音楽家の帝王(遊戯王)

登録日:2025/05/03 Sat 03:11:37
更新日:2025/06/07 Sat 14:56:35
所要時間:約 4 分で読めます





音楽家の帝王(ミュージシャン・キング)とは「遊戯王OCG」に登場するモンスターである。


【性能】

融合モンスター
星5/光属性/魔法使い族/攻1750/守1500


【概要】

初登場はゲームボーイの『遊戯王デュエルモンスターズII 闇界決闘記』のゲームオリジナルカード。
初出のDMIIの時点で融合召喚が可能であり、それに倣いVol.6でOCG化した際にも融合モンスターとして実装された。

初期の融合モンスターらしく出しても下級モンスターレベルという困ったカードだったが、《簡易融合》が出たおかげで光を見たカード。
レベル5、光属性、魔法使い族を満たす融合カードはコイツだけであり、それらのカードが多いデッキであれば採用価値はある。
……と言いたいが結局のところは出しても単なるバニラな為に素材として使われるのが関の山だろう。アルバスくんと融合させるとか。

しかしこのモンスター、単なるバニラな融合モンスターとしては片付けられない色々と面白いところがある。
まずそのイラスト。ミュージシャンの王ということで、金髪のホウキ頭の男*1がギターを激しく弾いているという躍動感あるイラストだが、彼が持っているギターのアームやボリュームコントロールが通常の反対。
これはイラストレーターのミスとかではなく、右利きのギターを逆に持ち左手で弾いていた「ジミ・ヘンドリックス」を意識している。
要するにデザイン的には著名なミュージシャンのちゃんぽんと言えるだろうか。

……そしてあえて伏せていたが、このモンスターの融合素材は以下の2体。
初期の遊戯王を代表する美少女カード2枚が融合すると、融合前の面影が全く無い半裸でロックな兄ちゃんが現れる。
この女性モンスター同士が融合して男性モンスターになるという衝撃の変貌ぶりは古参のデュエリストがずっとネタにし続けている。
解釈としてはファンの女の子2人が呼び寄せた……等と言われることも。ウィッチとプリーステス どこに行った?
一応根拠が考えられなくもなく、イングランドのヘヴィメタルバンド「エンジェル・ウィッチ」と「ジューダス・プリースト」を掛けたもの…という独自研究説もある。
ぶっちゃけ使ってる単語が珍しくもなんともなく、一部しか合ってない上に単語のズレ(プリーストとプリーステス*2)も恣意的に無視しており、何よりもっと直球なネーミングでついでに経歴もロック*3な《エンジェル・魔女》とか居るので信憑性は微妙。
というか、後述のゲーム版の融合素材がOCG版と掠っていないので、「適当に融合モンスターと同一種族二体を宛がった」が真相である可能性が高い。
+ 当時の融合モンスターの事情について
まず、当時の融合モンスターの素材がゲーム版と違う事自体は珍しいことではない*4のだが、それでもゲーム版の素材を意識したチョイスになっていることが多い。とは言え意識した素材にすらなってない類例は意外とあり、《紅陽鳥》、《裁きの鷹》、《ソウル・ハンター》などが該当する。

これらの素材が別物になった融合モンスターは「ゲーム版ではいずれも2種族以上の融合だったのが、OCG版の融合素材では融合モンスターと同じ種族のモンスターに変更されている」という共通点が存在する。

一見すると「なんでわざわざ違う設定にするの?ゲーム版と同じにすればいいじゃん」と考えてしまいがちだが実の所理由は明確であり、「OCGの環境だと素材と融合先の種族は統一されている方が使いやすい」からである。
1期当時では、モンスターを強化するフィールド魔法・装備魔法などは悉く種族を指定するものであり*5、素材と融合先の種族は同一である方が明らかに使い勝手は良かったのである。
一方、ゲーム版では得意相手なら一方的に勝利できる「召喚魔族」の概念から種族はばらけている方が都合は良い。この環境では融合素材が別種族同士である方がむしろ使い勝手は良いと言えた。
一見すると意図の見えない変更に見えても、実際はゲーム版とOCGの環境の違いが明確に表れた結果と言えるのである。
ぶっちゃけ当時のOCGは種族間の格差が大きすぎたし、フィールド魔法・装備魔法も弱かったので、種族を無視して単純にパワーカードで固めるのが一番強かったけど

とまぁ初期の初期に登場し、女の子2人の融合で現れるコイツだが、その全てが音楽バンドに関連しているといえなくもない、まさしく「音楽家の帝王」というデザイン。
是非とも《ロード・オブ・ドラゴン-ドラゴンの支配者-》とセッションして欲しいものである。


初期の非OCGルールのゲーム作品群では融合召喚も可能な通常モンスター*6であり、
ギターを弾かせれば右に出るものはいない 超音波を出して攻撃。
という、フレーバーテキストが存在している。


【アニメでの活躍】

遊戯王デュエルモンスターズで「ステップ・ジョニー」の使用モンスターとして登場。
このステップ・ジョニーが登場する話はバトルシティ直前のデート回。ゲームセンターのダンスゲームで「オレに勝てる奴はいねぇのかぁ!」とイキりながら客の目を集めていた。童実野町住人あるある、ゲームを通して目立とうとする奴
原作では、杏子にダンス勝負を仕掛けつつ「負けたらオレと付き合いな」とナンパするも彼女にダンスで軽く蹴散らされただけ…と、デュエル要素は一切無い話だったのだが
アニメだとその後、杏子達に因縁をふっかけてきて海馬ランドのデュエルリングにて遊戯とデュエルするアニオリ展開が加えられた。原作に追いつかないよう少しでも尺を稼ぐ必要があったのだろうか

そいつの切り札がこの《音楽家の帝王》。
だがデュエル中もおどけた態度を取り続けるジョニーを最初は遊戯も内心で何処か見下していたが、その融合素材にするために《黒き森のウィッチ》を出した際に「何!?ファンデッキじゃないのか!」と何気に失礼な反応を示す。*7
しかしステップ・ジョニーの狙いは《音楽家の帝王》の融合召喚。
更に単に出すだけでなく《メタル化・魔法反射装甲》で強化し《ヘヴィメタル・キング》へと進化させる。
故にソリッドビジョンでは金属化するのではなくヘヴィメタル風の衣装になるという変わったメタル化をしたことでも有名である。
だが《メタル化・魔法反射装甲》の効果を勘違いしていた為に普通に戦闘破壊され、切り札を倒されたジョニーは相手がデュエルキングダム優勝者の遊戯だということに気付き、逃げ出そうとする。
しかし杏子からは「デュエルに比べてダンスの才能があるから諦めてはいけない」と言われ、その逃げ腰な性格と向き合い、ダンサーとして再出発することとなった。
ヘヴィメタル・キング時の技名は「悪魔のキッス」。ヴィジュアル系バンドの「KISS」が由来だろうか。

余談だがジョニーの使ったカードはほとんどが女性モンスター。
音楽やダンスに関係するカードを好んで使うという事だが、遊戯王OCG当初はそれらに関係するのが女性モンスターしかいなかった為になんか女好きのナンパ野郎のようにも思えてくる。
実際にダンスしてる理由も女の子にモテたいからというものであり、もしかしたら女性モンスターを多く入れる方便なのかも。
また、かの《水の踊り子》を繰り出したデュエルでもある。これも「踊り」に関するカードなのだが。
「ファンデッキ」と断じられながらもデッキ自体は割と素直かつ強力な為に遊戯も警戒するほどであった。


【余談】

女性同士が融合して男性モンスターになるというのは十六夜アキが使う《大凛魔天使ローザリアン》も該当する。
《魔天使ローズ・ソーサラー》と《凛天使クイーン・オブ・ローズ》という女性モンスター2人が融合してなんか筋肉ムキムキのマッチョマンが登場するインパクトは非常に強い。
とはいえOCGになるときに融合ではなく効果モンスターとなったのでマニアックな余談程度にとどまっている。

現在遊戯王では融合モンスターの指定素材がかなり緩くなっており、女性同士が融合して男性が生まれるというのも多々ありえる。
それどころかなんかドロドロした変なのとかなんか頭が2つある変な鳥にされることもある。
女の子2人の融合で半裸の謎の男になる《音楽家の帝王》という話ももしかしたら時代の徒花なのかもしれない……。
だがそれらは素材に女の子同士もありえるレベルであり、女の子同士でなければならない《音楽家の帝王》の存在はやはり異質と言えるだろうか。

上述の通り、このカードはゲームオリジナルカードだった。
OCGでのイラストは上半身裸でマッチョな姿になっているのだが、ゲームボーイ版での初出時のイラストはというと、構図自体はOCGと同様なのだが、半裸だった上半身には 青いジャケットを羽織っている という容姿になっていて、筋肉質というよりも細身の男性というイメージであった。融合素材が別物になった件といい、OCGでは本当に「どうしてこうなった…」としか言いようが無い。
ちなみに、ゲーム側での召喚魔族は白魔族。
初登場のDM2の時点で融合が可能であり、素材は「《音女》or《響女》+天使族*8」とOCG版との素材とは全く合致していない。
ぶっちゃけると、女性+天使族でこのカードより攻撃力が高く召喚魔族も同じ「ヴァルキリー」が融合召喚できるため、こいつはハズレの融合パターンだったりする。
OCG版と比較すると、音楽系モンスターが必須素材になっている分まだこのモンスターになる事は納得感がある。一応、天使族は女性モンスターが比較的多いため女性同士での融合になりやすく、その点だけはOCG版も踏襲していると言えなくもない。

ゲーム版におけるこの近辺の攻撃力を持つ魔法使い族かつ白魔族のカードといったら、《ヂェミナイ・エルフ》や《ホーリー・ドール》が存在するが、このカードの攻撃力はそれらの狭間となる1750と、作品によってはそこそこ戦える能力。
ただ、シリーズを通じて敵がドロップする確率が低い事が多く、浮きまくっているキャラクター性も相まって、やはりここでもネタキャラ扱いされていたようだ。














追記・修正は、男同士で融合したら女の子になっちゃった人がお願いします。


この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 遊戯王
  • 遊戯王OCG
  • 融合モンスター
  • ヘヴィメタル
  • ギタリスト
  • ステップ・ジョニー
  • メタル化
  • どうしてこうなった
  • 星5
  • 光属性
  • 魔法使い族
  • 黒き森のウィッチ
  • ハイ・プリーステス
  • 効果モンスター以外のモンスター
  • 簡易融合
  • 簡素融合
最終更新:2025年06月07日 14:56

*1 カードでは暗くなった目元から眼光のみが煌々と輝いているギラついたデザインだが、後述するアニメ版では目元がハッキリ見えるデザインに変更されている。なかなかイケメン。

*2 詳細は各自調べてもらいたいが、特に「ハイ・プリーステス」だとプリーストの女版というニュアンスで読むのは不適切である

*3 「天使になる運命を背負っていたが、あこがれの魔女になった天使。(《エンジェル魔女》のフレーバーテキストより)」

*4 ゲーム版のようなアバウトな素材指定をOCG版で再現できなかったため、特定の素材に固定するような改変をしている

*5 一応属性指定の装備魔法は存在したが、属性単位で強化するフィールド魔法は2期になるまで登場していない

*6 これらゲームでは融合召喚で出せるモンスターはメインデッキに投入可能なモンスターでもある

*7 当時から《黒き森のウィッチ》は強力な効果を持つために「ファンデッキに入っている強力カードに驚いた」風にも見えるが、単にテーマに合致しないカードだから疑問に思っている風にも見える

*8 攻略本情報により白魔族との主張も有り真偽不明、攻略本の間違いの可能性もある為ゲーム版での検証情報を求む