それいけ!アンパンマン すくえ! ココリンと奇跡の星

登録日:2025/09/27 Sat 23:00:00
更新日:2025/09/28 Sun 00:27:15NEW!
所要時間:約 10 分で読めます





まごころこめてみんなで
いきてるパンをつくろう!


それいけ!アンパンマン すくえ! ココリンと奇跡の星』は2011年に公開された、劇場版『それいけ!アンパンマン』シリーズの第23作目である。

原作:やなせたかし『すくえ!ココリンときせきのほし』(フレーベル館刊)
監督:矢野博之
脚本:島田満
上映時間:45分
キャッチコピー:「アンパンマンがえいがでげんきをとどけるよ!
テーマ曲:「生きてるパンをつくろう(Brand New ver.)」
ゲスト声優:松雪泰子
同時上映:『それいけ!アンパンマン うたって てあそび! アンパンマンともりのたから


【概要】


2011年7月2日公開。
テーマは、アンパンマンという作品の根源的なテーマでもある「食」。食べる事の幸せや誰かのために作る喜びを描いている。
今作の公開は2011年、あの東日本大震災が起こった年である。震災が発生した時は既にシナリオは完成しており、作画の段階に入っていた。悲惨なニュースが延々と続く中であったが、こんな時だからこそ!と、通常通りの製作・公開に至っている。
震災の影響を受けてか封切り時の上映館数は例年より少なかったものの、公開時の興行成績は劇場版アンパンマン史上、歴代2位となった。
その一方で、上映時間は45分と劇場版アンパンマンの中では2番目の短さである。(1番短いのはは第3作目とべ!とべ!ちびごんの40分)
また、今作ではアニメシリーズでは長らく避けられていたとある描写が解禁されているので必見。


【あらすじ】


とある夏祭りの夜、いつものようにばいきんまんと戦うアンパンマンを見ていたクリームパンダは、「いつかアンパンマンみたいな宇宙1のヒーローになる!」と心躍らせていた。ところが突然、誰かに宇宙船に乗せられてそのまま宇宙空間に連れ去られてしまう。
その誰か…ヘンテ星からやってきた少年ココリンは危機に瀕した自らの故郷を救う為、「宇宙1のヒーローになる」を「宇宙1のヒーロー」と勘違いしてクリームパンダをヘンテ星に連れて行こうとしていたのだ。

ヘンテ星は万能の「ヘンテエネルギー」により1000年もの間栄えていたが、最近になってこのエネルギーが枯渇してきてしまい、衣・食・住と星内全ての事をヘンテエネルギーに頼り切っていたヘンテ星の住人たちは今や食べるものにも困るような状態だった。

紆余曲折あってアンパンマンワールドにやってきたココリンは故郷の食糧危機解決のため、ヘンテ星へ戻る宇宙船アンパンマン号の準備が整うまでの間、パン作りの名人ジャムおじさんにパンの作り方を教わることになる。
ところが、それまで機械で作られたヘンテエネルギーのカプセルしか食べたことの無かったココリンには「真心を込めて作る」事の意味が理解できず、パン作りは難航。
遂にはとあるアンパンマンの一言がきっかけで自暴自棄を起こし、パン工場を飛び出していってしまった。

その頃、ヘンテ星の存在を知ったばいきんまんは万能のヘンテエネルギーを使ってアンパンマンを倒すことを計画。傷心のココリンを騙してヘンテ星へと案内させ、ヘンテエネルギーを全て奪い取ってしまった上にやみるんるんでヘンテエネルギーを真っ黒に汚してしまう。
すぐにヘンテ星までばいきんまんを追いかけて来たアンパンマンファミリーだったが、彼らの前に立ちはだかるのはばいきんまんに汚されたエネルギーを浴びせられ、巨大な怪物に姿を変えてしまった「ブラックココリン」だった。


「僕の顔をあげる。だから思い出して」

「みんなのことを、大切なことを」



【登場人物】



味方サイド

・アンパンマン
「僕はどんな時も君の味方だよ」
CV:戸田恵子

ご存じ愛と勇気が友達なみんなのヒーロー。今作ではいつもより少し頑固。
今まで過ごしていた環境とは180度違うアンパンマンワールドに戸惑いつつもパン作りを頑張るココリンをサポートする。
だがアンパンマンが発したとある一言が原因でココリンは傷つきパン工場を飛び出していってしまう。*1
ばいきんまんに連れていかれたココリンを追いかけてヘンテ星まで行くが、そこでブラックココリンと対峙。何か悪さをしていたならともかく、ただばいきんまんに無理矢理変身させられただけのココリン相手にアンパンマンが戦えるはずもなく…。



・クリームパンダ
「ぼくもいつかは、アンパンマンみたいな宇宙1のヒーローになるんだ!」
CV:長沢美樹

ご存知パン戦士の末っ子パンダちゃん。
オープニングバトルでばいきんまんを吹っ飛ばしたアンパンマンに大喜びしながら「いつか宇宙1のヒーローになる」とか言ってたら「宇宙1のヒーロー」という箇所だけを拾ったココリンによって宇宙に拉致される羽目に。
なんとかアンパンマンワールドに戻ってきた後はココリンと一緒にパン作りに励むも、故郷を救ってみんなに褒められることばかり考えているココリンの態度が原因で大喧嘩をしてしまう。



・しょくぱんまんカレーパンマン
「一体どうすれば…」
「こうなりゃもう戦うしか…!」
CV:島本須美、柳沢三千代

ご存じ紳士でナルシストだったり短気で熱血だったりするアンパンマンの頼もしい仲間。
ココリンがジャムおじさんにパン作りを習っている間、ヘンテ星まで飛んでいくために宇宙船アンパンマン号の整備を行う。ヘンテ星でブラックココリンと対峙した際には一度戦う姿勢を見せたもののココリンとの戦いを拒むアンパンマンに静止され、その隙に攻撃を受けてUFOに変身させられてしまった。
ラストバトルではアンパンマンと揃って珍しいトリプルキックを披露。



・ジャムおじさんバタコさんめいけんチーズ
「おいしくなあれ、おいしくなあれ」
CV:増岡弘、佐久間レイ山寺宏一

ご存じパン工場のサポートメンバー。
食糧危機に瀕するヘンテ星を救う為にココリンにパン作りを教えることに。普段のアニメシリーズではほぼ省かれている手間のかかるパン作りの過程を披露してくれる。
途中UFOに姿を変えられてしまうのだが、この姿が手が無く強制的に宙に浮かされてしまう状態のため、アンパンマンの新しい顔を焼けないという窮地に陥ってしまう。
作中後半では何処にあるのかよくわからなかったヘンテ星の場所を探り当てる、ラストバトルでのサポート、事件解決後にヘンテ星の人々に配るパンを爆速で作成など、ジャムおじさんの万能っぷりを思う存分堪能できる。



・メロンパンナ
「アンパンよ、とってもおいしいの」
CV:かないみか

ご存じアンパンマンのかわいい妹分。今回は出番少な目。
アンパンマン号とまとめてUFOに変身させられてしまうも、その姿のままでドキンちゃんと女の戦いを繰り広げた。



敵サイド

・ばいきんまん
「俺様は、ヘンテエネルギーを手に入れるぞ!!」
CV:中尾隆聖

ご存じ正義の敵で永遠のライバル。
アンパンマンにぶっ飛ばされてたどり着いたヘンテ星にて、星内の全てを賄う万能のエネルギー「ヘンテエネルギー」を目撃。このエネルギーを使ってアンパンマンを倒すことを思いつくが、直後お掃除ロボに”ばいきん”まんと名乗ったことでゴミとして宇宙にポイ捨てされアンパンマンワールドに強制帰還。
その後なんとかヘンテ星に戻ろうとするも、行きも帰りも道中ずっと目を回していたためヘンテ星の場所が分からず途方に暮れ…かけたところで、ヘンテ星の住人であるココリンを発見。彼を利用してヘンテ星へ向かい、まんまとヘンテエネルギーを全て奪取することに成功する。さらにやみるんるんの力でヘンテエネルギーを真っ黒に汚してココリンをブラックココリンに変身させる。
コメディな描写に隠れているが、今作でのばいきんまんの悪行及び引き起こした事態のでかさは歴代劇場版の中でも1,2を争うレベルのものである。



・ドキンちゃん・ホラーマン
「で、そのヘンテエネルギーってどこにあるんですか?」
「どこってヘンテ星に決まってるだろ」
「そのヘンテ星ってのはどこにあんの」
CV:鶴ひろみ肝付兼太

ご存じ愉快なばいきまんの仲間たち。
バイキン城の主たるばいきんまんが(おそらく)何日も行方不明だったにも拘わらず、特に心配しないでのんきにゲームをしていた。
ヘンテ星の話にも懐疑的だったが、ココリンをアンパンマンワールドで発見してからはばいきんまんに協力し、いつものよりも雑な変装でココリンを騙してヘンテ星まで案内させる。



・バイキンヘンテエネルギーメカ

今作のバイキンメカ。
ココリンを騙すため雑な偽装で宇宙船アンパンマン号を装っていたがヘンテ星に到着してからバイキンヘンテエネルギーメカに変形した。通常の形態は丸型のボディに足が生えた形で腕が無い。
ボディにバキューム状の口が付いており、ここからヘンテエネルギーを全て強奪してしまった。
アンパンマンが復活してからはやみるんるんで汚したヘンテエネルギーを使い自らを強化。装甲はアンパンチを易々と弾くほど頑強になり、追加されたロケットパンチの機能を備えた腕と強力なジェット噴射でアンパンマン達と壮絶な空中戦を繰り広げる。



ゲストキャラクター

・ココリン
「そしたら僕はほめられる…みんなが僕をほめてくれるぞ!」
CV:松雪泰子

危機に瀕するヘンテ星を救う為、宇宙船に乗ってアンパンマンワールドへやって来たヘンテ星人の男の子。
故郷を救いたい気持ちは本物なのだが、そのために度々ヘンテ星を脱走してはクリーチャーやらパンダちゃんやらを星に連れてきたりで重ね続けた違反は100回に上る。
ヘンテ星がほとんど機械で構成された星だったせいか自然や味わう食べ物といったものを知らず、アンパンマンワールドで初めてパンを食べその美味しさに感動する。
ジャムおじさんからパン作りを教わるが、今まで食事をカプセル一つで済ませてきたせいか「真心を込めて作る」ことを理解できず、しかも救った後で皆に褒められることばかり考えていてその態度をクリームパンダから責められてしまう。ただ、どんな時でもアンパンマンは自分の味方でいてくれると信じていたのだが…。



・やなせうさぎ
「おなかがすいて力が…」
CV:やなせたかし

ご存知原作者…の自画像キャラ。ED後のエピローグで登場。
また遭難したのか岩山の中でおなかをすかせて座り込んでおり、飛んできたアンパンマンから顔をもらうところで今作は幕を閉じる。
ちなみに、このエピローグは次回作の冒頭と繋がっていたりする。



その他キャラ
評議委員長、評議員たち
CV: 藤井恒久、宮川美保、横尾博之、佐久間レイ、堀内賢雄

ヘンテ星を統治する評議員達。
ヘンテエネルギーが枯渇し、食べるものにも困るようなヘンテ星の未来を憂いて度々話し合いを行っているようだが、特にといった打開策も思い浮かばず日々頭を悩ませている。
ヘンテ星を救う為と言って度々勝手に星を飛び出してしまうココリンには手を焼いている。(が、ただ話し合ってばかりいる評議員たちより自ら行動を起こして解決しようとするココリンの方が若干ましに見えるが)



オープニングバトルに登場

タイコマン
CV:堀内賢雄



本編中に登場

アンコラ



エンディングに登場

うなぎまん
おくらちゃん
かつぶしまん
カツドンマン
かまめしどん
てんどんまん
シブガキじいさん
しらたまさん
ネギーおじさん
ミカンぼうや
モオさん
りんごちゃん
ヤギおじさん


【挿入歌】


・生きてるパンをつくろう(Brand New ver.)
作詞:やなせたかし 作曲:いずみたく 編曲:坂部浩章
本作のテーマ曲で歌唱はジャムおじさんこと増岡弘氏とバタコさんこと佐久間レイ氏。元々はジャムおじさんとバタコさんのテーマソングだが、今作のテーマが「食」という事でテーマ曲に抜擢された。
しかし世情の影響を受けてか、一部の歌詞が変更されている。


【余談】


監督を務めた矢野氏はストーリーの結末について、決してやなせ氏の納得のいくものでは無かったと後年語っている。*2
そして、やなせ氏の復興にかける想いは翌年より公開される「復興三部作」に繋がっていくこととなる。


「ジャムおじさんのパンは手で作るんだ、まごころこめて!」



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追記、修正はヘンテ星を救ってからお願いします。


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最終更新:2025年09月28日 00:27

*1 アンパンマン本人には悪気も一応落ち度もない。とにかく状況が悪かった。

*2 正直に言ってしまえば、今作の結末はヘンテ星人にとってバッドエンド、もしくはメリーバッドエンドに値するものである