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更新日:2026/06/11 Thu 08:22:52
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『プロジェクト・ヘイル・メアリー(Project Hail Mary)』とは、2021年に刊行された、『火星の人』(『オデッセイ』の邦題で2015年に実写映画化)等を執筆したアメリカの
SF作家、アンディ・ウィアーによる小説。
日本では2021年に早川書房より刊行された。訳者は小野田和子。
本項目では、同作の実写映画版についても取り扱う。
ストーリー
「2足す2は?」
長い昏睡状態から目覚めた一人の男。
覚醒補助をAIの動かすロボットアームに強要されながら、男はベッドから這い出すが、その空間は異様な閉所であった。
室内を探索するうちに、男が目にしたものは生命維持装置が故障し死亡した二人の男女と、数々の精密機械、そして奇妙な重力環境。
つまり男がいるのは宇宙船だ。機械によると、その宇宙船「ヘイル・メアリー」号は太陽系から遥か離れた宇宙にある。
男、ライランド・グレースは自分が中学校の教師であること、太陽の衰退化により地球が滅亡の危機に瀕し、それを止めるためのプロジェクトに加わっていたことを徐々に思い出していく。
慣れない宇宙船を操作しながら目的地へと急ぐグレースだったが、その時、彼は思いがけないものと出会うのだった。
概要(序盤)
本作は、ある一人の男が奇妙な場所で長期昏睡から目覚める場面から始まる。やがて彼は、そこが宇宙船の中であると気づく。
昏睡の影響で記憶がおぼろげしか思い出せない中で、彼は、自分が未知の生物の影響で死に瀕した太陽系を救うプロジェクトの一員であったと推測する。
ただのいち中学教師に過ぎなかった彼は右も左もわからない状況で宇宙船を操作するが、そこで起こったある一つの出会いにより、物語は大きく動いていく。
刊行当初は
「ネタバレ厳禁」「事前情報を知らずに読むことを推奨」という宣伝文句が飛び交ったように、物語序盤では主人公が
記憶喪失になっているため、「なぜ彼が宇宙船にいるのか」「具体的に宇宙で何をすればいいのか」といった重要情報が伏せられ、物語の進行と共に思い出していく
ミステリータッチの作風となっている。
更に、前述した「出会い」により、
物語のジャンルそのものが一変し、本作最大のサプライズとして機能しているため、実写映画公開前後まではその情報自体が極秘扱いとされていた。
以下、「出会い」の詳細について記載。
映画の宣伝によりもう知っている方も多いと思われますが、ネタバレなしで楽しみたい方はブラウザバックをお願いします。
広大な宇宙で、この危機に挑むのは、
彼ひとりではなかった——
人類は孤独ではない。ぼくはたったいま、われらが隣人と遭遇したのだ。
「うっそだろう!」
概要(核心)
そのサプライズとなったのは、主人公グレースが出会う、
異星人「ロッキー」の存在である。
地球人とは全く異なる生態系を持つロッキーは、奇しくも地球と同じ原因で母星が滅亡の危機に瀕していた。
目的が同じであると気づいたグレースは、ロッキーと協力し、互いの持つ科学の知識を活かし、それぞれの母星を救うプランに着手していく。
このように、「孤独な宇宙でのミッション」として始まった物語が、「異星人とのファーストコンタクトとバディの結成」という娯楽作品的要素が加わり、一部の読者からは「どうしてこんな魅力的なキャラクターが出るって言わなかったんだ」と驚きと感動の声が上がり、SF小説に詳しくない層からも絶賛された。
勿論、この作品はあくまで「SF小説」であり、物事を科学的に解決することが主題である。
専門用語は多いが、説明も細かく記載されているため、理系に明るくない人でも読みやすい。
また、グレースやロッキーといった登場人物が極めて理性的な人物であるため、トラブルへの対処をトライアルアンドエラーを繰り返しながらも持てる知識をフルに活用し、「科学」の力と「調和」の力を正しい形で発現させる、まさに「サイエンス・フィクション」の王道とも言うべき作品である。
映画前作『オデッセイ』が「火星鉄腕DASH」と呼ばれたことを踏まえてか、旅の中でなされる彼らの痴話喧嘩のようなやり取りの様子から一部で本作を「水曜どうでしょう宇宙の旅」と呼ぶ向きも。またしても何も知らないライランド・グレースさん。映画終盤で明かされたグレースの秘密を考慮すると、ますます「どうでしょう」要素が深まっていくのは内緒。
こうした、「科学」の持つ陽の力を肯定し、「異種族との共存」に繋がる物語に、科学者や批評家から絶賛された本作は、日本でも第53回星雲賞・海外長篇部門受賞を受賞した。
実写映画版
小説の刊行前から映画化の企画は動き出しており、Amazon MGM スタジオにて製作が開始された。
監督は、『レゴ(R)ムービー』の監督や『
スパイダーマン:スパイダーバース』の製作を担当したフィル・ロードとクリストファー・ミラー。
脚本は『オデッセイ』でウィアーと組んだドリュー・ゴダード。
2026年3月20日に、ソニー・ピクチャーズ配給で日米同時公開された。
予告編の時点でロッキーの存在が明かされており、この時点で原作でのネタバレが解禁扱いとなった。
原作の科学的説明パートを省略した分、映像的に見ごたえのある緊迫としたアクションシーンやグレースとロッキーの愉快な掛け合いが見物のコメディパートが加えられており、ロッキーのマスコットキャラクター的な可愛さがパワーアップしている。
グレースの地球での回想シーンもオリジナルシーンが多く、ストラットの人物像に厚みが出ているのもポイント。
全体的に、原作が「科学的思考を重んじたSF小説」ならば、映画版は「異種族間の友情を描いたSF映画」という方向性の違いがある。
登場人物
実写映画版のキャストと日本語吹替声優も掲載。
演:ライアン・ゴズリング/吹き替え:内田夕夜
「光の速度が分かる人はいるかな?」
本作の主人公。中学校の科学教師をしているアメリカ人。
かつては分子生物学の博士号を取得した研究者だったが、
「生物の発生に水は必須ではない」という突飛な内容の仮説を展開し、既存理論の提唱者を厳しく非難したため著名な学者の反感を買い、学会を追放されていた。
しかし後述する災厄を巻き起こしていたアストロファージが太陽表面という超高温化で活動しており、水が必要ない生物と考えられたため、ストラットにその道の権威と見初められ、ペトロヴァ対策委員会の研究者として強引に駆り出される。
自己評価の低い小市民的な性格だが、科学に関する知識や論理的思考、学習能力に関しては並外れたスペックを持つ。
そして気づいた時にはヘイル・メアリー号の中におり、他の乗組員も全滅した上に記憶を失い前後不覚の状態で、おぼろげな記憶を頼りにタウ・セチの調査に向かう。
そこで偶然異星人の宇宙船と遭遇し、相手が同じペトロヴァ・ラインの調査を目的としていると気づき、件の異星人・ロッキーと対面して協力関係を築く。
この際、地球人と全く生態系が違うエリディアンのロッキーとのコミュニケーション方法を
エコーロケーションが鍵と見抜き、ExcelとMIDIを駆使して発明するという何気にそんじょそこらの科学者もビックリな凄まじい技術力も持ち合わせている。
当初は自分がヘイル・メアリー号に乗船した経緯を思い出せず、「何か理由があったから」と思っていたが……。
映画版ではコミュニケーションが苦手で若干ネガティブな一面が強化されている。
操演・翻訳音声:ジェームズ・オルティス/吹き替え:
花江夏樹
「なぜ教師が宇宙に、質問?」
本作のもう一人の主人公にして、グレースがタウ・セチの宙域で出会った、「エリダニ40」星系出身の異星人。
名前は「岩に似てるから」という理由でグレースが勝手につけたもの。
その名前の通り、
「全身が岩でできた蜘蛛か蟹のような生物」とも言うべき、地球人と全く異なる姿形をしているが、「他者を重んじる」という仁義に篤く、価値観は地球人とあんまり変わらない。
ちなみに年齢は291歳。一人称はグレースの翻訳で「ぼく」だが、両性具有で、配偶者や子供もいる。
地球同様にアストロファージが原因で死に瀕した母星を救うために23人の仲間と共に宇宙の旅に出たが、宇宙放射線の影響で仲間は全滅し、アストロファージの燃料に囲まれた仕事場にいた彼一人だけが生き残った。
手先が器用な凄腕エンジニアであり、あらゆる機械工作をこなし、グレースとのミッションでは主に機械製作を担当する。
理知的かつ冷静な性格であり、宇宙での活動に何かと不慣れなグレースに辛辣な言葉を吐く一面も。
知り合ったばかりの異星人であるグレースに協力を申し出、共に過ごすうちに唯一無二の相棒となっていく。
映画版では押しが強い性格で、グレースと積極的にコミュニケーションを取り、陽気とも取れる印象を持つ。
なお小説では大きなネタバレの一つであったが出てくるのは意外と序盤(上巻の中盤あたり)であり、映画版では予告の時点で存在が明かされていた。
「"貴方は死なない方が望ましい"ってところね」
ヘイル・メアリー号計画の責任者の女性。オランダ人で、欧州宇宙機関(ESA)の元長官。
ペトロヴァ対策において強大な権限を与えられており、彼女が指示すれば中国が原子力空母を貸し、サハラ砂漠の1/4を黒い絨毯で覆い、南極を核爆発で切り崩せる。ある意味この作品一番のフィクション。
グレースの類まれなる研究の独創性に目をつけ、彼を強引にペトロヴァ対策やヘイル・メアリー号計画の中核を担う科学者として引き込み、アストロファージに関する様々な研究を指示する。
地球の救済に絶大な使命感と覚悟を持っており、そのためならばいかなる強硬かつ非情な手段をも辞さない徹底的な合理主義者であり、グレースからも苦手意識を持たれていた。
しかしその反面、グレースは周囲から「あのストラットが一番信頼しているチームのナンバー2」と思われていた模様。
そんな彼女が、なぜグレースに大きな期待を寄せ、そしてどうやって彼をヘイル・メアリー号に乗せたのか……?
映画版では破天荒なエピソードがほとんどカットされた結果、冷徹さが低減されており、レクリエーションのカラオケ大会で歌うというお茶目な一面も見せる。
ついでに国籍も東ドイツ生まれのドイツ人に変わっている。
演:ケン・レオン/吹き替え:
山路和弘
ヘイル・メアリー号の船長。中国人。
片道切符で
目標達成後は安楽死を選ぶことが前提条件に近しい過酷なミッションに、人類を救うため大義を持って取り組もうとしており、自殺の方法として、そして他のクルーが自殺し損ねた場合に備えて拳銃を希望していた。
しかしグレースが目覚めた時には既に死亡していた。
映画版では小説版と比較して少々おちゃめな人物として描かれている。グレース曰く、「(宇宙船に持ち込んだ)写真が全部変顔で写ってる」。
演:ミラーナ・ヴァイントゥループ/吹き替え:
沢城みゆき
ヘイル・メアリー号の宇宙飛行士。エンジニア担当。ロシア人。
陽気な酒豪家であり、安楽死の方法としてヘロインによる中毒死を希望していた。
が、ヤオ船長同様、不明な要因により死亡。
グレースは当初この二人がどういう人間だったのかを全く思い出せなかったが関係は良好だったらしく、その遺体を宇宙葬にて弔う際には自身でも説明できない悲しみと共に涙を流していた。
それでも彼女が船内に持ち込んだ大量のウォッカは、ある意味グレースの精神を救うこととなった。
演:マラチ・カービー/吹き替え:井上悟
ヘイル・メアリー号の正規の搭乗者に内定していた科学者。
地球を去った後のために、パートナーとの子を残そうとしていた。
自殺の方法として純粋窒素を用いた窒息死を望んでいたが、アストロファージの実験中に起こった爆発事故により死亡してしまう。
が、彼の遺した窒素は意図せずグレース達を救うことになる。
演:リズ・キングスマン
ヘイル・メアリー号の科学担当バックアップ要員にしてデュボア博士のパートナー。
私生活でも恋人同士であり、パートナーのために彼の子供を作ろうとしたが、デュボアと共に事故死。出発の数日前に科学要員が全滅するという事態に。
一刻も早くヘイル・メアリー号を発進させなければならない切羽詰まった状況で、ストラットはグレースに目を向ける……
ロシアの天文学者。
太陽から金星に向かう謎のラインを発見し、ペトロヴァ・ラインの名付け親となった。
ヘイル・メアリー号計画の科学者の一人。ロシア人。
ヘイル・メアリー号の基本設計を担当。
ヘイル・メアリー号計画の科学者の一人。ノルウェー人。
当初はグレースの理論に懐疑的な立場をとった。
ヘイル・メアリー号向けの無重力科学機器に代わって遠心重力モードを実装することを提案する。
ヘイル・メアリー号計画の研究者の一人。インド人。
人間を昏睡状態にするテクノロジーと、その状態を維持するロボット・医療機器の開発を担当している。
刑務所に収監中だった科学者。
低効率だが安価な材料で数を用意できるアストロファージの繁殖システム「ブラックパネル」を考案し、地球環境と引き換えにアストロファージの巨大農場をサハラ砂漠に作ることができた。
ヘイル・メアリー号計画のアドバイザーの気候学者。フランス人。
ストラットのねじ込みにより「南極の氷を核爆弾で粉砕し、氷の下に眠っていたメタンガスで地球を温暖化させる」計画を発案。気象学的な、そして環境活動家という立場から反対しながらも結局実行し、失意に沈んでしまう。
演:ライオネル・ボイス/吹き替え:
三宅健太
映画版オリジナルキャラクターで、ストラットのボディガードを務める黒人の男。
一見堅物そうな雰囲気だが、意外とノリのいい人物で、研究で軟禁されたグレースと気が合い、彼と意見を出し合ってアストロファージの観察に成功させた。
用語集
グレースが搭乗している宇宙船で、本作の主な舞台。
地球全てが総力を挙げて開発した最新鋭にして人類初の恒星間飛行船。
名前の「ヘイル・メアリー」とは「アヴェ・マリア(おお、聖母マリア/神頼み)」の別の呼び方であり、転じてアメリカンフットボールの「一か八かのパス」で使う掛け声のスラングでもある。
つまり本作のタイトルを直訳すると「ヤケクソ作戦」とか「ええいままよ作戦」とか「なんとかなれーッ作戦」になる。
小説版の挿絵では前(上)から大きく分けてコントロールルーム、ラボエリア、寝室及び倉庫、燃料タンク並列3本とオーソドックスなロケット様の構造になっているが、映画版では居住エリアの周りを3本の燃料タンクが囲み、後方のメインエンジン部分で接続する独特な構造となっている。
どちらもラボを使用する際は燃料タンクと居住エリアがケーブルを繋ぐ形で外れ、全体を回転させた遠心力により1G程度の人工重力を生み出すことが出来る。
また船内のデータベースには既存の科学論文などの学術的なデータのみならず、サブカルチャー等も含めた地球上の膨大な情報が
著作権などの問題をガン無視して記録されている。
メインエンジンはアストロファージを燃料とする"スピンドライブ"で、特性を生かして光速に近い速度まで加速しての星間航行が可能。
ただし、人類の叡智を結集させてもなお時間的・技術的な限界には抗うことができず、
片道分の燃料と食料しか搭載できなかったため、乗組員の帰還を想定しない。
地球への研究成果発送のために同じくスピンドライブ推進の無人機「
ビートルズ」が4機搭載されている。
船内には
クソの役にも立たない人工知能(声:プリヤ・カンサナ/吹き替え:
園崎未恵)が完備されており、ロボットアームによって船員の生活や生命維持サポートを行う。
ロシアの天文学者、イリーナ・ペトロヴァにより発見された宇宙現象。
金星と太陽を軌道を描かずに結び、赤外線を発する線のようなもの。赤外線の波長は正確に25.984μmであり、一切変動しない。
世紀の発見として一躍時の話題となったが、やがてその強化と比例するように太陽光が徐々に低下していく事象が観測、やがては地球気温の低下と気象変動による人類を含む大量絶滅が起こると予測され、全人類の解決すべき問題となる。
探査機がペトロヴァ・ラインから回収した試料に発見された新たな生物で、ペトロヴァ・ラインの正体。
太陽光を吸収する様子からグレースにastrophage(宇宙を食べるモノ)と名付けられた。
大きさはたった10μm(=0.01mm)程度、主成分は水(つまりグレースの理論は早々に破綻した)でありながらあらゆる電磁波を遮断・吸収する皮膜のようなものを持ち、太陽の表面から宇宙空間に至るまで活動可能。温度は常時96.415°Cに保たれている。
恒星の熱エネルギーを吸収後、赤外線を放射し光速に近い速度で二酸化炭素のある星を目指して移動、繁殖する生態系を持つ。この時放出する赤外線がペトロヴァ・ラインとして観測されていた。
推定8光年程度は生きたまま移動可能で、太陽系だけでなく各地の恒星系に次々と"感染"し、光エネルギーを吸収して大繁殖を始めていた。
エネルギーの保管効率は尋常ではなく、2kgほど活性化させれば世界最強の核爆弾「ツァーリ・ボンバ」を超える爆発を発生させるほど。
このように、人類を滅ぼす脅威でありながら夢のエネルギー源としての側面も持つ。
莫大なエネルギーを放出するため取り扱いには厳重に注意しなければならない一方で、あらゆる電磁波を遮断する関係上、可視光では黒い点々にしか見えない。一応通常状態でもそれなりの熱源なのでIRセンサを用いれば発見自体は容易。
ガンマ線すら通さない能力を生かしてヘイル・メアリー号の外壁にも内蔵され、放射線防壁として活用されていたが、ブリップAにはエンジンルーム周辺のみにその機能が働いていた。
なお、電磁波に対する防御は完璧ながら、物理的には意外と脆弱。
要するに「針でつつくと死ぬ」。
ヘイル・メアリー号の核となる推進システム。
三角柱形の透明な回転体にアストロファージを吹き付け、アストロファージに二酸化炭素の放射を見せることで"馬の前にニンジンを吊り下げる"ように推進力を得る。
ロータリーエンジンのようにアストロファージの塗布、推進、除去を平行して行い、連続して推進し続けることが可能。
ヘイルメアリー号はメインエンジンとして1,009機、姿勢制御用に若干数のスピンドライブも搭載している。
アストロファージを観測するための望遠鏡。
機能を切り替えることで可視光とペトロヴァ・ラインの赤外線波長をそれぞれ観測することが出来る。
地球からくじら座方面11.9光年の距離にある星系。
実在であり、太陽によく似た恒星であることが知られている。
アストロファージ拡散の只中にありながら、恒星の減退現象が起こっていなかったためヘイル・メアリー計画の目的地として設定された。
劇中では6つの惑星が存在しているとされている。
なお地球時間ではヘイル・メアリー号が到達するまでおよそ12年+αが掛かるが、ヘイル・メアリー号の視点では
相対性理論における時間の遅れによりおよそ4年で到着する。
同じことはビートルズの帰還にも言え、同様におよそ12年の帰路は無人機にとっては1年8カ月程度となる。
地球からエリダヌス座方面、約16光年の位置にある恒星。
実在する3重連星であり、それぞれエリダニ40A、B、Cと表記される。一番明るくメインとなる恒星がAであり、B及びCは周囲を回る伴星である。
ロッキーの母星はA星を公転する第一惑星であり正式名称は「エリダニ40Ab」だが、まどろっこしく思ったグレースは縮めて「エリド」と呼称した。
エリドは非常に強い磁場と大気を帯びており、地表には光も放射線も届かない。
しかし極めて過酷な環境ながらしっかりと環境に適応した生態系が根付いており、後述するエリディアンによる文明すら存在する。
ちなみにエリダニ40やタウ・セチは先述の通り実在する星である。
タウ・セチは3.5等、エリダニ40Aは4.4等星であり、場所を選べば肉眼で見える程度に明るい。そう考えると、エリディアンは本当に宇宙の隣人と言える。
ただし系外惑星の存在を観測することは非常に難しいため、惑星が実在するかは議論の的となっている。
タウ・セチの場合は提案された惑星候補のいずれも存在が疑問視されており、e星に関しても2026年4月に"偽陽性"の扱いに格下げされた。
エリダニ40も2024年の研究によればこれまで惑星がある証拠とされてきたものについては否定的な意見が大きく、惑星は実在しないか、あるいは今の人類は観測できていない可能性が高いと結論付けられている。
エリド出身の知的生命体で、ロッキーの暫定的種族名。
見た目は岩のような甲羅で覆われ、顔や目に該当する器官は存在せず、5本の節足が生えており、自在に駆使している。体温は非常に高い。
平均寿命は700年程度で、基本的に両性具有。
コミュニケーションはメロディーやハーモニーのような音を用い、
目が無いため周囲の反響音で知覚している。
ちなみにグレースの名前を発音するとゲップみたいな音になる(映画版)
感知精度は非常に高く、地球人類の視覚と同等かそれ以上の情報を得ることが出来る。ただし凹凸の無い物を識別することが出来ない。また
色という概念も無い。
高温高圧のアンモニア大気下で生活しているため、酸素が含まれている地球人の生活可能な大気には全く適しておらず、少しでも触れると全身のラジエーターから拒否反応が出てしまう。
高度な文明を有しているが、
相対性理論や放射線といった宇宙航行の知識には乏しく、また自身が高い記憶力を持っているため電子記憶媒体の開発には至っていない。
また放射線が完全に遮蔽された環境で進化した生物であるがゆえに、放射線への耐性が非常に低い。
腹部の口は
総排泄孔も兼ねており、食事の際は腹部を開口し、まず前回食べた物を排泄した後に食事を始める手法を取り、「あまり見せびらかさない」らしい。
また地球上の生物にとって劇毒のタリウムが彼らにとっては「健康的」な食品であるとのこと。
睡眠時は体のあらゆる機能が停止し何があっても目覚めなくなる(グレース曰く睡眠というより
麻痺)ため、睡眠中の仲間を見守るという習慣が本能的に備わっている。
ちなみにエリディアンの詳細な設定は原作者よりredditで公開されている。
エリディアンは六進法を採用しており、数字表記は次の通り。
| 0=ℓ |
6=Iℓ |
12=Vℓ |
18=λℓ |
24=+ℓ |
30=∀ℓ |
36=Iℓℓ |
| 1=I |
7=II |
13=VI |
19=λI |
25=+I |
31=∀I |
37=IℓI |
| 2=V |
8=IV |
14=VV |
20=λV |
26=+V |
32=∀V |
38=IℓV |
| 3=λ |
9=Iλ |
15=Vλ |
21=λλ |
27=+λ |
33=∀λ |
39=Iℓλ |
| 4=+ |
10=I+ |
16=V+ |
22=λ+ |
28=++ |
34=∀+ |
40=Iℓ+ |
| 5=∀ |
11=I∀ |
17=V∀ |
23=λ∀ |
29=+∀ |
35=∀∀ |
41=Iℓ∀ |
ロッキーの乗っていた宇宙船。
名前の意味は「レーダー上に現れた輝点の一つ目」。レーダーで捉えた正体不明の物体に名付ける仮の名称だが、結局最後までブリップAと呼ばれ続けた。
ヘイル・メアリー号より巨大で、平らな金属で構成されている。
後述のキセノナイトを用いて異星人の船であるヘイル・メアリー号へのドッキングを即席で行えたり、乗員がほぼ全滅していても船外活動をロボットアームで行えるなど機能も充実している。
ヘイル・メアリー号同様にアストロファージを燃料に使用しているが、こちらはエリドの高温環境を活かした潤沢なアストロファージ生産により最初からタウ・セチとエリドを往復する前提で設計されている。
更に、エリディアンは相対性理論を知らず、燃料の見積もりがかなり多すぎたことで結果的にヘイル・メアリー号が地球に帰還するだけの燃料を分け与える余分があった。
食料などの物資も(クルーの人数が24分の1になっているせいもあるが)潤沢である。
エリディアンが使用している特殊な金属。地球で言うキセノン(貴ガスであり、本来は殆ど化合しない気体)で構成されており、非常に頑丈。
ロッキーはこれを使って、気密隔壁や培養容器など、様々な器具を作り出した。
タウ・セチ星系においてアストロファージが集中している惑星。
劇中ではグレースとロッキーの雑談の中でこの惑星に名前を付ける事になったが、そこでロッキーは故郷にいる自らの配偶者の名前を提案。
グレースは
その名前に対応する人類の言葉(ロッキーの配偶者)として「エイドリアン」と命名した。
アストロファージを捕食する微生物が存在していると判明し、グレースとロッキーが大気サンプルを回収するミッションを敢行することになる。
タウ・セチeにおいて発見された微生物。
アストロファージを捕食する特性を持ち、太陽系とエリドの両方を救う福音としてグレース達が研究することになる。
窒素下では生存できないという弱点があったが、紆余曲折を経て品種改良したタウメーバを培養することに成功。しかしその後、思わぬトラブルの原因となる。
余談
ゲスト声優として
ホロライブプロダクション所属のVTuber、宝鐘マリンと戌神ころねの2名が出演している。
特に戌神ころねは自身のXで映画レビューも行っている映画ファン(
スターウォーズファン)であることも知られており、その縁であると思われる。
元々「ひとこと声優」であると銘打たれている通り、ストーリーの邪魔にならない範囲に抑えられている。
「グレース、追記・修正する情報は正しい、質問?」
「オーケイ。では必要情報を精査しよう」
「よい、よい、よい!」
- ダクトテープを買い占めるところが一番の笑いどころか -- 名無しさん (2026-03-27 06:24:23)
- 小説も映画もどちらも良作。ロッキーがここまで可愛いとは… -- 名無しさん (2026-03-27 07:52:54)
- ヘイル・メアリーがアメフト用語なんで「マネーゲーム」みたいなNFLの裏側を追うドキュメントムービーだと思ってしまったのは内緒 -- 名無しさん (2026-03-27 09:08:37)
- ストーリーは全く違うが宇宙で孤独な任務に就く男が異星人と交流するってプロットだけ見るとスペースマンっぽい -- 名無しさん (2026-03-27 09:35:39)
- 実験でnとmを間違えた研究員、本来ならド戦犯なのにそれがなかったらグレースは宇宙に飛んでいなかったという因果... -- 名無しさん (2026-03-27 10:39:39)
- ストラット「行きなさいグレース君」 -- 名無しさん (2026-03-28 01:23:03)
- 宇宙規模の幅寄せシーンめっちゃ好きな -- 名無しさん (2026-03-28 01:35:22)
- 原作だとロッキーはもっとダンディっぽさのある石ころで英語版もそっちに寄せてるから熟練エンジニアって感じが出てる 日本語版だと青年っぽさが強調されてるからびっくりする -- 名無しさん (2026-03-28 11:45:42)
- ↑実際ロッキー平均寿命と現在年齢から見たら地球人で言う30台半ばぐらいじゃね? って感じあるもんな -- 名無しさん (2026-03-28 14:20:05)
- 最後のあれの後、地球人がどういう反応をしたんだろうって考えるとロマンが色々膨らむ -- 名無しさん (2026-03-29 21:57:37)
- ↑↑超一流の技術屋を全く未知の技術体系にアクセスし放題な環境に置いたらテンション上がっても仕方がない気もする -- 名無しさん (2026-03-29 22:23:49)
- 映画版だと帰路がちょっとわかりづらくなってるね……グレースの帰路のメシの数々は映像化してほしかった -- 名無しさん (2026-04-11 19:53:28)
- 映画版がネット配信はじまってたから買っちゃった。洋画はフットワーク軽くて助かる -- 名無しさん (2026-05-27 15:45:33)
- 配信に2000円払うなら円盤出るまで待ちたいんだよな…未公開映像とかもあるだろうし -- 名無しさん (2026-06-04 08:45:43)
- ロッキーの声を決めるシーン、クレジットに名前がなかったけど大塚芳忠さんとか結構な大御所がカメオ出演してない? -- 名無しさん (2026-06-11 08:22:52)
最終更新:2026年06月11日 08:22