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デモリションマン(映画)

登録日:2025/11/15 Sat 13:27:53
更新日:2026/07/30 Thu 22:30:24
所要時間:約 11 分で読めます


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クレイジー野郎に、イカレ刑事(デカ)だ!!


 DΞMOLITION MAN 


『デモリションマン(原:Demolition Man)』は、93年の米映画。
監督はマルコ・ブランビヤ、主演は男のリトマス試験紙シルベスター・スタローン。


●目次

【概要】

オルダス・ハックスリーの『すばらしい新世界』というディストピアをテーマにした小説から影響を受けた映画で、「平和な理想郷のように見えて、権力者に徹底的に管理されて抑圧された未来社会」や「20世紀の犯罪者と刑事がコールドスリープの末に、21世紀の平和ボケした未来社会で蘇って対決するSF要素を併せ持っている。

ディストピアな未来を半ばコメディチックに皮肉っぽく描写しているが、製作当時の90年代前半ながらも令和の現代では無視できないものとなっている。

主人公の名前や型破りの刑事*1といった設定など所々で過去のスタローン作品のオマージュ要素が多いのも特徴。
90年代は低迷気味だったスタローン作品の中ではまずまずの評価を得ており、スタローン自身も近年、自分が出演した映画の中でも強く印象に残っている作品の一つとコメントしている。


【あらすじ】

20世紀の1996年、ロサンゼルス市警の刑事ジョン・スパルタンは、凶悪犯サイモン・フェニックスを死闘の末に逮捕するが、数十人の人質を救出できず死なせてしまう。

スパルタンは作戦失敗の責任によりフェニックスと共に冷凍刑に処され、コールドスリープで分厚い氷の中に収監される*2

時は過ぎて21世紀の2032年、暴力や犯罪がなくなり平和な社会となったサン・アンゼルス*3で仮釈放審査のために解凍されたフェニックスが脱獄してしまう。

平和至上主義によって長年、暴力もなくなっていたためにすっかり腑抜けになっていた警察ではフェニックスに太刀打ちできず、フェニックスに対抗するためスパルタンを仮釈放することを決定した。


【登場人物】

  • ジョン・スパルタン
    演:シルヴェスター・スタローン
主人公。ロサンゼルス市警の刑事。
凶悪犯を3年間で1000人以上も逮捕した実績を持つ凄腕の刑事であるが、その過程で色々な物を破壊しているので『デモリションマン(ぶっ壊し屋)』のあだ名を持つ*4
こうした破天荒な一面から上層部とはよく対立していた。

刑事時代からベレー帽がトレードマークだが、まんま後の『エクスペンダブルズ』のバーニー・ロスである。

宿敵のフェニックスを2年以上追った末に逮捕したものの、人質を救出できず死なせてしまった罪により70年の冷凍刑に処されてしまう*5

元々妻子がいたが、妻は冷凍睡眠中に起きた大地震で亡くなっている。
娘の安否については不明だが、ノベライズ版では地下街の住人として生存が確認されている。

脱獄したフェニックスに対抗するため解凍されたが、更生プログラムによって編み物や裁縫が得意になっていた。*6

  • サイモン・フェニックス
    演:ウェズリー・スナイプス
本作の宿敵。20世紀末にあらゆる犯罪に手を染めてきた凶悪犯でテログループのリーダー。
スパルタンによれば産みの親さえも憎んでいるという根っからの極悪人である。
その一方で非常にお調子者な一面もあり、警察相手でもからかったり遊び感覚で倒すなどブラックユーモアに溢れている。

スパルタンに逮捕されて終身刑に処され、冷凍刑務所に収監されていたがエドガー・フレンドリーを暗殺するためコクトーによって意図的に脱獄させられる。
  • 市街地での戦闘術
  • 拷問
  • コンピューターハッキング
  • サバイバル術
  • テロ戦術
  • 武器操作
  • 格闘技
  • 殺人術
  • 爆薬操作
  • 暴力思考
といった能力を与えられ、肉体的にも頭脳的にも以前よりも遥かに強力になった。
フェニックス自身はコクトーの作った社会自体は「くそ面白くない」と吐き捨てている。

  • レニーナ・ハックスレー
    演:サンドラ・ブロック
未来のサン・アンゼルス市警の女性警部補。
まともな犯罪も無く刺激のない平和すぎる毎日にうんざりしており、20世紀に強い憧れを持っている。
自分のオフィスには20世紀時代のポスターやオモチャといった様々なものがコレクションされており、独学で20世紀の知識を学んでいるが、一部の言い回しが間違っており、スパルタンによく注意されている。
ジャッキー・チェンの映画で見様見真似で格闘術を覚えたためか、戦闘訓練も受けていない警察の中ではまともに戦うことができる。

彼女もまたコクトーの管理社会に染まり切っている一面もあり、マニュアルを見ないと犯罪者を取り締まれなかったり他の警察官と同じく潔癖症でもある。

  • レイモンド・コクトー
    演:ナイジェル・ホーソーン
コクトー産業の社長にしてサン・アンゼルスの知事市長。
2032年の管理社会を築いた張本人であり、市民からは世の中から争いや犯罪を無くした平和主義の救世主として崇められている。
だが実際は強欲と権力欲にまみれた偽善者であり、自分の理想社会に反対する者を地下に追いやるばかりか、理想社会に生きる人々のことも何も考えず自分に従っていれば良いと歪んだ考えを持つ。
ノベライズ版ではフェニックスを開放したのもフレンドリーの暗殺だけでなく、わざと社会を混乱させて不安を煽り、市民の私生活までも徹底的に管理・支配*7する口実を作るためのマッチポンプというのだから救いようがない。

冷凍刑務所の発案者で様々な技術を開発するなど優れた技術者でもあり、大きな影響力も持っているが、そのためフェニックスのような凶悪犯も彼の一存で開放できてしまったりと半ば私兵と化している。
自分だけは殺せないように更生プログラムを仕込むなどしたたかではあったが、彼自身も自分の築いた社会に染まり切っていたが故に、同じく解凍させたフェニックスの部下達はそのままの状態にしてしまったためか自業自得の末路を迎える。

  • エドガー・フレンドリー
    演:デニス・リアリー
コクトーの管理社会に反抗する地下街のレジスタンスのリーダー。
コクトーからは自分の社会を害し、いずれ革命を起こす者として敵視されており、彼を暗殺するためにフェニックスを意図的に脱獄させた。
ただし本人は「自分がしたいことをするだけでリーダーになる気はない」「コクトーに恥をかかせてやりたいだけ」と言っているように、飢えに苦しむ地下街の人々のために地上の食料を奪ったりと義賊的な一面もあり、
  • 市民の騒乱行為
  • 落書き行為
  • 暴動扇動
  • 中傷発言
  • 食料窃盗
  • 不法行為
  • 道徳的不安
といった罪状から見ても分かるように、意外にも殺人などは犯していないので本質的にはチンピラ止まりでフェニックスのような凶悪犯ではない。

  • ジョージ・アール
    演:ボブ・ガントン
サン・アンゼルス市警の警察署長。メガネをつけたハゲ
コクトーの管理社会に染まり切っている人間の一人。
ハックスレーに陰口を叩かれるなど警察署長という権威を笠に着ているだけの無能者で、極度なマニュアル人間。
スパルタンとは非常に仲が悪く彼を「原始人」「野蛮人」「猿」などと罵るが口先だけの小心者であり、後半では部下ともどもスパルタンを連行することさえできなかった。

  • アルフレド・ガルシア
    演:ベンジャミン・ブラッド
ハックスレーの同僚の若い男性警官。
20世紀の文化に憧れを持つ彼女と違って平和な社会に満足しているが、内心では刺激に飢えていたようでスパルタンの記録映像を興味深そうに見ていたり、後半では地下街の文化に染まり切っていた。
ヘタレではあるが自発的にフェニックスに挑もうとするなど勇敢さはある。

  • ザッカリー・ラム
    演:ビル・コップス(2032年時)/グランド・L・ブッシュ(1996年時)
黒人の老警官。
1996年時の若い頃は警察航空隊のパイロットで、スパルタンのフェニックス逮捕を見届けた一人。
スパルタンとも普通に握手ができて再会を喜び合うなど、コクトーの社会に馴染みつつも染まることなく生き抜いていた数少ない人間の一人。
20世紀社会の生き証人でもあるため、当時の社会を知らない未来社会の若者達のアドバイザーでもあった。
ノベライズ版では地下から脱出してきたフェニックスに殺されてしまう。

  • ボブ
    演:グレン・シャディックス
コクトーの秘書。メッシュの髪が特徴。
非常に気が弱い上に保身のためならフェニックスにもあっさり寝返ってしまうヘタレ。
そのフェニックスも最終的には見捨ててフレンドリーに取り入ろうとした。

  • ウィリアム・スミサーズ
    演:アンドレ・グレゴリー(2032年時)/マーク・コルソン(1996年時)
冷凍刑務所の所長*8
1996年時は若かったが、2032年は初老で登場。
アール署長と同じくコクトーの管理社会に染まり切っている人間の一人で、もう犯罪は起こらないと高を括っていたが、事実上コクトーに裏切られる形でフェニックスの脱獄の犠牲者となる。
フェニックスが刑務所から外に出る網膜認証のために片目を抉り取られ惨殺されてしまう。
ノベライズでは一時的に目覚めた囚人達の仮釈放審査で審査が通らない囚人達が絶望するのを見て悦に入るのを日課にしているという悪趣味まで持つ。

ツッコミどころ満載の未来社会】

上述のようにコクトーの手によって2032年の未来は過剰な平和至上主義と清潔社会になっており、この映画の見所となっている。
令和の世となっては日本ですら一部はほとんど実現しかけているとも……。

  • 暴力の反対
作中世界では16年間、自然死以外の死が一切なく、26年間殺人事件も起こっておらず、平和至上主義の社会では些細な暴力も無いので警察の仕事は違反者を取り締まることくらいしかなかった。

一般人に限らず警察すら暴力を嫌っているのでまともな戦闘訓練すら受けておらず、犯人逮捕はマニュアルを見なければできない上、凶悪犯罪が発生してものんびりしているなど極端に平和ボケかつヘタレ化していた。
数だけは多いのにスパルタンを力尽くで取り押さえることさえしないことから、権力と権威を頼りにして今まで違反者の取り締まりをしていたようである。

こんな体たらくから警察は地下街の人々達からは完全に舐められており、せいぜい所持する電気警棒のグローロッドくらいしか脅威とみなされていない。

  • 何もかもコンピュータ頼り
上記のように警察はコンピュータによるマニュアルを見ないと逮捕できないなど自分の意思で何かを考えることができなくなっている*9
犯罪捜査についてもコンピュータに分析させて形式的な凶悪犯の活動しか導きだせないなど、犯人個人の心理まで考えようともしなかった*10
これはコクトーとしては自身に対する疑念や反抗心を抱かせないようにするためと思われる。

徹底的に暴力が排除された影響で「馬鹿」など下品や暴力的な言葉を口にすることが禁止されている。
「クソ親父」と陰口を叩いただけでも近くのコンピュータから「言語条例違反」として違反切符が切られ、何度も続けていると警察が派遣される。
そのため、未来社会では相手を罵る時は「原始人」「野蛮人」といったものに置き換えるようにしている。
ただし、コクトー自身は「クズ」といった言葉を口にできるので、権力者だけは許されているようである。

  • 潔癖症
クリーンな社会を形成するため、他人の身体に直接触れる行為を一切禁じている。
握手すら行わず、パントマイムのように相手と手を離したまま合わせるのが代わりに行われている。
セックスやキスも不潔なものとされており、エイズを防止する意味合いもあってか妊娠は許可制かつ人工授精で行われている。中絶も禁止である。
そのためこの時代の性行為は互いの頭に専用の機械を装着してデジタル化された性的快楽を共有して楽しむバーチャルセックスが主流。

  • 健康第一
健康に悪影響をもたらす飲食物・嗜好品は一切禁じられており、酒やタバコはもちろん、カフェインを含むコーヒーコーラといった刺激物、しまいにはチョコレートや肉さえも違法とされている。
つまり作中の未来社会の人々はヴィーガンであり、豆腐など健康食品しか口にできず肉を焼く匂いすら嫌悪を示すようになっている。

  • 非道徳・精神面に悪影響のある娯楽の禁止
教育に悪影響をもたらす暴力的な映画やオモチャはもちろん、ポルノも禁じられている。でもジャッキー映画はオッケー。
びっくり箱のようなものですら、他人を心理的に少しでも傷つけるようなものは禁止されており、ジョークの欠片もない。同人誌もダメそう。
当然、音楽も対象で作中では子供が歌うような平和な童謡を大人が歌っている。

  • 自然環境を汚すエネルギーの利用禁止
ガソリンなどの環境を汚染するエネルギーの使用が禁じられており、作中の自動車は専ら電気自動車である。
恐らく脱炭素であり、太陽光発電が主流。

  • 武器の利用禁止
火器などの凶器は一般に流通しておらず、弾薬と共に博物館に展示されているものしかない。
警察の武器はグローロッドと呼ばれる電気ショックで相手を気絶させる警棒が使われており、これ自体は一発で気絶させたり、水に電流を流せるなどかなり強力。

  • 貨幣が存在しない
未来社会の人々は体内に埋め込まれているマイクロチップによって個人をコンピュータ管理している。
発信器にもなっている他、電子マネーとしても機能しており硬貨や紙幣といった物理的なお金は存在しない。
現金やカードは強盗などの犯罪の温床になるためか規制されたようだが、同時にコクトーの社会に反発するものはその恩恵を享受できなくなることを意味している。
このため、チップを持たないフェニックスは地上では逆探知されない代わりに一切の買い物ができなくなっていた。
ノベライズでは未遂だったが、「もしチップが埋め込まれている市民の手を切り落とすことを思いついたら……」とスパルタンは不安視している。

  • トイレットペーパーがない
限りある資源の無駄遣いを抑制するためか、用を足した後に紙を使用しない*11
代わりに貝殻が利用されている。使い方はまったくもって不明である……。

  • レストランは全てタコベル
現実ではタコスやブリトーと言ったメキシコ料理を提供している大手ファストフードチェーンのタコベルが作中世界の飲食産業におけるフランチャイズ戦争に唯一生き残った店として登場。
そのため未来社会ではタコベル以外のレストランが存在せず、他の店舗は全て淘汰されて残っていない。
また、店のサービスやメニューも高級レストランを思わせるようなものへと変化しており、ファストフード時代のタコベルを知るスパルタンは呆気に取られる事になった。
なお、米国外で公開されたバージョンではタコベルの知名度がそれほど高くなかったからか、店の名前やロゴが同じヤム・ブランズ傘下のピザハットに差し替えられている。
なお、日本のタコベルは2025年現在は10店舗が存在し、運営会社は小僧寿し*12の傘下となっている。

シュワルツェネッガーは現実では2003年から2011年までカリフォルニア州知事を務めていたが、アメリカ生まれではないので現在のアメリカの法律では大統領になることは不可能。
作中では彼を大統領に推す声が上がって法律を改正しており、記念図書館まで作られている。
ちなみにハックスレーからこの事実を聞いたスパルタンは「あいつが大統領だって?」とうんざりした表情を見せた*13


こうした過剰過ぎる管理社会に耐えられなくなった人々は地下街に潜り込み、飢えと戦いながら貧困な生活を送っている。
地下社会ではガソリン車やバイク、銃器、ネズミの肉を使ったハンバーガービールといった20世紀の代物が手に入り、スパルタンはご満悦であった。


【余談】

  • 終盤、フェニックスが冷凍刑務所に収監されている凶悪犯のリストの中にジェフリー・ダーマーという実在の殺人鬼がいるが、本人は1994年に収監中の刑務所で他の囚人によって殺害されている。
  • フェニックスが使用する未来の銃『マグネティック・アクセレーターガン』のプロップは欠陥品と悪名高いH&K G11が使用されている。
  • フェニックスの犯罪歴に脱税があるが、演じたウェズリー・スナイプスは2008年に同じ罪状で起訴されている。『エクスペンダブルズ3』でも盛大に自虐ネタとして披露していたので知っている人も多いのでは?
  • 公開翌年にウィリアムズ社からピンボールマシンが出ている。

追記・修正はトイレで貝殻の使い方が分かってからお願いします。


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最終更新:2026年07月30日 22:30

*1 1986年公開の『コブラ』

*2 スパルタンによれば冷凍されている状態でも感覚や意識はちゃんと残っていたらしく、「死刑になった方がマシだった」と言わしめるほど酷いものだった模様

*3 現代のサンタ・バーバラとロス・アンゼルス、サンディエゴが合併した街

*4 身代金2万5000ドルの子供を救出するのに700万ドルのビルを爆破するほど

*5 実は人質はスパルタンがフェニックスのアジトに乗り込む前に既に殺されており、赤外線探査にも反応しなかったのはそのため。つまり冤罪であるが、元々上層部から目の敵にされていたのもあってか半ば見せしめのために投獄されていた。

*6 コールドスリープ中に神経から脳に刺激を与えて囚人の人格を改善し、社会復帰の為に遺伝子情報から読み取った『ふさわしい職業の技能』を与えるというもの。なお、スパルタンは知らない間に自分に『裁縫』の技能が与えられていた事を知ると、見るからに不満そうだった。

*7 市民が監視カメラを部屋に設置してもらうように誘導するつもりだった。

*8 1996年時は副所長

*9 例として、復活したフェニックスが警官隊の目の前で器物損壊やクラッキングなどの犯罪行為を行っているにも拘わらず慌てふためき、「大きな声でその場に伏せるように言ってみてください」というコンピューターからの指示をそのまま実行する等。当然フェニックスがそんな命令を聞くわけもなく、次の瞬間には警官隊全員がボコボコにされた

*10 署長は「フェニックスは最終的に麻薬工場を作って犯罪組織を築くつもりだ」とコンピュータの分析に従っていたが、その時にフェニックスが欲しがっていたのはスパルタンの直感通りに銃器などの武器であり、完全に的外れであった

*11 そのためスパルタンはわざと何度も言語条例違反を繰り返して印刷された違反切符で紙を確保するという荒業を実行した

*12 持ち帰り寿司のチェーン店で、アニヲタ的には大山版『ドラえもん』のスポンサーと言えばピンと来る人が居るかもしれない。

*13 言うまでもなくアクションスターとしてはライバル関係だったスタローンとシュワルツェネッガーの関係性を踏まえた中の人ネタ。