スティーリー・ダン

登録日:2009/10/17 Sat 21:20:09
更新日:2024/01/19 Fri 13:59:50
所要時間:約 10 分で読めます





DIO様は決して何者にも心を許していないということだ
口を封じさせて…いただきます
そしてそこの4人…
お命ちょうだいいたします


鋼入りの(スティーリー)・ダン*1とは漫画ジョジョの奇妙な冒険』の第三部『スターダストクルセイダース』に登場するスタンド使い。
タロット6番目のカード恋人(ラバーズ)の暗示を持つ。

名前の元ネタ*2は同名のAORバンド。
CV:真殿光昭(PS版ゲーム)、岸尾だいすけ(TVアニメ版)。

【概要】


DIOの部下。
気味の悪い怪しげな外国人が多い3部の敵の中では異質な、小奇麗な恰好をしたハンサムな青年。
エンヤ婆が「なぜきさまがこのわしを殺しにくる」と言っていた事から、裏切りの可能性がある部下を始末する役目を持っていたと思われる。

初めて登場した時は怜悧な雰囲気で口調も慇懃だったが、その本性は陰険な卑劣漢
後述のスタンドの術中に承太郎を陥れるとすぐに優位な安全地帯から相手を煽ったり嬲りものにするゲスな本性を現した。
口調も地が出ると品の無い軽薄な物に変わる。

承太郎が人質を取られて手向かいできないのを良い事に、まるで主人のように理不尽な命令を連発。
非力でありながら旅が始まって以来最大級の窮地に彼を追いやったが、一方で生殺与奪権を握りながらさっさと手を下さず大喜びで嫌がらせに興じているあたり、
所詮「スタンド使いになった性格の悪い素人」の域を出ておらず、プロとしての矜持や合理性のような徳目は一切備えていない。
DIOに対しても、当初は忠誠を誓った部下のような口ぶりだったが、実際は単純に高額の報酬に釣られて言うことを聞いているだけの使い走りで、忠誠心のようなものはまるで持っていない。
自分が危なくなれば「もらった前金をやるから許してくれ」と交渉を持ちかける程度の関係である。


自身の優位が覆されたと見るや承太郎の靴を舐めて許しを乞うなど、有利な時に見せた傲慢さや攻撃性はそのまま卑屈さの裏返しでもあり、
保身のためならプライドなどいくらでもドブに捨てられる男。
また、目先の利益に賎しい割に長期的な視点が持てず視野が狭いという欠点もあり、
自分の旗色に合わせてころころと態度を変え、物事の裏側に注意することなくすぐに勝利を確信して良い気になる。
承太郎にも「正真正銘の史上最低な男」と評されたが、
えてしてこういったクズほどタチの悪いスタンドを発現したりする(スタンド=使用者の精神の具現化、という隠喩もあるため)というのもこの作品ではよくあることである。

【作中の活躍】


初めはパキスタンのドネルケバブ屋に変装*3して登場し、「肉の芽」を使いエンヤ婆を殺害した後、ジョセフ・ジョースターの脳幹に「恋人」を送り込み後述のスタンド能力により、彼を人質に取る。4対1と数の上では圧倒的に不利ながら優位な状況を作るが、慢心しやすい性格が災いしたのか、勝利を確信し自分の能力をベラベラとしゃべって反撃のきっかけを与えてしまう。


与えてしまった情報からジョセフらによって「恋人」の居場所を特定されてしまい、花京院典明の「法皇の緑」によって自身のスタンドをジョセフの脳から追い出される*4
今まで人質としていたジョセフが解放されてしまい、「恋人」を無力化されてしまったダンはこの時点ですぐそばにいる承太郎に攻撃されたらひとたまりもないため、これまでの強気の態度から一変、承太郎に対して恥も外聞もないといわんばかりの必死の命乞いを始める(命乞い一回目)。*5

靴をなめる等の卑屈な態度をとる一方で形成逆転しようと、隙を狙って承太郎の耳に「恋人」を送り込もうとしたが、「星の白金」の驚異的な視力の前にあえなく失敗。「恋人」を捕獲され、手足を折られる重傷を負ってしまう。
スタンドを使用不能にされ、人質がいないことも承太郎にバレてしまった、もはや「まな板の上の鯉」のような状態になってしまったダンは再び承太郎に対して必死の命乞いをする(二回目)。

必死の命乞いが通じた(?)のか、承太郎は「恋人」を解放し、立ち去ろうとする。しかし、ダンはまだ承太郎打倒をあきらめていなかった*6
往生際悪く、近くを通りかかった女児の体内に恋人を潜り込ませ人質とし、承太郎を道連れにしようとするも、気づかぬうちに絡みついていた「法皇の緑」の触手によりスタンドの動きを封じられそれも無為に終わるのだった*7

万策尽きて打つ手なしの状態*8となり、なおも見苦しく許しを乞う(三度目)ダンだが、
承太郎はダンと敵対した時点で彼を「絶対に許さない」と固く決意していた。


ディ……ディオから前金をもらってる……そっ それをやるよ

やれやれ てめー正真正銘の史上最低な男だぜ……

てめーのつけ(・・)

金では払えねーぜッ!


『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ』

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラーッ』

『オラアアアアアアアアァァァァァ』

『オラオラオラオラオラオラオオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラーッ!!』

うげっぐあっ〜〜〜!!


サラサラサラ ビッ


つけ(・・)の 領収書だぜ


……と、3ページ52発(アニメでは20秒66発)にも渡る怒りのオラオララッシュを叩き込まれ彼に高すぎる「ツケ」を払う事になった。
TVアニメ版でもきっちりと再現されており、承太郎役の小野大輔氏の白熱の演技も相まって迫力は最高潮。この腐れ外道が容赦なくボコボコにされる様は、視聴者としては物凄くスッキリすること請け合いである。
本気で感動したり、完璧な原作再現に涙した視聴者も多かっただろう。

なお、ダメ押しに殴り飛ばされた先の煉瓦の建築物をぶち破っており扱いこそ「再起不能」だが、
破壊力がスッゴク半端ないスタープラチナにアレだけ打たれてる事を考えたら、頭蓋骨どころか全身粉砕骨折で絶命した可能性が高い…自業自得ではあるが。


【スタンド】



フッフッフ 史上最弱が…
最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も恐ろしいィィ

マギィーッ!!

スタンド名:ラバーズ(恋人)
破壊力…………E
スピード………D
射程距離………A(数百キロ)
持続力…………A
精密動作性……D
成長性…………E


体長1mmにも満たない程非常に小さく、髪の毛一本すら動かす力も無い自称・史上最弱のスタンド。
デザインはカニやヤドカリを人型にしたエイリアンのような姿をしており、両手はハサミになっている。
鳴き声は「マギィーッ!」だが、それとは別に人語も操る。


◆能力

その小ささを利用して相手の脳に入り込み、本体のダンの受けた痛みを数倍にして相手に伝えることができる。
これはダンへのダメージがスタンドに伝わり、反応して脳内のスタンドが暴れる、という割と原始的な仕組みで引き起こしているらしい。
厳密にはスタンドに行わせている作業の一部なのかもしれない。


  ,、,、
  ノノv丶
ヾ_6 ゚ヮ゚)ツ「「スタンド」と「本体」は一心同体!「スタンド」をキズつければ本体もキズつく」

  ,、,、
  ノノv丶
ヾ_6*゚ヮ゚)ツ「逆も真なり!このわたしを少しでもキズつけてみろッ!同時にわたしのスタンドがわたしの痛みや苦しみに反応してあばれるのだ!」


例としては
  • (ダン)手をポキポキ鳴らす→(ジョセフ)義手にまでポキポキの感覚が伝わる
  • (ダン)子供にホウキで軽く叩かれる→(ジョセフ)鈍器で殴られるぐらいの痛みになる
  • (ダン)壺に脚を当てる→(ジョセフ)脚が痺れるぐらい痛くなる
  • (ダン)ちょっと背中が痒いから掻いてもらう→(ジョセフ)思いっきりくすぐられてる状態になる
…などである。

人間を殺すのに力なんぞいらないのだよ……………



わかるかね諸君!
   ,、,、
   ノノv丶
 m9_6 ゚ヮ゚)ツ
 ‾丶}丶ノ{丶
   /__|ノ
   /:/|:|
  /:/ |:|

よく「恋人同士は小指と小指が赤い糸で結ばれている」と言うが、本体のダンのサディズムと、その性格故の孤独を表した実に皮肉めいた能力である。

能力の応用で脳の中にDIOから拝領した「肉の芽」を植え付けて、爆発的に増殖させて脳を食い破らせて殺す事もでき、
一行を「早くスタンドを倒さないと肉の芽で死ぬ」しかし「本体を叩けばダメージが跳ね返る」というチェスや将棋でいう詰みの状態まで追い込んだ。
本当に何故姿を見せたし

さらに細胞を粘土のようにコネて分身を大量に作ったり、
身に纏って「法皇の緑」に化けたりと多彩な戦術でスタンドを潜入させた花京院ポルナレフを苦戦させた。
特に分身は斬っても殴っても次々に分裂・増殖し、大量の「恋人」がゾロゾロ襲い掛かって来るシーンは
SF映画の終盤あたりでエイリアンが大量に襲いかかって来るシーンを彷彿とさせる不気味さである。
「恋人」及び分身は縮小した「銀の戦車」とも肉弾戦で戦えているので、非力というのはあくまで小さいからであり、サイズ相応で言えば身体能力はむしろ高い部類といえる。


本人も認める通り最弱、それでいて最凶の能力だが、欠点もある。
もともとスタンドは自分に対して分厚すぎる壁は透過できず、縮小した「法皇の緑」や「銀の戦車」がそうしたように、
「恋人」も体内に潜入するときにはわざわざ耳などから入り、血液を泳いだり体組織を掘り破っていかなければならない。
これは脱出するときも同様で、作中でもいちいち足元の組織を掘りぬいて逃げ潜っていった。*9
遠距離からでなく間近から、本体の目視のもと潜入させたのはこの性質のためだと思われる。

また、承太郎が「苦痛を感じる暇も与えずに即死させてみせる」と攻撃に踏み切ろうとした時にはダンも本気で焦っており、
可能ならばそれも有効な攻撃手段になるはずである。

そして相手に攻撃されたことを全く認識させずに葬れる能力を持ち、自分以外の人間がどんな目に遭おうと意に介さないDIOとは全方面で相性が最悪である。
それ故に忠誠を誓ったのかもしれない。


なおいろいろな意味で有名なSFC版ではダンはなぜか登場せず、『恋人』はエンヤ婆が種としてジョセフに埋め込んでいる。
また、その際、ジョセフ以外の4人がスタンドを小さくして彼の体内に入ることになる。

余談


ー作者からー

中東方面では、日本や西洋などの常識は全く通用しない。
…というのも、値段がすごくいい加減なのだ。

日常の値打ちを知らない初めての外国人は、
一体いくらなのか全く検討が付かず、
すごくカモられてしまう。

しかし、ここの世界ではカモるのは悪いことではない。
騙されて、買ってしまうヤツが、マヌケなのである!!


ここで、買い物の仕方を説明しよう。

例えば、この場合『わしはふっかけられてるのをお見通しだよン』という態度を取り

「1000円?カッカッカッカッ
バカにしちゃいかんよ君ィー高い高ィー!!」


…と、大声で笑おう。
すると、

「いくらなら買うネ?」

…と、客に決めさせようと探ってくる。

「5人で250円にしろ!」


自分でも『こんなに安く言っちゃって悪いなぁ〜〜〜』と思うぐらいの値を言う。

……すると

「オッほっほっほっほっ〜」


『マジィ〜〜〜?常識あんの〜〜〜??』
と、人を小馬鹿にした態度で


「そんな値段で売ってたらワタシの家族全員飢え死にだもんねー」
ギィ-


…と、首を掻っ切る仕草をしてくる

しかし、ここで気負けしてはいけない!!

「じゃあ他の店で買おうかな」


帰るマネをしてみよう。


「OKフレンド!ワタシ外国人に親切ネ!5個700円にするヨ?」


…と、引き留めてくる。


「300にしろよ」


値段交渉開始ーッ



「600」
「350」
「550」
「400」
「450」

『425』

「425!買った!!」
(やったー半額以下までマケてやったぞ!)
(ざまーみろ!モーケタモーケタ)


…と、思っていると


(いつもは5個で150円で売ってるもんねー)
「バイバーイ サンキューねっ」

「恋人」のエピソードで特に欠かせないのが、ドネルケバブ*10屋に化けてた際の上記のジョセフとの値段交渉バトル。(※アニメと混同してますが、ほぼ原文ママ。)
これは作者の荒木氏の取材体験を元に作られたエピソードであるらしく、妙に気合が入っている。
実際に中東方面や東南アジア辺りでは、買い物での値切り交渉は当たり前である。
海外旅行に行った際に、参考にした読者も結構多いのではないだろうか?

そしてアニメにおけるケバブ屋に化けた際の、ジョセフとの値段交渉バトルは、焼かれてるケバブ肉*11飯テロ級の旨そうな作画や、
ナレーションの大川透氏の「楽しそうにやってるなぁ」と思わせる解説っぷり、そして岸尾氏の熱演*12も相まって腹筋崩壊モノであり、更に必見である。

この時ダンは普段は五個(日本円で)150円で売ってるケバブを五個1000円(交渉前)→五個425円(交渉後)でぼったくってたが、
現在の日本で売ってるケバブに比べると遥かに安い*13のが、なんとも複雑にさせてしまうシーンである……。
わざわざモノローグで「いつもは」と言及している事もあり、ケバブ屋は一時凌ぎの変装ではなく本業だったのではと考えるファンも多いとか。
そして最終的にちょっとぼったくられたとはいえ、ケバブを値切りまくったジョセフのドケチっぷり。いいのかニューヨークの不動産王…



「おいアニヲタども」

「おれの代わりに追記してくれよ」

「どうだ?追記してくれないのか」

「てめーーなにふざけてやがるんだ」

「追記しろと言っているんだッこのポンチ野郎がァーッ」

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最終更新:2024年01月19日 13:59

*1 「スティール+入り=スティーリー」というダジャレ。

*2 主要メンバーにウォルター・ベッカーとドナルド・フェイゲン。代表曲に『ペグ』。アルバムは『彩(エイジャ)』『ガウチョ』など。活動休止後フェイゲンはアルバム『ナイトフライ』を作った。7部での登場回数多し。

*3 全身を覆うローブにサングラス、という恰好。ジョセフとノリノリで値切り交渉をしたりしており、ここだけ見ると強かな商売人という雰囲気でかなりコミカルである。

*4 アニメでは残された「肉の芽」も、「恋人」の感覚支配から解放されたジョセフの「波紋疾走」で駆除された

*5 承太郎はジョセフが解放されたことをダンの様子から薄々察知していたかもしれないが、確信がなかったため、この時点での攻撃は保留したと思われる

*6 推測に過ぎないが、後述の通りDIOから前金をもらってしまっているため、任務未達成で逃げるという選択肢が取れなかったと思われる

*7 承太郎が先ほど「恋人」を解放したのは「法皇の緑」の触手が絡みついていることを確認したため

*8 足を骨折しているため、走って逃げることすらできない。もっとも逃げたところで、その辺の石ころを即死級の飛び道具にできるスタープラチナの前では逃走は不可能であろうが

*9 抜け出た後は一目散に本体の元に飛んでいっているが、その時のスピードはスタンドのサイズを考えると相当速い。逃げ足だけは速いということなんだろうか。

*10 ドネルケバブとは、中東方面のハンバーガーである。肉の塊を棒に刺し、回転しながら表面を焼く。焼きたてをナイフで削り、パンに乗せて食べる。それがまた、絶品である!!(CV:大川透)

*11 本場のケバブは主に羊肉。日本で売られてるのは鶏肉が多い。

*12 実はアニメではケバブ屋とダンを別の声優さんを充てるという案もあったそうだが、岸尾氏が直々に「やりたい」と売り込んだらしい。

*13 連載当時は、日本ではケバブ屋はほとんどなかった。現在は店にもよるが、一個500円ぐらいはザラ。