※このSSはあくまでヘッドカノンです。それを留意した上で読んでいただければ幸いです。
アルカナ団との戦闘後、アヴェントゥラは目を開けると見知らぬ場所にいた。辺り一面暗く、しかし光がさしていないような空間であるにもかかわらず視界がはっきりとしている。しかし遠くを見ても暗い空間が続くばかりだった。なぜ自分はこんな場所にいるのか。アヴェントゥラは疑問を覚え前後の記憶を振り返ると一つ思い当たる節があった。自分はアルカナ団との戦いに敗れ、そして命を落としたのだ。そう考えれば答えは一つしかない。
「……そうか、私は負けたのか。そして死んだのだな。つまるところ、ここは……」
「死後の世界ということです。アヴェントゥラ様」
「死後の世界ということです。アヴェントゥラ様」
ふと、見知った男の声が聞こえた。もう一度聞きたくて、しかしもう二度と聞くことのできなかった、そしてこの瞬間もっとも聞きたくなかった声の持主。
「アヴェントゥラ様。道先案内人としてお迎えに上がりました。……どの面を下げて会いに来たのかと思われますが」
「全くよ。どの面下げて私に顔を見せに来たのかしら。え? もう一度殺されたいの?」
「貴方様に殺されるのであれば何度でも構いませぬ。ですが、貴女様を行くべき場所へ迎えに行くのは僕でありたいと思っていましたので……。不満はありましょうが何卒ご寛容のほどを……」
「貴方様に殺されるのであれば何度でも構いませぬ。ですが、貴女様を行くべき場所へ迎えに行くのは僕でありたいと思っていましたので……。不満はありましょうが何卒ご寛容のほどを……」
ノルザンツの言葉を聞いて再びため息をつく。目の前の男は何一つ変わっていないようであった。もっともダークエルフに落ちる以前の状態であるようだが。
「……死んだ後に元に戻るとかでたらめね。この場所は」
「ええ、全くです。もしかしたら、貴方様に殺されたから元に戻れたのやもしれません」
「気持ち悪いことを言わないでくれる? 殺したくなるでしょう。…………でもそうか。私は敗けたんだ。そして死んだのね……。アンタがここにいるってことはそうなのでしょう?」
「ご明察です。アヴェントゥラ様」
「ええ、全くです。もしかしたら、貴方様に殺されたから元に戻れたのやもしれません」
「気持ち悪いことを言わないでくれる? 殺したくなるでしょう。…………でもそうか。私は敗けたんだ。そして死んだのね……。アンタがここにいるってことはそうなのでしょう?」
「ご明察です。アヴェントゥラ様」
アヴェントゥラは天を仰ぎ見た。上空もどこまでも暗い空間が続いているようだった。
「……アンタが死んだ後、いろんなことがあったわ。一時的に平和になったのはいいけどもすぐに終わったし……奴隷達が反乱を起こすわ、軍団が負けていくわ、挙句、首都まで一気に攻め込まれるわ……アンタが死んでから散々だったわ。いや本当に散々だったわ。これでも腕っぷしだけは自慢だったのに最終的にはエルフ以外の種族に……それも人族に負けたし……アルカナ団とか言う叛徒共と戦っているときなんて私がどれだけ間違っていたかを思い知らされた気分だったわ。他にやりようなんてなかったのにさ……」
アヴェントゥラの愚痴をノルザンツは黙って聞いていた。差し出口を挟む権利などないと考えていたからだ。アヴェントゥラは再びため息をつき。
「最期なんて私のやってきたことが間違いだったって……そう突き付けられた気分だったわ。おかげでさアンタの事恨めなくなったわよ……。アンタも同じように……アンタと同じように間違えたんだなって思ったらさ……」
「正しかったか間違っていたかどうかはさておき、アヴェントゥラ様の取った道以外に術などなかったと思います。貴方様が最初に行動を起こしたからエルニア帝国が誕生し、そしてエルフ達は一時でも平穏を勝ち取れた。それだけは確かでございます。たとえ事情を知らぬ者達がどう言おうと最初に行動に出た貴方様を否定する事等誰にも出来ない。それだけは確かだと僕は思ってますよ」
「……ありがとう、ノルザンツ。少し楽になったわ。それにしてもアンタが迎えに来てくれるとは思わなかったわ。きっと恨んでるだろうって思ってたからさ」
「恨みませんよ。僕は貴方様を恨むことなど一切ありません。最期に語った通りですよ」
「……そっか」
「正しかったか間違っていたかどうかはさておき、アヴェントゥラ様の取った道以外に術などなかったと思います。貴方様が最初に行動を起こしたからエルニア帝国が誕生し、そしてエルフ達は一時でも平穏を勝ち取れた。それだけは確かでございます。たとえ事情を知らぬ者達がどう言おうと最初に行動に出た貴方様を否定する事等誰にも出来ない。それだけは確かだと僕は思ってますよ」
「……ありがとう、ノルザンツ。少し楽になったわ。それにしてもアンタが迎えに来てくれるとは思わなかったわ。きっと恨んでるだろうって思ってたからさ」
「恨みませんよ。僕は貴方様を恨むことなど一切ありません。最期に語った通りですよ」
「……そっか」
アヴェントゥラは背を伸ばし、向かうべき方向に視線を向ける。暗闇に覆われてはいるがどこに向かえばいいか、不思議と理解できたのだ。ノルザンツはアヴェントゥラに対して跪いている。
「道先案内人と言ったわね。しっかり案内しなさいよ。我が臣下よ」
「畏まりました。我が主よ。しかと役目を果たさせていただきます」
「畏まりました。我が主よ。しかと役目を果たさせていただきます」
かつてエルニア帝国が誕生する前の、まだ大任についていなかった頃のやり取りを交わし合い、二人は吹き出すように笑いながら、暗闇の向こうへ歩き出した。不思議と足取りは軽く、しかし迷いがなく。どこに続いているか分からない向かうべき場所へ歩を進めるのであった。
おまけ
「しっかし、わざわざ迎えに来るとかアンタ、私のこと好きすぎない? あ、ひょっとして私に惚れてたとか?」
「ご冗談を、僕はゴリラを恋愛対象に加えるような趣味はございませぬ。それに旦那様がおられるでしょう」
「冗談よ。それと、誰がゴリラですって?」
「賢いくせに常日頃から雑な上に魔王と素手でタイマン張り合ってましたから何も間違っていないでしょう?その上毒まで食らってましたし心臓に悪いったらないですよ」
「うっさい。あの時はきっちり倒したから問題ないでしょ。それに雑なんじゃなくて常人には理解できない効率性があっての事よ」
「傍から見てて雑としか言いようがないですね」
「いつになく主に対して言うじゃないのこのもやし」
「もうすでに死んでますし、面倒くさいことを気にしなくてもよくなりましたからね」
「……それもそうか」
「ご冗談を、僕はゴリラを恋愛対象に加えるような趣味はございませぬ。それに旦那様がおられるでしょう」
「冗談よ。それと、誰がゴリラですって?」
「賢いくせに常日頃から雑な上に魔王と素手でタイマン張り合ってましたから何も間違っていないでしょう?その上毒まで食らってましたし心臓に悪いったらないですよ」
「うっさい。あの時はきっちり倒したから問題ないでしょ。それに雑なんじゃなくて常人には理解できない効率性があっての事よ」
「傍から見てて雑としか言いようがないですね」
「いつになく主に対して言うじゃないのこのもやし」
「もうすでに死んでますし、面倒くさいことを気にしなくてもよくなりましたからね」
「……それもそうか」
暗闇の最中そんなやり取りが二人の間で交わされたことを誰も知らない。知ることはない。そもそも現実かどうかも定かではない。それでも戻ることのない日々の中で共に笑い合い、最終的に敵対し殺し合った主と従者はこの瞬間に元の関係に戻れた。誰に知られることがなくとも二人はそれで満足だった。
これはただ死者があるべき場所に向かうまでの一幕。それだけのお話。
これはただ死者があるべき場所に向かうまでの一幕。それだけのお話。