰が予測出来たであろうか…。
更に言うならパロディされた側がそのオマージュを積極的に行うこともまた珍しい。










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最終更新:2025年05月10日 15:59

*1 なので後者の奇声は「タイヤ」と言っている…という変な考察もある

*2 『オーナーが売ったエア・マッスルを奪って持ってくれば3000円の報酬』という取引を交わしていた

*3 オーナーは後述の通り、蠍の毒によって倒れて病院送りになったようである

*4 オーナーも『CLOSE(閉店)』の立札を出してはいたが、扉に鍵まではかけていなかったので入ってこられたようである

*5 特に今回の場合、世界最先端の医療技術が必要な大手術である。

*6 テレ東版こと『遊戯王デュエルモンスターズ』では未登場。逆に城之内の母親はDM版にてアニオリで姿含めて登場している。CV:香坂千晶。

*7 後に王国編でも卓上に脚を乗せて横暴な姿をするバンデット・キースを見て「安全靴の靴底を見ると嫌なヤツを思い出す」と言っており、父親のせいで城之内にとってゴツい安全靴に対する印象はかなり悪いと思われる