登録日:2025/04/09 Wed 20:55:46
更新日:2025/05/19 Mon 09:31:12NEW!
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イルカとは、哺乳類偶蹄目(鯨偶蹄目)に属する鯨類の内、小型の種の総称。
【概要】
主に海に生息する哺乳類の一種。
英語では「dolphin」と呼ばれる。漢字では「海豚」または「鯆」と書き、中華圏(発音は「ハイトゥン」)でもそう呼ばれるが、必ずしも海だけに生息しているわけではなく、淡水に生息している種も存在する。
魚のような体だが、これは類似した暮らし方をする動物は全く違う生物種でも同じような体つきになる「収斂進化」現象によるものである。水中で長年暮らしていたため後ろ足は退化しておりわずかに骨のカケラとして体内に残るのみとなっている。
寿命は野生種は約30〜50年程度だが、飼育下では自由気ままに泳げずストレスが溜まるためか約7~18年程度と短い。ただし飼育下でも野生種と同じくらい長生きした例もある。
クジラとの違い
上記の分類を見てもわかる通り、イルカとクジラは分類学的には明確に区別されておらず、「イルカ」に相当する系統群は存在しない。一般的にはハクジラ類に属する生物種のうち比較的小型の種類を総称して「イルカ」と呼ぶことが多いが、その境界や定義についてははっきりしておらず、個人や地域差がある。
日本では「成体の体長が4 m以下のものがイルカ」という区分法があるが、コマッコウやゴンドウクジラのように4 mに達しないもののクジラと見なされる種も多くブレブレである。
他にも「嘴がある種がイルカ」とされることもあるが、シロイルカやイッカクなど嘴が無い種がイルカと見なされたり、逆にツチクジラやアカボウクジラは嘴があっても大型なことからクジラ扱いされることも。
中にはヒトが可愛いと感じる種を「イルカ」と呼ぶという説も存在する。
【生態】
漢字表記通り多くは海に生息するが、カワイルカ類のように淡水に生息している種や、淡水と汽水域を行き来する種もいる。
イルカと言えば何と言ってもその知性の高さである。イルカは体重に占める脳の割合がヒトに次いで大きく、おおよそヒトの6歳児並みとされており、それを生かしたショーはあまりにも有名。
高い社会性も持っており、「ポッド」と呼ばれる群れを作りながら生活している。群れの規模は数頭程度から1000頭以上になることさえあり、群れは母系社会であり、祖母を中心とした家族で構成されている。これは餌などの情報共有などに有用であり、「ホイッスル」や「クリック」などの音を使って、複雑なコミュニケーションができる。
だが知性の高さゆえに仲間内での暴力的ないじめや子殺し、同族殺しを行ったり、飼育下でも人間に噛み付くなどした例もあるため、むやみにイルカにちょっかいをかけたりするのは危険である。
一方で、他の種類のイルカやクジラを群れに加えて一緒に行動する「混群」と呼ばれる行動を取る事もある。
ハンドウイルカの群れにその傾向が多く見受けられるが、2018年にはカナダにてシロイルカの群れにイッカクが混じって一緒に行動している様子が撮影され、話題となっている。
一緒に行動している影響か、この群れのイッカクはイルカの特徴であるバブルリングを自らも作り出せるようになっているそうだ。
ハクジラに分類されるため食性は多くが肉食性で魚類やイカなどの頭足類、カニなどの甲殻類を食べる。水分はあくまでも食料の魚類などから摂取する。ヒトと同様海水を多量に飲むと排尿が促進されて脱水症状に陥る恐れがあるため、摂取割合はごく少量である。
頭部のほぼ中央にある「メロン」と呼ばれる器官で超音波を放つことができ、それで獲物や障害物の位置の把握、仲間とのコミュニケーションなどに使用する。
間近でよく見ると時折動いていることが分かる時がある。
言うまでもないが性別はメスとオスに分かれ、生殖行為を通して一定期間妊娠の後に出産する。
妊娠期間はほぼ1年前後とかなり長い。
生殖器は通常時はメスとオスの区別が困難であるが、交接時にはペニスが露出するため容易に区別できる。
ヒトと同じく繁殖以外の目的で快楽のために性行為(交尾)する生物としても有名。一般的なバンドウイルカは、1日に数回交尾を行うこともザラにあるとされている。一般的な交尾は数秒で終わるが、ペニスやクリトリスを仲間同士で擦り合わせるなどの、社会的な絆を維持するためのソーシャルセックスはそれよりも長く行われる。
また、フグを見掛けると適度に虐待し、漏れ出た
テトロドトキシンを吸入して
麻薬代わりにしてハイになるなど、人間並に中々に業が深い生き物である。
もっともテトロドトキシン中毒疑惑については否定的な見解もある。
かつては眠らないのではないかとも言われていたが、研究により脳を半分だけが眠り残り半分は覚醒したままでそれを交互に切り替えながら泳ぎ続けるということが分かった。
好奇心旺盛な面もあり、潜水しているダイバーに近づいてくることもあり、傷ついたダイバーを助けようと水面まで持ち上げた例もある。2004年11月にはニュージーランドのワンガレイ沖の100mの地点にて、3mのホホジロザメが3名のライフガードに近づいてきた際に、3頭のハンドウイルカが守るように彼を取り囲んで何事もなく無事海岸に戻れたというエピソードもある。
だがその一方で溺れてもいない人間をそうだと勘違いして沖へ運ぼうとし危険な目に合わせたという事例もある。
まれに餌を取りに行ったりした結果座礁してしまうこともある。仲間意識の強さゆえに助けに行って群れで集団座礁する例も報告されており、そのまま死んでしまうことも少なくない。人間に発見されて助かることもあるが。
【主な種類】
イルカといえばこの種とも言われるほどイルカの代表とも言える種。バンドウイルカとも呼ばれる。
極地を除く世界中の海に生息している。
「泳ぎの達人」とも称されるほどの泳ぎのスペシャリストで、最高時速は65km以上にも達し、船と並走したという目撃例もある。
これまたハンドウイルカと並んで有名かつパブリックイメージに近いイルカ。かつてはハンドウイルカの亜種扱いだったが、後に別の種であると発覚した。
成長すると腹部に斑点が現れるのが特徴。
こちらもイルカの中では著名な種。生息範囲はハンドウイルカよりは狭く熱帯から温帯の海に生息する。
斑紋が黄土色から灰色なのが大きな特徴。
名前の通り真っ白い体が特徴。4mを越すことも珍しくないため、別名「シロクジラ」とも呼ばれる。
ツルッパゲとか言わない。
生息地は主に北極やアラスカ等の北極圏であるが、オホーツク海の個体群から北海道に来る個体もいる。該当項目も参照。
名前通り目の下から胸びれにかけて、暗い青色の筋が1〜2本あるのが特徴で、他の種との識別が容易。
特に多数の群れを作ることが多い種である。
文字通り川などの淡水に生息する種。現生でカワイルカと呼ばれるのはガンジスカワイルカ、インダスカワイルカ、アマゾンカワイルカ、ラプラタカワイルカ、ヨウスコウカワイルカ、アラグアイカワイルカの6種類があり、名前通りの河川に生息している。
人間による捕獲や河川の汚染により全クジラ目の中ではとりわけ絶滅の危機に瀕している種である。
ちなみに淡水に生息するイルカは彼らだけというわけではなく、コビトイルカも海水淡水どちらでも安定して生息できる。
太平洋北半の寒帯から温帯にかけての弧状の海に生息。背鰭の形が鎌に似ていることから名がついた。
南太平洋に棲むハラジロカマイルカに外見が酷似しており、同じ種ではないかと考えられていたが、遺伝子解析により200万年前に別れたとし、一般的には異なる種とされる。
セミイルカは北太平洋の東西に延びた帯状の温暖な海域に、シロハラセミイルカは南半球の南緯40度から南緯55度の範囲の海域に生息する。
体色は前者は全体的に黒いが、後者は口吻、額、胸びれ、横腹を含む広い範囲が白い。
背鰭がないことが最大の特徴で、名前のセミは間違っても昆虫のセミではなく「背美」である。
南アメリカ南端のフエゴ島とフォークランド諸島周辺の海域、インド洋南部のケルゲレン諸島周辺の海域の二つの海域に生息する。
頭と鰭は黒く、喉と胴の大部分は白い体色を持ち、見た目の雰囲気から別名「パンダイルカ」とも言われる。
体型は寸詰まり気味で、1.5mほどまでしか成長しない。
北半球の寒冷な沿岸域に生息。
名前通り鼠色の体色が特徴。また体格も小さく成体で1.6〜1.7m程度と人間とほぼ同じ大きさ。
群れの頭数は2〜10頭程度と少なめ。
アジアの沿岸域に生息。
シロイルカに似ているがそれより小さく、人間とほぼ同じ大きさ。
シロイルカ程ではないが首を動かすことが出来る。
【有名なイルカ】
1976年に静岡県から沖縄の美ら海水族館に搬入されて来たメスのバンドウイルカ。3児の母でもある。
2002年に病気により尾びれが壊死、一命は取り留めたものの尾びれの約75%を切除することになってしまい、以降は泳ぐこともなくプールの底で沈んでいたりただ浮いていたりするだけの状況になってしまっていた。
しかし2003年から美ら海水族館とブリヂストンが共同で人工尾びれの開発を開始、試行錯誤の末に2004年6月に人工尾びれが完成、再び泳げるようになった。
だがそれも束の間、当初は想定していなかった「ジャンプの負荷には耐えられず破損してバラバラになってしまう」という問題が発覚、フジ自身も負傷してしまった。
当時既に老齢に達しつつあったフジが元気に泳ぐだけならまだしも大きくジャンプすることは美ら海水族館側としても予想外だったのである。
改めて素材や構造等々を見直した末に強度を増し取り付けも簡単になった改良型が同年12月に完成、ジャンプも問題なくできるようになった。その後も改良型の尾びれを度々開発している。
その後フジは人工尾びれ無しの状態でもそこそこ泳げるようになった他、泳げるようになった事で肥満気味だったのも解消されたとのこと。
この一連の出来事は後に書籍化され、また『ドルフィンブルー フジ、もういちど宙へ』のタイトルで松山ケンイチ主演で2007年に映画化もされている。
同作は「ジャンプに成功」で終了しているが上記の通り人工ひれプロジェクト自体はその後も続いている。
2014年11月1日、感染性肝炎にて死去。享年45歳。上記の人工飼育下としては勿論、野生種と比べても大往生と言えるだろう。
【人間との関わり】
関わりの歴史は長く、先史時代の世界各地の貝塚から、イルカを始めとする鯨類の食物残滓が発見されており、イルカなど鯨類の骨を狩猟具や漁具などに利用されてきた。
食用
戦前や戦後の食糧難の時代には肉も食用にされたこともあった。ただし血抜きをされていないイルカ肉は鉄分が酸化し黒っぽい色をしているため、美味しく調理するには肉の血抜きと脂身の脂抜きの下処理がポイントとなる。
またメチル水銀などの人体に有害な有機水銀類も含まれるため特に妊婦は食べることを控えるべきだとされている。
現代でも和歌山県や静岡県を始めとした東海地方ではイルカが食べられている。
特に静岡県の地方ネタとして有名だが、現代では「漁業中にたまたま網に引っ掛かった時のものがたまたま市場に流れる」くらいのものが主なのでスーパーの鮮魚コーナーでイルカが売られているのを見るのはむしろ珍しい方と言われる。
なので「静岡ではイルカを食べる」という見出しのインパクトに反して何もアジやサバといった一般的な海産物と同頻度、ましてやこれらを凌ぐ勢いで食べられているとか静岡人のソウルフードとして皆に愛されているとか、そういう訳ではない。その「静岡人」にしても浜松辺りでは馴染みは無く、静岡と伊豆に限った話な模様。
調理方法としては、この手の食材の例に漏れず味噌煮込みなどの形が有名。
娯楽利用
イルカといえばその知性の高さを生かした娯楽利用である。船でイルカと併走しながら泳ぐ様を観賞するドルフィンウォッチングや、水族館で訓練されたイルカがトレーナーの合図によってイルカが様々な得意技を披露するイルカショーは大人気で、目玉要素とする水族館も多い。
しかし狭い空間で監禁飼育になるためイルカに与えるストレスも大きく先述通り寿命も短くなる傾向にあるため、アメリカの複数の州やカナダではイルカ飼育をが禁止されており。他にもフランス政府は2023年、動物福祉の観点から捕獲や水族館でのイルカ繁殖を禁止、2024年にはベルギーでも水族館でのイルカ飼育が禁止された。
一方で野生種と比べて飼育下のイルカの方が遥かに健康的であったという研究もある。
軍事利用
人になつき、頭が良く、運動能力も高いとなれば、まあそういう用途にも使われるわけである。
これも いきもののサガか‥‥
敵地に潜入してのスパイ活動や機雷探知、敵性目標の捜索と追跡等が主な任務のようだ。
いわば水中の軍用犬と言えるが、あちらと異なり敵兵への直接攻撃を訓練しているという話は聞かない。
地雷犬ならぬイルカ魚雷なんてのも同様…あってたまるか
この辺で有名なのは
2019年にノルウェーの北極海沖で発見されたロシア海軍にスパイとして訓練されたと思われるシロイルカ、「ヴァルデミール」の話だろう。
ロシア製のハーネスが装備されていたためスパイと思われたが、
人にも慣れているのか特別何かしらの攻撃などの不審な行動を行う事は無く、むしろ人に懐き一時期地元の人気者になってしまった程。
特に2022年にロシアによるウクライナ軍事侵攻後、にわかに注目を集め
NHKスペシャルの題材にもなったのだが、2024年8月31日にヴァルデミールが死亡していた事が発覚。
当初はロシア海軍に射殺された、と思われていたが死因は射殺では無かったようで、未だにヴァルデミールの目的は何だったのか、本当にスパイだったのか、謎に包まれている。
ちなみにこのヴァルデミール、保護された当初はコミュニケーションのための音を出す事ができなくなっていた。
2020年に調査を担当していた研究者の娘が、何らかの反応を期待して好きな映画のサントラを聴かせてみたところ、それを機に音を出せるようになったという。
ちなみにそのサントラは『
もののけ姫』だったとの事。
ともかく、イルカがせめてきたぞっとなるまでには今しばらくかかるだろうが、なるべく平和利用に留めていただきたいもんである。
イルカのキャラクター、あるいはイルカをモチーフにしたキャラクター・関連人物
特撮
アニメ・漫画・ゲーム・メディアミックス
企業キャラクターなど
イルカに関連するキャラクターやものごと
追記・修正はイルカと戯れながらお願いします。
- ももちゃん(ぴちぴちピッチ) -- 名無しさん (2025-04-09 21:07:11)
- 蘇我入鹿というドルフィンとは関係ないが中学生が印象に残っただろう歴史人物 -- 名無しさん (2025-04-09 21:17:50)
- お前を消す方法 -- 名無しさん (2025-04-09 21:58:05)
- 人を噛んで楽しむ事を覚えたっぽいイルカのニュースを前に見たな、まだ居るのかな -- 名無しさん (2025-04-09 22:47:46)
- フグ毒をキメてトリップするイルカなんてのも一時期話題になってた -- 名無しさん (2025-04-09 23:13:51)
- リフトン(マリオに出てくるイルカのキャラ)思い出したな。ヨッシーで食べまくった思い出。 -- 名無しさん (2025-04-09 23:15:18)
- イルカを食べるのは味っていうより、大食漢で魚を食べちゃう(言い方が悪いかもしれないけど漁業荒らし)から、駆除の目的が大きいらしいね。そう考えると、生活のためとはいえ命を奪う以上は無駄にしないって優しさから来るものと思える。 -- 名無しさん (2025-04-10 00:50:02)
- クウガにドルフィンプールがあった -- 名無しさん (2025-04-10 07:37:00)
- 『4ジゲン』で、イルカは水銀が溜まるから妊婦さんは控えるようにという知識を知った。 -- 名無しさん (2025-04-10 17:17:56)
- 人間に対して友好的でかわいい動物というイメージが先行しがちだが、野生動物なのでそりゃ気性が荒かったり攻撃的になったりもするし死傷者だって出る。素人がその辺の野良猫感覚で触れ合おうとしないこと。 -- 名無しさん (2025-04-10 20:25:45)
- 地球上で2番目に賢い生き物 -- 名無しさん (2025-04-10 20:56:31)
- 海中生物としての活躍はだいたいシャチに取られがち。まあ穏健派だからね。しかしデルフィナス#3はオルシナスを超える最強戦闘機。 -- 名無しさん (2025-04-11 13:32:08)
- ちなみにリフトンはSNES版マリワだと食べられなくなってるらしい。某団体への配慮か? -- 名無しさん (2025-04-11 21:04:39)
- 手塚治虫のブラック・ジャックで戯れに助けたイルカが深刻な被害を出す害獣だったってエピソードもあったな。 -- 名無しさん (2025-04-11 23:37:24)
- 群れで狩りをする肉食動物だからね。そりゃ同じような動物が起こす残酷な出来事も起こすよね。 -- 名無しさん (2025-04-12 11:12:46)
- イルカのみならず毒を媚薬として楽しむ動物はそれなりにいる -- 名無しさん (2025-04-15 22:46:13)
- シュヴァルツシルトW2のエーギル君は……ローカルすぎるかなぁ。知性化処理を施され、艦隊指揮官ができるほどの知性をもったバンドウイルカなんだけども。 -- 名無しさん (2025-05-19 09:31:12)
最終更新:2025年05月19日 09:31